『灯台もと暮らし』の【場所にとらわれない働き方】特集には、スポンサーがいます。
それが、「合同会社cocowa」代表の松本博樹さん。
もとくら編集部が初めて彼に出会ったのは、まだじつはメディアの構想が影も形もない、運営会社Waseiが立ち上がる前のこと。弊社代表の鳥井がまだ個人事業主だった時代に、彼と松本さんは「ブロガーの同志」として、知り合いました。
それから5年。松本さんが運営する『ノマド的節約術』を筆頭に、私たちはお仕事でご一緒させていただく時期を長く過ごしてきました。
株式会社Waseiの現在の姿がある理由の大きなひとつは、大げさではなく、松本さんが居てくれたからだと私たちは思っています。
そんな松本さんが、もとくらに登場するのはじつは初めて。スポンサーとしてではなく、もちろん【場所にとらわれない働き方】を実践する、プレイヤーとしてお話を伺います。
ブロガー界で時おり「神」と呼ばれるほどの松本さん。どんなことを考え、どんな場所で、どんな風に働いているのでしょう?
松本 博樹(まつもと ひろき)
1983年生まれ、神戸市在住。妻と2人の子どもとの4人暮らし。2011年5月に会社を退職、フリーランスに。2014年8月に法人化。現在は「合同会社cocowa」代表として、ウェブサイト『ノマド的節約術』や『OMIYA!』など、複数メディアの運営者として活動中。自分の人生を記事にするのが仕事で、働く場所は問わない。ブログメディア界ではトップレベルというか、トップだと噂されている。
(聞き手:伊佐知美)
メディアを運営して、毎日記事を書いています
── 松本さんの仕事内容について、教えてください。
松本博樹(以下、松本) 「合同会社cocowa」の代表として、複数のメディアを運営しています。
- お金にとらわれず、自由な生活を送りたいと願う方のための節約ブログ『ノマド的節約術』
- 日本各地のおみやげの情報を発信しているサイト『OMIYA!』
- 日本全国にあるゲストハウス、ユースホステルの一覧を探せる情報サイト『ふらっと』 など
もともとはエンジニアとして企業に勤務していて、その後独立。でも、独立したもののスキルや人脈はまったくなく(笑)。
『ノマド的節約術』は、私自身がお金に困ったことがきっかけで始まったサイトです。次の仕事のあてがない状況で独立して、注文住宅を建てようとしている中で、子供が産まれそうになっていた時がスタートでした。節約しないと、今後生き延びていくのが明らかに困難な状況だったので、節約しながら身につけたことや自分の考えをブログに残していくようになります。(引用:『ノマド的節約術』より
松本 独立当初、ぼくはすでに結婚していて、妻と、お腹にはもうすぐ産まれそうな子どもがいました。さらには注文住宅を神戸に建てようとしていて。
でも、やっぱり安定した仕事はない。
将来への見通しがないのに会社を辞めてしまったのは、「なんだかずっとモヤモヤしていたから」。会社に通って、先輩方の背中を見る中で、環境には恵まれていたけれど、「10年、20年後が想像できてしまうな」と。
そんな人生から、外れてみたかったんだと思います。
松本 幸い、インターネットやサイト制作は昔から好きで、専門学校時代からレビューサイトなどをつくって月に数千円〜1万円くらいのアフィリエイト収入を得る体験はしていました。
独立直後は、知人からウェブ制作やシステム開発の依頼をもらったり、カウチサーフィンをやってみたり、Airbnbのホストになったり、コワーキングスペースに通ってみたり。とにかく自分にできることに片っ端から手を付けていました。
その経験を、楽しみながら綴ったのがブログ『ノマド的節約術』です。このサイトが結果的にはたくさんの方に読んでいただけるまで成長して、ほかに仕事をしなくてもいいくらい、報酬のリターンも得られるようになりました。現在のぼくの手がける事業の中で、大黒柱のような存在のサイトです。
今では『ノマド的節約術』をはじめとして、冒頭で述べた通り複数のサイトを運営し、そのサイト運営の収入で生活しています。
── 具体的には、仕事内容は何になるのでしょう?
