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【あんぱん】「メイカセブン」の薄皮あんぱんは“アンバランス”が売り

あんぱんと言えば、包餡(ほうあん)されたあんこが魅力だと言う方は少なくないでしょう。そんな方は一度「メイカセブン」の薄皮あんぱんを食べてみてはいかがでしょうか。

メイカセブン

お店の外からも見えるようになっている「薄皮あんぱん」の文字。どれどれ、と入ってみたくなる「メイカセブン」は都営新宿線大島駅から降りてすぐのところにある、商店街の一角にあります。

地域のコミュニティにもなっている地元のパン屋

お店の中にはパンが並んだ陳列棚、洋菓子が売られているショーケースと、奥に飲食ができる喫茶スペースが広がっています。テーブルとイスに座って、地元の方々と思われるおばさまたちが、井戸端会議に花を咲かせていました。

メイカセブン

もともと呉服屋さんだったんですよ、と教えてくださったのは、メイカセブンの現在のご主人の奥さま。開店したのは50年以上前でしたが、戦争や火事のために呉服店を続けていくことが大変になってしまいました。そこで先代のご主人が、修行させてもらっていた「カトレア」さんというパンさんの元の店名の「メイカドウ」から名前をもらい、7丁目という立地と合わせて「メイカセブン」が誕生したのだそうです。

メイカセブン
店内の様子

商店街に面していて、更に喫茶スペースもあるということも手伝って、普段は地元の方々の憩いの場としても大切にされています。

「常連さんも多いので、ちょっと来ないと心配になったりしますね。コミュニティとして使ってくださっている方が多いです。あんぱん自体も、ファンの方が全国に居てくださって、東京はもちろん地方からネットや宅配で取り寄せてくださる方も多いです。」

工夫しながら楽しむあんぱん

メイカセブンのあんぱんには、いくつか種類があり、普通のあんぱんのこしあんとつぶあん、そして薄皮あんぱんの粒あんとこしあんです。薄皮あんぱんに関しては、あんこの量がとても多いのでしっかりとした固めのあんこを、金沢のあんこ屋さんで炊いてもらっているそうです。

メイカセブン,薄皮あんぱん
薄皮あんぱんの粒あん。表記は「おぐらあん」となっている。

お店の看板商品である薄皮あんぱん。あんこ好きの根強いファンも多く、その食べ方は従来のあんぱんにひと工夫加えることで更に楽しめるといいます。

「お客さんに教えていただいた食べ方が、たくさんあるんです。例えば、普通に手で持って食べるのではなく、ようかんみたいに4分の1サイズに切って食べたり、輪切りにしたり、半分はあんぱんとして食べて、もう半分はおしるこにしたり。6分の1サイズにカットして、天ぷら粉をつけて揚げまんじゅうみたいにして食べるという方もいらっしゃいましたね。

それから、夏はあんぱんってあまり出ないんですが、冷やして食べると水ようかんみたいな感覚で食べられるという方もいました。」

メイカセブン,薄皮あんぱん
薄皮あんぱんのこしあん。黒ごまがまぶしてある。

手に持つと、ずっしりと感じるパンの重み。食べる前からあんこの存在感が伝わってきます。ぱかっとあんぱんを開くと、もはやパン生地がかすむくらいのあんこの量。ぎっしり、という言葉では不十分なくらい、あんこがいっぱいです。けれどあんこが甘すぎないため、その量を感じさせません。

薄皮あんぱんにまつわるストーリーを、お客様がそれぞれ持っている

奥さまに薄皮あんぱんが生まれた理由も伺ってみると、やはりヒントはお客様の声にあったようです。

「昔、店頭でこっぺぱんの販売をしていたんですが、お好みであんこやピーナッツなど、トッピングを選べるようにしていました。ある日、あんこを選んだお客様で『そんなに多く付けなくていいわよ』とおっしゃった方がいて、その次に並んでいた方が『前の人の分までつけて』とお願いしたそうです。その時に、多くつけると喜ばれるんだということを主人が感じたらしくて。下町人情って言うんですかね、お客さんに喜んでもらいたいっていう気持ちであんこを増やしていったのが始まりです。」

メイカセブン,薄皮あんぱん
皮は1mmから3mmほど

店内の喫茶スペースしかり、薄皮あんぱんの誕生の理由しかり、とてもお客様と近い雰囲気が漂うメイカセブン。毎日パンを作り続けるなかで、お客様の声に支えられることは多いと言います。

「暑かったり寒かったりする中、わざわざウチのあんぱんを目指して来てくださるのはとてもうれしいですね。ある時は、若いOLの方が薄皮あんぱんを商談に持っていったら、相手側の社長さんがあんこ好きで商談がうまくいったという話を聞いたことがあります。ラッキーアイテムとして、メイカセブンのあんぱんが使われるというのも、おもしろいなと思いました。

うちは毎日作っているけど、買ってくださった方々は思いを感じてくださっているんだなと思うとうれしいですね。そうやってお客さんがストーリーをそれぞれ持っていらっしゃるっていうのもとても光栄ですし、だからこそがんばろうって思えるんです。」

メイカセブン

一言にあんぱん、と言っても、メイカセブンの薄皮あんぱんは、食べる前から好奇心をかきたてるあんぱんです。まずその重みに驚き、一口食べるとあんこの質量にもびっくり、と味だけでない楽しさがあり、飽きがきません。

「ウチの薄皮あんぱんの良さはアンバランスなことだと思っています。パンとあんこの量がアンバランス、ということですね。でもたっぷりした重みっていうのはサプライズでもあり、満足感も得られるものだと思います。あんぱんそのものは、気張らずに食べられる身近なものだと思うから、それにこれだけあんこがぎっしり入っていると、お得感もあるのかなって。

なにせアンバランスだから、賛否両論ありますけれど、なによりお客様が喜んでくださることが大事です。人と人の繋がりをこれからも大切にしながら、続けていきたいですね。」

薄皮あんぱんがこれだけ親しまれるのは、あんこの量が多いからというだけではなく、お客様の声に耳を傾け、喜んでもらいたいという気持ちを最優先に作っているからなのかもしれません。あんぱんのことはもちろん、お客様の話をするときにとてもうれしそうな奥さまの笑顔が印象的でした。これからも、メイカセブンの薄皮あんぱんは、たくさんのお客様に驚きと幸せを届け続けてくれることでしょう。

メイカセブン,薄皮あんぱん

お店の情報

住所:東京都江東区大島7-2-1
電話番号:03-3681-8814
営業時間:火曜日~金曜日 9:30~20:30、土日8:30~20:30
定休日:月曜日
参考価格:薄皮あんぱん こしあん、粒あんともに1個185円(税込)

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探求者

立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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