「詳細な未来は、あまりイメージしたくない。違ってしまった時に、動揺してしまうから」。そう言いながら、「進む道を決めたら、他の人の言うことを丸呑みにしない」と言い切る強さを持つ彼女は、今日も自分が目指す未来に向かって一歩ずつ歩みを進める。彼女の名は中道麻都香(なかみち まどか)。東京は青山の地で、かねてからの夢だったカフェを立ち上げ、店長を勤めている。流れに身を任せているようで、意思は強い。不思議な空気を纏う28歳の彼女に、話を聞いた。
東京都心の青山の地に癒しのオアシスを
── 今のお仕事について教えてください。
中道麻都香(以下、中道) 「Aoyama ZERO CAFE(以下、ゼロカフェ)」というカフェの店長をしています。カフェオープンは2013年。立ち上げから関わってきたカフェで、今年で3年目になります。
── 「ゼロカフェ」は、どんなカフェ?
中道 昼はカフェ、夜はクラブや各種イベントが行われる、多目的スペースになります。青山という立地もあり、様々な方にご来店いただいていますね。
── ということは、夜は業態が変わる?
中道 音響設備が整っているので、クラブハウスになったり、映画イベントやライブをしたり。音楽とフードを絡めたイベントを開催することも多いですね。もちろん、ヨガレッスンや結婚式の二次会などでもご利用できます。
── そこで、中道さんはどんな仕事をしているのでしょうか。
中道 店長として、日々の接客はもちろん、レシピ開発や仕入れ、イベント企画など「ゼロカフェ」運営に関わることを、すべて担当しています。
── 忙しそうですね……楽しいですか?
中道 楽しいですよ。念願のカフェ店長なので。
服飾と旅、スパイスと料理の出会いを経て、フード・ケータリングの道へ
── 昔から、カフェを開くのが夢だった?
中道 いえ、昔からの夢だったかと言われると、そうではないんです。もともと洋服が大好きで、小学生くらいからずっと趣味で洋服を作っていました。高校・専門学校と服飾が学べる場所を選んで。
でも、デザイナーになりたかったはずなのに、いざ専門学校に行ってみたら「高校の時に教わったことと一緒じゃん」みたいに思っちゃって(笑)。
── えぇっ(笑)。
中道 当時は、卒業したら結婚しようかなって思っていました。
── そう思えるお相手がいたんですね。
中道 いや、いないんですけど、気分的に(笑)。
── えぇっ(笑)。
中道 真面目な話、アパレルビジネスを学ぶ中で、自分は洋服を作ることを仕事にできないかもしれないと思ったんです。私は、好きなものをのんびりと作っていたかったんだけど、それでは採算がとれない。よく言われることですが、好きなものを好きなままでいたいから、私はだんだんと服飾の世界から心を離していったのかもしれません。
── そこで見つけたのが、料理の道と?
中道 そうですね。
── 料理との出会いはどこで?
中道 専門学校の時に、アルバイトで(笑)。飲食店でアルバイトを始めたら、それまで料理なんてまったく向き合ってこなかったのに、知れば知るほど楽しくなってしまって。
── ハマったんですね。
中道 はい。いつかは料理を仕事にしたいと、専門学校を卒業してからもずっと料理の仕事を続けて。プライベートでも研究のために毎日料理をしようと決めて、ずっと作っていました。
── へぇ。
中道 だからと言って、そんなに腕が上がったわけではないんですけど(笑)。
旅も好きだったから、お金が貯まれば海外に旅に出て、帰ってきては料理の仕事をして。専門学校を卒業してからは3年ほど、そんな生活を続けました。
── 旅ですか。
中道 気軽なバックパッカーみたいな感じで。
でも、フランスの友達を訪ねて一ヶ月滞在しながら料理の研究をしたり、アジアを食べ歩いたり、スパイスの勉強をしたり……素敵だなと思うカフェに入ってみたり。適当に旅していたつもりではあったんですが、振り返ると料理に関連する場所に無意識に向かっていた気はします。
美味しい料理と人が集う、カフェという場を提供したい
── 自分のカフェを持ちたいと思ったのは、いつ頃?
中道 25歳くらいの時に、旅友達に「なんかカフェとかやりたいよねぇ」って雑談されて、「あったしかに!」って。
── (笑)。
中道 そこからは、日中の仕事と平行して、個人でまずはフード・ケータリングの仕事を請け負うようになりました。クラブイベントにフードを提供したり。
── 「ゼロカフェ」の原点のようにも思えますね。
中道 あ、間違いないです。「ゼロカフェ」出店のきっかけは、そのフード・ケータリングのイベントで、「ゼロカフェ」の系列店「ガパオ食堂」の店長に出会ったことなんです。
── なるほど、そこで繋がるんですね。それはいつ頃のお話なんですか?
中道 2013年3月。
── 「ゼロカフェ」のオープンが?
中道 2013年6月。
── ……非常にタイトなスケジュールですね。
中道 タイトでした(笑)。まぁ、そんなものかもしれませんね、人生って。
── カフェはどうやって作っていった?
中道 すでにこの場所は借りてあって、夜はクラブとして営業することが決まっていたんです。でも、お昼の時間帯を請け負う人がいなくて、もともとカフェを想定していたから私に店長をやらないかとお話をいただいて。
── どんなカフェを目指そうと?
