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【青森県十和田市】私たちの納得感の見つけ方。これからの地域との関わり(イベントレポート)

「地域と関わりを持ちたい」。

そう思ったとき、どんな選択肢が思い浮かぶでしょう。

2拠点居住や多拠点居住も少しずつ浸透しつつある昨今、必ずしも移住して定住することだけが、地域との心地よい関わり方でないと言われています。

一方で、やはりひとつの土地に根を下ろしているからこそ味わえる、日々の喜びもあります。

人との密なつながりや、自己完結しない仕事が地域にはあることを、私たち灯台もと暮らし編集部もたくさんの地域を訪れる中で見聞きしてきました。

木綿のボロを裂いた布

和酒女子

地域との心地よい関わり方は、人それぞれ。これが現状の最適解でしょう。

けれども「では具体的に、どんな関わり方ができるのか」という話は、意外と深掘りされていない気がしています。「定住」「多拠点」という言葉は、かなり抽象度が高く、地域での具体的なアクションまでイメージができづらいと思うのです。

地域との多様な関わり方。それがよく見えるのが、青森県十和田市です。

松本茶舗にて

令和元年の7月。灯台もと暮らしは去年に続き、十和田とのイベントを都内で開催しました。

イベントタイトルは、「私たちの納得感の見つけ方。これからの地域との関わり」。

ゲストには、それぞれ大切にしたい暮らしや仕事の軸を持ちながら、「十和田で暮らす・十和田と関わる」を実現する4者をお迎えしました。

よしだ すすむ

二人組デザイン事務所[字と図]の図|十和田移住6年生|東京都出身|多摩美卒|iFデザイン賞、グッドデザイン賞、総務大臣賞など|元蔵人|令和元年に若手クラフト作家の作品を展示・販売する民藝店と「時々郵便局」を始める。 乗れなくなったスケボーの板をリメイクしてつくる現代民藝【180】|漆と南部菱刺しを再構築した現代民藝【YOZORA】|趣味は石ひろい|

木津 歩(きづ あゆむ)

コミュニティを旅する居候男子。92年2月生まれ。全国各地の拠点に「居候」しながら、月一引越しの移動生活を実践中。昨年10月の十和田市での滞在を機に結成した創作ユニット「hyphen,」では、地域と暮らしにまつわる創作・発信を展開している。一級建築士。

村岡 将利(むらおか しょうり)

青森県十和田市生まれ。株式会社ビーコーズ代表。進学の為上京し、WEB系エンジニアとして2社経てフリーランスとして独立。その後、地元を変えてみたいと一念発起しUターン起業。今年で移住4年目。メイン事業のWEB制作の傍ら、ひっそりとコミュニティスペース「second.」を運営し、地域に根差したイベントの企画/運営もする

平岡 雄大(ひらおか ゆうた)

祐天寺で暮らす29歳。 株式会社ドリップ( drip.co.jp )代表取締役。ファッションを中心とした趣味のブログ『DRESS CODE.』を運営。古着やフィルムカメラなど、古き良きものに心惹かれる。

Iターン、Uターン、多拠点居住、拠点は東京……十和田との距離感が異なる4者は、仕事で、暮らしで、十和田とどんなふうに関わっているのか。

お話を伺っていくと、これから地域と関わりたい人たちへのメッセージとなるような言葉が、次々と飛び出すイベントとなりました。

「マスオさん」だからできる子育てがある

イベントの第1部では、十和田との関わり方を、「暮らし面」から紐解いていきました。

登壇者は、東京からIターンで移住し、十和田市在住6年目になる、よしだすすむさん。そして、十和田に昨年の秋に約1月ほど滞在した経験のある、「居候男子」の木津歩さん。

よしださんは、夫婦ユニット「字と図」でデザインを生業としながら、十和田にある奥さまの実家で、お子さんと奥さまのご家族と暮らしています。

一方の木津さんは、「アドレスホッパー」という移動しながら働き・暮らすライフスタイルを送っています。

奥さまの実家での暮らし、子育てをすることについて、よしださんはこのように話します。

「僕は、完全に『マスオさん』なんですよ。十和田はマスオさんが結構多い印象です。うちは、妻のおばあちゃん、妻のお父さんお母さん、妻と僕、そして子どもまでひとつの家にいるので、4世代で一緒に暮らしているという状況です。

そうすると、子どもがさみしい思いをする心配が減るんです。僕は、子どもをひとり亡くしているというのもあって、基本的な考え方は『まずは家族いちばん』なんです。すると、暮らしの中に仕事を入れていくというライフスタイルになっていくんですね。

