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【リトルプレス】美容文藝誌「髪とアタシ」美容師として生きる素晴らしさをもう一度伝えたい

突然ですが、美容師という職業について考えたことはありますか? いくら時代が変わっても、昔と変わらずリアルの場でハサミと手を用いてヒトの髪を切る美容師という生き方。

2013年に創刊した美容文藝誌「髪とアタシ」は、そんな美容師の生き方や働き方に焦点を当てた本です。そこには、最先端のサロン技術やサービス、ノウハウなどは載っていません。知ることができるのは、美容師としての想い、笑顔、そこにある決意。

髪をキーワードに、人生を描く「髪とアタシ」は、美容師でなくても楽しめる新しい読み物です。

アイデンティティを触発する美容師のための文藝誌

髪とアタシに載っている女性の美容師さん
画像:「髪とアタシ」創刊号より引用

「髪とアタシ」を作っているのは元美容師、元美容雑誌編集者のミネシンゴさんという男性です。

2013年11月にクラウドファンディングのプロジェクト「アイデンティティを触発する、美容師のための美容文藝誌『髪とアタシ』創刊。」を立ち上げ、見事目標金額を達成。

「オモシロキ美容師」の存在を一人でも多くの人に伝えたいという想いで2013年12月に創刊号を発売しました。

2014年9月発売の続く第2刊の特集は「拡張する美容師」。東京、神戸、沖縄、宮城、京都……さまざまな場所に取材に行き、日本各地に散らばる美容師の生き方を記事にし続けています。

※2015年7月に第3刊を発売予定。

「オモシロキ美容師」とは?

ここで言われる「オモシロキ美容師」とは一体どんな人のことを指すのでしょう?

ミネシンゴさんは「難しいよね」と少し考えてから、「好きを突き詰めている人」と答えます。

「内装業者を一切使わずに、すべて自分でお店をつくる人や、毎日お客さまのヘアスタイルを撮影して多くの作品を残す人、70歳を過ぎて新しいお店をつくる人や、編み込みを追求している人。そういうことを本当に好きでやっているという人を、僕はすごくオモシロイと思っています。」

月に10日間だけ沖縄県渡名喜島に移住して美容師をする人
画像:「髪とアタシ」第二刊「特集:拡張する美容師」より引用

「例えば第2刊の特集『拡張する美容師』には、1ヶ月のうち10日間だけ沖縄県の渡名喜島に移住して美容師の仕事をする人の記事が載っています。

その人は茨城県在住なんですが、わざわざ遠い沖縄の地まで足を運んで美容師をやる理由って、その人が本当にやりたいと思っているからということと、島の人たちから求められているからということ。たくさんのお金を生めるワケでもないし、時間もかかる。でもそれを突き詰めてやっているからオモシロイと思えるんです。

美容師としてのアイデンティティをきちんと持っていて、誰にああだこうだ言われても、やりたいことをちゃんとやっている人。それが僕の中の『オモシロキ美容師』ですね。」

「髪とアタシ」が目指すもの

本作りを通して実現したいことをミネシンゴさんに聞いてみました。

「すごく大きなことを言ってしまうと、世の中の人たちが美容師に対して抱いている、社会的地位の低さだとか、結婚できなさそうとか、モテそうでモテないとか……そういったイメージを払拭したいですよね。」

「髪とアタシ」編集長のミネシンゴさん
「髪とアタシ」編集長のミネシンゴさん

「あとは、学校教育。美容師になるには国家資格が必要なんですが、専門学校が資格を取るためだけの場所になってしまっている。そうではなくて、その場所で美容師の生き方、働き方というものを知ってもらって、卒業後も自由に働けるような、そんな学びの場ができたらなって思っています。

美容師って、すごい職業だと僕は思うんですよね。ハサミと技術さえあれば、どこへだって行ける。英語と中国語が話せれば、どこも怖くなくなるし、言語に自信がなくても笑顔と技術で海を超える人を何人も知っています。日本国内であればなおさらです。言葉が通じるんだから、それこそどこへだって行けますからね。

美容師って、離職率がとても高いんです。好きで始めた仕事のはずなのに、離職してしまうってとてももったいない。

この本を通して、美容師として生きるオモシロさを感じてもらって、同じ価値観を持った美容師同士がつながって。そして最終的には美容師の離職率を下げることができるような、そんな循環が作れたらいいなと思っています。」

髪型が人生を変えることもある

ストレートの髪や、日に透ける茶色の髪、今まで一緒に過ごしてきた長い髪とサヨナラして、ショートヘアで生きていくアタシ……。ある人にとって髪型は、どんなブランド物のバッグよりも靴よりも「ほしいもの」になり得る存在です。

女子中学生が、人生ではじめて縮毛矯正をかけに緊張した面持ちでやって来たり、体調を崩して入院していた常連さんが、外出許可が取れたタイミングでわざわざ指名してシャンプーをしてもらいに来たり……言葉を多く交わさなくとも、美容院では様々な人の人生の大切な一瞬が交差しているようです。

「髪とアタシ」2冊
左:創刊号、右:第二刊

その一瞬に立ち会う美容師の生き様が垣間見れる本「髪とアタシ」は、美容師はもちろん、美容師を目指す人、また生き方を考えたいすべての人におすすめしたい本です。髪にまつわる仕事をする人へのプレゼントにもいいかもしれません。

手に入るのは、オンラインショップと日本全国にある50ヶ所の書店。これからは、50ヶ所の美容院でも購入できるようにしていきたいということですが、ミネシンゴさんは「どこでも手に入る本にするつもりはない」と言います。

今の私を変えるため、お気に入りの美容院を目指して行くように、わざわざ買いに行く「会いに行く本」。

美容文藝誌「髪とアタシ」を、あなたも一度手にとってみませんか。

(トップ画像提供:合同会社アタシ社)

お話を伺った人

ミネシンゴさん

ミネ シンゴ
東京で美容師→美容雑誌編集者→鎌倉で美容師→リクルート入社。美容ポータルサイトの企画営業。リクルート在籍中に美容文藝誌【髪とアタシ】創刊。フリーペーパーKAMAKURA副代表、kamakura FM82.8パーソナリティ。2015年4月から、逗子で夫婦出版社「アタシ社」設立。クラフトECサイト「iichi」編集長も務める。

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2015年5月、「合同会社アタシ社」サイトがオープンしました!

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探求者

伊佐 知美

旅するエッセイスト、フォトグラファー。1986年生まれ、新潟県出身。世界中を旅しながら取材・執筆・撮影をしています。→ さらに詳しく見る

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