わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり─(木楽舎)』の著者であり、「暮らしをつくる」ことをベースに新米猟師として働く畠山千春さんと、移住女子フリーペーパー『ChuClu(ちゅくる)』編集長として、里山での魅力ある生き方を発信している佐藤可奈子さんの対談が実現。「田舎暮らしがスローライフとは限らない」と語る2人が、女性ならではの視点で、職住一体の暮らしの魅力を語ります。

移住女子・佐藤さん

佐藤 可奈子:新潟県十日町市

香川県生まれ。28歳。当時は海外支援の分野で働きたいと思い、立教大学法学部政治学科に入学。在学中に当時6軒13人だった新潟県十日町市の池谷集落の農業体験に参加。卒業後、集落に移住して就農。水稲、さつまいなどを栽培。14年には27歳で全国最年少の女性農業委員に就任。移住女子フリーペーパー『ChuClu』編集長として、里山での魅力ある生き方を発信。また地元農業女子と女性用の農作業着「NORAGI」を開発。新潟日報にて「きぼうしゅうらく」、全国農業新聞にて「一粒万倍」を連載中。雪国農業が生む、目に見えない大切なものをつなぐ。

移住女子・畠山さん

畠山 千春:福岡県糸島市(@chiharuh

1986年生まれ。3.11をきっかけに大量生産大量消費の暮らしに危機感を感じ、自分の暮らしを自分で作るべく活動中。2011年から動物の解体を学び、鳥を絞めて食べるワークショップを開催している。2013年狩猟免許取得、狩りを始めながら、獲物の皮なめしなども修行中。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちで作る「いとしまシェアハウス」を運営。2014年に木楽舎より『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』を出版。ブログ「ちはるの森」の運営。

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明日、会社が倒産しても生き抜ける?

移住女子対談ー畠山さん・佐藤さん

佐藤可奈子(以下、可奈子) 今日は私たちの暮らしと仕事についてお話したいと思います。千春さんは、千葉から福岡県の糸島に移住したとき、ゼロから仕事をつくったんですか?

畠山千春(以下、千春) 私はリスクを取りたくないタイプなので、そういうことはできなかったですね(笑)。じつは当時勤めていた会社ごと移住してきたんです。だから、私は仕事を探したりつくったりする不安はまったくない贅沢な状況でした。

福岡県糸島市
福岡県糸島市

可奈子 そうだったんですね! 移住してからはどうしたの?

千春 いきなり会社を辞めずに、移住して約1年間その会社で働きながら、糸島で暮らしていく土台になる場所を探しました。週5日働いて、残りの2日で自分の仕事をつくる。それが軌道に乗ってきたら社長に相談して、週に4日から3日へと仕事量を減らしてもらって、最終的に卒業したんです。

可奈子 自分の仕事をつくるきっかけになったのは?

千春 本の執筆と同時に、いとしまシェアハウスを見つけたことが大きなきっかけだったと思う。今なら家賃の安い場所で畑と田んぼを始められる! と思って、自然の流れで農的な暮らしをスタートさせました。

それから、今の暮らしを選ぶのに、2011年の震災は大きなきっかけだったなぁと思っています。ひとつの会社で稼ぐよりも、その会社が明日倒産しても生きていける道を選んだほうが、これからは生き抜いていけるだろうなって。

可奈子 なるほど。震災というのは、私にとってもキーワードです。私は学生時代に十日町の池谷集落に通っている間に、ご縁ができて飛び込んだ感じです。

千春 学生時代はどんな勉強をしていたの?

可奈子 法学部で政治を勉強していました。海外の復興支援や人道支援に関心があって、アフリカに行ってNGOの勉強したり、難民支援をするサークルで活動したりしていて。

移住女子・佐藤さん

千春 なんていうサークルですか?

可奈子 「UNHCRユース(現:J-FUN ユース)」っていう団体で。その事務局が立ち上がるときに参画して、そのご縁で世界各地で戦争や紛争、自然災害の犠牲となった人々への支援活動をしている「特定非営利活動法人ジェン(JEN)」というNGOに関わることになりました。ジェンは中越地震で被災した池谷集落の復興支援をしていて、私は農業ボランティアのために訪れたんです。

千春 それで池谷集落に。

十日町市池谷集落
十日町市池谷集落

可奈子 そう。最初に住むことになったのは、池谷分校という名の廃校をリノベーションした宿泊施設です。中越地震が起きてから集落に来てくれる復興ボランティアさんの拠点としてできた場所で、今は農業体験で都会からくるひとやインターン生を受け入れています。それで、池谷集落に通うようになり、私の前の管理人さんが、私が大学を卒業する年にいなくなるということで、入れ替わる形で大学を卒業してそのまま移住しました。

千春 バックグラウンドは、私も似ているかもしれませんね。私も大学で地域コミュニティや環境問題、国際問題を専攻していました。環境問題についても勉強していたので、移住する土台になる「地域で暮らす」ということに興味があったと思うんですよね。視野が広まるうち、結局は自分の足もとから見つめないと、という考えに至りました。

ところで、移住女子の活動はいつから始めたんですか?

