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【イベントレポ】くらしのきほん × 箱庭 × 灯台もと暮らし=「スチーブ」〜そうか、僕らはくらしのプラットフォームを作りたかったんだ〜

2016年4月1日に渋谷のココラブルで開催したイベント「くらしのきほん × 箱庭 × 灯台もと暮らし=?「そうか、僕らはくらしのプラットフォームを作りたかったんだ。」。

「くらしのきほん」「箱庭」「灯台もと暮らし」。この3媒体で、新しい試み「スチーブ」が始まります。

トップ写真:Tammy Volpe@bluebluetammy(instagram)

週末や休み時間に、メディアを育み始めました

佐野知美(以下、佐野) 今日は約40名の方にお越しいただきました。この3媒体から始める新しい試みについて、たくさんの方に興味を持っていただけてうれしいですね。

松浦弥太郎(以下、松浦) そうですね。去年の今日(4月1日)は、ぼくがクックパッド株式会社に入社した日です。1年経ってこのような素敵なメディアさんとお話できる、良い日を迎えられてうれしいです。

「くらしのきほん × 箱庭 × 灯台もと暮らし=?「そうか、僕らはくらしのプラットフォームを作りたかったんだ。」
写真左から、「くらしのきほん」編集長の松浦弥太郎さん、「箱庭」編集長の東出桂奈さん、もとくら編集長の佐野知美

東出桂奈(以下、東出) 松浦さんは「くらしのきほん」を立ち上げるときのこと、覚えていらっしゃいますか?

松浦 もちろんです。「くらしのきほん」をオープンしたのは2015年の7月1日。立ち上げるまでの準備期間は3ヶ月しかありませんでした。ぼくは、暮らしは「基本」がいちばん楽しくて、豊かさを感じられるところだと信じています。そう思って、暮らしの基本をテーマにメディアを立ち上げました。

立ち上げ当初は、ぼくとデザイナーの片山育美という女性の2人しかいなかったから、「新しいメディアをつくります。どなたかぜひ手を上げて助けてください」と社内の方々の立候補を募ったんですよ。

松浦弥太郎さん

松浦 社内には「おもしろそうだから手伝うよ」と言ってくれたひとたちがいました。だけど彼らは平日、自分の仕事があります。週末の手を動かせるときに協力してもらいました。同時にコンテンツも一生懸命つくって、2ヶ月後の6月1日に、まず社内で公開してから、ほぼ今の形になり、7月1日にオープン。ということで、大急ぎでつくりました。

佐野 「箱庭」さんも、はじめは会社の休み時間にメディアを育てていたんですよね?

東出 そうですね。私たちのメディアづくりも松浦さんが仰っていたやり方と似ていると思います。関わっているメンバーは本業があって、休み時間やすきま時間に「箱庭」の活動をしていました。

東出桂奈さん

松浦 いいね。本業がガッツリあるって(笑)。

東出 もともとデザイナーの私は、ウェブサイトはつくれるけど、ものをつくったその先にどんな世界があるのか、それまで知らなかったんです。つまり、ウェブサイトをつくったらおしまい。制作だけで運営することはなかったんですね。だから情報を発信してメディアを運営することにはすごく興味がありました。私と同じように社内の女子クリエイターは、みんな本業がありながら「箱庭」の活動をしてきました。

松浦 「灯台もと暮らし」さんもじつは若いメディアで、オープンは2015年1月ですよね。

佐野 ずっと前からあったのかと思った……って言っていただくことがあるのですが、そうなんです。

松浦 どんなふうにコンテンツをつくっているんですか?

佐野 すべて編集部メンバーの内製で。実際に取材をして、お話をして、写真を自分たちで撮って記事を書きます。一次コンテンツがつくりたいと思っていて。たとえば特集などをつくるときには、ガチガチに企画を固めていません。記事1本1本のイメージ像は取材前にある程度考えますが、どんな記事になるかは私たちも、取材後でないと分からない。会ってみないとわからないことってたくさんありますよね。

松浦 そうですね。「くらしのきほん」も、常に見切り発車。

佐野 本当ですか?(笑)

松浦 仕事ってね、見切り発車が大事。本当ですよ。上司の確認を取らずに見切り発車しないと、なんにもできないですよ。

佐野 うちの会社の代表も、許可を得るよりもやって謝罪しろと言います(笑)。よく言えば柔軟に、取材先で出会ったひとや物事に触れて感じたこと、季節や撮れた写真を加味して、記事をつくっています。

