2016年12月から11月半ばまでアイルランドに滞在し、その後はヨーロッパをゆっくり旅した一級建築士、ライター、建築写真家のタナカユウキさん。家具に惹かれて訪れたフィンランドでは「日本で北欧デザインが好まれる理由」が見えてきたそうです。

引越しや模様替えのために家具を買おうというとき、まず気になるのは北欧の家具でした。

インテリアの参考に手に取る本は、北欧建築家の手がけた住宅が並ぶ一冊。

北欧の家具が好きであることから滞在を決めたフィンランドでは、上手く言葉にできなかった「なぜ北欧で生まれたデザインが好きなのか」の理由が見えてきた気がします。

冬の期間が長く室内で過ごす時間が多くなることから、北欧では家具のデザインにこだわるようになったというのは有名な話かもしれません。

椅子であれば、触れた手が心地よく滑るよう丸みを帯びていたり、どんよりした天気と憂鬱な気分に彩りをもたらすような色味の張り地が使われるように。

実際にフィンランドを訪れて驚いたのは、街のいたるところで良質なデザインの家具が使われていたことでした。

田舎町の小さな図書館の天井に目をやれば、名作といわれる照明が静かに吊り下がっていたり。

ひと息つくために入ったカフェで腰掛けた椅子をよく見れば、有名な建築家が手がけたものだったり。

小さな頃から、街中に溶け込む良質なものに触れていく。時が経っても、手入れを繰り返しながら同じものを愛していく。

その価値観が、僕は好きだなあと感じました。

シンプルで流行り廃りのない工業製品的な美しさと、愛着を持って接したくなる工芸品的な可愛らしさが共存している北欧のデザイン。

じつは日本のデザインにも、北欧のそれに近い考え方が息づいています。

戦後の日本では、資源の少ない状況で効率的に生産できる生活用品が普及するのと同時に、気持ちが明るくなるような暮らしの豊かさも求められました。

ゆえに当時のデザインには、少ない部品と工程で組み立てられる簡素な美しさがある一方で、やわらかな曲線や花柄があしらわれるなど暮らしに彩りを添える可愛らしさが共存しています。

北欧と日本。

同時期にデザイン業界が発展した2つの場所では、お互いにデザイン手法を参考にし合ったという事例があることからも、日本で北欧デザインが好まれる理由が見えてきます。

場所は遠いけれど感性は近い、北欧と日本。

北欧生まれのデザインが魅力的に見えるのは、その感性の近さゆえかもしれません。

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