語るを聞く

【オフィスごはん】社員を守る、みんなのお母さん「CRAZYダイニングチーム」

ごはんを食べる。それは、本来は楽しくて幸せで、心もお腹も満たされる行為。

けれど、何故かいつからか、一日のなかの作業のひとつになっている。食べものは、なければ生きていけない大切なものなのに、昨日食べた晩ごはんすら思い出せない……もしかしたら何も食べていなかったかもしれない。

ひとの暮らしに、当たり前に存在する「食」という存在。

働き盛りの年齢になればなるほど、がむしゃらに目の前の仕事に追われ、いつの間にか「食べる」から「お腹の隙間を埋める行為」に転じてしまうことは、ありませんか。

おにぎり

たとえば忙しい職場に、おにぎりひとつ、握ってくれる人がいたら。できたてのおかずを目の前でお皿に盛って「お疲れ様」と労ってくれる場所があったら。株式会社CRAZY(以下、CRAZY)には、会社で働くスタッフを支える「CRAZYダイニングチーム」がいます。

彼女たちは、会社全体のお母さんのように、毎日朝から晩まで、会社の仲間のためにごはんをつくっています。

オフィスごはんのある会社「CRAZY」

CRAZYは、ウエディングプロデュースやケータリング事業、インターネットマーケティング事業を行っている会社です。働くことと生きることと分けて考えず、自分と自分の周りから幸せにできる方法を考える経営方針を持っています。

株式会社CRAZY
CRAZY公式サイトより

さらに、創業時から大切にしていることは「社員の健康」。CRAZYの前身の会社だった頃から、自然食のごはんを手作りし、社内メンバーで食べることを実践してきたといいます。

ごはんをつくるのは「CRAZYダイニングチーム」

CRAZYダイニングチーム
渡辺みさとさん(右)と、高崎瑶子さん(左)

働くスタッフのごはんを作るのは「CRAZYダイニングチーム」。朝ごはん、お昼ごはん、夜ごはん、そして合間には、季節の素材でおやつを用意しています。ごはんをダイニングチームにお願いしたい場合は、専用のフォームで日替わりで提供されるご飯の申込みができます。

朝の7時から8時半の間に、朝ごはんのためのお米を炊いて、オフィスで飲むためのお茶やお水を準備し、お昼は60人分のごはんを用意します。多い日は3人のスタッフがいますが、だいたい1.5人でキッチンを仕切っています。

オフィスの台所に立ちながら、日夜がんばるスタッフを見守る「CRAZYダイニングチーム」。今回はそのうちのお2人、ダイニングのグランマこと渡辺みさとさんと、ガーディアンこと高崎瑶子さんにお話をうかがいました。

「CRAZYダイニングチーム」はごはんを作るだけのチームじゃない

── お仕事分担や内容は、どんなふうになっているのでしょうか。

渡辺みさと(以下、渡辺) 「CRAZYダイニングチーム」の役割って、私たちは3つあると思っているんですよ。まず1つ目は、3食分、食事を提供すること。お母さんが、毎朝家族にごはんを用意するように、私たちもスタッフのためのごはんを作ります。

ラタトゥイユの仕込み♡

CrazyGohanさん(@crazy_gohan904)が投稿した写真 –

渡辺 2つ目は医療の部分。ふだんから有機野菜を使うようにしたり、過剰なお肉や魚、乳製品は避けて料理したりするようにしています。食事に気をつければ、自己治癒力が高まって、薬を摂る必要がないんです。そういうからだづくりができるように、食の側面からみんなをサポートしたいな、と。

産業医の先生とコラボレーションして、かかりつけのお医者さんのようにアドバイスをいただける環境を整えたりもしています。いわゆる西洋医学とは違った、自分の内側から健康になれるのが理想ですね。

CRAZYダイニングチームのグランマ・渡辺みさとさん
「CRAZYダイニングチーム」のグランマ・渡辺みさとさん

渡辺 最後は、託児事業。働きながら子育てをしているお父さんやお母さんメンバーもたくさんいますから、サポートしていきたいと思っています。もちろん家や託児所で誰かに預かっていてもらうのもいいんですが、お父さんやお母さんががんばっている姿を近くで見ていられる環境も、いいなあって思うんです。 

これは、まだ構想段階なので、今から実現させていきたいこと、という位置づけになりますが……。 今、目指していることもふくめて、3つのサポートを主軸にしているのが、「CRAZYダイニングチーム」です。  

── ただごはんを作るだけが、お仕事ではないのですね。  

渡辺 そうですね。ダイニングって、家庭の食卓をイメージしていて、お母さんのところに「お腹すいたー」とか「これ汚れちゃったんだけど、どうしよう」とか相談やおしゃべりをしに来る場所だと思っているんです。  

誰もが自由に出入りできて、肩の力がふっと抜けるような役割として存在するチームでありたいですね。

── お二人の役割が、グランマとガーディアン、というのは……?

