高知県嶺北地域・大豊町を通る国道32号線を走っていると、右手に滑り台のような大きな屋根と、緑のツルが絡まった建物が見えてきます。ここはラフティングガイドだった喜夛河隆一(きたがわ りゅういち)さんと妻の佐知子さんが2008年にオープンした「大田口カフェ」。

世界を旅し、ラフティングにハマり、カフェ開業。「夢中になれること」を大切に、暮らしをつくってきた喜夛河さんが考える、やりたいことをするための基本の“き”とは?

世界を旅して四国の川へ。ラフティングとの出会い

── ご出身はどちらですか?

喜夛河 隆一(以下、喜夛河) ぼくは兵庫県の明石市ですね。

喜夛河 隆一
喜夛河隆一さん

── では明石市から、大豊町に移住されたのでしょうか?

喜夛河 いえ、大学生のときは愛知県の豊橋で暮らしていました。3年生が終わったタイミングで休学して、自転車で日本一周していましたね。

── 復学してからは?

喜夛河 学校が退屈になってしまったので、やめて、海外の川をくだることにしました(笑)。アルバイトをしてお金を貯めて、折りたたみの船を買ったんです。

── ……ラフティング用のゴムボートではなく、船なのですね。

世界を旅していた喜夛河さん 世界を旅していた喜夛河さん

喜夛河 そのあと訪れた四国で、初めてラフティングに出会ったんですよ。いざ行くぞ! と渡航を考えていたときに、あまりにも経験がありませんでしたから、まずは日本の川をくだることにしたんです。ヒッチハイクで四国に来て、吉野川や仁淀川(によどがわ)、四万十川あたりを巡りました。

── ラフティングに夢中になったのはどうしてですか?

喜夛河 いままでツーリングカヌーをやってきて、ひとりで各地の川旅を楽しんできたのですが、吉野川のラフティングに出会って大きな喜びを見つけてしまいました。

とにかく、川の素晴らしさ。長い年月をかけて削りとられた渓谷は深く美しく、自然のままの景観が楽しめます。流れる水は、常に変化して飽きさせない。そして、日本屈指の激流。そこをお客様と一緒にボートで下るのは、まさに冒険。自分が心底楽しいと思えることをお客様と共有できたラフティングは、僕の人生でも素晴らしい体験でしたし、かけがえのない仲間も多くできました。

そうしてカナダやアラスカ、ニュージーランドあたりを中心に約1年間旅行して、日本に帰ってきたらそのまま、四国に戻って来ました。

ラフティングをする喜夛河さん

── 古巣の豊橋や明石には戻らなかったんですね(笑)。

喜夛河 ふふ(笑)。四国に来た理由は、ラフティングの仕事がしたかったからなんですよ。帰国してからはmont-bell(モンベル)のスタッフとしてラフティングガイドをしていました。

結婚、そして大田口カフェをオープンへ。

高知・大豊町・大田口カフェ

── 2008年の7月に大田口カフェをオープンすることになりますが、奥さまの佐知子さんとは高知で出会ったそうですね。

喜夛河 佐知子もラフティングの仕事をしていたので、高知で出会って結婚しました。ふたりとも好きだった大豊町で住まいを探していて、たまたま巡り会ったのが、当時空き店舗だったこの物件。

── どうしてカフェを開業することにしたのですか?

喜夛河 ふたりとも、もともとカフェをやってみたいという思いがあったんです。この物件なら、お店を開けるだろうと。

高知・大豊町・大田口カフェ

高知・大豊町・大田口カフェ

── お客さまはやっぱり、大豊町の方が多いですか?

