あんぱん、アンパン、あんパン……声に出すだけで至福の音がする不思議なパン。
小豆とパンの和風と洋風の食べものが、両手に収まるサイズで仲良く同居しています。そして、日本中にたくさんあるパン屋さんの陳列棚には、必ずと言っていいほどあんぱんが並んでいます。
今日、あんぱんが生まれてから、100年近く経ちました。100年前の生活と、今。変わったもの、それから、変わらなかったものはどれくらいあるでしょうか。
あんぱんは、もう100年くらい「変わらないもの」として常にどこかのパン屋の陳列棚のどこかで、じっと座り続けてきました。はじめは戦争中の貴重なスイーツとして、今では手軽なおやつとして、おじいちゃんやおばあちゃんから子どもたちに親しまれる食べものです。
どうしてあんぱんは、今でもあんぱんで在れるんだろう? いつでもどこでも食べものが手に入るようになった暮らしのなかで、どうして時々、無性にあんぱんが恋しくなるんだろう?
どんどんいろいろなことが更新されて、それに着いて行くのに必死な日々のなかで、あんぱんの存在がそんな風な疑問といっしょに浮かび上がってきました。
そうだ、あんぱんの秘めたる歴史と魅力を、探ってみよう。もしかしたら「変わらない」ことの尊さや、変わらないで在ることの難しさを、あんぱんが教えてくれるかもしれない。
ということで、灯台もと暮らしであんぱん特集、はじめます。
なお、あんぱんという平仮名のフォルムが、まるくてふっくら焼きあがるあんぱんを彷彿とさせるので、灯台もと暮らしでは「あんぱん」と呼びたいと思います。
あんぱん、あんぱん。そのかたちと、どこかほっとする味は、おいしいものを食べてにっこりわらう、まんまるいほっぺみたい。