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【地域おこし協力隊】ミツバチと触れ合う体験を作りたい。定住に向けて養蜂と農業に取り組む|宮崎県小林市・田地祐造

地域のリアルな暮らしを、現地で暮らすひとたちに聞いてみたい──そんな想いから、地域おこし協力隊の皆さんに15の質問をさせてもらう企画。今回お話をうかがったのは、霧島連山の湧き水が湧く町として知られる、宮崎県小林市、坂元地区で暮らしている田地祐造さんです。

Q1:自己紹介をお願いします

田地祐造です。2013年10月から宮崎県小林市の地域おこし協力隊として活動しています。

Q2:取り組んでいる活動を教えてください

ミツバチと触れ合う体験を提供できるようになりたい

ニホンミツバチで養蜂をしています。一般的に養蜂で用いられるセイヨウミツバチに比べて、ニホンミツバチは集めてくる蜜の量が少なく、採れるハチミツは貴重です。

生い立ちに理由があるようで、四季のある緑豊かな日本では基本的に年中花が咲いているので、在来種のニホンミツバチは一時にたくさん貯めなくても生き残ってこれたからでしょう。

ハチミツ

これが一昨年と昨年に採ったハチミツです。せっかくだから蜂たちの様子を見に行きましょう。

宮崎県小林市の地域おこし協力隊、田地祐造さん

今日は寒くて風も強いので、巣箱の周りをミツバチがあまり飛んでいませんが、巣箱の中にはたくさん入っていますよ。山にはたくさんミツバチがいるので、春先に空の巣箱を山に設置して、ミツバチを捕まえたら巣箱を移動させて養うこともあります。

宮崎県小林市の地域おこし協力隊、田地祐造さん

ミツバチを養う仕事は、風よけを作ったり、巣箱の掃除をしたりすることが基本になりますが、ニホンミツバチはあまり面倒を見なくても自分たちで生きていけます。いろんなひとの養蜂を見てきましたが、自分の感覚ではあまり手を掛けない方が、彼らの生活を邪魔しません。問題があっても人間にできることはほんのわずか。今まで生き抜いて繋いできた遺伝と生存本能に任せる方が自然かなと。

ひとつ注意するのは、巣箱を置く場所です。彼らは半径2kmが活動範囲なので、花が少ない地域に密集して巣箱を置いてしまうと、どんどん弱ってしまいます。その辺は巣箱を設置する人間が配慮してあげたいところです。

今はミツバチが入っている巣箱がまだ3つしかありませんが、養蜂で生計を立てるため、自分の考えでは最低50群は必要だと思っています。今後はミツバチが入っている巣箱を増やしていくことが目標です。

ニホンミツバチ

ぼくの理想は、多くの子どもたちに自然に親しむ1つの経験としてミツバチに触れ合ってもらうこと。ニホンミツバチはとてもおとなしいので、防具やあみあみのネットをつけなくても、あまり刺されません。油断したり、愛情なく接したりしてしまうと刺されますけれど、それも自然なことです(笑)。

ゆくゆくはハチミツを採るワークショップやハチミツジュースを提供するカフェなど、ミツバチと触れ合う体験を提供できるようになりたい。今は生活するための収入を得ることに全力投球です。

Q3:地域おこし協力隊をはじめたきっかけを教えてください

ミツバチの群れ

生活を成り立たせながら移住できる

もともとは東京の大手文具メーカーで、新卒から同じ会社で15年働いていました。移住する直前も研究開発部門で新規事業の立ち上げから携わったクラウドサービスを担当していて、9年に渡り同じ事業を……。もとは環境を変えたがらないタイプです。ちなみにニホンミツバチは環境が悪くなるとすぐ居場所を変えます。ぼくは地域おこし協力隊になる前から「田舎に移住しよう」と決めていました。