喜夛河 どうでしょうね……、町内の方は半分より少ないと思います。高知市内から来てくれるお客さまがいちばん多くて、香川や徳島から来てくれる方もいますよ。

鹿バーガー
鹿バーガー(¥850)「猪鹿工房おおとよ」より野生の鹿肉のミンチを仕入れ、ハンバーグを手づくり。バンズも自家製米粉入り。「いく農園」のピクルスをサンドした、こだわり特製バーガー
碁石茶ロール
碁石茶ロール(¥450)自家製の卵を使用した、弾力あるもちもちの生地。甘さひかえめのクリームはひんやり。その後に碁石茶の風味が効いてくる

ひとに聞くこと、話してみること、行ってみること、大事やと思う

── 喜夛河さんは比較的若い頃から、やりたいことを自分で見つけてきたタイプだと思います。ところが、自分が何をやりたいのかわからないひとも中にはいます。

喜夛河 実際、ぼくもお店をやることがベストな生き方なのか、自分でもよくわからない(笑)。だから「これをやるんだ」って、ひとつを決めて突き進めるひとはすごいと思います。

── でも喜夛河さんは、昔から自転車で日本一周がしたい、海外の川を下りたい、そういう「やりたいこと」を見つけて、挑戦してきていますよね。

喜夛河 言われてみると、そうですね。ただ、ぼくの場合は「出会い」に助けられたことが多いです。

たとえば自転車で旅行に行くにも、お金がないので宿には泊まらずに寝袋で野宿します。知らない土地の真っ暗な場所で、ホームセンターで売っている安くて薄い寝袋で寝られるのかな……と、ぼくもはじめは疑問を持っていたんですよ。

── 同感です。

喜夛河 そういうときに、同じアパートに住んでいた先輩の中にヨーロッパを自転車で巡ってきたひとがおって、「寝袋があればどこでもすぐに寝れるよ」って言うんです。それなら俺も……と、ペラペラの寝袋を買いました(笑)。こんなふうに、自分の身近に、背中を一押ししてくれるような出会いがあるといいですよね。

喜夛河 隆一さん

── 自分がやりたいことをすでに行っている、先輩みたいなひととの出会い、ということですね。

喜夛河 そうですね。ぼくにとっては、何かやりたいことがある自分の背中を押してくれる、相談できる先輩の存在が大きかったです。

誰かに直接話を聞いてみる、習い事をしてみるとか、自分の時間を割いて行動するのが、やりたいことに近づくための本当の一歩なんでしょうね。とくに最近は携帯で何でも調べられる時代やから、ひとに聞くことがなくなっています。

── 誰にも会わなくても、ある程度の答えは得られますよね。

喜夛河 でも調べるだけでは分からんことって、まだいっぱいある。ひとに聞くこと、話してみること、行ってみることが大事やと思うんです。

── どんなに検索できるとわかっている情報でも、なんとなくひとに聞きたくなることってあります。

喜夛河 そうそう。その方が絶対おもしろいんですよ。そのひとだから話せるような、ネットには出てこん情報も引き出せるし(笑)。

高知・大豊町・大田口カフェ

kochi-ohtaguchi-coffee (6 - 30)

── くすぶっているひとは、まず“先輩”を見つけることから始めるのがいいかもしれませんね。

喜夛河 そうですね。結局何がそのひとにとってベストな選択なのかは、本人にしかわからんですよ。誰かに何か言われたからやるとか、そういう理由は、ほんとしょうもない。

自分で見て聞いて、選ぶ。足を運んで体験することが大事です。自分から動こうとする姿勢のひとを、ぼくは応援したいと思います。

お話をうかがったひと

喜夛河 隆一さん・喜夛河 佐知子さん
左から、喜夛河隆一さん・喜夛河佐知子さん

喜夛河 隆一(きたがわ りゅういち)
1980年生まれ。兵庫県明石市出身。アウトドアの放浪旅の末、四国吉野川の素晴らしさに魅了され、2005年よりラフティングガイドを生業とし高知に住むようになる。2008年、結婚を機にカフェをオープン。子育てしながらカフェを営むスタイルで現在も奮闘中です。

このお店のこと

高知・大豊町・大田口カフェ

大田口カフェ
住所:高知県長岡郡大豊町寺内236-3
電話:0887-73-0410
営業時間:10:00~18:00
定休日:木曜日・第2/4水曜日
アクセス:カフェは国道32号線沿いにあります。大豊インターより12分ほど
公式サイトはこちら

高知・大豊町・大田口カフェ

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