可奈子 「十日町市地域おこし実行委員会」という当時任意団体だったNPO法人のお手伝いとして分校の管理をしながら農業を始めて。暮らしに慣れてきた2年目くらいから、移住女子の活動も含めて自分の仕事づくりをはじめました。移住女子を発信するフリーペーパーの『ChuClu』をつくったり、女性用農作業着「NORAGI」の商品開発をしたり。

移住女子の活動を始めた理由は、農業の価値を知ってほしいとか、これから十日町に来る後輩のために何かレールができたらいいなって。

新潟・移住女子
移住女子の皆さん。写真左から2番目が佐藤さん(にいがたイナカレッジより)

「働きながらお母さんする」じゃなくて「お母さんしながら働ける」

千春 移住女子と呼ばれる女性たちは、自分で田畑の管理から事務仕事まで、全部やるという働き方をしているひとが多いかもしれないね。

可奈子 農家で言えば、今までは農作物をつくったら販売は大きな集荷場にお願いすればよかったんですが、私たちは自分の力で育て、消費者に届けるというところまでやることが多いですからねぇ。

でもその結果、自然と自分たちのやることも増えていくんだよね(笑)。

千春 暮らしと仕事がかなり密着しているから、何もしない日を意識的につくらないと、すごく疲れてしまうことはあります。

可奈子 基本的に「楽しい暮らしそのものが仕事」なので、楽しいんですけどね。でも休みらしい休みがなくなっていきませんか? 休みの日にも、何かしら仕事に関わることをしている。夫とのデートも、「話題になっているあそこの農家レストランに視察に行ってみよう」とか(笑)。

千春 そうそう(笑)。本当に仕事と暮らしの垣根がなくて。でもこの暮らしが好きだからやってるんですよね。

「自分の暮らしが仕事になっちゃうとつらくないですか?」って聞かれるんだけど、でも逆に、自分の暮らしと仕事が融合しているからこそ、自分で時間や内容をコントロールして、納得できるものに仕上げていける良さがあると思います。

移住女子・畠山さん

可奈子 あと、自分がやりたくないことをやらなくてよくなりましたよね(笑)。

千春 目的に共感できないような、嫌な仕事をわざわざ選ばなくてもいいのは、すごく楽ですね。あとは、私はシェアハウスを運営しているので、仲間がいます。そうすると、自分が得意なことは相手が苦手で、逆に自分が苦手なことは相手が得意だったりします。自然な役割分担ができるのは、いいところだなって思います。

可奈子 いいですねぇ。私は暮らしと仕事が密接だからこそ、会社に勤めるよりも子育てがしやすいなと感じますね。

千春 そうなんだぁ。

可奈子 子育てをするからといって、仕事を辞めたり何かを諦めたりしなくてもいい。「働きながらお母さん業をする」じゃなくて、「お母さん業をしながら働ける」という形ができる。移住女子のみんなの働き方を見ていると、そういうひとが多い気がします。

コミュニティとは「お金のかからない保険」

千春 私は、こういう農的な暮らしをする人が増えたら、きっと世の中はちょっとずつよくなるんじゃないかと思っていて。かといって「それが正義だ」とは押し付けたくはないんです。

可奈子 でも、地域で暮らす選択肢があるということを発信したいと思いますよね?

千春 うん。自分の周りには農的な暮らしを実践している人がたくさんいて、「たぶん私も地域で持続可能な暮らしができる」っていう、謎の自信があった(笑)。

可奈子 あはは(笑)。

移住女子・畠山さん

千春 でも、もし私が丸の内のOLで、周囲が全員スーツのサラリーマンだったら、そんな自信なんて持てるはずがないと思う。そういう環境のひとたちに向けて、選択肢のひとつとして私の暮らしを発信していくことが、学生の頃から私を育ててくれたひとたちへの恩返しになるのかなと思っています。

可奈子 すごく共感できます。学生時代に池谷集落に通っていたときに、そこで暮らす大人たちにとても影響されました。ある方は「月5万円あれば生活できますよ」とおっしゃっていて。身近に農的な暮らしを実践しているひとがいると、自分でもできそうな気がしてきちゃいますもんね。

千春 そうなんですよ(笑)。言葉だけで聞くとね、そんなハードコアな! って思うんですけど。やってみたら意外とできることなんですよね。暮らしのお手本になる存在が、もっと身近になったらいいなぁと思います。

