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ひとのつながりで魅せる町へ。鳥取県八頭町フィールドトリップに行ってきました

去る2016年秋、編集部は1泊2日で鳥取県八頭町へフィールドトリップへ行ってきました!

じつは以前も鳥取へうかがった、もとくら編集部。前回は智頭町と三朝町を訪ねましたが、今回は「ことりっぷ」さんと、ことりっぷパートナーメディアの「とっとりずむ」さんと一緒に八頭町へ参ります。

町内を案内していただくのは、一般社団法人ワノクニ代表の平賀謙太(以下、平賀)さんと小谷草志(以下、小谷)さんです。

鳥取県八頭町ってどんな地域?

鳥取県の八頭町は、県の南東部に位置する人口約17,000人の町です。

今の八頭町は八頭郡と呼ばれている地域で、船岡町、郡家町、八東(はっとう)町が合併してできた町です。八頭という名前の由来は、八上郡(やがみごおり)の八と、当初合併する予定だった智頭町の頭を取って命名されました。

八頭町

八頭町の名産品は、主に柿、梨、米。中でも贈答品として親しまれている花御所柿が有名です。そのため、町中に見渡す限り柿の畑があります。

さらに、随所に見られるのは柿だけでなく、こちら。

八頭町のカカシ

手づくりのカカシが、あちこちに! 駅舎や駐車場、町中のひとが集まるところには必ずと言っていいほど、カカシたちが設置されています。

八頭町を盛り上げるために何かできないかと考えた地元のお母さんたちが、お手製のカカシをつくってはいろいろなところに設置しているのだとか。何か新しい取り組みや建物ができると景気づけに、「あんたに似せたカカシつくってきたで」と言って持ってきてくれるそうです。

鳥取県八頭町で始まる新しい取り組み

町を盛り上げようとしているのは、なにもお母さんたちだけではありません。

今回、平賀さんたちに連れて行っていただいた場所を、いくつかご紹介します。

地元の同級生たちと立ち上げた「HOME8823」「BASE8823」

HOME BASE8823
HOME8823
BASE8823
BASE8823
BASE8823
BASE8823の女性用ドミトリーはこんな感じ

八頭町には地域で採れた食材が食べられるカフェ「HOME8823(ホームハヤブサ)」や、「BASE8823(ベースハヤブサ)」というゲストハウスがあります。

BASE8823
BASE8823の共用スペース

これらを運営しているのは、株式会社トリクミ

株式会社トリクミは、アートディレクターである古田琢也さんと古田さんの高校時代の野球部の先輩・後輩で立ち上げた会社で、HOME8823もBASE8823も日夜地元の方や若者で賑わっています。

BASE8823
BASE8823で働く山田景さん

古田さんの野球部の後輩でもあり、株式会社トリクミのメンバーのひとりである山田景さんは、BASE8823で働く前は東京でサラリーマンをしていましたが、古田さんからBASE8823がオープンするタイミングで声をかけられたといいます。

「高校までは八頭町にいて大阪に進学したんですが、卒業後は洋服が好きだったこともあってアパレルの仕事をしていたんです。東京で働いていた会社は、野球部だったこともあり野球メーカーの営業職でした。でも……サラリーマンが肌に合わなかったんですよね。

ただ、地元へはいつか帰りたいと思っていました。だから古田から声がかかったタイミングも良かったのかもしれません。誰かが八頭町を盛り上げてくれるのを待つのではなく、自分たちでチャレンジできる方がおもしろいですしね」(山田さん)

BASE8823

また、名前にもあるハヤブサとは、八頭町の隼地区のこと。スズキが販売しているバイクに「隼(ハヤブサ)」という車体があることから、バイク乗りたちの間で隼地区が有名になっていき、今やライダーにとっての聖地になっています。

「ライダーにとって通過点になってしまっていた隼地区で、ひとが集まる場所をつくりたいと思っていたのもBASE立ち上げの背景にあります。だから、BASEのメインのお客さんはライダーの方々です。でも女性のグループやカップルで泊まりに来て下さる方もいらっしゃいますよ」(山田さん)

実際にライダーとして八頭町を訪れ、結果移住したという方もいます。

base8823

八頭町に10年間通い続けていた山村俊太さんは、BASE8823の工事が着工されるタイミングでトリクミの方々と仲良くなり、地元の奈良から移住しました。

生まれも育ちも、就職も奈良県だったという山村さんですが、八頭町を第二の故郷だと感じていたため、移住することにまったく抵抗はなかったといいます。ライダーとして通いつめていたということもありますが、地元の高校に通っていたメンバーが中心になって立ち上げたBASE8823に山村さんがスッと馴染めたのは、バイクや八頭町への愛を誰しもが理解していたからかもしれません。

「好きな町に恩返ししたいという気持ちもありました。だからBASE8823で働く機会をもらえて、ありがたかったなと思っています。今後は、ここでライダーと地域の方をつなげていきたい。実際、僕がそうやって八頭町に移住したので……。

きっかけは何になるか分からないですから、ライダーが来たくなるような景色の綺麗なスポットを教えてあげたり、走っている様子を写真に撮ってあげたり。ひとりで走っていると、誰も撮影してくれないから、自分がバイクに乗っているところを撮ってあげると、喜んでいただけるんですよね。ここ(BASE8823)でできることを、まずは地道にやりたいと思っています」(山村さん)

