語るを聞く

裏浅草の古民家「カフェつむぐり」理想の暮らしは多拠点居住と多仕事

東京の裏浅草で古民家「カフェつむぐり(以下、つむぐり)」を営む、店主の室伏将成さん、志保さんご夫婦は「多拠点居住」「多仕事」の暮らしを考えているそうです。

その最初の一歩となる「つむぐり」オープンまで、どんなプロセスを経て、どんな決断をしてきたのか? 今はどんな暮らしをしたいのか? お二人にざっくばらんに教えていただきました。

一生続けられる仕事を考えたい

カフェつむぐりの将成さん、志保さん
店主の室伏将成さん(左)、志保さん(右)

── 「つむぐり」ができる前のお二人の暮らしについて教えていただきたいです。

将成 もともと僕と妻は同じ会社で働いていて、僕はウェブマーケティング系の仕事をしていました。それまで何回か転職をしていて、外資系のIT企業やベンチャー企業などを経験しましたが、次にする仕事は「一生続けられる仕事を考えたい」と思いました。

会社を辞めてからは、興味があった農業やレストラン経営の勉強をしていました。当時これらを学んだ結論として、多拠点居住をして生きたいなと思ったんです。

ネットを利用して、場所を問わずに仕事ができる形ですが、僕が模索していたのは、都市も田舎でも、その地域内だからこそ成り立つ仕事です。複数の拠点でも持続する仕事の形が理想的かなあと。

室伏将成さん

── どうしてそういう考えに至ったのでしょうか。

将成 地域で暮らそうとすると、どっぷりその場所に浸からないと難しいことが多いじゃないですか。例えば農業をすると、基本的な課題は販路なんです。生産できるけど、売る場がない。それなら東京に人が集まるような場所をつくり、そこで地域の生産物が売れるようにしたい。

東京でものが売れるような場所をつくっておけば、地域で住みたい場所を見つけたときに、都市での売り場を提案できて地域に入って行きやすいかなあ、と考えています。まだこの仮説は検証できていなくて、その手前で躓つまずいていますけどね(笑)。

自分たちの田舎をつくろう

── 田舎の暮らしに興味がある理由について教えてください。

将成 僕の両親がふたりとも東京で、田舎がないんですよ

志保 『秘密のケンミン SHOW』を見ても楽しくない(笑)。

将成 「田舎がある」ことがうらやましくて、「じゃあ、つくればいいじゃん」というのが、多拠点居住したいと考える源ですね。

田園風景

── 将来的に地域で暮らすために都市で人が集まる場所ををつくっている、ということですね。カフェ自体は、ご夫婦で運営しようというのは決まっていたんですか?

将成 カフェをやるにあたって、彼女に手伝ってもらうつもりは全然ありませんでした。会社を辞めてから美大に通い始めたし、はじめは一緒にカフェをやろうと準備していた他の仲間がいたんです。ただ、本業が多忙になって途中離脱せざるを得なくなった経緯があり、彼女が力を貸してくれています。

志保 今も美大には通っていますが、もともと絵を描くことが好きだったので、メニュー表のイラストを全部描かせてもらっています。

── ……かわいい!

カフェつむぐりのメニュー表
志保さんのイラストが描かれたメニュー表は暖かみを感じる。

将成 イラストを見て、ぬくもりを感じてもらいたいなあって。「つむぐり」では季節ごとにメニューを少しずつ変えていくので、その都度イラストも変えていきたいな。

志保 文章も基本的に私が書いています。ゼロからつくるのはそんなに得意ではないですが、散らばっている材料を整理して形にするのは結構好き。

将成 理想は夫婦で各々の仕事をしていくスタイルがいいと思っています。人が集まり、ものが売れる場をつくることによって、彼女の仕事の場としても「つむぐり」が役立ったらいいなと思っています。

カフェつむぐりのライト

── 夫婦で一緒に仕事をすることならではの良さはありますか?

志保 「呼吸で分かる」のがいいですね。彼の考えていることが分かるから、すごく楽です。このお店をつくる過程から、今まで知らなかった彼の尊敬できるところ知れるのが、サラリーマン時代とは違うおもしろさでした。私が最初に、彼の尊敬できる部分を受け取れるから、それをどうやって来てくれる人たちに伝えたらいいかを考えます。

将成 「つむぐり」の暖かさとかやわらかさみたいなのは、たぶん僕ひとりでは成立しなかっただろうと思います。元々そうした雰囲気をつくることをコンセプトから思い描いていたものの、僕は細やかな配慮ができない人間なので、大いに補ってもらっています。

志保 価値観は同じだけど性格は逆なので、例えば私が気にしているけれど伝えきれていないことを、その場で言ってもらって方向修正できる良さはありますね。

所さんみたいに力の抜けた大人に

カフェつむぐりのカウンター席
カウンター席では、店主と気軽に話せる。

── 「複数の仕事を持つこと」「多拠点居住をして生きること」を目指しているなかで、課題はありますか?

将成 まずは、お店を軌道に乗せることですね。集客で不足しているところがあって、ジレンマを感じます。複数の仕事をはじめるにしても、「つむぐり」というインフラが成り立って実現できることです。お店の運営をもう少し集約化させて別の仕事をやりながら、日毎でバランスを取るような方法も考えています。

本当は、それぞれの仕事がなだらかに触れ合いながら、並走しているのが理想だと思っているんですけど、そんなに簡単ではなさそうです。

── 「つむぐり」という場所を活かして複数の仕事を平行できるといいと。

志保 私は美大に通いつつ、平日の午前中などのお客さんが少ない時間帯に、6/27から店内で「じょうろ」というサービス名でイメージコンサルタントの仕事を始めました。カラー診断や骨格を拝見して、職業やシーンに合わせた服装やヘアスタイル、立ち振舞いや話し方などをアドバイスする仕事です。

── 「つむぐり」を生活インフラとして生業もつくっていくということですね。

将成・志保 そうです。

── 直近のやりたいこととは別の、お二人が考える理想の暮らしを聞いてもいいですか?

将成 ほとんどの人が都市に集約されている状況で、そこに居続ける理由はあるのかな?と思っています。だったら具体的に貢献できることをつくって、都市に出て行くんじゃなくて、各地域に堂々と出て行きたい

志保 理想はね、日本も海外にもあちこちに家が欲しいと思っています(笑)。別荘じゃなくて旅行でもよくて、「まだ知らない楽しみ」を感じたいから。仕事も全部、遊びになったらいいですね。

私、所ジョージさんみたいに、力の抜けた大人になりたいなあ。あんなに楽しそうなんて、ずるいですよね。

将成 うちは所さんが接客してます(笑)。

このお店のこと

カフェつむぐり
住所:東京都台東区浅草5-26-8
営業時間:平日 13:00~20:00(LO 19:30)、土日祝 12:00~19:00(LO 18:30)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日火曜休み)
電話番号:03-6337-5869
公式サイトはこちら
公式Facebookページはこちら

お話をうかがった人

室伏 将成(むろふし まさなり)
データ解析、Webマーケティングの仕事を経て、街の魅力を作る個人店に強い関心を抱き、古民家を自らリノベーションした「カフェつむぐり」を始める。

室伏 志保(むろふし しほ)
つむぐりのにぎやか接客、イラスト担当。イメージコンサルタントとして個人の魅力を育てる「じょうろ」を店内にてスタート。

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探求者

小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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