父としてありたい姿とは。出産と子育ての今から考える

「拓郎が産まれてすぐの大変だった時に、お父さんがいてくれたらよかったんだけど……」

母の膝のうえで遊んでいた幼い頃、母は言いました。

あのとき子ども心ながらに、将来子育てをするときには必ずパートナーのそばにいようと、ぼくは心に決めました。

父の両親はちいさな工場を営んでいたので、幼い頃の父は家に帰っても親のいない家庭で育ったそうです。

さみしかった過去があるから、父は自分が働きにでるかわりにいつも母がいる家庭を築いてくれました。もちろん、30年前の両親を取り巻く環境のなかで最善の選択をしてくれたことに感謝しています。

 

月日は流れ結婚し、ぼくは妻とドイツで暮らしはじめました。

いつしか妻との会話に「子ども」という言葉が登場するようになり、子どものいる家庭、そして「出産と子育て」に目を向けつつあります。

他の夫婦はどんな想いで出産や子育てと向き合っているのだろう。

不妊治療を視野に入れたほうがいいかもしれないけれど、母体や夫婦の関係にどんな影響があるのだろう。

妊娠している10ヶ月間、女性はどんなふうに気持ちが移り変わっていくのだろう。

パートナーの妊娠を機に、父親になる人は、どんなふうに生き方を考え、変えてきたのだろう。

産後は、子育てと仕事を両立できるだろうか。

これからの子育て世代の当事者として、考えるほど疑問が湧いてくるし、不安もつきものです。

 

今、出産と子育てを考えはじめたぼくが欲しいのは、それらに関する知識よりも、出産や子育てに関わる人の気持ちを知る機会です。

ある程度の情報は、先人たちが残してくれた育児の専門書を読めばトラブルや対処法を学ぶことができます。

しかし刻一刻と変化している社会で育児に関わる当事者のいまの気持ちは、繊細なテーマであるだけに、まだまだ語られていないのではないでしょうか。

この特集は、出産と育児をする人たちの気持ちを知ろうとする場にしたいと思います。

初回はベルリン在住のイラストレーター・漫画家の高田ゲンキさんと青森県十和田市在住のグラフィックデザイナー・アートディレクターのよしだすすむさんによる対談をお届けします。

オンラインイベントとして場を共有しながら、実践している方、おなじ問いを持つ方とともに探求していきます。

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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