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【イベントレポ】『移住女子』出版記念!!「旅をしながら本を書くのが夢だった」伊佐知美がワークスタイルを語る

「このままでいいのかな」
「自分は本当は何がしたいんだろう」
「もう少し自由に生きてみたい」

そんな風に思ったことはありませんかーー?

こんな書き出しではじまる、『移住女子』。

「灯台もと暮らし」の編集長・伊佐知美が2017年1月に出版した書籍です。

『編集女子』とみなさまにお配りしたSAC about cookies
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書籍出版に伴い、伊佐はいくつかのイベントに登壇しました。「灯台もと暮らし」ではそのレポートをいくつか公開していこうと思います。

奥浅草のカフェつむぐりさんで行ったこのイベントは、限定15名にお越しいただき、書籍出版に至るまでの道のりから、制作秘話、もちろん地域や移住のことをたくさんお話しました。

聞き手は、灯台もと暮らしにも2度ほど登場していただきイベント登壇も何度もしていただいている編集・ライターの鈴木絵美里さん。伊佐の盟友です。

鈴木絵美里さん
鈴木絵美里さん

いくつか出版記念イベントのレポートが出るので、今回は伊佐の「旅をする心境」や「本をつくることになるまでの経緯」など、これまで灯台もと暮らしでは詳しく触れてこなかったテーマについて、トークセッションからピックアップしてお届けします。

まずは自己紹介とふたりの関係から

「灯台もと暮らし」編集長・伊佐知美(左)
「灯台もと暮らし」編集長・伊佐知美(左)

伊佐 移住女子の出版記念イベントで、私と鈴木絵美里さんが登壇しますが見ての通り、めちゃくちゃこじんまりした会なのでみなさんも一緒に色々話せたらいいなと思っています。

絵美里 そうですね。お客さまも一緒にトークする感じでできたらいいなと思っております。

伊佐 お客さんは15名限定とさせていただきました。今日はトークセッションがメインなのでこのまま始めたいのですが、まずは自己紹介から。

改めまして、伊佐知美です。このたび『移住女子』という本を出版して、今日は著者の伊佐としてイベントを開催させていただいています。

「灯台もと暮らし」の編集長をしながら、個人としても本を出したいなと前々から考えていたんですね。そんな29歳のときに新潮社さんからお話をいただいて、その前に「移住女子」に登場いただいているみなさんとの出会いがあって……と、ご縁がつながり本を書かせていただけることになりました。絵美里さんからも自己紹介をお願いできますか?

絵美里 はい、ありがとうございます。鈴木絵美里と申します。普段はフリーランスとして、編集・執筆・企画をやらせてもらっています。伊佐さんとの出会いは、まだ私が会社員だった頃ですね。

伊佐 お互いに前の会社に勤めていたときでした。

絵美里 今、私はフリーになって2年くらいですけど、前は趣味系の雑誌やムックを中心に出版している「エイ出版社」という会社に7年弱くらいいました。そのときに伊佐さんにお会いしたんですよね。

伊佐 そのときはまだ、灯台もと暮らしは影も形もなかったです。すごく前のような気がするけど、まだ(初めて会ってから)そんなに経ってないですね。3年くらい前でしょうか、最初は灯台もと暮らしの【かぐや姫の胸の内】という連載で絵美里さんに取材させてもらいました。

絵美里 そうそう。それ以来こういう場でご一緒させていただくのは、もう7回目。

伊佐 イベント登壇が3回目で、私がインタビューさせてもらったのが3回ですね。

絵美里 伊佐さんのインタビュー力ってすごいですよね。私自身は「なんで私の話聞きにきてくれるんだろう?」といつも思いつつも、伊佐さんが設定してくれたテーマに沿って話していると私自身が整理されることが多いので、喜んでお受けしてしまいます。インタビューのおもしろいところって受ける側も棚卸しさせてもらえるところだと思うんですけど、まさにそれを感じさせてもらえるというか。

今日は初めて、私が聞く側に回りたいなと思います。

知らない街や知らない言語は最高

お客さん

絵美里 伊佐さんって、旅をしながら、灯台もと暮らしの編集長もしながら、他のお仕事もしていますよね?

伊佐 「編集女子が私らしく生きるための作戦会議」というオンラインサロンのオーナーをしたり、ライターとしていただいたお仕事をしたりしていますね。

絵美里 そもそもなんですけど、灯台もと暮らしのテーマはやっぱり日本国内なんですか?

伊佐 そうですね。特に当初は、そうやって考えていました。

絵美里 だけど、いま伊佐さんが旅したいのは外国である、と。

伊佐 日本の47都道府県は学生のときに一周しているんですよ。最近はまたちょっと変わってきたんですけど、私は一度行ったところにはあまり興味を持てないひとだったんです。

伊佐知美

絵美里 つねに知らないところに行きたいですか?

