営みを知る

我孫子のブックカフェ「North Lake Cafe & Books」ができるまでの夫婦物語

千葉県我孫子市にある「North Lake Cafe & Books(ノースレイクカフェ&ブックス)」は、夕日が美しい手賀沼から、北へ歩いて、徒歩5分のところにあるブックカフェです。

我孫子の手賀沼

自然の豊かさを感じられる場所で、本とコーヒーを楽しめる。そんな素敵な空間をつくるのは、本と力仕事担当の松田拓巳(以下、拓巳)さん、カフェ責任者の松田昌江(以下、昌江)さんご夫婦です。もともと設計事務所で仕事をしてきたというお二人に、ブックカフェができるまで、そして夫婦の理想の暮らしについて教えていただきました。

子供の頃から本が大好きでした

カフェ主宰:松田拓巳さん

── お店を始めるうえで、本とコーヒーに焦点を当てたのは、どうしてでしょうか。

拓巳 子どもの頃から本が好きで、本屋をやりたいと思っていました。でもこのご時世に、本屋で勝負をする度胸はなくて。妻がつくってくれる料理がおいしいので、一緒にカフェをやらせてもらって、その片隅に本棚を置かせてもらえないか相談したんです。

── 奥様は、相談されたときのことを覚えていますか?

昌江 毎日ふたりで始発の成田線に乗って出勤していたのですが、そのとき突然、「昔から本屋をやりたかったかもしれない」って。本屋?って驚いたけど、本とコーヒーって合いますよね。

主人が大好きなアメリカにあるような、コーヒーを飲みながら本を読んだり勉強したりできる素敵な場所は、あまり我孫子には浸透していませんでした。「そういうの、あったらいいよね、つくろう!」と決まりました。

拓巳 ぼくのアイデアを受け入れてくれたから、今この「North Lake Cafe & Books」という店があります。良き理解者に、巡り会えたということですね。

松田ご夫婦

 ストレスレスな暮らし、そして空間へ

── サラリーマン時代と、今の暮らしの一番の違いはなんでしょうか。

昌江 私は本当に、精神的なストレスがなくなったことですね。

拓巳 それに尽きるね。

昌江 いくら手元にお金がなくても、「楽しい」と思えることはありがたいです。設計事務所にいるときには一生懸命、仕事したよね。だけど、なんだかいつも疲れているし、休みの日も、満喫しようというよりも身体を休めようとしていました。この店をやり始めてからは、友達に「顔がイキイキしてるね」ってよく言われます。それだけストレスなく楽しくやれているのかも。

North Lake Cafe & Books

拓巳 ぼくは以前トライアスロンに夢中でした。ストレス解消だとは思っていなかったけど、今思うと、心のバランスを取るために激しく運動をしていたのかもしれません。

トライアスロンの大会に出たり、そのための3種目の練習をしたり。1日平均2時間くらい練習する時期もありましたね。当時は練習がすごく楽しくて、それをやらないとすごく不安な気持ちになりました。でも店を始めてからは。練習をしなくても不安になりません。やっぱり運動してバランスを取っていたんだと思います。

── お二人は、これからどんなふうに暮らしていきたいですか?

拓巳 とにかくこのお店を続けられれば、いいな。こういう自営業は給料も少ないし、休日も本の仕入れをしたり料理の仕込みをしたりと忙しいです。それでもやりたいと思えるのは、この場所での「お客さんとの出会い」があるから。だから細々とでも続けられれば。

昌江 自分たちらしい暮らしをしたくてこの店を始めたので、地域のみんなにもっとこのカフェをに来ていただいて、居心地の良い場所だと思ってもらいたいです。

拓巳 そうだね。コーヒー屋であればもちろん味のおいしさ云々の話はありますけれども、あまりにもそれにこだわってしまうと、コーヒーが堅苦しいものになってしまいます。大事なのは、気持ちよく過ごしてもらうことです。ぼくも店をはじめる前はいろいろなカフェに行きましたが、「コーヒーを淹れてくれた店主の笑顔や佇まい」に気持ちよさを感じました。

会話を楽しみに来られる、いい本と巡り会える、静かに手紙を書く、仕事をするとか。会社や家と切り離れた空間で、「いい時間」を過ごしてもらえたらと思ってコーヒーを淹れています。

地域の住民が気軽に集える場をつくりたい

松田昌江さん

── 「North Lake Cafe & Books」は今後どんなお店になっていきたいですか?

昌江 お客さん同士がここで繋がり、何かの活動に発展していくとすごく楽しいよね。カフェという場では、私たちが予想していなかった繋がりが生まれていくんです。例えば定期開催しているウクレレ教室の参加者同士が友人になって、「メールのやりとりするようになった」「写真を見せ合うようになった」という話を聞くと、本当に嬉しい。イベントを企画したり、持ち込みで個展をやらせてほしいと提案してくれたりする人もたくさんいます。

拓巳 この間は、店にふらっと来た初老の紳士が「ご主人の趣味なんですか?」と本棚をすごく気に入ってくれました。大学でイギリス文学を教えている教授さんで、今度その方と読書会ができたらと企画中です。じつは、周りにおもしろい人がたくさんいるんですよ。

昌江 「人が集まって何かできそう」と、店の佇まいから感じてくれる人もいるよね。

拓巳 うん。特別なときに来たい店というよりも、日常的に、地域の人が気軽に集える場をつくっていきたいね。

north-lake-cafeandbooks

お話をうかがった人

松田 拓巳(まつだ たくみ)
本棚と雑用を担当。我孫子生まれ。市内の幼稚園、小・中学校で遊び、学ぶ。グラフィックデザイン、中古衣料輸入販売、青果市場仲卸、 プラント設計などの職を経て「North Lake Cafe & Books」を主宰。 趣味はトライアスロンやマラソン(現在活動休止中)。

松田 昌江(まつだ まさえ)

カフェ責任者。品川生まれ。結婚を機に我孫子に移り住み早6年、最近はようやく車を独り運転し、地元の農産物直売所やスーパーマーケットに買い物に行けるようになる。 自然の豊富さとのんびり暮らす人々に魅せられ、この地で生きて行こうと決断。 天性の味覚センスで新鮮な食材を料理していきます。

このお店のこと

North Lake Cafe & Books
住所:千葉県我孫子市緑2-11-48
電話:04-7199-3251
営業時間:11:30 〜 19:30(火〜金)、10:00 〜 20:00(土・日・祝)
定休日:月曜日・第3火曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日定休)
その他:店舗裏に駐車場2台分完備
公式サイト:North Lake Cafe & Booksサイト

感想を書く

探求者

小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

詳しいプロフィールをみる

探求者

目次

感想を送る

motokura

これからの暮らしを考える
より幸せで納得感のある生き方を