営みを知る

【東京都品川宿】生まれ育ったまちにもう一度活気を!「しながわ街づくり計画」佐藤亮太

東海道五十三次の宿場町【東京都品川宿】特集、はじめます。

下町の観光地や、少し古風な町並みに現れる、人力車。まちの風景の移り変わりや、グラデーションを眺めながら、そこで暮らす人々の営みを見て回る、エンターテイメントのひとつです。

その人力車を、ひとりで手作りし、走らせている人がいます。彼が住むのは、品川。東京を走る様々な路線が乗り入れ、交錯する人々はスーツやシャツの装いの方ばかり。

品川駅

高層ビル群を見上げながら「こんなところで人力車……?」と、おもわず疑ってしまいそうですが、品川駅から少し離れた北品川というエリアは、地元でたくさんの人びとが暮らす、下町のひとつ。そこで、手作りの人力車を走らせている、佐藤亮太さん。品川生まれ、品川育ちだという佐藤さんに、品川というまちの魅力を伺いました。

ビジネス街を走る人力車?

── 佐藤さんは、手作りの人力車を品川で走らせていると伺いましたが、なぜそういったことを始めたのでしょうか?

佐藤亮太(以下、佐藤) もともと、浅草で人力車を引く仕事をしたのですが、地元である品川のために何かしたいなという気持ちは、ずっと持っていました。その後、会社に入ってサラリーマンとして働いたあと、品川に戻ってきたのですが、さて何をしようかと思ったとき、経験がある人力車を使って、品川に来た人に、この地域の良さを伝えられないかと思って始めたんです。

佐藤亮太さん

── 良さを伝えるためのツールに、なぜ人力車を選んだのでしょうか?

佐藤 経験があるから、ということもありますが、品川は東海道品川宿という歴史のあるまちで、東海道のスタート地点でもあります。でも、若い人や地元のひとでも、まちの歴史って意外と知らないんですよね。

今のまちの様子や見所を伝えるのも大事ですが、それらができた背景を知っていると、まちへの見方が変わります。そういう「古き良き品川」を知ってもらうムードづくりをするには、人力車ってぴったりだなと思ったんです。

── いわゆる駅前の品川と、北品川エリア一帯ですと雰囲気が違いますし、人力車が走っていても違和感がありませんね。

佐藤 そうなんです。歴史があるまちを、人力車で回って見聞きすれば雰囲気も出ると思って。

── しかも、この人力車は手作りだと伺いました。

佐藤 人力車は一台作るのに、だいたい200万円くらいかかってしまうんです。それなら新しいものを買うより、作ったほうが早いし安いし(笑)、なにより話題になって楽しいだろうなと思いました。そこで、大田区と品川区の20社くらい町工場の職人さんに協力してもらって、オリジナルの人力車を作るプロジェクトを企画して、完成させたんです。

── どれくらいの頻度で人力車を走らせているんですか?

佐藤 じつは、人力車は「しながわ街づくり計画」という事業のひとつなんです。だから僕が人力車を引くのは、月に2、3回でしょうか。依頼があれば、もちろん動かしますが、ほかの事業も行っているので、毎日というわけではないですね。人力車自体は、商売としてというよりも、歴史ある品川というまちの奥深さを知ってもらうためのツールだと思っています。

他にも、ウェブサイト制作をしたり、冊子を作ったりしていますが、今一番ちからを入れているのは、お店を営業することですね。

2015年8月1日にオープンしたばかりの「KAIDO books and coffee」
2015年8月1日にオープンしたばかりの「KAIDO books and coffee」

── どういったお店ですか?

