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【イベントレポ】灯台もと暮らし大忘年会〜小林を選んでくれたひとがたくさんいるって気づけた〜(2/3)

2016年12月11日。奥浅草にあるカフェつむぐりさんにて「灯台もと暮らし大忘年会〜高知県嶺北地域と宮崎県小林市のみなさんを迎えて〜」を開催しました。

「1/3」では2016年にスタートした「ぼくらの学び」の「ふたり暮らし」シリーズの中から、一級建築士・ライターのタナカユウキさん、株式会社Lucky Brothers & co.取締役の下津曲浩さんをゲストにお迎えした座談会をお届けました。

続く「2/3」は、宮崎県小林市役所の地方創生課から、柚木脇大輔さんと深草由樹さんとのトークセッションです。

小林市のみなさんと灯台もと暮らしはどのようにして特集をつくるに至ったのか、小林市のみなさんはどういった想いでもとくらと共に特集をつくっていったのか。普段の取材記事ではなかなか聞けない、特集の裏側をお届けします。

小林市トークセッション

くいしん(以下、くい) では、改めてよろしくお願いします! ここからは、2016年にやってきた地域特集でお世話になった方々をお呼びしてのトークセッションに入っていきます。まずは、宮崎県小林市の市役所のおふたりです。

会場 (拍手)

くい 最初に自己紹介をお願いします。

柚木脇大輔(以下、柚木脇) こんばんは。みなさん宮崎県ってご存知ですか? あるウェブサイトで見たのですが、白地図の都道府県を答えるテストがあって、宮崎県の正解率は46番目だったそうです。47都道府県あって、下から2番目です。1位はどこでしょう?

会場 北海道!

柚木脇 正解です! ただ九州の中でも、お隣の鹿児島はすごく認知度が高いんですよ。17位。そんな宮崎県の中の、小林市から来ました。昨年、フランス語に聞こえる方言の動画をつくりました。

柚木脇 その動画のプロモーションが反響を呼んで、ライターとして別のお仕事で立花さんが小林まで来てくれたんですね。そのときに、立花さんからいろんな話をたくさん聞いて、その人間味にすごく惹かれたんです。懇親会の時間に寝過ごして来ないとか……立花さんはそういう人間味のある方なんです(笑)。

客席にいた編集部の立花 すみませんでした。たぶん、一生言われるんだと思っています(笑)。

柚木脇 僕は全然大丈夫なんですけど(笑)。それは「灯台もと暮らし」ではなくて、雑誌の取材で来てくださったんですね。出版社のひとが「大丈夫かな」って心配して電話している姿を見て、大物のひとがいるんだなぁとかぼんやり思っていました(笑)。

でも、立花さんとお話をさせていただいて、灯台もと暮らしというメディアがすごく、自分の感覚に近いなと感じました。で、今年スポンサードという形で、小林の特集をしていただけないかというお話をさせていただいて、実現してこういう場にも呼んでいただきました。宮崎県小林市役所の地方創生課におります、柚木脇と申します。よろしくお願いします。

会場 (拍手)

くい では深草さんからも、自己紹介をお願いします。

深草由樹(以下、深草) みなさんこんばんは。

会場 こんばんは!

深草 わたしも柚木脇と一緒で、小林市役所の地方創生課にいます。25歳ですが、ずーっと小林に住んでいて、東京にも宮崎市内にも出たことないまま小林市役所に就職しました。わたしは地域の広報紙を同い年の子とふたりで一緒につくっているんですね。

広報誌を紹介する深草さん

深草 今年で働き始めて7年目なんですけど、今年4月に異動になったばっかりです。灯台もと暮らしのみなさんが2016年10月に来ていただいたときに取材に同行させてもらって、まだ知り合ったばかりではありますが、こうしてお呼びいただいてありがとうございます。よろしくお願いします。

会場 (拍手)

東京に行ったことがなかった深草さん

くい ありがとうございます。(会場に向かって)まず大前提として、柚木脇さんは、僕らの取材のすべてにご同行いただきました。なので、小林特集の記事は、僕と立花とタクロコマがそれぞれ書いているんですけど、取材をしている場には僕ら3人だけではなく常に柚木脇さんがいてくれて、記事ができていったというところがあります。深草さんは、いくつかの取材に同行してもらった感じなんですね。というわけで逆に、現場にいなかった立場の市役所の方という視点で、このあとお話を聞いていきたいなと思っています。

柚木脇さんは一度、小林から出られたんですよね。で、また市役所のお仕事をするのに小林市に戻られたと。深草さんは学校を卒業後、もうそのまま市役所に勤めらたんですか?

深草 1年間、専門学校に通っていたのですが、そこも宮崎県内で小林から通えるものだったので、住んでいるのは生まれてからずっと小林です。

くい 東京には何度か来られたことありますか?

深草 今まで東京には来たことがなかったのですが、4月に部署を異動になってから3回来ました。

くい 東京にはどんな感想をお持ちでしょうか。

深草 うーん。なんでしょう。東京は建物ばっかりで、自分がどこにいるのか、どこに何があるのか全然わからないです。九州の中でもそういうところはあるのかもしれないけど、小林では道路がひとで埋め尽くされることなんて、ないんです。

東京を語る深草さん

くい 東京に憧れたりとか、遊びに行ってみたい、みたいな感覚は全然なかったですか?