だから職場にも、子どもを連れて行っちゃいます。みなさん嫌な顔せずに相手してくれるから連れて行ける部分もあります」

お子さんが小学校に上がってからは、PTAにも参加するようになったよしださん。なんと校長先生から、学校行事のポスター制作を頼まれたこともあったのだそう。

「東京でのデザインの仕事と、十和田でのデザインの仕事のいちばんの違いは、顔が見える相手かどうか」

十和田にきて家族を中心に暮らしを実現する中で、よしださんの仕事面にも変化が訪れた様子が窺えました。

移動しながら地域のプレーヤーになれるのか

常に住所を変えながら、個人のブログや「hyphen,」というチームで日本中の地域での暮らしぶりを発信する木津さん。十和田での暮らしは、他の地域での暮らしと何か違うところはあったのでしょうか。

「僕は地域に行くと、基本的には日中作業して、街歩きをして、地元の人と交流してというふつうの暮らしをしていて。それは十和田でも変わらなかったんですけど。

人との交流で言うと、十和田はコミュニティがひとつのエリアにまとまっているのが特徴的だなと感じました。市役所、老舗、クリエイティブな場、すべてが精神的にも物理的にも距離が近いんです。

しかもそのコミュニティに、外から来た僕らがすごく混ざりやすかった。もとから地元にいる人も、移住者の人たちも、十和田の外から来た人に寛容な空気感をすごく感じました」

短い滞在でも、人との密な交流の中で生まれたつながりや発見は、「hyphen,」チームや木津さん個人の活動へも派生していきます。

「ふたたび、暮らしを考える」がテーマの雑誌『hyphen,』は、「hyphen,」の視点で十和田暮らしが紹介されている

暮らしと仕事の境目がないライフスタイルを送る木津さんは、これからの地域との関わり方にこんな問いを投げかけました。

「いま考えているのは、移動しながら地域のプレーヤーになることはできるのか?ということ。単に地域の魅力をプロモーションするだけじゃなくて、滞在先の地域に入って地域で仕事を生んだりできたらいいなと思っています」

その選択肢のひとつに十和田がある、と語った木津さん。

もしも木津さんのようなライフスタイルの人が地域のプレーヤーになれたら、私たちにとっても、自分が暮らしている地域以外の他の地域と関わりながら暮らすことが、もっと身近になるだろうなと思いました。

もしも地方で「単価が高い」と言われたら

イベントの2部では、今度は「仕事面」から、またも十和田との関わり方の異なるふたりにお話を伺いました。

登壇者は、Uターンで十和田市在住4年目になる、ウェブ制作会社・ビーコーズの代表を務める村岡将利さん。それから、拠点は東京に置きながら、十和田には仕事とプライベートで昨年から3度訪れている株式会社dripの代表を務める平岡雄大さんです。

「もともと十和田が地元で、東京でフリーランスのエンジニアとして活動しているときから、『十和田にIT企業があったらUターンで帰りたいな』という気持ちはありました。それでよく十和田の情報は追っていたんですけど、一向にIT企業ができる気配がなくて。

だったらもう、自分でつくっちゃおうと思ったんです。地元で起業したのは、使命感のようなものを感じていた部分もあるかもしれません。地元の子どもたちがこれから育っていく中で、そもそもITやウェブ業界で働くということを選択肢としても知らないというのは、かわいそうだなという気持ちで」

ビーコーズのクライアントは、ほとんどが東京の企業だと語る村岡さん。一方で少しずつですが、十和田周辺でのお仕事も受けられるようになってきたのだそう。

「十和田にウェブ制作会社がないというのは、自分たちにとってはブルーオーシャンという面がありました。けれども、それはつまり仕事を1から取っていかないといけないということでもあります。

地方で仕事を受けるときにぶつかるのが、単価の壁。東京では当たり前のように提案できた単価が地方だと、『高いね』と言われてしまう話はウェブ制作だけでなく、クリエイターやデザイナーの方からも聞きます。

そんなとき、単価を下げるのではなく、いいものをつくり続けることを意識した方がいいと、僕は思っています。そうすると『あのときは予算が合わなくてお願いできなかったけど、今なら』とお願いされることがあるので」

