郷に入る

【新潟県】炊飯OSをアップデート!フードユニット「ごはん同盟」とは?

1日3食、1年で1,095食、あなたは毎日「美味しいご飯」を食べていますか?

身近な存在であるはずなのに、じつはみんな「お米」についてあまり知らない。食べることは生きること。美味しくご飯を食べることは、きっと幸せにつながるはずなのに。

お米の美味しさだけでなく、「美味しく食べること」の素晴らしさと方法を伝えたい―。新潟県出身のシライジュンイチさんと、しらいのりこさんご夫婦の、「ご飯好きの、ご飯好きによる、ご飯好きのための、炊飯系フードユニット『ごはん同盟』」。旦那さんのシライジュンイチさんに、2010年の結成から今日に至るまでの活動のあゆみや、活動の軸にある想いを聞きました。

ごはん同盟のしらいのりこさんとシライジュンイチさん

ご飯とお米に関すること何でも!「ごはん同盟」とは?

── まずは、「ごはん同盟」のコンセプトと活動内容について教えてください。

シライ ジュンイチ(以下、シライ) 「ごはん同盟」は、2010年に結成されたご飯好きの、ご飯好きによる、ご飯好きのための、炊飯系フードユニットです。コンセプトはホームページにも載せていますが、こんな感じ。

「ごはん同盟」は、ご飯好きの、ご飯好きによる、ご飯好きのための、炊飯系フードユニットです。「おかわりは世界を救う」という理念のもと、日夜、ご飯をおいしくいただく方法を生み出し、その成果を多くのご飯好きのみなさんと共有するための活動を行います。合言葉は、もちろん「おかわり!」。美味しいごはんをいただくために、西へ東へと飛びまわります!(「ごはん同盟」サイトより引用)

シライ おもに、参加いただいた方と美味しくご飯を食べようという自主イベント「On The Rice」を企画したり、ケータリングや炊飯教室、レシピ開発の仕事など、お米やごはんに関わるさまざまな活動をしています。

  • ごはん好きが集まり、ただただごはんを食べるだけのイベント「On The Rice」の企画運営
  • ごはんに関連したメニュー開発
  • ごはんに関連したケータリング
  • ごはんに関連した料理教室やワークショップ
  • 各種イベントへの炊飯協力
  • 米粉スイーツのメニュー開発
  • その他、ごはんとお米に関連することなんでも
「On The Rice」〜第七膳 ブレンド米の宴〜の様子
「On The Rice」〜第七膳 ブレンド米の宴〜の様子

── 最近では、ご飯の専門家としての意見を求められることも多くなってきたと伺っています。

シライ 雑誌で定食に関する取材にご協力させていただいたり、テレビやUSTREAMの番組に出演させていただいて炊飯のお話をしたり、「旅する羽釜」と題して、羽釜持参で全国各地で炊飯ワークショップを開催したりと、趣味で始めた「ごはん同盟」の活動の幅が徐々に広がってきているのを感じています。

ごはん同盟の棚田炊飯の様子
新潟県十日町市の棚田で炊飯した時の様子

── シライさんたちは、ご夫婦ユニットなんですよね。

シライ メンバーは、料理家のしらいのりこと、プランナーのシライジュンイチの2名です。彼女が試作係、僕が試食係という役割分担もあったりします(笑)。

── 設立のきっかけはどういったことなのでしょう?

シライ 僕も妻も、新潟生まれ新潟育ちの生粋の新潟県人。妻の実家が魚屋であり仕出し屋、僕の実家が米農家で、どちらも食に関わる家系でした。

妻が調理士免許を取得するために上京することになり、2008年に新潟から東京に引っ越し。最初は親孝行のつもりで、マルシェなどで実家のお米を売ることを始めたんですね。そうしたら売るだけではなく、炊いて食べてもらったら面白いんじゃないかと思いついて、2010年の「On The Rice」開始につながりました。

炊飯器の中で何が起こっているか知っている?

── なるほど。活動の根底にある想いは、どんなものなのでしょうか?

シライ やっぱりお米を美味しく食べてもらいたい、ということですね。

お米が食べられるまでの流れの中には、米を作る農家さん、米を売る米屋さん、そして米を炊いて食べる人という3者が関わっています。その中で、お米を購入して、保存して、炊飯するまでの品質は、食べる人の手に委ねられる部分が大きいなと思っていて。

どんなに美味しいお米も、保存方法や洗米や吸水、炊飯のコツが分かっていなければ、本来の美味しさは引き出せない。買って洗って炊いて食べる。そして、さまざまなおかずとあわせて食卓を彩る。丹精込めて作られたお米を、おいしいご飯としていただくためにできることってたくさんあると思うんです。僕たちはそこをフォローする存在になりたいと思って活動しています。

IMG_9678

シライ 特に最近は、炊飯器の発達が著しいから、お米って炊飯器に入れてピッとボタンを押せば簡単に炊ける存在のように思われがち。でも、あの中で何が行われているかって、知っている人って意外に少ないんです。吸水や洗米、蒸らしなど、「ご飯を炊く」という当たり前の行為を、もう一度見直すきっかけになれたらいいですよね。

「炊飯OSのアップデート」をしよう

ごはん同盟_空飛ぶ羽釜

── 「ごはん同盟」が目指すことは、一体何なのでしょう?

