いい商品、いいサービス、いい環境、いい暮らし。

世の中の広告はすべて「いい」と言っています。それは、当たり前と言えば当たり前。ひとは悪いものにお金を払って手に入れようと思いません。

だけど、日々口にするもの、身にまとっている服、住んでいる場所を、わたしたちはそもそもどうやって選んでいるのだろう? それは自分にとって、他人にとって、地球にとって本当にいいものなのでしょうか。

南青山野菜基地の代表・中通寛記さんのお話を聞いた筆者・小山内は、こんなに「いい」ばかりが溢れている日本では、なにかを自分の価値観で選び取る感覚が、もしかしたら鈍ってしまっているのかもしれないと思いました。

南青山野菜基地

中通さんという方は、「食を通して、ひとを良くしたい」という想いのもと、南青山野菜基地という飲食店を経営している男性です。

南青山野菜基地・中通寛記さん

中通寛記(なかどおりひろき)

南青山野菜基地、代表。同志社大学卒業後、広告業界で企画立案の仕事を経験したのち、30歳で独立。フリーのマーケティングプランナーとして多数のプロモーションを手がける。2010年に創業した南青山野菜基地ではアホーガニックな野菜をアホーダブルな値段で提供している。

南青山野菜基地はその屋号の通り、メイン料理は野菜。

地道で儲けにならないけれど、ひとにも地球にもやさしいオーガニック農業をやる農家さんの野菜を仕入れています。そんな農業を“アホみたいに続ける”農家さんに愛を込めて、店でつかう野菜を”アホーガニック”と称し、真っ当な野菜を提供することにこだわりを持っています。

野菜提携企業 坂ノ途中の野菜が、そのメイン食材のひとつです。

南青山野菜基地・料理(メニュー)

南青山野菜基地・料理(メニュー)

南青山野菜基地ではどうして坂ノ途中の野菜を使っているのか、中通さんが真っ当な野菜にこだわる理由はなんなのか。

豊かな日本。膨大な情報と、そして目の前に広がるどれも正解に思えるたくさんの選択肢。

なにを選んでもどうやって生きても罪ではないけれども、なにが本当に幸せなのか、自分にとって気持ちいいのかは、ひとに聞いてもわかりません。自分の価値観に目を向けるきっかけは、意外と身近にころがっているのかもしれません。

南青山野菜基地は「食」を切り口に、”あなたの選択のものさしは、なにか?“と問い続けます。

南青山野菜基地

以下、中通寛記

食は人を良くする

僕がこの南青山野菜基地というお店をはじめたのは2010年。それまでフリーランスで企画を考える仕事をしていたのだけど、ひょんなことから訪れたラオスで自分自身を見つめ直したのがお店を始めようと思ったきっかけでした。

ラオスに行ったのは、たまたまネットで知り合ったラオス在住の日本人の「ラオスはなにもないけどいいところだよ」という言葉が頭から離れなかったから。

その当時の僕は、稼いだお金で欲しいをものを買って、住みたい場所にも住んでいたのに全然満たされていなかったんです。だからきっと、「なにもないのにいい」という言葉に「どういうことなんだろう?」と興味を持ったんですよね。

ラオスでは結構サバイバルのような経験をしたのですけど、そのとき現地のひとがとてもあたたかかった。お金を払ってないのに食べ物をくれたり、僕はそれに対して看板をつくってお返ししたり。そんなひとたちがつくった、農薬を使っていない自然栽培の野菜を食べていたら目に見えて体調が良くなって、そこで僕はひとの温かさと自然との調和を感じたんです。

南青山野菜基地・中通寛記さん

帰国したあとも、自然とひとの繋がりには、僕たちがなにか大事なことに気づくためのヒントが隠されているような気がしてました。それで、土日に友だちがやってた六本木の八百屋のお手伝いをはじめたんです。