ウェブ制作会社であるビーコーズは、昨年空き店舗を改修して、十和田市内に「second.(セカンド)」というスペースをつくりました。

「second.」は、もともと「地域の人たちと交流できる場」以外の目的を決めずにつくった場。けれども今では、集まった人を起点に定期的にイベント開催がされていたり、十和田の外から来た人たちと街の住民との交流の場としても、活用されています。

株式会社ビーコーズのみなさん。背景は「second.」。(写真提供:drip・堀口英剛さん)

見習いたいのは、小さくても形にする姿勢

仕事と暮らしの拠点は東京にありながらも、この約1年の間に3度十和田を訪れたdripの平岡さん。

ファッションを中心としたブログ『DRESS CODE.』も運営される平岡さんは、十和田と関わることで感じられた豊かさを、このように語ります。

「僕はこれまで十和田に訪れて、すぐに何か仕事に直結するものを得られたわけではないけれど、関わりを持てて良かったと思っています。

それは、自分が今拠点にしている地域──僕だったら東京ですけど、東京には東京でしか関われない人や見られない何かがあって、十和田にはまた、十和田でしか関われない人や見れないものがあると思うから。

そこでしかできない経験とか、聞けない話とか、長い目で見れば仕事や暮らしの糧になると考えているんです」

たとえば十和田でどんな発見があったのか、平岡さんはこんなふうにお話してくれました。

「僕が地方で暮らす人の見習いたいなと思うところが、何か始めようと思い立ったとき、小さくても形にしようとすぐ動くところ。

よしださんが空き店舗を改装して民藝店と、来訪者がいつ届くかわからない手紙を書く『時々郵便局』を始めたり、村岡さんが『second.』を始めたりする動きからも、感じたことなんですけど。

東京にいると、何か始めようと思い立っても、会場が必要とか、人を集めないととか、それはもう別のところがやっているとか……いろんな考えに邪魔されちゃって、結局なにも形にならなかったりすることって少なくないと思います。

そうじゃなくて、小さくても『なんかやる』と行動に移していこうとする人たちに十和田で出会って、純粋にすごいなと感動しました。また、周りの人たちも協力してくれる姿勢があって、だからこそ何か始めるハードルが低くなっている部分もあるんじゃないかと感じたんです」

東京に軸足を置きつつも地域を観察する眼差しを向けることで、自分の仕事や暮らしを成長させることができたり、固定観念を壊すことができる。そんなことを、平岡さんのお話から学ぶことができました。

食材で地域と東京をつなぐ

懇親会では、イベント会場である「風土はfoodから」のみなさんが、十和田の食材をふんだんに使った料理をご用意してくれました。

料理長の石丸さんをはじめとする「風土はfoodから」のみなさん、なんと今回のイベントのために、2度も十和田を訪れたんだとか。

料理長の石丸敬将さん

懇親会には、十和田産の野菜やお酒、十和田名物「バラ焼き」をアレンジした料理などが続々と登場。石丸さん曰く、コース料理全体のテーマは、「混沌のグラデーション」。

十和田の、多様な属性の人たちを受け入れる懐の広さを料理で表現したい。そんな気持ちから、このテーマに決められたそうです。

「どう暮らしたいか」が見えてくると、どこにだって属せるような。大きなジャングルジムで遊ぶように、それぞれが色んなポイントで生きることを十和田は可能にしている。そんな感覚を抱きました。(石丸さん)

アートや豊かな自然だけでなく、農家さんや十和田と歴史上深い関わりのある馬にまでフォーカスされたコース料理は、五感で十和田を味わう食体験でした。

※料理の詳細は風土はfoodから公式サイト

昨年に続き、2年連続で開催した青森県十和田市とのイベント。最後は十和田の「十」の形をみんなでつくって集合写真撮影をし、イベントを終えました。

今こうして集合写真を見返してみてふと思ったのは、「十」というのは十人十色の十でもあるし、「プラス」とも読めるなということ。

十人十色の関わり方を受け入れてくれる十和田には、いきなり移住ではなく、まずは小さなチャレンジから見守ってくれる土壌があります。

また十和田の多様性に触れることが、きっと、これからの地域との関わり方や、今まで考えも及ばなかったような仕事や暮らしのあり方が見えてくるきっかけにもなる。

今回のイベントで、「これからを考えるきっかけになる十和田」という十和田の新たな側面を垣間見た気がしました。

文/小山内彩希
写真/土田凌

(この記事は、青森県十和田市と協働で製作する記事広告コンテンツです)

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小山内彩希

編集者・ライター。1995年生まれ、秋田県能代市出身。

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