いつもと暮らし

【今日の一枚】山の静けさのなかに、確かに生きているものたちの存在を感じます|高知県土佐町

高知県嶺北地域・土佐町の暮らしを届ける「今日の一枚」。鳥山百合子さんと、ご家族の日常を綴っていただきます。

我が家には、11月に2週間ほど「自家製なめこ食べ放題」期間があります。近所のおじいちゃんが「これでなめこを育てなさいや」と原木を分けてくださったことがきっかけで、自分たちで育てているのです。

裏山に杭を打ち付けて道をつくり、山道沿いになめこの原木を並べています。なめこに適した原木は桜の木。原木にドリルで穴をあけ、「こま」というなめこの菌が入ったものを、その穴へ一つひとつ木槌で打ち込んでいく「こま打ち」作業は、我が家の毎年年末におこなう恒例行事になっています。

今年も、昨年末にこま打ちした原木から次々となめこが生えてきました。

「その時」が来ると一斉に生えてくるので収穫が追いつかないほど。
「その時」をちゃんとわかっている自然という存在は、本当に偉大だと感じます。

たくさんのなめこを収穫しながら、あのひとにもあのひとにも届けたいなぁと大切なひとたちの顔が思い浮かぶことは、私にとってとても幸せなことです。

収穫している山での時間は、とても静かです。

手を動かし原木からなめこの根元を切る音。
すぐ近くに川が流れる音。
頭の上では小さな鳥たちが追いかけっこでもしているのか、枝から枝へ飛びうつる音。
時々落ち葉がひらひらと土の上に落ちる音。

静けさのなかに、確かに生きているものたちの存在をそこに感じます。

山で過ごすことは、私たち人間も同じ自然の一部であるということをしみじみと思い出させてくれる、私にとってかけがえのない時間です。

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鳥山百合子

2011年に神奈川県から土佐町へ移り住む。3人の子どもの母。NPOれいほく田舎暮らしネットワークで働きながら、家族で食べるお米と野菜をつくっている。山の暮らしの知恵を学び、それを自分自身の身につけながら、次の世代へも引き継いでいけるように、「書くこと」「記録すること」に取り組んでいる。

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