シライ うーん……大仰なことを言うのは少しためらわれるのですが、「炊飯OS(オペレーションシステム)のアップデート」みたいなことがしたいですよね。

── 炊飯OSのアップデート、ですか?

シライ お米の魅力そのものを伝えることも大切なのですが、仮に炊飯にもOSがあるとしたら、そのOS自体をアップデートしていきたい。

「お米はどれも同じでしょ」という意識の人が多い中で、僕たちはやっぱりそうは思わない。

最初は新潟のお米の魅力を伝えたいと思って始めた「ごはん同盟」の活動ですが、活動を続けるうちに「新潟のお米が一番美味しいのか?」という疑問が芽生えてきました。ほかの県で生産されたお米や、品種の違うお米を食べてみると、それぞれ味が違って、それぞれが美味しい。

お米って、普通は一家に一品種しか置いていないですよね。だから、日常の中でお米を食べ比べる、つまり一度の食事で二種類以上のお米を口にする機会って、そんなに多くないはずなんです。でも繰り返しになりますが、お米は生産地や品種、あとは炊き方とか、もっと言えばブレンドすることによって全然味が変わるものなんです。

ごはん同盟_一汁一菜
シライ
 あとは最近は炊飯の環境も変わってきていますよね。例えば、キッチンの環境も、ガスじゃなくて、オール電化でIHのコンロしかない人という方も増えてきた。じゃあ、そんな時に土鍋でご飯を炊く方法や、炊くコツとしてよく言われる「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」って、どう対応していけばいい……? 炊飯のハード(お米の品質や炊飯道具)が変わっているのに、研ぎ方や炊き方の炊飯のソフトの部分は昔のまま。

これまでの炊飯OSが20世紀のものだとしたら、僕たちは21世紀のOSに更新して広める、みたいなことがしたいかなぁと。炊飯OSをアップデートして、おいしくごはんを炊ける人が増えれば、日本の食卓はもっと楽しくなる。そんなことを考えています。

── いいですね。

シライ 僕たちも、今、こういうことをやりたいと思うようになるとは、思いませんでした。毎回いろいろな要望に応えるかたちで、活動の幅を広げてきたという方が近いです。でも、興味がある人がいるのであればそれには応えたいし、やっぱり僕たちはお米、そして食べることが好きです。だから、その楽しさを伝えるための活動はやっぱり続けていきたい。

活動の中心はお米ですが、食卓を彩るためには、ごはんだけあっても寂しいわけで。ごはんの隣にはお味噌汁が必要だし、そしたらおかずも欲しくなる。日本の各地で食べられているお米や郷土料理の組み合わせはもっともっと知りたい。日本のお米料理だけでなく、世界のお米料理も気になる。ごはん茶碗やお椀、お弁当箱など、器もおいしくごはんを食べるための大事な要素ですね。「ごはん『同盟』」という名の通り、ごはんにまつわるいろいろなヒトやモノやコトを繋げていきたいですね。同盟相手、絶賛募集中です(笑)。

── 「ごはん同盟」さんのことがよく分かりました。ありがとうございました。またぜひ、美味しいご飯を食べに行かせてください。

ごはん同盟_ロゴしゃもじ

(写真提供:ごはん同盟

ごはん同盟」の最新のイベント情報はこちら!

ごはん同盟のごはん講座
8月30日(日) 第一部 10:30-13:00/ 第二部 16:00-18:30
@たべるとくらしの研究所(札幌市中央区南9条西11丁目3-12)

お話をうかがったひと

シライ ジュンイチ(編集者/プランナー/炊飯師)
ごはん同盟のシンボル、もしくは試食係。タウン誌の編集者、Webディレクターを経て、現在はプランナーとして、企業のプロモーション企画等に携わる。2008年より、都内で実家のコシヒカリの販売を開始。マルシェでの販売や田植えの風景をUSTREAMにて生中継するなど行う。「ごはん同盟」は、そのような活動の流れから生まれたプロジェクト。実家は米農家。好きなごはんのお供は「海苔とわさび」。

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伊佐 知美

旅するエッセイスト、フォトグラファー。1986年生まれ、新潟県出身。世界中を旅しながら取材・執筆・撮影をしています。→ さらに詳しく見る

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