いつもと暮らし

【今日の一枚】陸の孤島に行くの?──引っ越す時に言われた言葉|高知県土佐町

高知県嶺北地域・土佐町の暮らしを届ける「今日の一枚」。神奈川から移住してきた鳥山百合子さんの日常を綴っていただきます。

高知県に引越しをする時、知人に言われた言葉があります。

「陸の孤島に行くの?」。

確かに四国・高知県へ入るには、陸路の場合、他県を通らなければ入ることができません。

土佐町には鉄道の駅がなく、高知県から本州に行くには家から車で30分ほどのところにあるJR大杉駅から汽車に乗り、徳島県、香川県を抜け岡山県に着きます。

確かに便利ではないかもしれませんが、土佐町で暮らし始めて「陸の孤島」だからこそ守られてきた文化があると思うようになりました。

交通が不便だったからこそ、自分たちで食べるものは自分たちで作り続けたのでしょうし、その時にしか収穫できないものは一年中食べることができるように保存食の文化も残ったのではないか。ボタン一つでお湯が出る時代に、薪で火を焚く習慣が普通にあることも本当にびっくりしました。

世の中がより便利で、早く、安く……という方向を追い求めるなかで、今までその地で引き継がれてきた文化やそこに込められていた思いも忘れ去られてしまった──そういったことが世の中にはあまりにも多いのではないか、と土佐町で暮らすようになってから思うようになりました。

春には山菜を収穫し、かまどで茹で、干して、保存する。
マッチをすって、薪に火をつける。
稲の赤ちゃんを育て、田植えをし、成長を喜びながら収穫の日を心待ちにする。

手間をかけること。
こつこつと積み上げること。
待つということ。

大げさかもしれないですが、私はそのなかに人間が忘れてはいけないことがあるような気がしています。

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鳥山百合子

2011年に神奈川県から土佐町へ移り住む。3人の子どもの母。NPOれいほく田舎暮らしネットワークで働きながら、家族で食べるお米と野菜をつくっている。山の暮らしの知恵を学び、それを自分自身の身につけながら、次の世代へも引き継いでいけるように、「書くこと」「記録すること」に取り組んでいる。

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