語るを聞く

鎌倉の古書店ブックスモブロ店主が語る、1950年代の『暮しの手帖』を今また読むべき理由

Webの媒体として日々邁進しているもとくら編集部ですが、みんな紙の本が大好きです。

そこで、紙の本が好きな人に知ってほしい、訪れるだけ楽しくなれる本屋さんを紹介します。今回お伺いしたのは、個性的な本と出会える鎌倉のブックスモブロ(books moblo)。店主の荘田賢介さんにお話をうかがいました。

本の森で宝を探そう

店名のブックスモブロとは、本の森で宝を探したり、迷ったりしてほしいという思いから「もり(森)」と「リブロ(本)」を掛けあわせた名前だそうです。

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「今、読みたい本がないと思っている人にも、本との出会いを楽しんでほしい」と荘田さん。電子書籍を探す時には、自分の知っているものを検索したり、音楽や食など、自分の興味のあることに付随したものがおすすめされたりしますから、どうしてもその人の手の届く範囲内の本との出会いになってしまいます。

けれど本屋では、時にはタイトルだけで「なんだこれ?」とびっくりするような本との出会いを楽しめます。

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「たとえばシャボテンという本。サボテンではなくて、シャボテン。魚の鮭をシャケと言うように、サボテンとシャボテンと言ってもいいんです。この本を見た時に、心が震えました。なるほど……!って。ふふって笑えますよね。」

そういう小さな発見の場をつくるため、来てくれるお客さんが笑ったりびっくりしたりする姿をイメージしながら、本を仕入れています。

また、本との出会いを楽しむ仕掛けは、これにとどまりません。「女子って大変!」「男子だって大変!!」「鳥肌本」など、どんな本なのか興味をそそる、にやけてしまうような本棚のカテゴリ分けもブックスモブロの魅力です。

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暮しの手帖を読むと、人とのコミュニケーションの様子がわかる

続いて、これからの暮らしを考えるうえで、今また読みかえしたい本を教えてもらいました。『暮しの手帖』です。ご存知の方も多いはず。本棚には、1950年代あたりに発刊された『暮しの手帖』がズラリと並んでいます。

暮らしの手帖

この雑誌を読むべき理由は、時代は変わり、機械や文明はより便利なものに変化していくけれど、人とのコミュニケーションにおける考え方や手法はあまり変わらないので、学ぶことがたくさんあるからだそうです。

「今はスマホでLINEやTwitterをするのと同じように、昔は雑誌の最後ページの方に”文通求む”、”お手紙ください”という欄がありました。中でも特に『暮しの手帖』は、人とのコミュニケーションがよく見えるので、今もう一度読みたい雑誌じゃないかな。

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冒頭のページには、封筒に入った編集部からの手紙が。作り手と読者、そして読者間のコミュニケーションが本を通じて行われていたことが確かによくわかります。

こうやって本を愛でる書店員さんに一つひとつ本を紹介してもらうと、過去の本でも色褪せない魅力がひしひしと伝わってきます。1950年代にもなると、もとくら編集部は誰も生まれていませんけれど、むしろ知らないことだから新しく感じてしまうところもありました。

女性が古本の世界を変えつつある

今回取材をする下調べから実際に来てみても、本屋全体の雰囲気や工夫の施された本棚、ポップで個性的な本のチョイスが女性的な印象を受けました。そこで失礼を承知の上で、「女性が店主をしていると思って来るお客さんはいないんですか?」と尋ねました。すると、「そう言われるのはじめてだけど、嬉しい」との言葉が。なんでも荘田さん、古本の世界を変えつつあるのは女性だと考えているからだそうです。

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「古本という古臭いものを、レトロかわいいというポジティブな言葉に置き換えて言い始めたのは女性です。これはおじさんにはなかなかない発想だと思います。かわいいが入口になって、女性にも古書の魅力を楽しんでもらいたいですね。」

さきほど紹介したシャボテンなんか「レトロかわいい!」って女性が言っているのを想像できる気がします。よく見ると、フォントがかわいい。レトロかわいい! そう思いませんか?

本を買うとは、自分の時間をつくることにお金を払うこと

さいごに、荘田さんの考える本の魅力について伺うと「本を買うとは、自分の時間をつくることにお金を払うこと」とのこと。

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サラリーマン時代の荘田さんは、オフタイムが欲しくて、仕事終わりにふらりと本屋さんに立ち寄っていたそうです。本は時間にゆとりがないと読めません。生活していくためにも必要ありません。でも逆に言えば、人生の絶妙なスパイスになります。

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「これは聞いた話なんですが、昔男が狩りをする時代に、ひとりだけどうしても狩りが苦手な男がいました。狩りの足を引っ張るので、彼は村に残っているように言われます。そこで彼は、自分ができることは何かと考え、狩りから帰ってきた男たちに酒を振るまい、自分の歌で労をねぎらったそうです。それでいい。食べることに必要でなくても、なんだか暮らしを豊かにしてくれる存在。それが本だと思います。

人は、知らず知らずにうちに、ゆとりを欲しているのかもしれせん。これも人が本を好きになり、本の森に迷う理由のひとつなのかもしれませんね。

お店の情報

ブックスモブロ(books moblo)
住所:神奈川県鎌倉市大町1-1-12 WALK大町Ⅱ 2F-D
最寄り駅:JR鎌倉駅 東口より徒歩5分
電話:0467-67-8444
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月曜日(祝日営業)
e-mail:info@moblo.ocnk.net
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探求者

小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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