松本 とにかく記事をつくること。『ノマド的節約術』であれば、現状3,200記事ほどがストックされていますが、そのうち2,500記事程度はぼくが書いた記事です。
でも、昔の記事は今読むと微妙だなと思うことが多いから、今の自分ができる範囲で書き直します。それが記事の「メンテナンス」。
たとえば「検索ワードでたどりついてくれる人と、記事の内容がちょっと合っていないな」と思うものを修正したり、「クレジットカードや株主優待のサービス内容が更新されたな」と気がついたら、それに合わせて記事内容を更新したり。
ほかにはライターさんや編集者さんにお願いしている仕事も多いので、そのやりとりをすることも多いです。
── じゃあ、本当に仕事道具はMac1台だけ。
松本 はい。パソコンとスマホで仕事をしています。あとは、ぼくの人生経験が必要(笑)。生きてるだけで、ネタって本当にたくさん見つかるんで。
ぼくは移動するとき、移動先の交通手段って事前にほぼ調べないんですよ。「まぁ、行けばなんとかなるやろ」という感じで、何も調べずに行っています。でも、行けば「あぁこれがお得な移動手段か」って必ず分かりますよね。そしたら、それを書くだけです。それだったらすぐに書けますし。
誰かと会って話すだけでも、「すごいなぁ、知らんことってこんなにあるんやなぁ」と感じることが本当に多いです。同じように、それもひたすら記事に落とし込んでいきますね。
誰かに会うために、移動することも仕事のひとつ
人生どうなるかわからないもので、今は旅するのも仕事のうちの1つになっていて、楽しみながら仕事しながら旅しています。サイト名が「ノマド的節約術」ですが、今までは節約のほうばかりやってましたけど、最近はノマドしていることのほうが多いですね。「名は体を表す」という言葉がありますが、まさにその通りになってきているのが不思議なところです。(引用:『ノマド的節約術』より)。
松本 「仕事が何か」という話にも近くなる気がしますが。ひとと話したり旅をしたり、『OMIYA!』でいえば地方に行っておみやげを買うことも業務に含まれるから、そういう意味では365日仕事をしているともいえるかもしれないです。
── 私はよく「仕事をしているというよりも、『毎日全力で遊んでいます』」と表現します。
松本 語弊を恐れずに言うなら「遊んでいる感覚」にも近いかもしれないですね。
パソコンがあればできる仕事なので、作業場所も問わないですし。神戸の自宅で、朝起きた瞬間からパソコンに向かうこともあるし、カフェや、道端のベンチとか、ショッピングモールの椅子をお借りして、とか。
松本 旅先で仕事をするのも好きですよ。2017年でいえば年間138日間旅をしていました。
── たとえば、どんな場所へ?
松本 2017年は、大体こんな感じでした。
- 画像引用:年間138日旅するノマドワーカーの働き方とは?やってわかったメリット・デメリットと必要なお金の知識まとめ|ノマド的節約術
── 家を持たない私以上の、移動頻度……。これは、なぜでしょう? そもそもの移動の動機や、行き先の決定はどうやって? だって、どこでも仕事ができるのですから、ずっと家にいてもいいはずです。
松本 もともと引きこもりの体質なんですが(笑)、会社を辞めて独立してからすごく変わりました。
パソコンがあれば仕事は進むかもしれないけれど、とはいっても1人で仕事が完結できるわけじゃない。相手がいてこそ、の仕事ですから。「これは、ひとに会わないと、やっていけんなぁ」と思うようになったんです。
とくに2017年はその動きが加速しました。「そろそろ会いたいな」と感じるライターさんがいたら、その方が住んでいらっしゃる土地へ行ったり、「なんとなくだけど、お会いしたいな」と思う方がいらっしゃったら、アポだけ取って、とにかく飛んだり。
── 「どこか遠くへ行きたい」という欲求よりも「誰かに会いたい」から、移動する。
松本 国内の場合はとくにそうですね。それしかしていないです。
── 先日、うちの編集部の立花実咲の移住先の、北海道下川町に遊びに行ってくれていましたね。松本さんがお住いの神戸からだと、移動に半日以上かかる場所ですが……。
松本 滞在時間は正味1日だけでしたけど、実咲さんに会いたかったから、行きました。
松本さん @peter0906 が北海道下川町に来てくれたよー!手延べうどんの名店「みなみ家」さんでお昼ごはん食べました。女麺と呼ばれる、つるんとした喉越しのうどん。んまい。
松本さん、寒い中本当にありがとうございました! pic.twitter.com/Z267mHFYWZ— 立花実咲Misaki Tachibana (@misakichie19) 2017年10月13日
── 何かお仕事の収穫は、ありました?