渡辺 ふふふ(笑)。ジョン(高崎さんのあだ名)はガーディアンだよね。

高崎瑶子(以下、高崎) 前職のとき、私自身ハードワーカーだったんです。その時も、体は大事ってことは分かっていたけど、天職だと思って仕事にのめり込んでいました。そうすると、ごはんの大切さを知っていても、食事の優先順位が下がってしまって、コンビニとか店屋物で済ましてしまうようになりました。

好きな仕事を一生懸命やっていたのに、あつあつで愛情こもったものを食べることが、いつのまにかできなくなる。そして結果的に、体調をすごく崩して、やりたいことができなかった時期がありました。

そういう経験もあって、CRAZYのみんなには、やりたい仕事をとことんやって欲しい。そのためなら、たまには徹夜もするだろうし、大変なこともあるけれど、みんなが自分の命を大事にしながら、やりたいことに全力で邁進できるように、私はこの場を守り続けたいって思って、ガーディアンというポジションになりました。

CRAZYダイニングチームのガーディアン・高崎さん
「CRAZYダイニングチーム」のガーディアン・高崎瑤子さん

渡辺 ダイニングは、駆け込み寺とか、保健室のような存在なんです。気分転換に、キッチンカウンターでパソコンをたたくスタッフもいるし、仕事がうまくいったことを嬉しそうに報告しに来てくれるスタッフもいます。

普段がそんな感じだから、メンバーの元気がなかったり、体調が良くなさそうだなっていうのがなんとなく分かるようになるんです。 料理のマニュアルは、もちろんありますよ。でも「あの子、最近疲れ気味だから、梅干しをいつもよりちょっと多めにしてあげよう」とか、「最近みんなすごくイライラし始めたからカルシウムの多い、しらすを入れよう」とか、みんなの顔を見ながら、変えることもあります。

調理をすることは祈ること

── CRAZYという会社そのものに、食事をとても大切にしている文化があるんですね。

渡辺 そうですね。食べものって、毎日消費するものじゃないですか。私たちは消費者であり、投資家だと思うんですね。食事って、毎日消費するものです。だからこそ、スタッフや家族が一生懸命作り出してくれたお金を使って食材を買う時は、良いものにこだわりたい。そのうえ、素晴らしい農家さんや生産者さんからの想いを受けて食事ができたら、気持ちもいいし美味しいし、楽しい食事の時間が過ごせます。

こんなふうに、消費するものを変えていって、いつの間にか素晴らしいものに投資がされ続けて、こだわりある食べものを作ってくれる人が、大切なことを大切にし続けられる環境ができる、そうなったら嬉しいなって思います。

── 他に優先したいことや、仕事に夢中になっていると、ついつい食事をおろそかにしがちですが、それだと本末転倒だなと感じます。

渡辺 やりたいことがある人って、きっと誰かを幸せにしたくてがんばっている気がします。だからこそ、自分の命は自分のものだけじゃなくて、周りの人の幸せのためにも、ニコニコ元気でいるべき存在なんだっていうことを、知ってほしいんです。

CRAZYダイニングチーム 渡辺 人って、自分が大切にされた分、相手も大切にできるもの。子どもも大人も、それは同じ。

ですからダイニングでは「あなたのことをとても大切に思って、あなたの身体を気づかってくれるいる人がここにいるんだよ」ということを伝えています。「自分が元気でいることは大切なことなんだ」ということを、きちんと自覚するようになるのだと思います。

周りを幸せにするために、自分がきちんとごはんを食べて、健やかでいることは必要なこと。

私はよく、ダイニングチームに「調理することは祈ること」という話をします。多くの人が手塩にかけて育てた食材を、手荒に調理をしてはいけない。いつもていねいに扱って、愛情と手間をかけてみんなに届けることで、私たち自身の心も整う。これって、おろそかにしてはいけないことだと思います。

