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【京都・坂ノ途中】ぬるい共同体はいらない。代表・小野邦彦さんが考える「畑と組織づくりの共通点」

おいしい野菜を毎日食べたら、もっと楽しい未来に出会えるはず。【京都・坂ノ途中】特集、はじめます。

野菜提案企業・株式会社坂ノ途中の企業特集を組むにあたって、灯台もと暮らし編集部は、3泊4日で京都に滞在していました。

その間、本社や自社農場「やまのあいだファーム」、店舗などをたっぷりとめぐり、たくさんの坂ノ途中社員の方とふれあいました。

そこで気がついたことは、「会社に流れる空気がなんだか穏やかだな?」ということ。働いているひとみんなが笑顔で楽しそう。社内の笑い声は絶えないし、お昼ごはんは専任スタッフがまかないをつくり、みんなで一緒に「いただきます」をして食べる。

会社というよりも「大学の研究室」と形容した方がぴったりのようでもあるし、どこか家族の雰囲気すら漂っている気もします。

坂ノ途中の組織づくり・仲間集めって、どう考えられているのかな? 消費者にも取引先にも愛される坂ノ途中。その理由を探るべく、代表の小野邦彦さんにお話を聞きました。

小野邦彦さん

小野邦彦(おの くにひこ)

株式会社坂ノ途中 代表。1983年奈良県生まれ。京都大学総合人間学部卒業後、外資系金融機関での「修行期間」を経て、2009年京都にて株式会社坂ノ途中を設立。「未来からの前借り、やめましょう」というメッセージを掲げ、農業の持続可能化に取り組んでいる。2012年には世界経済フォーラムよりglobal shapersに選出された。好きな野菜はカブ、オクラ、しいたけ。

(以下、小野邦彦)

はじまりは3人だった

小野邦彦さん

坂ノ途中の社員数は、創立当初は僕を含めた3人。起業前に「組織は多様性が大事だ」と書いてある本を読んで、「そうか多様性が大事なのか!」と安直に考えて、自分とまったく性格の違う友人2人に力を貸してもらうことに。ひとりは早々に別の会社をつくることになり、もうひとりは、現在取締役を務める平松ようすけです。

起業したばかりの小さな組織で、大切なポイントとなるのは創業メンバー以外で、誰を最初に仲間にするかというところ。

坂ノ途中の場合は、長尾さんという女性でした。彼女はもともと坂ノ途中の取引先で働いていた人物。当時、坂ノ途中は少ない人数で、農家さんとのやりとりや仕入れ、配達、新規事業の開拓やメディア対応などさまざまな業務に対応していました。だから、忙しくても笑顔でちゃきちゃき働く彼女の姿についつい惚れ込んでしまったんだと思います。

本来取引先のスタッフを引き抜くなんて、すごく失礼な話です。でも、取引先の代表者さんが「たしかに、創業間もない坂ノ途中には、スペシャリストではなく、長尾のようにどんな環境でもしっかり笑顔で頑張れる人材が必要だ」と言ってくださり、長尾さんの意思もあって転籍が叶うことになりました。

じつは坂ノ途中は、こんな感じで縁がつながって採用に至るケースが大多数です。創業8年目の現在も採用活動にお金をかけたことは一度もありません。

お客さま窓口担当の松村は幼稚園から中学校までの同級生、最初に登場した平松は高校の同級生、広報の倉田は大学の後輩。マーケティングの松田は、東京で僕がトークイベントをした際にその場で「働きたいです」と手を上げてくれた子です。もともとは宅配をとってくれているお客さんだった、というパターンもあります。

人材だけでなく、什器や自動車、電子機器類なんかも、無料や格安で譲ってもらったものがとてもたくさんあります。ちなみに僕の愛車は、学生時代に友人から3万円で買い取った原付。あらゆるパーツを取り換えながらしつこく乗り続けています。いろんな人が冷蔵庫をくれるので、創業2年目には冷蔵庫が余りまくったりもしました。

