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【第1回 灯台もと倶楽部】都会暮らしだと孤独を感じるのはどうして?ヒビノケイコ×小倉ヒラク対談

2015年12月10日、上野のコワーキングオフィス「いいオフィス」で連続リアルイベント「灯台もと倶楽部」の第1回を開催しました。ゲストは発酵デザイナーの小倉ヒラクさん、4コマエッセイストのヒビノケイコさん。そしてモデレーターを務めるのは、株式会社Wasei代表の鳥井弘文です。

テーマは「これからのローカルとデザインの関係」。地域を拠点に活動するゲストのおふたりに、ローカルでのこれからの生き方や地域の未来について語っていただきました。

灯台もと倶楽部 第1回「小倉ヒラク×ヒビノケイコ対談〜これからのローカルとデザインの関係〜」

なぜ東京では孤独を感じるの?

鳥井弘文(以下、鳥井) 地域にUターンする人たちの中には、都会で消費している感覚に違和感を感じたことがきっかけの人も多いのかなと思っているんですが、ヒラクさんは山梨に移住したとき、都会の暮らしに違和感を感じましたか?

小倉ヒラク(以下、小倉) ぼくは東京生まれなんだけど、日本各地の田舎をまわる仕事を7年くらいしてきました。これまでの経験で、この暮らし好きだなと感じるのは、お味噌屋さんの暮らし。ぼくは彼等の生き方はすごく豊かだと思っています。生き方に憧れるというわけではなく、もうちょっと本質的な人間の営みを感じている。

たとえば、東京ではなぜこんなに孤独を感じるのか? なぜ寄る辺なさを感じるのか? その理由は、縦につながれないからだと思うんだよね。縦の系譜とは、自分が生きていない時間とつながることだと思うんですよ。つまり過去と未来に接続できる暮らしってことだね。

灯台もと倶楽部 第1回「小倉ヒラク×ヒビノケイコ対談〜これからのローカルとデザインの関係〜」

小倉 人間がどうして生きているのかを自問しないで暮らしていくためには、縦の系譜が必要だと思っている。お味噌という文化の歴史は約1300年あります。お味噌屋さんで創業100年と言われればまだ若いくらいで、もっと長いと400年続いている老舗もある。400年間ずーっと、その一族でお味噌を作り続けているから、家業を継いだ人が仕事をしているときは、身体に400年の時間が流れているんだよね。その時間の深みが身体に刻み込まれていて、過去と未来に同調している状態です。

逆に長い時間軸を奪われた人間は、どこかですごく虚しさを感じながら生きるしかない。虚しさがある、その美しさもあるんだけどね。田舎で縦へのつながりを持つ人たちと出会って、その生き方を見ていると、ぼくも長い時間軸とつながりたいと思いますね。

起源が謎に包まれているから「祭り」は継がれていく

鳥井 ヒビノさんは縦の系譜を意識していますか?

ヒビノケイコ(以下、ヒビノ) 地域で暮らしていると、自然とその土地の歴史の文脈が入ってくるんじゃないでしょうか。お年寄りに昔の知恵を教えてもらうこと、祭りや風習も、なんとかかんとか残っている。年齢や趣味を超えた人と人のコミュニケーションがあります。縦のつながりに慣れているからかなあ、ウェブで横のつながりばかりに意識を向けると、わたしはすごく疲れてしまう。ウェブでは自分の表現を発信しているけど、あくまでも手段と捉えています。

灯台もと倶楽部

鳥井 長く続いていたり盛り上がっていたりする地域は、身が清まると感じられる神社があるか、いい祭りが続いているという気がします。

小倉 文化人類学的に考えるとね、祭りは、その起源が謎に包まれているからこそ続くんだよね。若者が神輿を担ぐ理由を、理詰めで説明されても嫌じゃない? 頭の良いやつが出てきて「祭りを効率化するために神輿を担ぐのはやめましょう」なんて、合理的だけど野暮なことを言い出すと、祭りが祭りでなくなっていく。そうではなくて、起源や詳細がよく分からないままの方が祭りは継がれていく。何故その祭りが起こっているのか、みんなが忘れちゃっているところが最高なんだよ。

小倉ヒラクさん

みうらじゅんと、菌界のムツゴロウさん

鳥井 今後おふたりはどのようなキャリアを歩んでいきたいのか、5年先あたりまでの人生設計を教えていただけますか?