伊佐 知らない街や知らない道、知らない言語、最っ高ですね。食べたことのないものを食べるとか。

絵美里 その欲望というか、書くことと旅を何がなんでもつなげるぞっていう伊佐さんのエネルギーの源を今日は探りたいです。

伊佐 うーん……。私その「枯渇力」みたいなことよく言われるんです。

絵美里 ちなみに伊佐さんって何を食べて生きているんですか?(笑)。

伊佐 食べているものは普通ですよ(笑)。

絵美里 そっか(笑)。

旅がしたい!

絵美里 それで、つまり旅をしながらできる仕事がいいと思って、書く仕事をしていらっしゃるんですか?

伊佐 もともとは書く仕事がしたかったんですよ。その上で、子どもの頃から海外にいたこともあって、大学もカナダにホームステイしていたりとか、ひとり旅もよくしていて、旅も大好きでした。ただ、その2つを繋げる方法をよくわかっていなかったんです。「小説家って海外にいても書けるよな」って、それくらいぼんやりしたイメージがあった程度で。海沿いの丘にある小さなアトリエで原稿を書いて、お金を稼げる。「それって、すごー!」みたいなイメージ(笑)。

絵美里 そんなひと、現実にいるのかな……(笑)。

伊佐 村上春樹をよく読んでいて、彼は海外で小説を書いていたんですよ。

絵美里 ああ、確かに『遠い太鼓』とかギリシャで書いていましたもんね!

伊佐 あのイメージです、完全に(笑)。これまであんまり自分の中で「旅」と「書く」ことが繋がっていなかったんです。まず仕事として成り立つのがライターだったので、そっちに必死だったのがこの3年くらいですね。

会場には伊佐が世界中で撮影した写真とタクロコマが日本の各地域で撮影した写真を飾った
会場には伊佐が世界中で撮影した写真とタクロコマが日本の各地域で撮影した写真を飾った

遠野の写真

『移住女子』を書くことになった経緯

絵美里 最初の経緯として、新潮社さんから「移住で書いてください」というオーダーがあったんですか?

伊佐 なぜ書くことになったかというと、これはもう、本の中にも出てくるのですが新潟の「イナカレッジ」さんのおかげなんです。

絵美里 イナカレッジ?

伊佐 『移住女子』という言葉をつくったのも、イナカレッジさん。そしてイナカレッジさんが発行する、新潟の中山間地域のくらしをまとめた冊子「ChuClu(ちゅくる)」をつくった「移住女子」のみなさんの存在が、この本のはじまり。

……順を追ってご説明すると、まず『移住女子』という本は、都心から地方へ移住した8名の方を取り上げたインタビュー本です。去年の4月に岩手、仙台、福岡、高知など、日本国内を巡って取材させてもらって書いた内容。

ただ、それだけだとストーリーを追うだけになってしまうので、総務省や政府の機関に取材させてもらい、2章立ての本にしました。1章がインタビュー、2章が「移住女子を考える」というテーマ。移住の指南書としても役立つ本です。たとえば「家や仕事はどうやって探したらいいんですか?」という概論を掲載しているページもあります。

書籍について説明する伊佐

絵美里 実際に移住した女性の声が読めて、指南書として役立つ情報も掲載されていると。灯台もと暮らしの編集長だからこそこの本を執筆し、出そうというお話になったということですか?

伊佐 そう……ですね。新潮社さんと相談しながら内容は決めていきました。でも正直に言うと、私はもともと自分が移住に関する本を出させていただくことになるとは、思っていなかったんですね。文章を書く上で、どこかのタイミングで本を出したいなとはもちろん思っていたんですけど、自分が著者として立つことになるならば、小説か旅のエッセイを出すんだと思って生きてきました。

絵美里 うんうん。

伊佐 経緯としては、灯台もと暮らしの編集長として全国に取材に行って移住者さんにお話を聞いて、執筆をして、移住関連のイベント登壇のゲストで呼んでもらうことも増えてきて。イナカレッジさんは、新潟の移住促進団体なのですが、2015年の12月に「日本全国移住女子サミット」という大きなイベントを開催されたんです。

絵美里 伊佐さんは、そのイベントには何らかの立場で関わっていたんですか?

質問する鈴木絵美里さん

伊佐 登壇者として出させてもらいました。その前に一度、新潟県出身者として「にいがたライフスタイルカフェ」というイベントに登壇させていただいていたこともあったかと思います。「新潟県出身だし、灯台もと暮らしで編集長やっているし、よろしければ」とお声がけをいただいて。みんな実際に移住しているプレーヤーだったのに、私だけが取材する側でした。

そのイベントがきっかけで、新潮社内で「移住女子に関する本を出したいですね」という話が持ち上がったそうで、巡り巡って後日私に問い合わせが。

絵美里 こいつは書くにはぴったりの存在だな、と思ってもらえた。

伊佐 詳細は分からないのですが(笑)。とにかく「移住に関する書籍をつくりたいのですがあなた執筆できますか?」という問い合わせを、新潮社からダイレクトにいただきました。

絵美里 じゃあ、その段階では「これから本を書くぞ!」という気持ちではなかった?