中道 ごはんが美味しいカフェ。人が集って、気軽な交流が生まれる場所。
── いいですね。料理好きなら、レストランは考えなかった?
中道 うーん。和食やフレンチを学んだこともあって、その姿勢や考え方は好きだったのですが、どこか「思想の押し付け」みたいな部分を感じるところもあって。
私は好きな料理の幅がとても広いので、なんでも組み合わせられるカフェという業態は楽しそうだなと思っていたんです。
── なるほど。
中道 創作レストランも検討はしましたが、旅をしている時に、海外のカフェでオーナーと仲良くなったりして、「日本の料理教えてよ」みたいな話から始まる交流がすごく好きだったので。そういった「ゆるさ」みたいなものも持たせるなら、やっぱりカジュアルなカフェがいいんじゃないかというのもありましたね。
── 「ゼロカフェ」のメニューは、全部中道さんが考えているんですよね。
中道 基本的にはそうですね。スタッフと相談したりしながら作ることもあります。
カフェって結構馬鹿にされやすい気がしていて。言い方が乱暴すぎると誤解を生むと思うんですが、レストランに比べると、おしゃれだけど美味しくない、結局カフェはお茶だけだよね、みたいな感じ……ありませんか?
── どうでしょうか。
中道 私は人が集まる場としてのカフェがすごく好きだから、自分としてはそれがとても悔しくて。
── うんうん。
中道 だから私は、ちゃんと美味しいものを提供できるカフェを絶対に作ろうと思って。
── なるほどねぇ。素敵です。
25歳の結婚ラッシュで焦ったから、30歳は別に意識しない
── 結婚はしたいですか?
中道 したいと思いますね。
── 結婚という意味で、30歳を目前にして、焦ったりします?
中道 全然。25歳〜26歳くらいの時の方が、焦っていた気がします(笑)。
── 第一次結婚ラッシュの時期ですね。
中道 そうそう。その頃は、「私は果たして結婚できるのか……」みたいに不安になったりしていたのですが、その時に焦ったからなのか、今は全く意識しないですね。
── 子どもはほしい?
中道 子どもは、相手がほしければって感じなんです。
── 絶対に産みたい、とかでは。
中道 ないんですよ。
── ふぅん。
中道 今は仕事が楽しくて。やりたいことのうち、できていない部分が大きすぎて、今はその部分を頑張りたいなって気持ちが大きいですね。
理想は、両立できたらいいですよね。子育てと、お仕事と。
── 今のお仕事スタイルだと、実現できそうですか?
中道 いや、今のままだとあんまり……どうなんですかね。でも、できるように説得したいですね。
── パートナーや、周囲の方々とかを。
中道 そうですね。
── じゃあ、今の仕事はずっと続けていきたいと?
中道 そうですね。やればやるほど楽しさを発見してしまうので、できれば子どもを片手であやしながら仕事をしたい(笑)。
── いいですね。中道さんの、直近の夢って何になるんですか?
中道 カフェの繁栄(笑)。
── さすが店長です。
中道 ライブをもう少し増やしたいですね。あと、パラグライダーをやりたい。
── では、30代はどんな年代にしましょう?
中道 うーん。あんまりイメージしたくないんですよね。
── なぜ?
中道 イメージしても、多分思い通りにはいかないんだろうなって思うんです(笑)。描いた未来と違ってしまった時に、私は落ち込んでしまうような気がしますし。
── へぇ?
中道 だから、なるようになる、みたいな気持ちでいますね。
── でも、ちゃんと自分の進みたい道を見極めて、努力されていますよね。では、最後に1つ質問を。【86世代】って、どんな人が多いと思いますか?
中道 うーん……一言では言えないけれど、フットワークの軽い、一匹狼が多いなぁって印象は持っていますね。
── 私もそうかもしれません。
中道 私も完全にそうですもん。1人、好きですか?
── 全然平気です。
中道 よかった、私だけじゃなくて(笑)。
── 私もまた特殊な【86世代】な気もしますが。中道さん、お話を聞かせてくださって、ありがとうございました。また今度、ランチを食べに遊びに来ますね。
(料理写真:ゼロカフェ青山公式Facebookページより)
お話をうかがったひと
中道 麻都香(なかみち まどか)
1986年12月11日(胃に良い日)生まれ。いて座、A型。鹿児島出身。パクチー愛好家。宮益坂を登りきって少し歩くと見つかる、青山と渋谷の間にある地下カフェ「Aoyama ZERO CAFE」の店長。世界各国を周り、様々な国の食文化に触れることによって生まれたオリジナルレシピはスパイスや食材の組み合わせが面白くて美味しいとイベントやケータリングで評判になる。現在、「体に優しいエスニック料理」をテーマに、青山という最先端の場所で刺激を受けながら日々発信している。
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渋谷・表参道から徒歩7分の場所にある地下カフェ。 ごはんは美容と健康に良いと話題の黒米を使ったヘルシーエスニックフード。 フリーWi-Fi・電源完備。 音響設備もこだわっており、 アコースティックライブやトークイベント、DJイベント、ワークショップ、異業種交流会、ケータリングまで幅広く行う。
住所:東京都渋谷区渋谷2-9-13 AiiA ANNEX Bid. B1F
営業時間:CAFE & BAR / 11:30 – 21:00 (LAST ORDER / 20:30)
電話番号: 03-3797-9933
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