自然の豊かな場所で生活したいと思っていたのですが、仕事のアテもなく、ただ養蜂をやりたいといっても、いきなり移住するのは難しいなと逡巡していました。

どうやったら生活を成り立たせながら移住ができるか、なにか良い仕事はないかと探していたら地域おこし協力隊の制度を見つけました。このタイミングで移住先に決めていた宮崎県で小林市が地域おこし協力隊の募集をしていました。ラッキーでしたね。

Q4:「地域暮らしの魅力」を教えてください

宮崎県小林市
田地祐造さんが機械を使わず人力で耕している畑

養蜂ができること、畑で野菜を作っていること

「田舎で生活をしていくためには養蜂だ」って自分で選んで移住したので、養蜂ができる環境にいるだけで幸せな毎日です。そして小林に来てから始めた畑でいろいろやるのも楽しい。梅の木の剪定や、ゆずの収穫など、家の周りにアクティビティが満載。ミツバチ観察しながら畑で作業してると、こんな幸せでいいのかって思うほどです。

養蜂している

ここで生活していると、自分がやるべきことに集中できます。あらためて考えると、組織の中で何かやるのではなく、自分の物差しでさまざまな物事を判断する環境を望んでいたのではないか、という気がします。

もちろんメンバーに恵まれていれば、組織でも楽しく仕事ができるし、20〜30代は本当に会社が大好きで休みの日が寂しくなるくらい会社員生活を楽しんでいました。でも30代中盤から、資本主義的生活や多くのひとが無理して効率的に動こうとしている状況に、違和感を感じ始めた。都会から離れて「自分の思い描く世界を追い求めてみたい」と自分自身に賭けた結果、今があります。

Q5:地域暮らしで心に残る出来事を教えてください

「秋の収穫&感謝祭」地元のひとたちを招待した一大イベントを開催

同じ地域おこし協力隊の瀬尾絵美さんの家をお借りして、2015年11月に「収穫&感謝祭」を開催しました。感謝祭を開催する前に「こういうイベントをやるので、よかったら来てください」と、近くに住んでいるおばあちゃんのところへチラシを持っていったんです。そうしたら普段はあまり話すことのないひとり暮らしのおばあちゃんが、当日に手押し車を押して来てくれた。すごくうれしい出来事でした。お祭りには10人来てくれればいいな!と思っていたのに、雨にも関わらず50人近く来てくださった一大イベントになりました。

Q6:地域の大好きなごはんを教えてください

好きなご飯:かまた鍋

好きなご飯はかまた鍋ですね。ただ、これは俗称で、正式名称はなんでしょう? 小林に来て間もない頃、市役所の方が「のんかた(飲み会)」をしてくれて。そのときに用意してくれたのが「スーパーかまた」の鍋でした。まだ慣れなくて不安でいっぱいだったときに、おいしい鍋と緊張をほぐしてくれる会話のおかげで、とても暖かい気分になれました。思い出の一鍋です。

それ以来なにか大きな節目には、かまた鍋を食べます。須木地区に向かう途中の「スーパーかまた」で予約して用意してもらうんです。汁や具材もついた鍋セットでモツと味噌だれに特徴があり、濃厚です。

Q7:町のおもしろいひとを教えてください

夏木正和(なつきまさかず)さん

  • 夏木 正和(なつき まさかず)さん

須木地区で栗や炭などを作りながら地域おこしに全力を注ぐ強いひとです。一人でお祭りやイルミネーションイベントを開催し、「子どもたちが帰って来れる地域にしたい」という自分の信念で突き進む情熱とパワーがあります。ぼくの養蜂箱も山に置かせてもらっています。

Q8:同世代でおもしろいことを言っているひとはいますか?

