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【フリーペーパー】「鶴と亀」イケてるじいちゃんばあちゃんならココにいるよ

おじいちゃんやおばあちゃんは、わたしたち若者から見たら人生の大先輩です。なんでも知っているし、教えてくれます。けれど、どこかぬけているところもあって天然っぷりを発揮するから守ってあげなきゃ、とも思います。

それぞれの目に見えるおじいちゃん、おばあちゃんの姿はちょっとずつ違うでしょうがフリーペーパー「鶴と亀」に登場する方々は、写真一枚に写っているだけなのに、今までの人生がマンガやアニメみたいになって立ち現れてくるよう。

鶴と亀

作っているのは長野県奥信濃に住む20代の小林兄弟。イケてるじいちゃんばあちゃんを、ポップに演出する達人で、おばあちゃん子の二人です。

イケてるじいちゃんばあちゃんを発信「鶴と亀」

「鶴と亀」は2013年に第壱号を発行したフリーペーパーです。その後、2014年3月に第弐号、2014年11月には第参号を発行しました。

鶴と亀

地方にいるイケてるじいちゃん、イケてるばあちゃんをスタイリッシュに発信。ここ地方でしか出来ないものを、ここ地方から発信。
地方はおもしろくない。もう、そんな時代じゃない。発信源は奥信濃。
「鶴と亀」公式HPより引用

作っている場所は小林兄弟の出身地である、長野県飯山市。新潟県都の県境に位置する雪深いエリアで、この一帯を奥信濃と言うそうです。冊子に併記された英語は、小林兄弟の次男、小林直博さん(以下、小林さん)の地元のご友人が担当し、印刷も地元で家族経営をしている印刷屋さんにお願いしているなど、完全ホームから全国へ届けています。

「おばあちゃん子」であることがおもしろさを生む

ことの始まりは、三年前のお正月。小林さんが実家に帰省したとき、お兄さんと「地元で何かおもしろいことができないか」と話したところから「鶴と亀」が生まれたそうです。

鶴と亀
おばあちゃんを囲む小林兄弟。直博さんは右側の男性。

「突発的に生まれたアイディアというわけではなくて、ずっと地元で何かをしたかったんです。兄貴は仕事で、俺は大学で2人とも関東に出てきていたんですけど、飯山は育った場所だからいずれは帰るつもりでした。そんな時に、二人共おばあちゃん子だっていうこととフリーペーパーが好きだったということが重なって、『じゃあじいちゃんばあちゃんが載ったフリーペーパーを作ろうぜ』となったんです。」

東京には、様々なテーマやコンセプトの雑誌、フリーペーパがたくさんあります。そんな中で、東京の人たちではなくて小林さんたちだからできる尖ったテーマを考えたとき、たどり着いたのが生まれ育った奥信濃の田舎と、おばあちゃんとの暮らしでした。

カメムシの話で盛り上がろう

地元には山と畑とじいちゃんばあちゃんしかいないと思って、東京に出てきたという小林さん。雑誌に載っているようなおしゃれなお店や流行の場所などに足を運びながらも、一人暮らしの家に帰ってふと食べたくなるのが、おばあちゃんお手製のポテトサラダや漬物でした。「漬物ジャンキー」と呼ばれる小林さんのおばあちゃんは、どんな方なのか聞いてみました。

「ばあちゃんのことはすごく尊敬します。近所の人達がお茶飲みの時間になると、みんなウチに来るんです。ばあちゃんの人柄的に、話しやすいんだろうなって思いますね。大和撫子でまじめだけど、天然なところもあって。元気なうちにいろんな話をしたいなって思っています。」

鶴と亀
小林さんのおばあちゃん。「鶴と亀」毎号に登場する。

よく、お年寄りの方は写真に撮られるのを嫌がります。けれど「鶴と亀」に出てくるおじいちゃんおばあちゃんは、みんなどこか自然体。それはやはり小林さんたちが、小さい頃からじいちゃんばあちゃんに囲まれて育てられてきた賜物のように感じます。

「撮影は確かにイヤがる人もいます。でも話しているとじいちゃんたちも俺たちが田舎育ちだって分かって、安心するみたいです。カメムシの話題で盛り上がったりするんですよね。小さい頃からうちの近所は高齢化が進んでいて、同い年の友達と遊ぶよりも近所のじいちゃんばあちゃんたちと話したり遊んでもらうことのほうが多かったんです。だからこそ生まれる親近感があるのかなって思いますね。」

若い人よりイキイキしているじいちゃんばあちゃんたち

今ではおじいちゃんやおばあちゃんと別々に暮らしていたり、離れて住んでいる家族も決して少なくありません。だからこそ「鶴と亀」で元気なお年寄りを見ると、彼らと楽しくおしゃべりできる小林さんたちが、少し羨ましくも感じられます。

東京で暮らしていると、お年寄りと身近に触れ合う機会が決して多くはありませんが、彼らから学べることはきっとたくさんあります。小林さんは、じいちゃんばあちゃんの魅力は、決して年の功だけではないと言います。

鶴と亀

「じいちゃんばあちゃんのスゴさっていうのは、生活力が高いところ。壊れたものもすぐ直しちゃうし、自分で野菜も作れる。それから、じいちゃんばあちゃんたちの服装ってすごくカッコイイなって思うんですよね。俺はストリートカルチャーが好きなんですけど、表参道とか原宿のファッションみたいな、ああいう作られたカッコよさじゃなくて、自然に柄のシャツにニット帽を被っていたりするでしょ。ゆるい感じで着てるあの雰囲気も、すごい好きですね。」

ふだんからいろいろなお年寄りを見ている小林さんに、将来どんなおじいちゃんになりたいかを伺いました。

「ばあちゃんたちは俺らよりも不自由過ぎる中で生きてきたんだなって痛感します。今はすごく便利でいろいろなことができるようになった分、自由な時代のように感じるけど、東京で見てきた若者よりもこっちで畑仕事とかしてるじいちゃんばあちゃんのほうが、よっぽど活き活きして幸せそうに見えるんですよね。俺があのくらいの歳になって、あんな顔して笑っていられるかなって考えちゃう時はあります。

じいちゃんばあちゃんみたいに、自分の好きなものを着て、好きな時に土いじって自然と関わっていく暮らしをしたいなって思いますね。」

鶴と亀

少子高齢化、という言葉が聞かれるようになって久しい昨今ですが、おじいちゃんおばあちゃんがたくさんいることは、悪いことでしょうか? 日本に活気がなくなっているのは、お年寄りが増えているからでしょうか? 生涯現役で、自分なりに筋の通った人生をマイペースに生きている方は、今でもたくさんいます。

片意地張らずに、好きにやればいい。そんなイイ感じに力の抜けたお年寄りたちのライフスタイルを、「鶴と亀」は教えてくれる気がします。

この本のこと

鶴と亀
価格:無料
販売エリア:全国約130ヵ所
発行部数:10,000部
企画・デザイン:鶴と亀編集部
取材・原稿:鶴と亀編集部
写真:鶴と亀編集部
公式サイト:鶴と亀Facebookページ

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探求者

立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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