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【86世代】オタク気質の行動派、どこかつかめない男|映画ブロガー 柳下修平

「世代? あんま気にしたことないですねえ」。そう言ってのける、この男。ブロガーとして活躍しつつ、SNSやメディア運営のコンサル業務もこなす、かと思えば大規模なイベント司会で笑いを取り、ディズニーランドは年間パスポートを購入するくらい大好きで、今ハマっているものはAKB48。キャラはつかめないのに多くの映画好きの心はつかんでいる、それが、映画ブロガー・柳下修平だ。彼のアタマの中と、同世代に対する思いを探ってみた。(聞き手:佐野知美)

柳下修平さん

── まずは簡単に、今どんなことを手がけているのか教えてください。

柳下修平(以下、柳下) もともとが映画好き。映画ブログを始めたのがきっかけで、ブログ発のお仕事も増えてきました。

── 映画関連の仕事が本業なんですか?

柳下 いえ、基本の仕事は、SNSやそこから派生したオウンドメディアやウェブ関係のコンサル、プロデュースですね。最初は会社員でしたけど、今はフリーランスでやってます。

── 独立したのはいつ頃?

柳下 2011年、震災の頃ですね。

── 5年前、23歳くらいの頃ですか。

柳下 はい。ちょうどFacebookとかが盛り上がってきた頃で。もともとSNSのコンサル業を、会社員をしながら副業みたいな形でやっていて、震災後に個人の講演の依頼が激増。結果、なりゆきでそっちを本業にしたって感じです。

── もともとウェブの世界が好きだった?

柳下 いや。僕の実家は、超アナログな家庭だったので。パソコンもなかったですし、全然です。

── あら、意外。そうなんですね。

柳下 でも、大学生になってパソコンを本格的に触ってウェブの世界を見始めたら、ハマっちゃって。

大学に入学したのが2005年なので、ちょうど「mixi」が流行り始めた頃。それに加えてSNSやアメブロブームみたいなものもあったので、要は情報発信と交流するところにものすごく面白さを感じちゃったんですよね。

僕、B型なので一回ハマると止まらなくて(笑)。

柳下修平さん

── へぇ。あー、でも懐かしいですね。あの頃、まだ「iPhone」は出ていなくて、「iPod classic」が最先端だった。

柳下 ですねぇ。

── 映画もそれと同じ感じでハマっていった?

柳下 うん。高校生の頃に、世界史の先生が「世界史を勉強するには『グラディエーター』を観るのがいい」とおっしゃっていたので、素直に観たんです。そしたら、「なんだこれは!」と感動してしまって。

『グラディエーター』のリドリー・スコット監督と、主演のラッセル・クロウにどハマりして、リドリー監督の作品と、ラッセル・クロウが出演している映画をすぐに全部観ました。

── 全部観る、というその徹底ぶりが素敵ですね。

柳下 「iPhone」とかの話と一緒で、その頃はもちろんビデオテープで観ていましたけれどね(笑)。あ、でも大学に入学したのは2005年だから、ちょうどTSUTAYAさんかが、DVDレンタルに主力を移した頃かな? DVDでも観ていたかも。そう言われると、映画周りの環境もこの数年でかなり変わりましたねぇ。

映画は全部オフになる。だから好き

── さて。柳下さんが思う、映画の良さとは?

柳下 語弊があると嫌なのですが、僕文学的なことは大好きだけど、自分で本を読むのはそこまで得意じゃない。ビジネス書も手に取るけれど、分厚かったり、小説も前後編になっていると、うわぁってなっちゃう時がある。

でも、映画は時間が決まっていますから、たとえば2時間の作品であれば、その間じっくり集中できる環境が好きなんです。

柳下修平さん

── うんうん。

柳下 僕にとって映画は、観ることですべてを捨てて没頭できるという魅力があると共に、知的好奇心というか、文学的なものを取り入れたいという欲を埋めてくれるものでもあると思いますね。教養というか。

今は映画を観ることが仕事になっている部分もあるので、ちょっとまた意味合いは変わりますが。

── 映画を観る時間は、全部オフにできる。人生で必要なエッセンスも詰まっている、と。

柳下 そう。

── 柳下さんは、年間どれくらいの映画を観る?

柳下 年間200本くらい。試写会のお声がけをいただくことも多いので。でも、好きな作品はお金を払って観たいという想いがあるので、試写会で観た後にリピートすることもありますよ。最近だと『名探偵コナン』を観たり。

── へぇ。じつは先日、柳下さんが主催されている「映画ファンの集い」というイベントにお邪魔しました。

柳下 お、ありがとうございます。最初は映画好きのオフ会みたいな感じで始めた会だったんですが、今は大きなイベントスペースをお借りして、100名超の規模で行うくらいまでになりましたね。すごい。

── 私は映画にそこまで詳しくないのですが、色々な背景を持った人が平等に楽しめる仕組みが施されていて、ものすごく楽しんじゃいました。

柳下 基本的にはトークイベントなんですが、僕が一方的に話すのを聞くというよりも、参加者の方々がテーマを設定された「テーブル」に集まって、10名以下の少人数で映画について語り合う、というのが主なイベントの目的になりますからね。

最近はワーナー・エンターテイメント・ジャパンさん、ウォルト・ディズニー・ジャパンさん、松竹さんなど大きな映画会社さんにもタイアップを頂いており……ありがたい限りです。映画最高。

── すごいベタですけど、おすすめ映画とか聞いてみたいです。

柳下 うーん。僕はどっちかっていうと、大衆的な、シネコンでやっている映画が好きです。

── ミニシアター系の映画とかじゃないんですね。

柳下 うん。その質問、めっちゃよく聞かれますけど、僕は普通にランキングで一位のやつ観てくださいって言いますよ(笑)。

── あはは(笑)。それはいい。最近だと?