堀研二郎さん

  • 堀 研二郎(ほり けんじろう)さん(ホリケンファーム代表)

農薬、化学肥料に頼らないおいしい野菜作りをしている方です。東京農大卒の農業エリート。どんなひとにもフランクに接するひとなのですが、とにかくノリがおもしろくて会話の噛み合わなさが魅力です。実家にも野菜を定期的に配送してもらい、母や妹が大変喜んでおります。

Q9:尊敬している町のひとを教えてください

白坂伊佐男(しらさかいさお)さん(鍛冶屋)

  • 白坂 伊佐男(しらさか いさお)さん(鍛冶屋)

この道50年の鍛冶屋さんです。野尻地区に工場があります。移住してすぐ、地元に鍛冶屋さんがいると知りました。訪ねてからのお付き合いでちょくちょく顔を出して仲良くさせていただいています。包丁を一から作らせていただいたことも、藤岡弘、さんにオーダーされた手裏剣を見せてくれたこともあります。 80歳近い年齢でも一生懸命仕事を続けていて、いつお邪魔しても明るい方。いろんな昔話や風習などを教えてくれます。必ずオチがある話で笑わせてくれますが、訛りが強くて笑うのは1、2テンポ遅れます(笑)、

Q10:注目している地域おこし協力隊を教えてください

  • 笠原 健太(かさはら けんた)さん(宮崎県新富町地域おこし協力隊)

同じ宮崎県の新富町で活動する笠原くんです。すごーく年の離れた弟みたいな感じで、かわいい男の子です。若いのに仙台で1年以上のボランティア経験もあり、感受性が強いんだろうなと思っています。若さあふれる勢いや熱さを、地域おこしと定住に向けての活動にうまく生かしていって欲しいなと義理の兄目線で注目しています。

Q11:ウェブでは知ることができない地域の情報は?

宮崎県小林市の地域おこし協力隊、田地祐造さん

便利さと自然の豊かさのバランスがちょうど良い

小林の良いところにもつながるんですけど、小林って田舎というより、町なんです。宮崎の山間部ですから最初は相当な田舎に来たつもりでした。でも普通に、コンビニエンスストアもチェーン店もたくさんあります。

東京から移住してきても、カルチャーショックが少ないです。自然の豊かなこの場所からでも、15分くらい車で走れば、市内の繁華街に行けます。山奥過ぎず、でも自然はいっぱいある。そのバランスがすごくちょうど良い。生活していく楽さ、なじみやすさが魅力です。

Q12:地域での失敗談は?

軽装で蛇やヤマビルがいる山に入ったこと

ミツバチを捕まえたり、様子を見に行くため、ちょくちょく山に入ります。山に入るのは毎回勇気のいるチャレンジです。じつは虫がとても苦手で……とくにヒルが……怖い。山に入るのは思っていたよりずっと大変で、蛇にヤマビル、マダニ、ツツガムシとか、挙げればキリがないくらい危険な生物たちの住処なんです。蛇といってもマムシの可能性もありますからね! ぼくはひとりで山に入ることも多いので、ここは蛇がいないかなとか、毎回ビクビクしています。やっぱりこの道を選んだのは失敗だったかも(笑)。

ミツバチの巣箱を置く落ち葉の茂った草むらは、蛇がたくさんいるようなところです。まだ山に詳しくないので、常に恐怖を感じている状態です。この前は、時期的にまだヒルはいないだろうと思っていたのに、山で出会ったひとに聞いたらうじゃうじゃいる、と。恐怖におののいているとその方が、持っている塩をぼくの長靴に塗ってヒル除けをしてくれました。

Q13:あなたが考える地域の課題を教えてください

ニホンミツバチの巣箱

外からの視点を常に意識して、お客さんが喜ぶものを提供しよう

地域に必要なことは、目線を地域の外に向けることです。地域おこしというと、どうやったら住んでいるこの地域が盛り上がるのかを、地域内だけに目を向けて、「あれがある」とか「これがない」とか自分たちの範囲で考えてしまう傾向があると思います。だからこそ周りの市町村や団体がどんなことをしているのか、きちんと見渡す視点が必要です。