そしたらある日、歯も生え揃ってないくらいの小さい子どもが八百屋にきて、試食の人参にかぶりついた。それを見たお母さんが「この子、人参たべれないのに」と言ったのを聞いて僕は、「ああ、おいしいってこういうことなんだな」と、人間が本能でいいものを判断して、ものを選び取る瞬間を見た気がしました。

その足で人参を作った農家さんに会いに行ったら、そこの農家さんはラオスで自分に優しくしてくれた村人のように無条件にあたたかくて、僕に野菜をわけてくれたんです。真っ当な人間がつくったものはちゃんと美味しくて、そしてひとは本能的にその美味しさに気づくことができるんだとわかりました。

そのあと僕は、野菜とその周りにあるあたたかいことを伝えたくなって、野菜をテーマにした飲食店・南青山野菜基地をはじめたんです。真っ当な野菜を伝えたら、自分がラオスでそうだったようにそれを食べる人がよくなって、世界はもっとよくなるだろうと思ったから。

南青山野菜基地

南青山野菜基地

真っ当、とは信頼の積み重ね

そんな南青山野菜基地の人気メニューはカレーです。着想は、たまたま一般家庭で使うような市販のルーに店の残った野菜をいれたら、家庭料理のカレーとは思えないくらい美味しくなったことから。

そしてこのカレーのトッピングに使っている野菜が坂ノ途中の野菜。

坂ノ途中の野菜

どうして坂ノ途中の野菜を使っているのかというと、僕が坂ノ途中の代表・小野さんと、小野さんが取引している農家さんを信頼しているからに尽きるんです。

美味しいって、たぶん信頼の積み重ねで成り立っていると思っていて。

小野さんとはじめて会ったとき、彼が自分と同じ旅人だったというだけで好感度があがったし、そのあと京都にある坂ノ途中のオフィスに泊めてもらいながら、農家さんを見学させてもらったりして単純に「いいひとなんだな」と感じました。そして何より、そこで食べた野菜が美味しかった。

その頃の坂ノ途中って今みたいに採算が立っていたわけじゃなくて、小野さんも農家さんもひぃひぃ言いながら、それでもずっと環境負荷の小さい持続可能な農業の未来を見つめていた。小野さんは農家さんを信じているし、農家さんは自分の技術と自然の力を信じている。そして僕は、そんな小野さんと農家さんを信じている。

だから、坂ノ途中の野菜は美味しくて当たり前なんです。

小野邦彦さん
坂ノ途中の代表・小野邦彦さん

持続可能にこだわる理由

坂ノ途中やほかにも信頼している農家さんの野菜を使いながら今日まで、食を切り口に「よりよい生き方とはなんなのか」を考えるきっかけを、南青山野菜基地は問い続けてきました。

そして現在、南青山野菜基地は東京・青山と神奈川・横浜に店舗があります。

チェーン店が乱立する駅ビル・横浜JOINUSに「2号店をつくりませんか?」とお声がけいただいたときも、「新規就農者の野菜をたくさん使うお店のモデルになりたい」という気持ちから、お話をうけることに決めました。

坂ノ途中も、そこは一緒の気持ちですよね。

やっぱり若い世代が続けられるシステムをつくらないと持続可能とは言えないし、今だけよくても未来はよくならないから。それで駅ビルのファストオーガニックモデルになろうと、2号店をはじめたんです。大量消費が繰り返されるその場所で、うちの真っ当な野菜たちが人々の目にどう映るのか見てみたかった。

南青山野菜基地・中通寛記さん

おなじく、持続可能なプロジェクトとして今いちばん力を入れているのが、缶詰のプロダクト・サービスをつくることです。「お母さんのレシピを残す」というコンセプトのもと、おふくろの味を缶詰に閉じ込めよう、という企画です。

今の日本は核家族化が進み、女性があまり料理をしなくなっていますよね。

だけどちょっと考えたら、「お母さんの手料理を食べられないのか、自分が子どもだったら寂しいな」と思ったんです。昔から日本人が親から受け継いで、そして現代まで残る味がいつかなくなってしまってもいいのだろうか?と。