高崎 作ったものを食べてもらうCRAZYのみんなも大切だけど、食材になる野菜たちだって、私たちにとってはとても大切な存在なんです。 例えば、かわいく盛り付けたり、味を加えてみんなが食べやすくしたりするのは人間の役割ですけど、栄養を届けてくれたり、季節のものを味あわせてくれるのは、野菜それ自体が持っている役割で。だから、ダイニングチームって、じつは人間だけじゃなくて、野菜とかお米もチームの一員で、仲間なんだなーって。

野菜スティックバイキング #豆味噌 #鰹の出汁味噌 #アスパラ CrazyGohanさん(@crazy_gohan904)が投稿した写真 –

渡辺 漬物を漬けるときの乳酸菌だって、私たちの仲間なんですよ。つまり、私たちには1億の仲間がいるってことです(笑)。あの子たちがうまく働いてくれないと食材を提供することはできませんし、実際に身体の中で活躍できるのは、私たちではなく食材ですからね!

高崎 だから、野菜が農家さんから届くときも「わあーきれいな野菜! 良く来たねー!」って野菜を手に取ります。

渡辺 そうなんです、調理したご飯をお皿に盛るときも「みんなの身体を私達の代わりに宜しく頼んだよ!」と、食材にお願いするんです。

会社の枠組みを超えて文化を創る

── 「CRAZYダイニングチーム」として、これからやりたいことはありますか?

高崎 ……言っていいですか?

渡辺 どうぞ(笑)。

高崎 とても大きな夢なんですけれど……会社の枠組みを超えて、一緒に豊かな暮らしをつくれるようなサポートをしたいなって思うんです。

最近よく、うちのごはんをゲストの方など、会社のメンバー以外の方々に食べていただく機会が増えてきて。イベントのごはんとか、それをもっといろんな所に展開できたらいいなあって思っています。

CRAZYのダイニングチーム
CRAZYのダイニングチーム

高崎 私は、食事だけでなくて「このCRAZYっていう会社の人だったら、子どもを預けられる」っていう仕組みが、地域コミュニティまで広がっていけたらなって。極端に言えば「うちの会社に来れる距離の人であれば、誰でも受け付けるよ」とか「子育てに困ったらとりあえずCRAZYのダイニングのあのメンバーに話しに行こう」とか。

渡辺 うんうん。会社でごはんを食べてもらいたい気持ちもありますけど、ここで育まれた文化や価値観を、みんなが家に持ち帰って、それぞれの家族で育んでくれたらいいなとも思っています。

家に帰れば、みんな、自分の家族が一番です。会社のメンバーがCRAZYの外に出たときに、自分の家庭で何かしらのパフォーマンスを発揮できるようにするためには、私たちがもっともっと、原点に戻ることが必要です。食に向き合うことで、視点の深さが生まれれば、彼女が言う広がりも生まれると思いますよ。

── 素敵な目標ですね。

高崎 やりたいことが尽きないんです(笑)。

渡辺 働きすぎて身も心もボロ雑巾みたいになっちゃったら、元も子もありません。みんなが元気に暮らして夢を叶えることができて、周りも幸せになる。そんな循環が一番です。これから先、CRAZYが100年残る会社であってほしいという願いもありますし、社内の人だけが家族のように大事にするのではなく、一歩外に輪を広げて会社の外も含めた周りの人たちみんなの命を、守れるチームでありたいと思います。

お話をうかがったひと

グランマ:渡辺 みさと(わたなべ みさと)
創業当時、創業メンバーの健康を手作りのお弁当を配達しながら支え、CRAZYスタッフが増えていくのに合わせて、ダイニングチームを拡大させてきた、みんなのお母さん(今ではグランマ)。自身は添加物に弱い幼少時期を過ごしていたため、手作りの素材、免疫力を高める食事が身近だった。前職では、幼児教室の先生として、子どもたちの知能と食事についてのアドバイスをしてきたことや当時勉強してきたレシピもCRAZYの食事のベースになっている。

ガーディアン:高崎 瑶子(たかさき ようこ)
下積み、食材品質管理責任者を経て、現場マネージャーとして、社員の健康を支えている。自身も、社会人になりたての頃は外食が続き、体調を壊し、身体が資本だと実感をした経験があり、健康的な食生活について勉強をしている。そこで得た知識と経験から、CRAZY社員の暮らしのアドバイスもしている。

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立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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