(※小泉さんは、現在は本屋プラグの運営に一切関わっておりません。2018年9月24日追記)

和歌山市内にある、本屋「プラグ」。

今回お話をうかがったのは、小泉博史さん。

もともとは2014年にキッチン付きシェアスペースとしてオープンし、貸し切りでの利用や、イベント開催を中心に使用されてきたプラグ。2016年は約150回のイベントが開催され、同年の客数は5,000人を超えたそうです。

プラグ外観1

外観2

プラグに並ぶ本たち

本屋になったのは、まだまだ最近。2017年3月のこと。店主である三木早也佳さんと一緒に2015年10月から書籍やリトルプレスの販売を始め、クラウドファンディングで資金調達を行い、本屋としてリニューアルオープンして今に至ります。

「本屋やイベント、和歌山への想いを聞こう」と臨んだ取材でしたが、小泉さんは「好奇心を発掘していくことが人生のテーマ」と語ります。

好奇心が、どのように本屋やイベントとつながるのだろう?

最初はよくわかりませんでしたが、小泉さんのお話を聞けば聞くほど興味深いそのつながりと小泉さんがプラグをやる理由に引き込まれていき、じつは、取材時間は4時間を超えていました……。

長時間にわたる取材の中で語られたお話の中から、厳選したエピソードをお届けします。

アイコンサムネイル

小泉 博史(こいずみ ひろし)

1981年、埼玉県川口市生まれ。京都大学中退。大学時代は京都で学生運動を経験。中学からの親友の誘いと、年始に引いたおみくじの「西の方よし」を信じて2010年、和歌山市に移住。その親友を含めた数名の仲間と一緒に2013年からコワーキングスペースやシェアオフィスなどの事業を始める。他に和歌山経済新聞、和歌山移住計画としての取り組みも行っている。

すべてはコワーキングスペースから始まった

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── 本屋プラグは、最初から本屋さんだったわけではなくて、スタート時は「シェアキッチン」というコンセプトだったという認識でよいでしょうか?

小泉 いえ、僕らは最初、すごく小さいコワーキングスペースを始めたんです。理想的なコワーキングスペースって、3、40坪で会議もできるし、イベントもできる、みたいな場所。ただ、僕らが最初につくった場所は、ここなんですけど、10坪くらいで。

そうすると、面積がそもそも足りないと感じて、拡張したくなりました。イベントをする場所が欲しいというところからスタートしているんです。「ビルの一階にキッチン付きのイベントスペースをつくりたいね」ということで、当時お世話になっていた会社に出資をお願いして“シェアキッチン”をつくったのが2014年です。

つまり、スタートが本屋じゃなくて、ひとが集まる場があって、そこからコンテンツを拡張していきたくなったという順番なんです。

コワーキングスペースの数人のメンバーが集まって独立して起業しますというときは、新しいオフィスをどうしようかなと思って、じゃあうちでもうひとつシェアオフィスをやるのでそこに入ってもらうという感じでシェアオフィス事業を新たにスタートさせたりとか。

情報発信やりたいというメンバーがいたら、和歌山経済新聞をやったりとか。誰かの要望がまずあって、事業をつくるという順番です。

最初につくった本屋プラグの2階であるコワーキングスペースで話を聞いた
最初につくった本屋プラグの2階であるコワーキングスペースで話を聞いた

扱っているのは、興味関心

小泉 僕らは、どういう事業が後か先かはあまりこだわっていません。何をやるにも関わらず、扱っているのは「ひとの興味」なんです。興味関心。

── 興味関心、ですか?

小泉 興味関心。好奇心ですね。僕は、ひとが何かを知りたいと思う気持ちがすごく大事だなと考えていて。好奇心を発掘していくことが、僕の人生のテーマなんです。

── 好奇心を発掘していくと、社会や小泉さんに何が起こるんですか?

小泉 地方都市に住んでいると、どうしても新しい文化に出会いづらいです。

逆に、地方だからこそただの消費じゃなくて、生産に向かうというのもあって。「誰もやっていないから、自分でやるしかない」という話がそれですね。

消費ができないことって制約でもあるし、地方のおもしろさでもある。

和歌山にはいい感じに余白があるなって思うんですよ。必死に働かなくても、生きていける豊かさがある。それは実家暮らしのひとが多いのもあるかと思うんですけど。

「生活はある程度できる、時間もそれなりにある」ってなったときに、消費活動ができる場所は和歌山にあんまりないんです。だったら、生産活動って言ったら大げさですけど、自分の興味のあることを何か形にしてみることに時間を使えるようになったら、わりかし豊かに生きていけるんじゃないかと。