たとえ、いつか親が亡くなってもお母さんの味を缶詰に閉じ込めてレシピも残しておけば、いつでも懐かしい味が再現できる。半永久的なものを残すことができるならやってみようと決めました。

南青山野菜基地・カレー缶詰め

それを「缶詰」にしたいと思ったのは、缶というパッケージは100%リサイクルされ、防腐剤もいらないという点で優れたエコプロダクトだと知っていたから。

食品って「中身」と「パッケージ」と「人の手」の問題をクリアしないと、真の意味で持続可能じゃない。

でも僕は、エコじゃないストローを使ってコーヒーを飲んだりもするし、私生活とそこの折り合いをつけていくのは難しいですよね。だけど、会社をやっている以上はできるだけ持続可能というビジョンに近づこうという想いはあります。まだそこに届いている気はしないですけどね(笑)。

「伝える」より「考えてもらう」

僕がラオスで経験したように、もっといろんなひとにも野菜という “いのち”を口に入れることから、自分を見つめ直すきっかけを得てほしい。そしてその入り口は、どこからでもいいと思っています。

だから南青山野菜基地も、今までお話してきたような仕掛けづくりをたくさんやってきたし、お店をやることがゴールになってはいけない。世の中が進んでいくように、どんどん次のフェーズに行かないといけないと思っています。

南青山野菜基地・中通寛記さん

僕がお店を始めた頃、いろんな環境問題とか食品のアレルギー問題とか、ちょっとでも解決されて世界がよくなればいいと思っていたのに、5・6年経っても全然よくならなかった。

どうしてだろう?と思ったら、やっぱりそれは消費する側が自分で考えていないんじゃないかって思ったんです。こっちがいくら「いいものですよ」と伝えても、そもそも自分で考えた上で選んでもらわなければ、本当の価値が伝わったことにはならないから。だったらもういっそ、あっちに考えてもらおうと思ったんです。

消費する側に価値判断を委ねたくて、お客さんには投げ銭で料理を「値付け」してもらってた時期もありました。今は封印しちゃっているけど、タイミングがあったらまたやりたいかな。

南青山野菜基地・野菜基地神社
投げ銭をしてもらっていた「野菜基地神社」

オーガニックって言葉も、本来は「自然」という意味であって、決して美しくて高級で尖っているものじゃない。オーガニックだからいいに決まっている、という理由で選ぶんじゃなくて、オーガニックとそうじゃないものを食べ比べて判断することが大切だと思います。

「こういう違いがあるんだ。だったら自分はこっちを選ぼう」というふうに、自分にとってのものの価値を考えるきっかけをつくる店になりたいという想いがあるんです。

食は「人」を「良」くすると書きます。

自分の心に正直にいれば正直なひとが、悪いことを考えていたら悪いひとがくる。だったら正直に、できるだけいいことを選び取りたいし、選んでほしい。

だから南青山野菜基地は今日も、食を通して問い続けます。

あなたにとって、「いいもの」ってなんですか?
南青山野菜基地・中通寛記さん

文:小山内彩希
写真:タクロコマ

このお店のこと

※南青山野菜基地・青山店は、来年1月いっぱいで閉店。石川県能登島に移転予定です。

南青山野菜基地
住所:東京都港区 南青山2-10-11-1F
電話番号:03-6447-1607
営業時間:火、水、木、金曜日に営業(※12月は貸切のご利用のみ承っております)
LUNCH 11:30-15:00(14:30ラストオーダー)※1月いっぱいまで営業
DINNER 18:00-23:00(22:00ラストオーダー)※11月いっぱいまで営業
(※ランチの予約は承っておりません)
アクセス:東京メトロ銀座線で「外苑前」4a出口から徒歩5分。「青山一丁目」5番出口から徒歩6分。
公式サイトはこちら

1月には投げ銭のイベント、「演劇ごはん in南青山野菜基地『彼女がお店を去る時に』」の開催を予定しています。

(この記事は、株式会社坂ノ途中と協働で製作する記事広告コンテンツです)

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