僕はこれを、日曜大工的な会社のつくり方と捉えています。それを最初から目指したわけではもちろんないのですが、とにかく会社を始めた当初は、ひともモノもお金も「無いない尽くし」。ピカピカの材料を集めてすばらしく輝く建物を作るよりも、身近な縁を組み合わせたりあるものを磨いたりして、工夫してつくり上げていく方が、自分の性分に合っていると思っています。

組織と事業は両輪だ

小野邦彦さん

組織と事業は両輪だと思っています。事業としてどこを目指すのかを明確にすると、組織もそれに合わせて共感したひとが集まってくれる。逆に、メンバーのできることの合計が会社のできることなので、メンバーが事業の在り方を決定するともいえます。

坂ノ途中の事業ビジョンは、「持続可能な農業を実践する農業者を増やして、農業自体を持続可能性のあるものに変えていくこと」。事業規模が大きくなっていく中で組織的な問題が比較的起こらなかったのは、事業ビジョンの明確さがポイントだと思っています。

つまり、進みたい方向がある程度クリアだからひとが増えてもブレない。これがもし「社会にとって何かいいことをしましょう」みたいな会社だと、それぞれが持っているいいことのイメージが違うから、すれ違いが起こってしまう可能性が高くなります。

僕らはそうじゃなくて、明確な一つの目的を共有しています。その具体的なビジョンに惹かれたひとたちが集まってきて、徐々に組織構成員が増えていきました。

その中で、いかに組み合わせの妙をつくり出すか?

小野邦彦さん

ただ一方で、「さすがに、何かこれいびつだな?」と感じることも出てきました(笑)。

まず、内向的なスタッフが多いこと。性格診断なんかをすると、9割以上のスタッフが外向度より内向度のほうが高くなります。テレビの取材を受ける際など、みんな逃げ惑う(笑)。

また、変化に対するおそれを強く持つ人もいます。「今までいろんな場所で傷ついて、抑圧されて、何重にも防御壁を張り巡らせて、やっとココ(坂ノ途中)で息つけるようになりました」というひとも多い。いわゆるビジネス戦闘力が決して高くない、「エクセルってなんですかね?」「土に触れることが幸せ」といったような、「今までずっとアナログ路線で生きてきました」というようなひとですかね。

でも、坂ノ途中ではつねに新しい案件やチャレンジが動いています。事業の成長速度を上げていくためには、もう少し、外向的なスタッフや事業推進ができるスタッフも育ってこないといけない。

そして最近は、ビジネスの第一線で活躍してきたというスタッフも実際に増えてきました。彼ら彼女は、学歴もやたら高かったりする。

こんな感じで、バックグラウンドが多様で、思考方法もそれぞれ違う。傷つくポイントも、テンションが上がる場面も異なる。そんなメンバーが集まっているので、表現の仕方やコミュニケーションのあり方は、社内でつねに話題になります。「え、そんな風に聞こえたんや」と驚くことも多い。

まぁ、身もふたもないビジネス用語でいえば、「コミュニケーションコストが高い」というやつです。でも、これって、ビジネスじゃない用語でいえば、「異文化コミュニケーション」だったりします。

楽しむか、コスト高だと考えるかは、人それぞれ。

もしかしたら、他社の経営者は「そんな手間のかかることしてないで、わかりやすく仕事ができるひとを効率的に集めてくればいいじゃないか」と思ったりするかもしれません。でも、僕はわかりやすい能力だけを見て、ひとを入れ替えたりはしないと思います。別に善人ぶるわけじゃなくて、多層性のない組織って脆いと思うし、ビジネスっぽい会話しかできない職場ってなんか味気ないじゃないですか。

さらには、ウチの会社が、多様なよくわかんない人たちがたくさんいる状況を維持しながら事業成長できるのか?ということ自体が「社会的に大きな意味を持つチャレンジ」だと認識しています。