ヒビノ 自分にフィットした暮らし方・働き方をデザインし、幸せに生きよう、ということは今後も変わりません。その中で感じる楽しさも、悩みも、等身大で伝えたい。ウェブ上には暗くてセンセーショナルなニュースが多いからこそ、私は優しい波を置いていきたい。それが、無意識層にいつのまにかインプットされていけばいいなって。気付かれないくらいささやかに良い波を届け、生活文化を作るための精神的な背景を知ってもらえたらと思ってます。

また、リアルでも、最初から「世界を変えよう、まち作りをしよう」と思うと、漠然としすぎていてどうしていいかわからなくなりがち。でも、一人ひとりが自分の人生、毎日をデザインし、しっかり生きる。すると幸せが波紋のように伝わり、結果として全体も変わっていく。

わたしの暮らしている高知県れいほくエリアでも、たった一人の生き方がもたらすインパクトってすごいんですよ。それが積み重なって、移住者も毎年30組以上、新しいお店もでき、町も盛り上がり、再構築されていく。そんな地域の変化をこの9年肌で感じています。

ヒビノケイコさん

ヒビノ 2015年はひたすらウェブで発信してきたので、そろそろウェブとリアルのどちらでも活動したいと思っています。リアルではおもしろい活動をしている地域や人を巡るツアーとか、身体で感じてもらえる講座の企画をしたいですね。あとは自分が今まで書いてきたことを本にまとめて、アーカイブして見れるようにしたいです。ぼちぼちウェブメディアとかで連載しつつ、書き手として息長くやっていきたい。表現の軸をしっかりと握り、質を大切にする。そのための土台を経済的にも、環境的にも作りたいです。

小倉 ヒビノさんは縦の系譜を意識するとしたら、どんな人になりたいの?

鳥井 誰かなあって、気になりますよね。じつは事前の打ち合わせで阿川佐和子さんですか? って聞いたら……。

灯台もと倶楽部 第1回「小倉ヒラク×ヒビノケイコ対談〜これからのローカルとデザインの関係〜」

ヒビノケイコさん

ヒビノ 私はみうらじゅんさんになりたいんです。

小倉 みうらじゅんさんになりたいんですか?(笑) ヒビノさんにとって、彼はどういう存在なんですか。

ヒビノ すべてを、自分を使って表現している存在。ゆるキャラブームしかり、どんなにマニアックなことでもムーブメントごと作っていく人。ゆるキャラや民俗学、仏像などのテーマは、肩の力が抜けて笑いながら楽しめるのに、結果として地域や歴史を再発見していくことにつながっています。縦の系譜とつながるというか。エロいところも下品じゃないし、あんなふうに芯を確立している人になりたいなあ。

小倉 だいぶ味わい深いね。

鳥井 ヒラクさんは来年からどうするんですか?

小倉 ぼくは今、手をかけて菌を育てられないのがすごいストレスなんだよね。だからなるべく家にいて、菌の相手をしたい。

鳥井 菌界のムツゴロウさんみたいですね。

小倉 菌と過ごす時間は、青春時代の恋を思い出すからさあ。

鳥井 「菌はラブリー」っていうヒラクさんの名言があるんですよ、ヒビノさん。

ヒビノ ラブリー……(笑)。それもまた味わい深いですね。

灯台もと倶楽部 第1回「小倉ヒラク×ヒビノケイコ対談〜これからのローカルとデザインの関係〜」

イベントフード/ケータリング提供は「MOMOE」代表の稲垣晴代さん

イベントフード/ケータリング提供は「MOMOE」代表の稲垣晴代さん。イベントフード/ケータリング提供は「MOMOE」代表の稲垣晴代さん。イベントフード/ケータリング提供は「MOMOE」代表の稲垣晴代さん。

ドリンク担当は移動式フード・ドリンクユニット「Uchila(ウチラ)」の荒川萌さん、飯泉友紀さん。

ドリンク担当は移動式フード・ドリンクユニット「Uchila(ウチラ)」

お話をうかがった人

ヒビノケイコ(@hibinokeiko
4コマエッセイスト。1982年大阪生まれ。京都精華大学芸術学部陶芸学科卒。2006年出産を機に、高知県嶺北地域に移住。自然派菓子工房「ぽっちり堂」を起業。お菓子ギフトの商品開発、パッケージデザイン、カフェのプロデュースとネット情報発信を行う。2014年から作家・講演活動に専念。

小倉 ヒラク(@o_hiraku
発酵デザイナー、アートディレクター。1983年東京生まれ。生態系や地域産業、教育などの分野のデザインに関わるうちに、発酵醸造学に激しく傾倒し、アニメ&絵本「てまえみそのうた」の出版。それが縁で日本各地の醸造メーカーと知り合い、味噌や醤油、ビールなど発酵食品のアートディレクションを多く手がけるようになる。自由大学をはじめ、日本全国で発酵醸造の講師も務める。グッドデザイン賞2014を受賞、最新作にアニメ「こうじのうた」

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者 / フォトグラファー。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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