伊佐 全然なかったですね……。あれはびっくりしましたねぇ。

絵美里 でも、いつかは本を出したいなと思っていたわけで、やっぱり、嬉しかった?

伊佐 もちろん、すっごく嬉しかったです。

でも、お話をいただいた2016年3月って、世界一周に旅立つ直前。色々なお仕事や関係性を整理していた時期だったんです。旅は2016年4月から開始する予定だったので、航空券の手配も済ませていて。だから書籍執筆という心構えがまったくなかった。すごく驚いたというのが正直なところでした。

絵美里 私も最初、なんとなく伊佐さんが『移住女子』という本を出すことが不思議で。というのも、灯台もと暮らしのメディアにとって「移住」というテーマはとても関係が深いと思っているし、違和感はないんだけど、小説や歌詞やエッセイを書きたいと伊佐さんはいつも言っていたので。

でも、灯台もと暮らしでやっていたことがあったからこその本なわけですよね。編集長もしながら旅もする、という伊佐さんのパラレルな生き方を近くで見ていると『移住女子』が最初の著書であることが意外に思えるくらいだけれど、もとくらを読んでいらっしゃる方にとってはごく自然にとらえられるとも思います。

伊佐 そうですね。

生きる場所を選ぶ機会は人生の中でも限られてる

会場の様子

絵美里 迷っているひとって、たくさんいると思うんですよ。移住もそうだし、旅もそうだし、学生じゃなくなって社会人になったら、「どのタイミングで旅に出られるだろう?」と考えるひとは、きっとたくさんいますよね。

伊佐 生きる場所を選ぶ機会って、じつは人生であんまりないんですよ。生まれたときと、就職するときと、結婚するとき。私は『移住女子』を読んでくださった方すべてに移住をしてほしい!とは思っていなくて、自分がこれからどこで生きていこう?とか、何をやって生きていこう?とか迷ったときの、ひとつの選択肢として移住を考えてみてもらえたら、うれしいという気持ち。

当たり前だけど、生きる場所ってすごく大事なんですよね。余談になるけれど、今は私自身、世界一周をしていて、自分の家がないんですね。

絵美里 家がない(笑)。

笑う鈴木絵美里さん

伊佐 そうなんです(笑)。家がないと、本当に、根を下ろす場所がほしいなって思いますもん。やっぱり家は大事で、どこで生きるか、誰と暮らすかって大事ですよ。『移住女子』に出てくる女性の素敵な姿しかり。これだけ旅が好きでもそう思います。

絵美里 家を失う前までは、全然そういうこと考えなかったんですか?

伊佐 全然なかった。「家、いる?」みたいな感じでした。

絵美里 家いるんだ〜(笑)。なくなると寂しくなるんですか?

伊佐 やっぱり本拠地はほしくなりますね。「私はここに住んでいる」と言えること。もしかしたら今後、職業の肩書と同じくらい、地名の肩書が重要になる時代がくるんじゃないかとすら思っています。精神的な拠り所にもなるし、やっぱり「根無し草」って言葉はあんまりいいイメージなくないですか?

絵美里 根無し草って言えばいいイメージはないですけど、「自由・放浪・さすらい」とか言えばいいんじゃないですか?

伊佐 したきゃすりゃあいいんですけど、1年のうちに大半はそこに住まなくても、一個は決めたいなとは思っています。今後は多拠点居住をするんじゃないかな……と考えています。今は新潟に本籍を置いて、東京と出張先を転々として、海外に行っている感じなんですけど、近い将来メインは決めたいなって思っています。

絵美里 それは……なんのためにですか?

伊佐 暮らしには家が必要だからです。それに尽きる!(笑)。

イベントを終えて

移住女子出版記念イベント・集合写真

イベント終了後、有志で懇親会兼二次会を行ったのですが、参加者数はなんと登壇者・スタッフを含め18人。15名限定のイベントなのに10名以上の方が参加してくれました。

驚いたのは、イベントでも二次会でもお客さんの熱量がとても高かったこと。みなさん伊佐に旅やリモートワークや移住について聞くのはもちろん、僕ら編集部メンバーや社長に対して、いろいろな質問を投げかけてくれてました。

たくさんのひとに来ていただきパーッとイベントを開催するのもよいけれど、少人数で熱量の高い空間をつくるのはとても楽しかったし、編集部としてもまたやってみたいなと思った、そんな夜でした。

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くいしん

編集者。1985年生まれ、神奈川県小田原市出身。→ さらに詳しく見る

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