可奈子 身近にいないと、すごく熱血系の仕事がつくれるひととか、ヒゲもじゃなサバイバル力のあるひとじゃないと生きていけないんじゃ……とか不安に思いますもんね。

千春 屈強な体のひととかね(笑)。

可奈子 ひと昔前は、田舎で暮らすひとは、そんなマッチョなイメージや仙人像があったと思うんだけど(笑)。

あとは、さっき千春さんも言っていたけれど、一緒に暮らしをつくる仲間がいるというのも、田舎暮らしの大事なポイントですよね。

移住女子・佐藤さん

千春 そうですね。

可奈子 地域で「働く」って、誰かひとりが儲かるような「競争」ではなくて、みんなが幸せになるような働き方のほうがうまくいく。

千春 ただでさえひとも少ないし、資源も少ないからね。

可奈子 テクニックとかビジネスじゃなくて、地域では「信頼」と「共感」が経済を回しているような気がするんです。

千春 あぁ、それ分かるなあ。

可奈子 「信頼」と「共感」が仕事のカギなら、チームをつくって輪を広げて、みんなでものづくりする方法は、珍しいことではなくて鉄板なやり方なんじゃないだろうか、と思ってしまう(笑)。

千春 コミュニティって生きるための礎ですよね。たとえば「家を借りる」とか「畑を耕す」とかは、自分ひとりでできることではなくて、その土地で暮らしているひとたちとコミュニケーションしながら行うこと。食べ物を分け合ったり、「大丈夫?」って声をかけたり、動けない人がいれば助けたりできる。コミュニティの存在で解決できることが地域にはたくさんあるんですよね。

可奈子 子どもができたら、保育園や小学校にも通うことになって、もっともっと共同体のなかで生きていくという意識が強まります。

千春 だからやっぱりコミュニティは、小さな社会。言うなれば、小さな地球みたいなもので(笑)。身の回りを自分の気持ちいいコミュニティにしていくことで、世の中が良くなると私は思っています。

可奈子 うん、そう思う。お金のかからない保険ですよね。

自分がいない未来のためにできること

移住女子対談ー畠山さん・佐藤さん

千春 可奈子さんはこれからどんなことをしていきたいですか?

可奈子 そうですね、やりたいことはいっぱいあるんですけどもねえ、ほんとに(笑)。

将来的には、地方と都市のバランスがもうちょっと良くなって、今の中山間地とかの移住した集落で、幸せなおばあちゃんになりたいですし、そうなるようなひとが増えてほしいなあ、と思っています。そうなるためにも、集落に子どもがたくさん来てくれるような仕組みをつくりたいし、農業の価値を高めていきたい。

千春 可奈子さんの「かなやんファーム」の今後が楽しみです。

可奈子 ふふ、がんばらなきゃ。農園としては雪と時間がおいしくさせる作物のブランドを確立できるようにしたいなぁって。十日町には、お米はもちろん雪室・雪下野菜とか、価値ある資源がたくさんありますから……。

それから集落や地域単位で子どもを育てる、山の農園保育園のような場をつくりたいなぁって考えています。昔は村が保育園で、住民みんなが子どもの面倒を見ていたそうなの。

千春 おもしろそう! 鳥取県の智頭町にある、森のようちえん「風りんりん」のお話をよく聞きますが、それに似ているのかも。

田んぼの稲

可奈子 そうかもしれませんね。子どもができてからは見える世界が変わって、繋ぐものを大切にしたくなりました。

千春 繋ぐもの?

可奈子 自分がいない未来のために、今できることをやる、ということです。どうやったら子どもたちを幸せにできるだろう、幸せな地域ができるだろうと考えたときに、農業からのアプローチで子どもたちの舌と感性を育てたいなと思って。

千春 素敵ですね。

可奈子 そうしたら、たとえばどこで育てられたのか分からないような安い農作物がやってきても、なんとかなると思う。子どもの「選ぶ力」を、今からきちんと育てていれば。

千春 うんうん、いい!

可奈子 雪室野菜は栄養価も高くて味も濃く、添加物もいりません。本物の野菜を子どもに食べて育ってもらうスノーフードの離乳食ブランド。来年の冬、スタートできるように準備しているところです。千春さんの今後は?

新潟県十日町市

千春 私は「いとしまシェアハウス」を活かして、外から来る若いひとたちと地域のパイプ役になりたい。ゆくゆく子どもが生まれたときに、みんなで一緒に子育てや教育とか、暮らしづくりができる小さな村みたいなコミュニティをつくっていきたいと思っています。

可奈子 いいですね! そのためには、ちゃんとしたビジネスを地元でつくることが、いまの私たちの課題になるのかな。

千春 お互いがんばりましょうか。

可奈子 そうですね。がんばろう! 次にお会いするのを楽しみにしています。

(この記事は、にいがたイナカレッジと協働で製作する記事広告コンテンツです)
(一部写真提供:佐藤可奈子・畠山千春)

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