僕も東京に住んでたら町の案内なんかしていないだろうし。ここに住んでるから「和歌山県のことちょっと勉強しとこうかな」ってなる。いろんなひととそういう雰囲気をシェアしたいです。

そうやって、地方でも自分の興味関心をおもしろがっていくと、何か生まれたりする。

逆に、僕も引きこもりだった時期があるので思うんですけど、好奇心が枯渇している状態というのが、ひとが一番辛い状態だと思うんです。

小泉さん2

── 好奇心が枯渇している状態。

小泉 そうです。引きこもりではなくても、ふつうに会社に行って、仕事をして家に帰って、という生活を繰り返しているひとでも、好奇心が枯渇している状態に陥ってしまう可能性ってあって。心にポッカリと穴が空いたような状態。

「地方には仕事がない」と言うけど、それって、本当にないとは誰も思っていなくて、「おもしろい仕事がない=地元の仕事に好奇心を持てない」ということなんじゃないかなと思っています。

でもおもしろい仕事って、好奇心があれば、誰にでもつくれると思うんですよ。多くのひとがもっとたくさん好奇心を持つようになると、ひとの生活ってもっと豊かになるし、ユニークネスを発揮できるようになると思っているんです。

そのために本屋が必要だったし、イベントをやる必要があると思っています。

大学をドロップアウトして和歌山へ

── 「ひとの好奇心に対して、好奇心を持っている」というお話、もっと聞きたいところではあるのですが、それを紐解くために、小泉さんご自身のお話を聞いてもよいですか?

小泉 はい。僕は埼玉で生まれ育って、大学は京都大学に行きました。大学にいた頃は学生運動に関わっていたのですが、途中でドロップアウトして。そのあと数年間、引きこもりをしていたんですけど。

引きこもりをしていました

── 実家のある埼玉で、ですか?

小泉 埼玉です。そのあとは中学の同級生に誘われて少しずつアルバイトをするようになっていって、映像編集プロダクションの会社に勤めるようになりました。で、僕を引きこもりから引っ張り上げてくれたり、説教してくれたりしたその友人が結婚して、奥さんの地元である和歌山に移住することになったんです。それで、僕も一緒に和歌山に来ました。

── 仕事はあったんですか?

小泉 最初は軽い気持ちで和歌山に来たけれど、実際に和歌山の街を見て、その友人が手伝っているNPO団体の人に会って話をするうちに、和歌山で働くのもいいなと思えたんです。たぶんどこかで、NPOに憧れがあったんです。

大学時代にやっていた学生運動って、僕の場合は、叫ぶだけだったんです。自分が勉強するのと、訴えていくみたいなことが活動のベース。このアプローチでは何も変わらないって、どこかで気づいて。その点NPOは、今そこにある身近な課題を扱って、ひとつひとつ解決していく草の根の活動なので、やってみたいと思えたんです。

友人たちとプラグをやることに

くいしんと小泉さん

── そこからどういう流れでプラグをやることになったのでしょうか。

小泉 和歌山に来て、2年経った頃、僕はダブルワーク、トリプルワークという感じで、いくつかの仕事を掛け持ちしていました。

その頃、いくつかの仕事を同時にしている中で、友人たちとみんなでビルを借りて、シェアオフィスをつくったらおもしろいんじゃないかという話になって。

── それが、最初に話してもらったコワーキングスペースですか?

小泉 そうなんです。別々の仕事をしていても、みんなで集まって一緒に働けたらいいなぁって。それで、4人で会社を創業して。別に会社にしなくてもよかったんですけど。メンバーのひとりが、会社を創業する手続きをやってみたいっていう、手続きフェチだったんです(笑)。その会社の名義でここを借りて。事業はシェアオフィスをやる以外は特に何もなかったんですけど。

コワーキングスペースって名乗って、ここを2013年の6月にスタートしたのが今のプラグに通ずる事業の始まりです。

本屋プラグのある一階が、当時はスイッチっていうカフェだったんです。当時としては珍しい「文房具カフェ」という業態で。そこに集まってくるひとたちが、僕らのコミュニティのベースになっているんです。

でもそのカフェは2014年の4月に閉店することになって。そのタイミング、一階が空き店舗空き物件になるときに、僕らはその店が好きだったので、さみしいというのもあるし。なんとかなんないかなって思って、じゃあ自分たちで借りてなんかやるか!って前向きな気持ちでみんなで考えて。そのときに「シェアキッチン」として、お店を始めました。

シェアキッチンが、なぜ本屋「プラグ」になった?