深草 なかったです。もともと小林のことが好きで、小林に関わる仕事がしたくて市役所での今の仕事を選びました。わたしは自分が育ってきて、ずっと関わってきたひとたちに恩返ししたいというような気持ちがあって……。自分で言うのも変なんですけど、わたし正義感が強くて(笑)。

柚木脇 あはははは(笑)。

くい いやいや、しっかり自分のいいところを打ち出しましょう!(笑)。自分は正義感強い、と。

深草 それで、もともとは周りのひとを守りたくて警察官になりたかったんです。でも就職をするときになって、親に安心してもらいたいと思い、最終的には市役所を選びました。

ちょっと変わったプロジェクト「てなんど小林」

くい なるほど。では改めて小林市の取り組みに触れていきたいのですが、まず先ほどの動画を制作したのは「てなんど小林プロジェクト」の一環なんですよね。このプロジェクトがどういう企画なのか、柚木脇さんから改めて教えてもらってもよいでしょうか。

柚木脇 ちょっと変わったプロジェクトでして、市民のワークショップを中心に運営しているプロジェクトなんですね。先の動画も、このプロジェクトの一環なんです。私と、もうひとり鶴田という職員のふたりが中心になって立ち上げました。3、4ヶ月ですかね。ずーっとふたりで話して。形として、事務局は行政ですが、ただ、どういうプロジェクト内容にするのかは、ワークショップの中で決まったことしかやらないです。

つまり、自分たち行政ではなくて、市民のみなさんの声をダイレクトにプロジェクトに反映する形で進めているんですね。決まったことを、スムーズに進められるように段取りをしていくのが僕ら行政の仕事です。

「てなんど小林」を説明する柚木脇さん

くい なぜそういった形で進めるプロジェクトを始めようと思ったのでしょうか?

柚木脇 都会で小林市をプロモーションしているときに『小林ってこんなところ』って言うわけですけど、実際にはちょっと違和感があったんです。でも、それは当たり前で。たとえば営業マンが、会社の商品を外で売るときに「いやぁ、うちのちょっとイマイチなんですけど、買ってくださいよ」なんて絶対言わないですよね。

プロモーションしている職員だって、別にウソを言っているわけじゃないんです。でもどうして発信している内容がしっくりこないんだろうと考えたら、それは地元が本当の意味で盛り上がっているのかという疑問があったから。地元にいるひとたちが「自分たちの町ってすごいいい町だよね」ってことを、もっともっと考えていかなければならないのではないかなと

そのために、僕ら役所の職員もそうだし、小林市に住んでいるみなさんがもう一度「小林ってすごくいい町だな」と思えるようなことをやっていかなきゃいけないんじゃないかと考えました。だからターゲットははっきり絞っています。市民の方と、市外や東京に住んでいる小林市出身の方です。

たとえばFacebookページは今4,800くらい「いいね!」が集まっているんですけど、全部方言で書いています。出身者じゃないと、何が書いてあるかよく分からないんです(笑)。でも、それでいいと思っていて。出身者が小林のことを見てくれれば、それだけで勝手にプロモーションしてくれたりとか、盛り上がって、広がりが生まれるんじゃないかと考えているわけです。

「てなんど小林とは」2

小林市が灯台もと暮らしを選んだ理由

くい ありがとうございます。そうして「てなんど小林プロジェクト」を進めていくうちに、僕ら灯台もと暮らしにお声がけいただくタイミングが来るわけですけど、なぜ灯台もと暮らしを選んでいただけたんでしょう?

柚木脇 はい。そもそもは、小林を紹介する冊子をつくるとなった際に、手に取れる冊子は訴求力がありますが、届けられるひとの数は限定されると思うんです。だから、小林に興味をもってくれた方の入り口になるような地域の広報紙がインターネット上にあったらいいなと。それで灯台もと暮らしさんにぜひやってもらいたいという話になりました。

一番重要なところは、小林を紹介する際に、もちろん特産品を紹介するとかやり方はいろいろあるのですが、僕らは「ひとに焦点を当てて紹介したい」と思ったのが大きくて。ひとを通してしか、もののよさは伝えられないんじゃないかって考えたときに、それをうまく伝えてくれるのは灯台もと暮らしさんなんじゃないかって。私が知っているメディアさんの中では、ひとに焦点を当てることが得意なのは、灯台もと暮らしさんという印象を持っています。

お話をさせてもらう中でも、僕がやろうとしていることをとても深く理解してくれるんです。立花さんが「あっ、こういうことですか?」と言ってくれたときに、すごくしっくり来るんですね。なので、最初に立花さんが来てくれたときに、このあとも何か一緒にできたらいいなとは、その頃から感じていました。

柚木脇さんが灯台もと暮らしを選んだ理由

くい 具体的に記事を見て、読んでいただいたときに、こんなことを思ったとかってありますか?