柳下 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。

柳下少年の意外な一面

── そんな柳下さんって、小さい時はどんな少年だったんですか?

柳下 中学生と大学生の頃は、だいたいグループを仕切る側にいましたね。

── あら、学級委員長タイプ。

柳下 はい。だから人前でしゃべるの、得意だし好きなんですよ。

── あれ? じゃあ高校生の頃は?

柳下 高校は、中学からエスカレーター式で上がってきた学生と、外部から受験して入ってきた子が交じる学校に進学したんですが、僕は受験して後から加わる側の、いわゆる少数派だった。だから、基本は下っ端でした。

── 下っ端(笑)。柳下さんにも、身を潜めていた時期があったんですね。

柳下 中学・大学時代の同級生に今の僕の活動を説明したら、何となくは分かってくれる気がしますが、高校時代の同級生に「映画ブロガー」とか「映画ファンの集い主催」とか、コンサルタントなどの諸々の仕事の話をしたら「え? あの柳下が、人前に立って色々と引っ張っている……?」みたいな、楽しいギャップを提供することができる気がします。

柳下修平さん

── ふぅん。

柳下 高校生の頃は、特に趣味とかもなくて。部活も飽きっぽくていくつも変えましたね。

大学に入ってから海外をバックパッカーで回ったりし始めて。まぁ、それもじつは映画のロケ地巡りだったんですけれど(笑)。

── 好きなことには徹底してこだわりますね!(笑)オタク気質な面がありつつも、行動派。つかめませんね、柳下さん。

柳下 よく言われます(笑)。

ブロガーだけど「書くこととか別に好きじゃない」

── そういえば、もとから書く事もお好きだったんですか?

柳下 いえ、まったく。

── えっ。

柳下 作文とか、大っきらいでした。国語も苦手。

── なのに、なぜ、ブロガーに???

柳下 あのブログは、しゃべり口調で書いているから続けられるんです。映画好きなひとって、どうしても批評したがるんですけど、僕はあんまり悪口を書きませんし、批評もしません。だから読者を選んでしまうところがたまに傷なのですが、僕としてはそのスタイルが書きやすい。

── そうか、映画好きなひとに対して、おしゃべりする感覚で書いてるんですね。

柳下 そうですね。映画ブログで淡々と語るのではなく、感想をばーっと書いていくブログだからこそ、逆に固定で読んでくださる人もいるのかなって思います。

だから、これからも発信は続けていきたいですね。

年齢? そんなの地続きだから関係ないよ

── 柳下さんの目に、86世代ってどういう世代に映っています?

柳下 1986年生まれのひとたち。うーん、あんまり意識したことないですね。

── ……じゃあ、20代最後を迎えるにあたっての抱負は、と聞かれたら??

柳下 年齢は地続きだと思っているので、30歳が節目、ということは特に考えていないですね。

── 今のうちにやっておかなきゃ! と焦ることもない?

柳下 ないですね(キッパリ)。

── ほ、ほぅ……男性と女性の違いとかもあるのでしょうか。私は女性なので、割とある気がしています。

柳下 年上の女性の友達が何人かいるんですけど、彼女たちが29歳のとき、必死に婚活とかがんばっていたのに、30代を超えると途端に何にも言わなくなるっていう姿を見ていたんですよね。

── (笑)。

柳下 そういう様子を見ていたのもあって、目標とかやりたいことは、特に年齢を節目に考える必要はないんじゃないかなって。

── そんな柳下さんも、結婚はしたい?

柳下 はい、いずれは。

── でも今のお話だと、いつまでにと明確に決めているわけではなさそうですね?

柳下 まだイメージできないですね。でも結婚そのものは、いつかはしたいと思っています。

── 最後にもう1つ。柳下さんが今目指しているものって、何になるんですか?

柳下 映画の仕事を、もっと増やして軸にしていけたらなって。もうちょっといろいろなことを、映画に集約させていきたいんですよ。詳しくは、内緒。

── ふふ(笑)。なんか、クールなようでオタク的な熱量もあり、不思議な同世代でおもしろかったです。ありがとうございました。

柳下修平さん

お話をうかがったひと

柳下 修平(やぎした しゅうへい)
1986年生まれ、映画ライター&ブロガー。メディアや企業のSNSプロモーション等も担当。趣味で始めた映画ブログが2年ほどで成長し、映画ライター・ブロガーがいつしか職業に追加。映画ブログ「Cinema A La Carte」で新作映画のレビューを中心に映画の情報を発信。LIGブログやAM、フィルマガ等へも映画記事を寄稿している。毎月最終土曜日には映画ファン130人を集めた「映画ファンの集い」というイベントを開催。この7月の開催で15回目となり、映画業界を盛り上げる如く多方面で活動している。

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立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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