なぜかというと、坂ノ途中の事業ビジョンである「環境負荷の小さい農業を広める」ことは、つまるところ「生物多様性を大事にしましょう」「さまざまな生き物が住める里山の環境を作りましょう」という話と同義だと捉えているからです。

……たとえば、突然畑の話を持ち出しますが、畑にとって多様性は、とても大切なんです。

やまのあいだファーム
自社農場「やまのあいだファーム」

「畑は土作りだ」という言葉をよく聞きますが、じゃあ「土作りとは何か?」と問われて答えられるひとは、じつはすごく少ない。

僕が考えるそれは、とにかく畑の生物多様性を維持すること。畑の生物多様性とは、生きものの種類が多く、かつ量がたくさんいる状態のことです。畑って、生きものの種類と量をいっぱいにしておけば、ある程度何をしても上手くいくところがある。

たくさんの生きものが、同じ畑の中で生まれて死に、分解されるから、植物が育つ栄養が供給される。土の上をいろいろな植物が覆っているから、土が乾かず植物は吸いたい水分を吸える。当然虫食いも多くなりますが、その虫を食べる天敵も生息しているから、虫食いがあっても被害はそんなに深刻化しない。

植物の病気の原因は、病原菌の大量発生です。それを防ぐために殺虫剤を撒くという方法があります。でも実際問題、菌は殺しても殺しても、空気中や土の中にたくさんいるわけで。殺虫剤を撒き続けるという選択をすれば別ですが、基本的には全部を排除することは物理的に難しい。

でも、通常時から畑の多様性を維持して菌の種類・密度を上げておくと、新たに悪さをする病原菌が増殖しようとしてもちょっとやそっとじゃできません。先住の民がいすぎて増える余白がない、というイメージです。

このような畑の様子を長年見ていると、「生物多様性ってやっぱりものすごく大切なんだ」と僕は思います。

で、こんな風に生物多様性を謳っている会社が「人間の多様性は認めません」と言ってしまったら、違うよなぁと思うんです。

「それは坂ノ途中っぽくない」とみんなに言われたい

坂ノ途中にいるひとは、背景も想いも、表現方法もそれぞれ違う。それは当たり前。わけわからんひともいるんだけど、それぞれ居場所を見つけて生きていけてますよ……と言える組織でありたい。

だけど、その実現と「ぬるさ」は必ずしも一致しない。多様性が大事だというと、時に「ぬるくやろう」と同義だと捉えてしまうひとがいるのも知っています。

そうではなくて、「わけわかんないんだけど、みんなそれぞれ何かしらのプロフェッショナリズムを持っていて、そのプロフェッショナリズムってのはもしかすると他所の会社では理解されないけど、うちではちゃんとリスペクトされるポジションを築ける」。そういう会社を目指しています。

これからの組織に期待することは、事業ビジョンは軸に据えつつ、それぞれが自分の意見を持って事業を進めていってくれること。

僕はこの数年、「どうやら坂ノ途中は、『僕が考えていること=坂ノ途中が考えること』という時代が長く続きすぎてしまったようだぞ」と考えています。

僕という人格と坂ノ途中の人格をどんどん切り離していきたい。僕が何か提案しても、「それは坂ノ途中っぽくないですよ」とスタッフから声があがるような組織を、これからみんなと一緒に作っていけたらいいですね。

小野邦彦さん

(この記事は、株式会社坂ノ途中と協働で製作する記事広告コンテンツです)

文章:伊佐知美
写真:タクロコマ(小松﨑拓郎)

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伊佐 知美

旅するエッセイスト、フォトグラファー。1986年生まれ、新潟県出身。世界中を旅しながら取材・執筆・撮影をしています。→ さらに詳しく見る

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【京都・坂ノ途中】「遠くを思う想像力」が私たちの未来を変えると信じてる|広報 倉田優香 【京都・坂ノ途中】代表の小野邦彦さん、どうして起業したんですか?

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