柚木脇 記事がまっすぐなんですよ。誇張していない。いろいろ媒体で情報を出していると、ウソとまでは言いませんがあまりに綺麗に書かれていて「あっ、こんなふうに書かれるんだ」と思ってしまうことも正直あるんです。もとくらの記事は、自分自身も読んでいてスッと心に入ってくるから、納得感があります。

くい 取材を終えてみて感じたこととかありますか?

柚木脇 僕はまだまだ地元のことを知らないなぁと思いました。20名近くの方に取材していただいて、みなさん、それぞれに想いがあるわけですよ。いろんな想いがあって、試行錯誤があって、悩みもあって、こういう美味しいチーズができた、美味しい焼酎ができた、となるんです。仕事のことを、辛いとか大変だってことだけじゃなくて、本当に楽しそうに話してくださる方々を見ていると、自分も見習わなきゃなって思いました。

もとくら編集部が感激した「懇親会」

くい 逆に僕らのほうから感謝の気持ちをお伝えするとしたら、取材のほとんど最終的な段階になって、懇親会を開いていただいたんですね。僕らが7月と10月の2回取材させていただいて、多くの方にお話をうかがって、その方々に懇親会として「ツナギィーナ」さんにお集まりいただいたんです。

柚木脇 懇親会は、想像以上に参加者が多くて30名くらいの方が来てくれました。がんばっている方々がいて、記事になって、世の中に紹介されていくわけですけど、その段階では点でしかないんですよね。このひとたちがつながっていくと、もっとおもしろいことが起きたりとか、すごいひとたちになっていくんじゃないかって僕らは考えたりしまして。

くい なるほど。

柚木脇 僕らとしては、点を面にしていくことが、今やるべきことなんじゃないかと思って。過密な取材スケジュールがある中で、参加していただいただきました。

くい 僕らはいろんな地域に入って、たくさんの取材をさせてもらうんですが、だいたい一回取材させてもらった60分とか90分とか、長くても120分とか、言ってしまえばその時間だけのお付き合いになってしまうことも少なくないんです。もちろんそのあとメールでのやりとりとかするんですけど。

なぜ僕らが懇親会のことを感謝したいかというと、そうなることが多い中で、懇親会としてみなさんにお集まりいただいたことで、僕と立花とタクロコマにとっても、学びがたくさんあったんですね。そもそも取材させてもらった方々に記事を公開したあとの反応を聞けるとか、どういうところがよかったとか悪かったとか、話をうかがえる機会ってあまりないんです。それが自分たちにとってもすごく嬉しかったし、ためになりました。

深草さんの思う小林の魅力

記事の反響について

くい 深草さんにもお話聞いていいですか? 今まで、12月いっぱいでまだいくつか記事が公開されていくんですけど、どんな感想を持っていただけましたか?

深草 近くにいても、自分でも知らないことがたくさんあるんだなって思いました。今日はみなさんに食べていただきたくて、小林からカブを持ってきたんですけど。今、食べてもらっているカブをつくっている梶並さん。わたしは梶並さんがどういう想いで野菜をつくっていたのか、震災がきっかけで小林に来られたこととか、まったく知らなかったんです。

同時にそうやって「小林を選んでくれたひとがたくさんいる」って気づけました。わたしは小林に生まれて、小林が好きだけど、逆に言えば小林しか知らないんです。小林に移住してるひとや、小林から出ていったけど戻ってきているひとがたくさんいるってことは、小林に魅力があるんだな、魅力があったからこそ戻って住んでいるんだなって、改めて感じることができました。

くい 小林に何か魅力があったんだとしたら、深草さんは、それはなんだと思いますか?

深草 人柄かなって。小林のひとたちは、どんなひとが小林に来てもみんな優しいって思うし、あたたかく受け入れてくれるんです。わたしが知る限りではありますけど。たとえば小川奈央さんは、記事の中で1回小林に来ただけで、2回目に来たときに「おかえり」って言ってくれた、とお話されていて。そういうあたたかい人柄がある上で、地元を盛り上げたいっていう思いが強いひとが多いなって思います。

深草 他人事と思わないひとが多いんだと思います。知らない土地に行ったら不安だろうから、不安なひとの話を聞いてあげたいって自分は思うんですよ。そういう気持ちを持っているひとが多いんじゃないかって感じますね。相手の立場になって考えるとか。

差し入れにいただいた「すき酒造」の焼酎たち
差し入れにいただいた「すき酒造」の焼酎たち

 ありがとうございます。「人柄」「相手の気持ちになって考える」。当たり前のことを当たり前と片付けるのではなく、きちんとひとつひとつのことを大切にしていきたいなと思いました。では、お時間となりましたので、宮崎県小林市のトークセッションは以上とさせていただきます。ありがとうございました! 次はですね、「NPO法人れいほく田舎暮らしネットワーク」のおふたりに登壇いただきます。

柚木脇・深草 ありがとうございました!

── 高知県嶺北地域のおふたりとのトークセッションに続きます。

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くいしん

編集者。1985年生まれ、神奈川県小田原市出身。→ さらに詳しく見る

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