みんなで知恵も技術も共有すれば、競争せず市場全体を底上げできる

東出桂奈さん

東出 今回3媒体で協力してなにかやろう! と動く背景には、松浦さんのこれまでのご経験があると思います。

松浦 そうですね。ぼくは以前、『暮しの手帖』という雑誌をつくっていたのですが、ウェブメディアの世界にやって来て、メディアに関わる人たちの横のつながりが意外とあることに気づきました。

佐野 ありますね。

松浦 雑誌業界って、よほどの交友関係でないかぎりそれはないんですよ。例えば、当時『暮しの手帖』ってどうやってつくっているんですか?って聞かれても、「ここがポイントなんですよ」とノウハウを教えてあげられなかった。

『暮しの手帖』の編集長をしていたとき、ぼくはいつも次号予告をしていました。けれど、あれは「やめたほうがいい」とよく助言をいただいてね。次号予告を見た『暮しの手帖』の競争相手が、売れ行きを伸ばすための対策を講じれば、自分たちの雑誌の販売部数が落ちるかもしない。でも、ぼくはみんなで次号予告をし続ければ、雑誌業界はお互いを刺激し合えると思っていたんだけどね。

交流がないから競争があり、人間関係もそれぞれの媒体の域にとどまっている。だから、孤立しているという側面もあった。それがぼくは良くなかったなあと思うんです。

佐野・東出 (頷く)

松浦 雑誌同士で壁をつくっている雰囲気が、ぼくはつまらないと思う。窓を開けて、「お、隣が何かおいしそうなものをつくってるぞ」と、感じられるくらい距離の近い関係性が理想じゃないかな。

みんなで知恵も技術も共有していけば、競争ではなくて、市場全体を底上げできる。そんなことをしたくて、「箱庭」さんと「灯台もと暮らし」さんと協力することにしました。僕らは、暮らしがテーマの商店街を「スチーブ」と呼んでいます。

松浦弥太郎さん

暮らしがテーマの商店街「スチーブ」

佐野 「スチーブ」は、まだまだ動きはじめたばかりなんですよね。

松浦・東出 そうですね。

佐野 今日来てくださった皆さんは、この3媒体は何をするのか? ということに興味があると思うんです。

東出 「スチーブ」という言葉の意味にも疑問がありますよね(笑)。

松浦 今回3媒体で協力してなにかやろうとなったときに、名前を決める必要がありました。「スチーブ」は、犬を飼うときに名前がないと困るから、最初に「太郎」や「ポチ」と名づけてみる感覚に近いです。わかります?(笑)

佐野 けっこう皆さん(お客さん)、頷いてくれていますね。

東出 松浦さんは「スチーブ」で、具体的にやりたいことのイメージはありますか?

松浦 いろんな想像をめぐらせているところです。例えば「これだけは宝物」と残しておきたいコンテンツをみんなで持ち寄って、1つの画面の中に置いておくだけかもしれない。

なんでもいいわけです。3媒体の更新記事が、一箇所で見られるようにするだとか。

佐野 以前、「暮らしのJISマーク」の話もしましたね。

松浦 そういえば、そうでしたね。たとえば「暮らしのJISマーク」が3媒体の各記事に付いていたら、このメディアをつくっているひとたちは一定のクオリティを担保したり、横のつながりで協力しあっていたりするんだなあって、読者が受け取ることができるんじゃないかなと思ってね。

佐野 あと私がやってみたいと思ったことは、一緒のテーマを決めてコンテンツをつくることです。テーマは「赤色」とか、楽しそうだと思いました。

佐野知美さん

松浦 そう、仮に3人で鎌倉に行って取材するとしましょう。きっとそれぞれ感動するポイントは違うと思うんですよ。そうすると自ずと選ぶ言葉や、写真の視点が変わってくる。

東出 同じ取材をしても、できる記事はまったく違うでしょうね。

松浦 でも3人(媒体)だけだから、やっぱり心細い(笑)。

一同 (笑)。

松浦 いろんなひとたちと一緒に暮らしの商店街をつくっていきたいですね。

日本には、暮らしを通して分かち合える人がこんなに大勢集まっているウェブサイトがあるんだっていうことを、世界にも発信したいじゃないですか。この3人(媒体)が言い出しっぺだからといって、えばったりはしません。

「くらしのきほん × 箱庭 × 灯台もと暮らし=?「そうか、僕らはくらしのプラットフォームを作りたかったんだ。」

たくさんのひとと「ちょうどいい」が集まる場所へ
佐野 1年後の「スチーブ」はどんなイメージでしょうか?

松浦 すごくたくさんのひとが「スチーブ」という場所にいて、みんなで分かち合える商店街になれたらいい。だってさ、競争するんじゃなくて「暮らしを楽しもう」とみんなで思っているわけですから、みんなで1つの景色をつくることができるだろうって思ってるんです。

佐野 「スチーブ」に参加する方々は、必ずしもウェブメディアじゃなくてもいいんですよね?