佐藤 「KAIDO books and coffee」というブックカフェです。なぜお店をやりたいのかというと、この北品川エリアには大きな商店街があります。本来ここは宿場町で、いろいろな人が遠出をするときの出発地点や帰ってくる場所だったんです。たくさんの人が出入りするまちで、商いをやる人も多かった。けれど今は、お店が少なくなってしまって、跡地にはマンションが建ったり住宅地になったり、風景がどんどん変わっていきました。

でも、それだと品川らしさが消えてしまいます。そこで「自分たちで行きたくなるお店があると、おもしろがって集まる人も増えるかもしれない」と思って、仲間を集めてカフェを開くことにしたんです。

── 生まれ育った場所だからこそ、その変化を敏感に感じ取ることができたのかもしれませんね。

佐藤 そうですね。品川を出たこともあったんですが、やっぱりこのまちがいいなって思って。僕が幼稚園の頃から知っている風景が、あちこちにあるまちは、ここしかありませんからね。

「おせっかいだな!」と思うくらいがちょうどいい

── 佐藤さんが感じる、品川の魅力って何ですか?

佐藤 人です。みんなね、良い意味で汗臭い。僕が会社を辞めて「しながわ街づくり計画」を立ち上げたときも、何か新しいことを始めたって聞きつけた人たちが集まってきて、もっとこうしろとか、あれをやろうとか、いろいろ言ってくるんです。

時々、おせっかいだな! と思うくらいなんですけど(笑)、そういう人間臭さってあったかいし、どの地域にもある雰囲気ではないと思います。

佐藤亮太さん

── 先ほどの人力車の話にも出てきたように、周りを巻き込んで何かをやるという文化が、ここにはあるのかもしれませんね。

佐藤 うん、そうですね。品川と一言に言っても、この北品川エリアは少し特殊かもしれません。一歩突っ込んだコミュニケーションをとる人が多い。悪く言えば土足で踏み込んで来るわけですけど、それでもいやな気分にならないから不思議ですよね。

── それは、ここが地元の佐藤さんだから感じる居心地の良さ、ということなのでしょうか。

佐藤 いや、北品川エリアは宿場町でしたから、外の人を受け入れる雰囲気が、いまだに生きているんだと思います。それは、ここに暮らしている人がよく言っていることですが。

だから、北品川エリアに来た人たちは居心地が良すぎて「このまちのために何かしたい!」と思って、サラリーマンを辞めていくという現象が起きています(笑)。何か新しいことをやりたいと思って、品川を目指して来る人もどんどん増えていますよ。

品川を商店街から盛り上げたい

── ここでなら何かができるという予感があるのかもしれませんね。佐藤さんが今後やりたいと思っていることは何ですか?

佐藤 やっぱり、商店街からまちを盛り上げたいという意識があります。だから、「KAIDO CAFE」を皮切りに、他にもお店を創る予定です。今考えているのは、日本各地や世界のアーティストたちを商店街に呼んで、空きビルやシャッター街になってしまっているところを使って、アーティスト・イン・レジデンスを開催するというアイディアです。

北品川

── 具体的なやりたい内容まで決まっていたら、教えていただけますか?

佐藤 東海道品川宿というまちそのものが、作品になったらいいなあと思いますね。まち並みをモデルにした作品を作ってもらったり、商店街でワークショップを行ったり。今のところ、3年くらいかけてアイディアを練って作り上げていく予定です。

── なぜアート、なんでしょう?

佐藤 まちが元気になるためにはお金が必要です。でも、ただ商売としてやるのはおもしろくない。どうせやるなら一人ではなく、みんなでやれば楽しいよねって思うんです。そういう人を巻き込んで一緒に盛り上げるためには、アートのチカラは最適だなと思います。

── 佐藤さんは、品川というまちのプロデューサーのようなことをやっていらっしゃるのですね。

佐藤 うん、でももっと変なことを考えている人たちは、このまちにいっぱいいますよ(笑)。そういう人たちをつないで、いっしょに品川を盛り上げられたら、最高ですね。

お話をうかがったひと

佐藤 亮太(さとう りょうた)
1984年品川区八潮に生まれる(現在31歳)。高校卒業後、浅草の人力車会社に就職。20歳で長男を授かると同時に、㈱リクルートに転職。飲食店の販売促進媒体hotpepperの企画営業として4年半勤務。退職するまでに500件を越える飲食店の支援を行う。退職後、銀座で飲食店の立ち上げに参画し、翌年2010年に㈱しながわ街づくり計画を創業、現在に至る。現在は品川宿地区を中心に、商業、観光、防災といったソフト面のまちづくりを行っている。

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北品川橋

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立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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