取材中
BASE8823の共有スペースでお話をうかがった

ちなみに、山村さんにはバイク以外にも大好きな趣味があるといいます。

「中高生の頃からずっとお菓子づくりが趣味なんです。バイクに乗る時もしょっちゅう自分でお菓子をつくって持って行っていました。パウンドケーキなら、かさ張らずダメになりにくいため、ツーリングのお供に一番適していたんですよね」(山村さん)

手作りパウンドケーキ
山村さん手づくりのパウンドケーキ。中高生のころからお菓子づくりが趣味だったという。BASE8823で販売しているパウンドケーキは、すべて山村さんがつくっている

BASE8823は、宿泊者以外もカフェやバーとして利用することができます。田んぼが広がるまっすぐな道に、ポッと灯るあかりを見つけたら、きっとそれがBASE8823です。

八頭町のグルメが集う「大江ノ郷ヴィレッジ」

また、「外を見ていると、突然おしゃれな建物が見えてきます」と言う平賀さんに連れて行っていただいたのは、養鶏農家だった小原利一郎さんがオープンさせた「大江ノ郷自然牧場」。八頭町の中でも指折りのグルメスポットです。

大江ノ郷ヴィレッジ

山の中に突如、煉瓦づくりの門とガラス張りの建物が現れます。

大江ノ郷自然牧場内にある「cocogarden(ココガーデン)」では、新鮮な卵を使ったシュークリームやプリン、バウムクーヘンなどを販売していて、中でもパンケーキは大人気です。

週末は、八頭町や町外から、その人気を聞きつけて集まったひとたちで行列ができるといいます。

cocogarden
スイーツを中心に楽しめる「cocogarden(ココガーデン)」

cocogardenのシュークリーム

cocogardenの隣にある「大江ノ郷ヴィレッジ」には、レストランとパン屋さんやスイーツを販売しているお店が入っています。

大江ノ郷ヴィレッジ
大江ノ郷ヴィレッジの中はこんな感じ

大江ノ郷ヴィレッジ

「東京の表参道にあってもおかしくない……!」と編集部一同驚いたほど、洗練されたスポットでした。2016年の春にできたばかりの大江ノ郷自然牧場。若い女性を中心にクチコミや評判が広がっているそうです。

日本で一番小さい牧場「ハーモニィカレッジ」

最後に向かったのは、ポニー牧場。この牧場を運営している「ハーモニィカレッジ」は、平成7年4月からポニー牧場づくりをスタートさせ、平成25年以降はNPO法人として活動しています。

ポニー牧場

ポニーの乗馬体験ができたり、キャンプを開催したりすることの他にも、自然体験活動を基軸にした子育て・保育、乳児・幼少期の教育活動である「森のようちえん」を開催したり、県内の大学生も実習の場としても利用されています。

ちなみに馬はポニーとホースの2種に大別することができ、サイズが小さい方がポニー、大きい方がホースと分かれるそうです。ハーモニィカレッジでは、ホースとポニーを合わせて全部で10頭が飼育されています。

お話をうかがったのは「ハーモニィカレッジ」ができた頃から、スタッフとして働いている大堀貴士さん。大阪出身で学生時代から、子どもの力を活かせる場づくりをしたいと漠然と考えていたそうです。

大堀貴士さん

そんな頃、ハーモニィカレッジを創業したばかりの石井博史さんと出会い、夢を語る大人のかっこ良さと大堀さん自身のやりたいことができる場所を見つけたことで、大学を卒業後、すぐに八頭町へやって来ました。

「石井となら、なんでもやっていけそうだと感じたんです。大学を卒業してからは、ほとんど住み込みのような形で、ここで馬たちと暮らしながら活動していました」(大堀さん)

ぱっかの牧場

ハーモニィカレッジがオープンしてから20年ほど経ちました。その間に、何度か経済的な危機に陥りつつ、周りのひとからの支えと助けを得て、今の形に至ったといいます。

「どうしてそんなに運営が大変になるまで周りに言わなかったんだと、お叱りを受けたこともありました。自分の力だけで立つことが自立だと思っていたんですが、自分で立てなくなったときに、助けたいと思ってもらえるひとに囲まれていることも“自立”なんだなと、その時に感じたんです」(大堀さん)

馬

1997年の創業以降、数多くの卒業生を輩出してきたハーモニィカレッジでは、多くのOG・OBたちも運営の危機を救ってくれました。今では子どもたちが毎日元気に、山の中で自然や動物とふれ合い、遊びながらたくさんのことを学んでいます。

つながり広がる八頭町の今とこれから

じつは、今回ご紹介したところ以外にも、たくさんの方々のお目にかかりました。今回はすべての方々をご紹介するとあまりにもたっぷりな長さになってしまうため泣く泣く断念しましたが、今後改めて少しずつ記事にできればと考え中です。

八頭町では、若いひとばかりではなく昔から町を見守り、新しい活動を応援してくれる人々も多く暮らしています。

そのため、地元の方も新しく移住してきた人々も両方が手を取り合い、ますます八頭町の中でのつながりが深く広くひろがっていく気がします。

これからどんなふうに八頭町が盛り上がっていくのか、もとくらでも追いかけていきたいと思っています。

(この記事は、日本財団と協働で製作する記事広告コンテンツです)

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立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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