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【新潟県】脈々と受け継がれてきた、新潟県の郷土料理5選

各地域の土地が育む食材で作る、郷土料理。郷土料理を知ることは、地域の歴史や暮らしを学ぶことにつながります。

おばあちゃん、おかあさんと受け継がれていく家庭料理と同じように、郷土料理もその土地土地で、人から人へと伝えられていきます。……あれ? そういえば、おかあさんの得意料理はなんだっけ。郷土料理の作り方はいくつ知っているんだろう? そして私は?

郷土料理を受け継ぐ人は、ほかの誰でもない「私たち」。まずは知ることから改めて始めましょう。この記事では、新潟の郷土料理を5つご紹介いたします。レシピはこちらからご覧いただけます。

(協力:(C)郷土料理ワンダーランド

[1]けんさ焼き(岩室)

新潟県上越市は、越後の虎としての名も高い、上杉謙信公の治めた土地。けんさ焼きという名前の由来は、上杉謙信が諸国を遠征した際、戦時兵糧として剣の先におむすびを刺して焼いて食べたことだと言われています。

けんさ焼き

ワイルドな名前の由来に反して、ころんとした見た目はかわいらしく、いくつでもぱくぱく食べられそう。けんさ焼きは、じつは岩室の地の代表的な「おやつ」。小腹がすくと、おばあちゃんが囲炉裏で焼いてくれた、という思い出を持つ人も少なくないと言います。

眠れない夜の夜食としても人気のけんさ焼き。時間が経って冷たくなってしまったご飯でも、表面を焼くことで、ふっくらとした食感を取り戻すことができます。お茶漬けにしても美味。夏バテしたお腹にも無理なくいただけそうな、新潟の地で長く愛されている郷土料理のひとつです。

[2]干しカブの煮物(新潟市西区、その他新潟全域)

干しカブの煮物、と言っても、煮物の材料となっているのはじつは大根。大根の産地である新潟県西区赤塚で、今も作られている乾燥野菜です。

名称の由来には諸説あり、干した大根はカブと間違うほどの食感があるから、いちょう切りにするとカブのように見えるからなどと言われています。

干しカブをお湯で戻してから、身欠きニシンなどと一緒に、醤油やみりん、砂糖、お酒などで味付けして煮込みます。じゃがいもと一緒に煮込むと甘みが増すと言う説も。

干しカブの煮物

ちなみに、冬に大根を保存するときに、雪上の藁の中に立てる「藁立て」という貯蔵方法をご存知ですか?

こうして冬を乗り越える野菜を「越冬野菜」と呼びますが、気温が上昇してあたたかくなってくると同時に、中心部分から水分が抜けて、スカスカになってしまうことがあります。干しカブは、スカスカになる前に刻んで、天日干ししたもの。乾燥した野菜は色合いもよく、軽くて日持ちもします。

大根の産地である赤塚では、海がすぐそばの砂丘地帯で、昔は葉タバコの産地でもありました。その加工過程のなかで、乾燥機を利用するのですが、現在は葉タバコの生産量が減少。乾燥機の新しい使い道として、乾燥野菜が注目され、今も昔も加工が続けられているのです。

[3]きりあえ(岩室)

きりあえとは、味噌漬けの大根を細かく刻んで黒ごまと柚子で味をつけた「生ふりかけ」のこと。味噌漬け大根の味噌を落とし、しっかりとしぼったあと、柚子皮や大葉、黒ごまや砂糖と一緒にフードプロセッサーにかけ、十分に混ざったら、バットなどに広げて水分を飛ばします。

味噌漬けの味噌味と、砂糖のバランスが味の決め手になるとか。

きりあえ

干しカブの生産地でもある新潟県西区赤塚から、岩室のあいだには、かつてたくさんの漬物屋さんが軒を連ねていました。

農作物から漬け物、そして漬け物を使った料理と、一次加工、二次加工を経て食卓に並ぶまでの食材がたどる道が見えるところも、近郊地域の風土の違いを感じられる郷土料理ならではの面白さです。きりあえは、今でも時代を超えて、ごはんのお供として岩室で楽しまれています。

[4]煮菜(長岡、その他新潟全域)

長岡野菜として有名な「体菜(たいな)」という野菜。かつて、厳しい冬を乗り越えるために体菜の塩漬けは、欠かせない食材でした。そのため、体菜の塩漬けの作業は、新潟では冬支度のひとつで、秋の風物詩のようなものだったといいます。

煮菜

体菜の塩漬けは、この煮菜(にな)と呼ばれ、ビタミンや食物繊維を豊富に含んだ発酵食品として、新潟の人びとの健康を支えてきました。

本格的な冬になると、塩漬けした体菜をじっくり煮込んでいただきます。体菜の産地は長岡ですが、煮菜は新潟県全域で作られている郷土料理。トロトロになるまで煮込む家があったり、いっしょに入れる食材が里芋や打ち豆だったり、地域によっては酒粕だったりと、地域ごとの個性が豊かです。

[5]いもぼたもち(十日町)

新潟といえば、お米! だから、ぼたもちだってもち米ではなくて白米で作ります。ただし、普通の白米では、なかなかおだんご状にはできませんので、里芋のぬめりを利用して、新米を美味くまとめながら作るのがポイント。味があっさりとしているため、いくつ食べても胃もたれしないのもうれしい。

新米の収穫を祝う10月頃に作って、神様へお供えします。

いもぼたもち

新米と里芋は、何かと縁を感じる素材。収穫時期が重なることも多く、また旧暦の8月15日、おだんごのほかに芋を供える「芋名月(いもめいげつ)」の前後に、お米の豊作を祈るお祭りが開催されていたとも言われています。

稲作と里芋は切っても切れない仲なのかもしれません。

脈々と受け継がれてきた郷土料理をこれからも

昔から人の手によって脈々と受け継がれてきた郷土料理。新潟県に足を運べば、今もその伝統が息づいているのを感じることができます。

ここにしかないもの、ここでしか買えないものというものが、だんだんと減ってきているなかで、土地の風を感じながら、そこで生まれたものを食べるというのは、この上ない贅沢。その文化や風土を守り、次の世代に食べさせてあげる役割は、ほかの誰でもない、今の時代を生きる私たちが担っているのだと思います。

昔から変わらない味を、これからも。あなたの地元の郷土料理には、どんなものがありますか。

(協力:(C)郷土料理ワンダーランド

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伊佐 知美

旅するエッセイスト、フォトグラファー。1986年生まれ、新潟県出身。世界中を旅しながら取材・執筆・撮影をしています。→ さらに詳しく見る

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