渓谷や山を登りながら、「ハァ、ハァ」と聞こえる吐息。土を蹴り、葉を踏みしめる音。編集部が、大きな自然の営みと、小さなひとの営みを感じる暮らしを体験してきたのは、今から少し前の6月下旬のこと。
ここは鳥取県、智頭町と三朝町。鳥取県と日本財団は、地域住民が元気に暮らし、誇りを持てる社会づくりのための共同プロジェクト「日本一のボランティア先進県」を実施しています。その取組みの一環として、鳥取県の魅力を知るべくさまざまなメディアやクリエイターが訪問。「灯台もと暮らし」もお招きいただき、フィールドトリップに行って来ました!
【1】名勝・小鹿渓(おしかけい)を散策
鳥取県・智頭町の北西に位置する、三朝町。小鹿渓(おしかけい)は、昭和12年に国の名勝に指定されている渓谷です。
今回のフィールドトリップは、「灯台もと暮らし」を運営している株式会社Wasei代表の鳥井弘文も同行しました。スマートフォンで、何かを撮っているようですね。
しっとりとした空気の渓谷には、紫陽花が咲き、川面にゆるやかな滝が流れ込んでいました。
一緒に取材した他のメディアやクリエイターの方々も遊歩道を立ち止まって、水の音に耳を澄まします。
さらに渓谷を歩くこと、数十分。みんなの目を再び釘付けにしたのは、「山神」と書かれた鳥居です。
この先は道無き道でしたが、歩道に出て、さらに渓谷の上流へ行くと、平家落人の里と言い伝えられている中津集落があります。
【2】三朝(みささ)温泉街を訪ねて
小鹿渓のある三朝町は、温泉の町です。平日の日中は川横の混浴露天風呂でおじいさんたちが湯に使っていましたが、夜になると三朝川ではたくさんの光るホタルを観ることができました。
「湯屋」という名にふさわしい風情ある佇まい。賑わいすぎず、落ち着いているので、「穴場」と言われてもおかしくない温泉街です。
外観からも風格を感じる大橋旅館は昭和7年創業。国文化財指定の湯宿です。赤い絨毯の敷かれた広い入り間(オープンスペース)のソファに腰掛けていると、女将さんが抹茶を出してくれました。
午後の太陽が、脇道の用水路と花を照らしていました。
一歩道を入ると、カラカラと音を立てながら下駄で歩く、温泉宿に泊まる浴衣姿の客と出会います。約850年前に発祥した三朝温泉。この地域ではずっと古くから続く光景なのでしょう。温泉が地域の風土を編んできたことを感じます!
【3】開山1300年、修験道の聖地へ。三徳山 「三佛寺奥院 国宝投入堂」参拝
修験道の聖地と言われる、三徳山の参道入口に来ました。三徳山は、鳥取県三朝町東部に位置する、標高899.7mの霊山です。
履いていたスニーカーで登山すると危険だそう。草履を履いて三徳山を登り、頂上にある「三佛寺 奥院 国宝 投入堂」を参拝します。
木の根を掴んで這い登ります。
登り始めてすぐに息が切れるほど、本当に厳しい山道でした……!
山間でこまめに休憩! この間に、三徳山や修験道の文化と歴史を教えてもらいました。
「懺悔懺悔、六根清浄(さんけさんけ、ろっこんしょうじょう)。」
登りながら、腹から野太い声で、合唱します。
神聖な山で過酷な修行をする。これにより悪い心が清められることを「六根清浄」といいます。六根とは、眼、耳、鼻、舌、身の五感と、意(心)のこと。
平安時代頃から盛んになった修験道。ここ三徳山では現在も、山の霊力を身につけようと考えた山伏たちと、同じ体験ができるのです。
大きな声を出すと、息が続かないくらい呼吸が乱れ、汗が流れてきます。けれども「懺悔懺悔、六根清浄」と声を出し、息を吸う。ちゃんと呼吸しながら登ります。
普段はPCに向き合っていそうなブロガーのイケダハヤトさんも一緒に登ります!
岩にしがみつき、登りきった先には、重要文化財が佇んでいました。
16世紀の室町時代に建造されたと考えられている「地蔵堂」は、崖の岩の上に建てられています。
なだらかな稜線を描く山々の絶景を眺めていると、呼吸が整いました。本当に空気がおいしいんです。
頂上まで、あともうちょっと。さらに山道を歩いて行くと、ひとの身体の5倍くらおおきな鐘がぶら下がる「鐘楼堂」が見えてきますよ。
誰かの家にお邪魔するときには、インターホンを鳴らしますし、部屋に入るとときにはドアをノックします。それと同じように神仏のいる神域に入るときには鐘を打ち、合図をします。
「ゴーーーーーーーン」
低く、遠くまで続いていくような重い鐘の音が終わるまで、合唱。
まだ登り続けるのかよ……! と思うかもしれませんが、さらに黙々と歩きます。少しうつむくのは、足元に気をつけるため。本堂はもうすぐです!
こちらは観音。洞窟を女性の胎内に見立て、その中を通り抜けます。洞窟を通ることには、「新たに生まれ変わる」という意味が込められているそうです。
それまで足元を注意して前を歩き続けていた人たちが、ふと顔を上げました。
僕らを見下ろすように絶壁に寄り添うように建っているのは、「三佛寺奥院 国宝 投入堂」。
11〜12世紀の平安時代に建立されたことが立証されており、現存する神社建築のなかで、この時代の建物は全国でわずか3棟。「三佛寺奥院 国宝 投入堂」は、修験道の本尊、蔵王権現を安置するお堂です。
このお堂を拝めるのは、崖になった岩場からのみ。こんな参拝の仕方ははじめて! 頂上で記念撮影し、下山しました。
青臭い草履は登る前のきれいな姿から一変して、毛羽立って泥水が染みこんでいます。こんなに険しくて危ない道を行くのは貴重な体験。一歩間違えて踏み外してしまえば、軽い怪我では絶対に済まない道を歩んできたのです。草履への愛着が芽生えました。ありがとう!
心と身体に力を与えてくれる、きれいな水と空気。
美しい森が、おいしい水と空気を育む鳥取県智頭町・三朝町エリア。
「緑あふれる環境で暮らしたいかも……」と思ったなら、現地を訪れてみて欲しいです。都市にない大自然! 目の前に広がる土、緑、空の色は、季節の香りは、心と身体に力を与えてくれるはずです。
(この記事は、日本財団と協働で製作する記事広告コンテンツです)