松本 いや、うどんが超おいしかった(笑)。たまたまボードゲームのイベントがあったから、夜そこに参加させてもらって楽しかったですけれどね。下川町に同じく移住されていた若手の方々にも会えましたし。
── でも、それだけ。
松本 移動をするとき、会いたい人に会って話すこと以外の目的は持たないですね。
たとえば香川県在住のプロブロガー「ヨッセンス」運営者の「ヨス」さんとは、共通の友人を通じて、SNS上で知り合いました。
@peter0906 さん、香川に来ないかなー→ 「ノマド的節約術」ブロガー松本博樹さんとバレンタインデーに愛たっぷりのオフ会デートをしてきました http://t.co/saWKvB43Te @momonestyleさんから
— ヨス@2018年春に出版 (@yossense) 2015年3月3日
松本 Twitterで声をかけてもらって、それで本当に香川まで会いに行ったんですけど、その後意気投合。結果として仕事をすることになったり、いろんな人を紹介してもらったり、一緒にニュージーランドを旅したこともありました。そういえば、イケハヤさん(高知在住のプロブロガー・イケダハヤトさん)もヨスさんに紹介してもらいましたね。いろいろつながったので、本当に感謝しかないですけど。
でもあくまでもこれは結果論で、最初は「あ、なんか会った方がよさそうだな」という直感で動いただけでした。
どこでそういうつながりが生まれるか分かりませんから。下川町に行ったのも、将来どこでどうつながってくるか分からんから、そういうことをひたすら続けていってる感じですね。
── 松本さんは、ひととの縁をきちんと紡いでいらっしゃる印象があります。
松本 そうですか? でも、たしかに一度ひとに会ったところで、縁は別に生まれていないですからね。
── 2回、3回と会って。
松本 はい。1対1で顔を合わせて会って、それで初めてしっかり縁が育っていくんだと思っていま。1回すれ違うだけの人って、いっぱいいますから。
固定観念に縛られないために、時おり知らない世界を覗きに行こう
── 海外は、どうですか?
松本 海外は、国内ほど旅する頻度は高くないですが、昨年はヨーロッパ5カ国を周遊しながら仕事をしてみました。どこへ行くかも決めずに、とりあえずドイツのフランクフルト行きの航空券を予約して。
でも、これはどちらかというと「リセットの旅」だったかもしれないです。なんだか「忙しすぎるな」と感じたから、自分を見つめ直すために旅をしたようなもので……。
ヨーロッパ旅行、とりあえず最初の3泊は宿をとった。あとは流れるままに行こう。
— 松本 博樹 (@peter0906) 2017年8月16日
ハルシュタット、楽しんでます!
写真だとわかりにくいんですが、絶景です😊 pic.twitter.com/KpNFEhNeor— 松本 博樹 (@peter0906) 2017年9月7日
ヨーロッパに行きたいのは、凝り固まった価値観をまたぶっ壊しにいきたいから。
もっともっと柔軟な考え方ができるようになりたい。— 松本 博樹 (@peter0906) 2017年8月10日
── 海外旅行という「ハレの日」ではなく、自分と向き合う「ケの日々」のために渡航したんですね。
松本 はい。あと、ぼくは記事をゼロから書くのって移動中が1番捗るんですよ。3,000文字くらいの記事だったら、1時間あれば書けると思います。
新幹線や電車の中での作業が好きですが、飛行機も長めの時間制限(フライト時間)が確保できるから、なかなかいいですね。
── 私も移動中の作業は大好きです。とくに機内は基本的にオフラインだから思考を切り替えやすいし、松本さんがおっしゃる通り、フライトというちょうどよくまとまった時間制限もあるから、その中で書こうと努力できますよね。
松本 そうです。だから搭乗前に、搭乗口で参考資料となるサイトをタブでたくさん開いておいて。
── オフラインの機内でも、快適に作業できる環境を整えておく!
松本 そう! 同じですか? これを共感してくれる方は、あんまりいないですからね……。うれしいです(笑)。
ちょっと話が逸れるかもしれませんが、ぼくはできるだけ、何にも縛られたくないんです。契約にも、時間にも、場所にも、固定観念にも。
でも、日本にいると、どうしても日本の一般常識的なことに、気づかないうちに縛られてしまう気がしていて……。
それを、一個いっこ壊したいんです。自分の中の、知らないことや気づいていないことを自覚して、それを崩していきたいなと思っています。
たとえば、これはぼくにとって大きな変化だったんですが、2017年は「愛」や「家族」という面で、その固定観念から一歩抜け出せたんじゃないかなと感じる年でした。「普通じゃなくてもいいんだな」と思えたというか。「自分が納得できる生き方をすればいいんだ」と、心底思えたんですよね。
── そうなんですね。
松本 まぁ、けどそもそも会社員を辞めて、この仕事を始めた時点である意味世の中に見切りをつけていますから。
── !?
松本 この働き方は、やっぱり理解されがたい部分がまだまだ多いですから。「ブログで稼いでる」とか。たくさんのひとと話していても、「やっぱりぼく普通じゃないな」と思うことも多いですし。
── 松本さんは、とくにウェブ業界においてはみんなが目標とする方だと思うのですが、それでも……寂しいと感じる部分があるのですか?
松本 寂しいですよ。孤独感はずっとあります。
── ……その中で、松本さんを支えてくれているものはありますか?