さらに地域の外のひとたちの活動を知ったうえで、「自分たちの取組みは価値があるかどうか」を判断する目が必要ですね。たとえば地域の祭りは誰に対して、何を提供しているのか不明確なことが多いんです。もっと多くのひとに祭りに参加してほしいなら、出店するお店を厳選したほうがいい。他のイベントにも出て人気を集めているお店を誘致する方が地元のひとにとっても、「このお店が祭りに来ているから行ってみよう」となるでしょう。

移住や観光も同じで、来てくれるひとの目線で考えて、相手の立場になってとことん考え抜くことができれば、小林はもっとよくなると思います。

Q14:任期後の進路を教えてください

ニホンミツバチの巣箱

小林市をPRして移住者の仲間を集める

今、20アール(約600坪)の畑付きの空き家を購入しようと思っています。ひとりで畑をやるには最適の物件なんですけど、現状では畑を購入することができません。農地を取得するには、下限の面積が設定されていて、「原則50アール以上」が必要です。小林市でも同様に50アールが必要となります。つまり、ぼくの場合あと30アール足りないんです。

この下限面積は各自治体の農業委員会で決めることができるので、なんとかこの面積の規制を緩和してもらいたいと思っています。なぜかというと移住希望者の中の多くは、家を買って家庭菜園や農業をやりたいというひとが多いからです。これからは畑付きの空き家物件が増えてきて、購入したいひとも増えるでしょう。そのときみんな、農地法の壁にぶつかって農業もしくは移住をあきらめてしまうひとが出てきてしまいます。

輸入農作物に負けないために、広大な土地を利用して強い農業をすることが国の基本的な農地の考え方ですが、一方「農ある暮らしを始めよう」という田舎暮らしを志向するひとたちへ向けての制度も立ち上がっています。実際、農地の下限面積を下げている自治体は増えています。

宮崎県小林市の地域おこし協力隊、田地祐造さん

協力隊としての残りの期間で納得いく着地点を見つけて、50アール以下で農地として登記する小林の住民、第1号になりたいですね。他の自治体よりも移住希望者の要望を叶えやすくなれば、小林を移住候補地として選んでもらいやすくなるはずです。

地域おこしの活動を通じて、小林に移住者を増やしたいと強く思うようになりました。移住者が増えればお互い同じ立場の仲間が増えて心強いし、そこから地元のひととのつながりももっと増えて行くことを経験しています。それが地域の活性化に大きく貢献することだと思っています。

2016年も変わらず、東京でおこなわれる移住相談会などで、自分が暮らして感じたことを話して、小林市に興味を持ってもらう活動をします。そして定住に向けて、養蜂と農業の両方で250〜300万くらいの収入を得られるようにがんばっていきます。ひととのつながりももっと増えていくことを期待しています。

Q15:これから地域おこし協力隊へ応募しようと思っているひとへのアドバイスをお願いします

地域に入ってからは本人次第。気になるなら応募しよう

地域おこし協力隊はすごく良い制度なので、ぜひおすすめします。気になるんだったら応募してみてください。そのあとうまくいくかいかないかは本人次第。

「地域になじみにくい」「やりたいことが見つからない」といった、さまざまな壁がひとによっては生まれるでしょう。その問題の責任の所在は自治体ではなく自分にあります。だから自治体を非難するのではなく、自分自身が前向きになれることを見つけて、精一杯取り組むことが大切です。地域に入ってからは本人次第なので、入口として地域おこし協力隊は制度としてすごく良いですよ。

(この記事は、宮崎県小林市と協働で製作する記事広告コンテンツです)

お話をうかがったひと

田地 祐造(たぢ ゆうぞう)
1975年生まれ。東京都品川区出身。学習院大学卒業後コクヨ株式会社入社。2013年10月より宮崎県に移住し、小林市の地域おこし協力隊として活動中。虫が苦手なのに、養蜂のためヤマビル・マムシ・マダニにビビりながら山に入る、苦手なことに挑戦し続ける。おおいなる自己矛盾を抱えながら田舎生活を楽しんでいます。

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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