キッチンに立つ小泉さんと三木早也佳さん
キッチンに立つ小泉さんと三木早也佳さん
メイン画像で小泉さんが読んでいる本。『みんなの映画100選』(オークラ出版)
メイン画像で小泉さんが読んでいる本。『みんなの映画100選』(オークラ出版)

── そのあとプラグは本屋になるわけですよね。

小泉 正直、「キッチン付きのイベントスペース」というのが近所のひとにわかってもらえなかったりして。自分たちのやってることと業態名とのミスマッチをだんだん感じ始めました。もうちょっとわかりやすい業態でみんなに伝わるお店になる必要があるなと思っていたタイミングで、当時、店内の小さな本棚の選書をしてくれていた三木(早也佳)さんに声をかけて、いっそ本屋にしてしまうことにしたんです。

その頃、自分の中でいろんなものがつながっていって。「イベントも本屋もやっていること一緒やん」みたいな気持ちになったんですね。イベントって、ひとの好奇心がひとつの形を成したものだと思うんですよ。それは、本という媒体であっても同じことだなと思って。

本があると、より深い学びに誘導できるんです。本は本で、実際に手に取るまでのハードルが高いという課題があって。本はとっつきにくいけど深い。イベントはとっつきやすいけど浅い。っていう、補い合う関係にあるんじゃないかなとふと思って。

だから、僕らがもうちょっと自分たちの好奇心に従って、いろんなものに対する知りたい気持ちを深めていくには、本というツールはすごい合ってるなと思いました。それで、本屋について調べていくと、これからの本屋さんっていうのは、本だけを扱ってるのじゃあかんみたいな話が、よくされていませんか?

── そうですね。僕らが本屋さんに取材させてもらう中でも、よく聞きます。

小泉 そういう状況で、僕らは逆方面から、つまりイベントを開催するスペースから本屋に接近しているということなんだなと気づいて。

「イベントだけじゃあかんな、本がいるな」って僕らは考えて。本は本で、本だけじゃあかんってなっている。じゃあ、どっちから接近しても、最終的には同じ形になると思うから、本屋のほうがみんな親しみやすい場所だろうから、本屋にしてみようって思えたんです。

三木さんは三木さんで、やりたい本屋の形があったので、僕がやりたい店の方向性と、三木さんがやりたい本屋のあり方を融合させた形を目指そうと思いました。

それで、MotionGalleryでクラウドファンディングをして、2017年3月にリニューアルオープンしました。

好奇心の源泉を探っていくことで、世界のことをもっと知りたい

「たとえばプロレスラーが」と話す小泉さん

小泉 たとえば、プロレスラーが政治家になること、よくあると思いませんか?

── ホントだ! 言われてみると、多いですね。

小泉 プロレスラーって、自分の団体をつくって、他の団体の選手と戦うわけじゃないですか。それって、政治で言うところの政党政治にすごく似ていますよね。それと関係あるんじゃないかなと仮説を立てて考えたりとか。

そうやって考えることによって、今よりももっと精密に世界を見られるようになったら、おもしろいんじゃないかなって僕は思うんです。いろんなひとの好奇心の源泉を探っていくことで、世界を知りたいんだと思います。

世界は知れば知るほどおもしろいし、ひとのユニークさも知れば知るほどおもしろい。それを僕もより深く知りたいし、いろんなひとと一緒に知っていきたい。そのために僕にとって必要なのが本屋だったり、イベントだったりするんです。

僕は、最初に和歌山に来た頃って、割りと身も心もボロボロだったんですよ。

引きこもっていたところからやっと社会に出て、でも初めてちゃんと働いた職場では人間関係に疲れてしまい、だから和歌山に来たという側面もあって。

来てみたら、いろんなひとに親切にしてもらったし、助けてもらったし、人間って温かいなって思えたし、余計なこと考えなくていい土地だなぁって思ったんですよ。それはさっきも言っていた、余白があるってことでもあると思うし。

僕は和歌山でそういう思いをさせてもらいながら、ちょっとずつ社会復帰させてもらいました。だから、本当のことを言うと和歌山はそうやって、社会復帰できる場所、社会復帰しやすい地域になったらいいなぁと思っています。

僕は、ひとの好奇心に対する好奇心が強いんです。ただ僕自身は、人生を謳歌しているだけなんですよ。ひとって、一人ひとり、めちゃくちゃユニークなんですよ。そのユニークさって何かと言うと、僕は、「そのひとが何に好奇心を向けているか」だと考えたんですね。

何に好奇心を向けているかがひとをつくって、何らかの仕事とか創作とか社会活動につながっていくんです。どんなことをやっていても、もともとはひとつの好奇心だったはずなんです。だから、その好奇心のことを、僕は知りたいって考えています。

取材後

文/くいしん
写真/タクロコマ

(この記事は、和歌山県移住プロモーションの一環として株式会社ココロマチと協働で製作する記事広告コンテンツです)