松本 あんまり考えたことはないですけど。別に自分の方向性が、間違っているとは思っていないです。むしろ、こういう風に動いていったほうが安全やなと思ってますもん。安全というか、長い目で見てうまくいくやろなと感じているというか。
── なぜですか?
松本 だって、以前とくらべて世の中の動きがすごく早くなっているじゃないですか。だから、柔軟に対応していける方がいいやろなと。今の働き方を、もう7年くらい続けていますから。サイトをつくり始めてから数えたら、もう14年ほどです。
信じたことや、自分が今できることを続けていたら、途中で芽が出てきたりするので。それがひとつ掴めたら、またそれを横展開すればいいだけですし。そういうことの積み重ねで今があるので。
── 成功体験を積み重ねていく。
松本 そうそう、それです。その積み重ねしかないです。小さな成功体験の積み重ねだけ。それが自信になっています。めっちゃ些細なことでもいいんです。1日1記事書けただけでもプラスになってるから。その繰り返しです。間違っていないと思う。
好きなひととの関係性をどんどん深めていきたい
松本 昔は旅なんて、全然興味がなかったです。お金もなかったですし、そんなことよりも毎日の暮らしを成り立たせるのに精一杯。
でも、最近は本当に考え方が変わってきました。もうどんどん外に出ていきたい。ひとに会いたい。
今、仕事を一緒にしているひとで、鳥取県在住で鳥取のローカルWEBメディア『とっとりずむ』運営者の「さっけー」さんという男性がいます。
ぼくは彼がすごく好きなんですが、もともとは愛媛県松山市をふらっと旅したときに、ゲストハウスでたまたま出会ったひとでした。
当時の彼は、仕事を辞めて日本全国をぐるぐる旅していた時期。まだメディア運営で稼ぐという働き方も、ノマドというスタイルも、詳しく知らなかったらしいです。
── じつは私、松本さんに会ったあとのさっけーさんに、鳥取取材の際にお会いしたことがあるんです。すごくすごく、影響を受けているし、感謝しているとおっしゃっていました。ゲストハウスで松本さんに会ったことが、「とっとりずむ」立ち上げのきっかけのひとつになったそうですね。
松本さんとの出会いがあり、とっとりずむがスタートしました。そして、松本さんがいなければ、とっとりずむは途中で挫折してたかも知れません。
本当、感謝しかないですm(__)m https://t.co/UqbK0UcCYI
— さっけー@とっとりずむの人 (@Sake_yuta) 2017年6月21日
松本 僕だけの影響ではないと思いますけど、それはうれしいですね。ぼくも、さっけーさんに出会ったことがきっかけで、いろんな人と知り合うことが出来ました。そしてそこからまた、関係性が広がったと思っています。
だから、自分の中で感謝、お礼を伝えるという意味も込めて、じつは今『OMIYA!』のバナー広告を「とっとりずむ」に出させてもらっているんです。
松本 バナー出稿はテレビCMを出す感覚に似ています。いわゆるスポンサーみたいな感じでしょうか。だから、もちろん出稿する側としてこちらにもメリットがあるようにということも考えてはいますが、1番の理由は「さっけーさんが、好きだから」。お金じゃないところで助けてもらっている部分も大きいので。
広い意味では、この【場所にとらわれない働き方】のスポンサーになることも、『とっとりずむ』の例に似ているかもしれません。単純に企画に賛同したのもありますし、Wasei(もとくら運営企業)さんを応援する気持ちもある。
── (うう……ありがとうございます……)。
松本 お金って、持っていても将来どうなるか分からないじゃないですか。ある日突然、紙くずになるかもしれないし。そうなると、人と人の信用で食っていくしかないですから。そっちの方が大切やなって考えています。
「みんなと、もっと前に進みたい」
── 今、松本さんが1番やりたいことは何ですか?
松本 1番やりたいことは、好きなひとが集まってくれている、『OMIYA!』を大きく育てることだと思います。
ぼくは、それぞれのメディアに関わってくださっている方々を集めたFacebookグループを作成しているんですが、あたたかい感じを出したくて、名前の冠は「ファミリー」にしています。
そして、『OMIYA!ファミリー』のメンバー数は、現在約90名ほど。彼らは今、能動的に記事改良の提案をしてくれたり、横のつながりをつくって楽しそうに活動しているように思います。
それを見ているのが本当に幸せなので。この空気感を維持しつつ、もっと盛り上げていくにはどうしたらいいかなってよく考えてます。「もっと前に進みたい」という気持ちがとても強いです。
これからも好きなひとたちと一緒に、楽しく仕事をしていけたらいいですね。固定観念には決して縛られないように、つねに意識しながら。
文章・写真:伊佐知美
(この記事は、合同会社cocowaと協働で製作する記事広告コンテンツです)