語るを聞く

東上野の工務店「ゆくい堂」がつくる緑あふれる本屋「ROUTE BOOKS」

「灯台もと暮らし」編集部は2016年7月現在、東上野にあるシェアオフィスを拠点にしています。上野というと上野公園やアメ横が有名ですが、オフィスはその反対側にあり、周りには閑静な住宅街がほとんどです。

そんな東上野に、古いメッキ工場をリノベーションした「ROUTE89 BLDG.」があります。ROUTE89 BLDG.をつくったのは、その1階に事務所を構える工務店の「ゆくい堂」。

ROUTE89 BLDG.の4階には、ゆくい堂の手がける書店「ROUTE BOOKS」があります。ゆくい堂として本屋をつくることは、はじめから計画されていたわけではなく、ROUTE89 BLDG.をつくっていく過程で思いついたのだそうです。

東上野で過ごしながら、「本屋が少なくて悲しいなぁ」と感じていたもとくら編集部。さらには、いつか編集部もオリジナルの場所を持ちたいという想いを持っていたことから、まるで「先輩に話を聞きたい!」とでも言うかのように、取材を申し込みました。

ROUTE BOOKSの看板

ROUTE BOOKSで語る丸野信次郎さん

ゆくい堂代表の丸野さんは語ります。「最初はシェアオフィスにしようと思っていたんですよ。本だと、儲かるわけはない。それでも本屋にしたかったんです。ゆっくり過ごせる場所になればいいなぁと思ってオープンしました。今ではお子さま連れで来てくれるお客さまもいらっしゃいますよ」

最初から立てた計画に忠実に動くのではなく、壁や床を剥がした裏に見せたい素材があったり、発見があったりすると、それをもとにリフォームを進めていくのが、ゆくい堂の流儀。まだまだ使えるのに捨てられたり、廃材として使われなくなってしまったりした素材に新たな命を吹き込むのが、ゆくい堂の仕事です。

小さな書店ROUTE BOOKSが提案する「いろんな本のあり方」

ゆくい堂は本屋として、出版業界や本屋業界の善し悪しではなく、ROUTE BOOKSの尺度で「いろんな本のあり方」を提案しています。店内にある本は数百冊。1,000冊もありません。ビル群がぎゅうぎゅうに集まる東京の真ん中では珍しく、広々とした光の差し込む空間で、たっぷりの緑に囲まれ本を選べるのは、とても贅沢な感覚です。

編集部の立花が、「本屋さんが少ない東上野に、ROUTE BOOKSができて嬉しかったです」とお伝えすると「本屋ができたと思ったら、1,000冊も置いていなくて驚いたでしょう?」と丸野さんは笑います。

ROUTE BOOKSに並んだ本

ROUTE BOOKSでは、何度かイベントも開催されています。ある方は、ご自身の本の出版記念イベントを開催し、カレーを振る舞ったそうです。これも「とりあえずキッチンをつくっておいたからできた」という偶然の産物。

そもそもイベントスペースを用意するのではなく、ROUTE BOOKSという、人が集まってつながれる場を用意したからこそ、その空間に引き寄せられたイベント企画が集まってくるんだとか。

ROUTE89 BLDG.に仲間を募ろうと考えたときに、丸野さんが真っ先に声をかけたのが2階にある「ユナイテッドフラワーズ」。ユナイテッドフラワーズの手によって、ROUTE BOOKSはたくさんの緑に溢れています。

ROUTE BOOKSの店内の緑

ROUTE BOOKSではコーヒーも楽しめる

そして、取材の日、コーヒーを淹れてくれたのは、サイコさん。これまでどういったお仕事をされていたんですか?と訊くと、「フリーのブロガーみたいな仕事をしていました」と教えていただきました。個人でブログを運営しながら、そのブログを通じて、不動産販売を行っていた文才の持ち主です。

カフェは、常時2種類のコーヒーと手づくりのお菓子を楽しめる充実ぶり。店内にはカフェスペースが点在しており、コーヒーを飲みながらひと休みしている方もたくさんいます。

ROUTE BOOKSの店内

本好きが趣味で始めた本屋ではなく、工務店がつくった本のある空間

丸野さんはもともと大の本好きというわけではありません。しかし、「ものつくり」のゆくい堂として、つくり手への敬意があります。

「つくっている人たちのメッセージがきちんと届くような場所にして、きちんと発信していきたいと思っています。本や雑誌はもちろん、置いている雑貨や、陶器の作家さんにはきちんと話を聞いて、置かせて欲しいとお伝えしています。人気の作家さんもいるんですよ」

選書は、東京都文京区千駄木(せんだぎ)にある書店「往来堂書店」さんが担当されています。入ってすぐの書棚には、最近仕入れた雑誌や、ゆくい堂のものつくりの考え方と重なる“産地直送”のリトルプレスが並びます。

「出版社がダイレクトに申し込んできたり、取次を通さないでものつくりをしているひとたちが、ゆくい堂のコンセプトやROUTE BOOKSの雰囲気を気に入って声をかけてくれたりすることもあります。ただ、僕らはそこだけにこだわる必要もないと考えていて、本当にいい本はリトルプレスじゃなくても置きたいと考えています」

本や雑誌、リトルプレスだけではなく、陶器や、大工さんのハンドメイドによる雑貨、コーヒーを買うこともできる空間は、「ものつくり」の会社であるゆくい堂だからこそつくりあげられる場所。

「産地直送の穫れたて野菜のように、本当にいいと思えるものを自分たちの手で届けたい」というゆくい堂の感挙げ方が具現化された空間が、ROUTE89 BLDG.であり、ROUTE BOOKSなのでしょう。

ROUTE BOOKSのタグ

このお店のこと

ROUTE BOOKS
住所:東京都台東区東上野4-13-9 ROUTE89 BLDG.4F
電話番号:03-5830-2666
営業時間:12:00~19:00
定休日:水曜日
公式サイトはこちら

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探求者

くいしん

編集者。1985年生まれ、神奈川県小田原市出身。→ さらに詳しく見る

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