松浦 みんなで仲良くできるんだったら、ものづくりをしているひとだとか、お店をつくっているひとも大歓迎。

「スチーブ」は、キュレーションサイトみたいに統一性があるんじゃなくて、いろんな質感や個性あるコンテンツが集まっている場所。みんなで同じ方向をぼんやり見ている感じで、たまによそ見してもいいくらいの方がぼくはいいと思う。メディア同士で一緒に学び合いたいし、楽しみたいね。

でもそれぞれがちゃんと自立していることが大事だと思います。そして、自分たちの「ちょうどいい」は、しっかりと持つこと。

東出 ちょうどいい?

松浦 「これが正しいやり方だよね」という常識的な基準ではなくて、自分たちにとって「これがいい」と思える価値基準を、「スチーブ」にいるひとたちにしっかり持ってほしい。だってみんなが「世の風潮として、こうじゃないといけない」って言い出すと、せっかく商店街をつくっても似たり寄ったり。おもしろくなくなってしまいます。いろんな価値観を持ったひとたちが集まる広場が、ウェブ上にあったらすごくいいと思う。

松浦弥太郎さん

佐野 なぜですか?

松浦 今の時代は戦後の、「みんなが、自分の知りたいことや体験したいことをものすごく知りたかった時代」と似ている気がするから。

戦争があった時代は言論の規制があって、個人で発信なんてできなかったわけです。知りたいことを知ることもできなかった。だから発信して「分かち合える」仕事は、戦後のベンチャービジネスになった。雨後の筍のように雑誌が生まれたんですよね。『暮しの手帖』もそういう背景があって、朝ドラの『とと姉ちゃん』のモデルになった大橋鎭子(おおはししずこ)さんが創刊しました。

要するに当時は、雑誌を見れば何か新しいものがあるだろうという期待がありました。今はスマホやPCを見れば、新しいことが手に入る時代ですよね。

新しい感覚で秩序を分かちあいながら、いい景色をつくろう

佐野 最後まで「スチーブ」がなにをやるのか、具体的にお伝えできたのか定かではありませんが(笑)。

松浦 「スチーブ」でなにができるのか、明確にはぼくもわかりません。でも設計図があって完成図が見えることよりもワクワクしませんか。

「スチーブ」はプラットフォームに近い、なにか違う意味の言葉でも良いと思うんです。たった1人でも、ガラスケースの中にかっこいいものはつくれるかもしれない。けれど、景色はつくれない。いろんな人が集まって花壇ができる。そしてぼくらなりの新しい感覚で、秩序を分かちあいながら、いい景色をつくっていきたい。

東出 そうですね。まだ花壇に植える花(媒体)が少なくて、たった3人。

松浦 少しずつ、慌てず、こつこつやっていきます。近々……5月1日に、みなさんに「スチーブ」のティザーサイトをお見せできたらと思います。これからもみなさんと交流する場をつくりながら、もし「スチーブ」に興味を持っていただけたら仲間として、暮らしの商店街をつくっていきましょう。

「くらしのきほん × 箱庭 × 灯台もと暮らし=?「そうか、僕らはくらしのプラットフォームを作りたかったんだ。」

このあとは、フード・ケータリング「MOMOE」さんが「くらしのきほん」のレシピを参考に作ってくださった食事を囲んで、団欒(懇親会)が行われました。

5/1には、何かまた新しい動きがご報告できるように、「スチーブ」メンバー一同、進んでまいりますーー。

団欒の様子MOMOEさんのケータリング 卵焼き MOMOEさんのケータリング MOMOEのケータリング ケータリング

お話をうかがったひと

松浦 弥太郎(まつうら やたろう)
「くらしのきほん」主宰 / エッセイスト
2006年から「暮しの手帖」編集長を9年間務め、2015年4月にクックパッド(株)に入社。「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表でもある。
松浦弥太郎instagram/松浦弥太郎の『続・くちぶえサンドイッチ

東出 桂奈(ひがしで けいな)
女子クリエイターのためのライフスタイルつくりマガジン「 箱庭」の編集長・デザイナー。埼玉県出身、西荻窪在住。好奇心旺盛で暇さえあれば出かけたい。好きなものは、旅、写真、ものづくり、ユーモアのあるモノやヒト、民藝、植物、コーヒー、南米、北欧。
haconiwa / 箱庭
女子クリエイターのためのライフスタイルつくりマガジン
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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者 / フォトグラファー。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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