語るを聞く

【地域おこし協力隊】I・Uターン者5名でまちづくり団体を結成。鳥取県岩美町と県外の人をつなぐ架け橋になりたい|田中泰子

地域のリアルな暮らしを、現地で暮らす人たちに聞いてみたい──そんな想いから、地域おこし協力隊の皆さんに15の質問をさせてもらう企画。今回お話をうかがったのは、鳥取県の岩美町で活動している田中泰子さん。鳥取県の最北端に位置する岩美町(いわみちょう)では、海と山をはじめ、食や温泉を楽しめるそうです。山陰ジオパークにも認定されるほど、自然環境が豊かな地域の暮らしとは。

Q1:自己紹介をお願いします

鳥取県岩美町
写真中央、田中泰子さん

2013年7月に鳥取県岩美町の地域おこし協力隊となり、3年目を迎えた田中泰子です。東京都出身で、前職は出版社に勤めていました。現在は観光協会に所属しています。

Q2:取り組んでいる活動を教えてください

これまで:移住して2年間で見つけた町の魅力を伝えたい

岩美町の観光振興、コンテンツツーリズムを担当しています。主に、アニメ「Free!」を活かしたイベントの企画、運営や商品開発、観光パンフレットの制作、民宿支援や新規民宿経営者誘致活動に取り組んでいます。

先日、写真家・市橋織江さん撮り下ろしの岩美町観光ポスター&Webサイトを公開しました。

岩美町
引用:岩美町|しまっておいた日本がある。

いちばん心を込めて取り組んだのは、「岩美町観光ポスター」です。出版社に勤めていた頃、月刊誌の編集部に所属していて、はじめて企画を出して取材させてもらったのが市橋織江さんでした。もともと写真がすてきだと思っていましたが、実際にお会いして凛とした人柄に魅かれました。

いつか一緒に仕事をしたいという気持ちは岩美町に来てからも変わらず、5年以上かかってやっと市橋さんに撮影を依頼することができました。

鳥取県岩美町の観光ポスター

「岩美町観光ポスター」は、私が東京から岩美町に移住して2年間で見つけた町の魅力を伝え、共感してもらいたいという気持ちが込められています。当時編集部でお世話になった編集者の方にも協力いただき、アートディレクターは副田デザイン制作所の太田江理子さん、コピーライターは米田恵子さん同行のもと、市橋さん撮り下ろしの撮影ロケを行いました。私自身、これほどきれいな海があることも、四季を五感すべてで感じられる自然環境があることも、そもそも岩美町という町のことさえ、東京に住んでいたときは知りませんでした。だからこそ、まだ岩美町を知らない人に向けて、写真を入口として岩美町を訪れるきっかけになるポスターを作りたいと思ったんです。

撮影2日目の夜に、市橋さんや太田さんと浦富海岸で花火をしたのですが、そのときに広告賞を受賞するくらい、いい作品にしたいとみんなの気持ちがひとつになったのが印象に残っています。

これから:「地域」と「作品」と「ファン」をつなげてまちおこしに

アニメのパワーはものすごいです。アニメファンを、岩美町のファンにするため、地域の魅力を感じられる企画を実施しようとしています。2015年12月5日全国ロードショーの『映画ハイ☆スピード!』オフィシャルコラボキャンペーンを打ち出していきます。

ロケ参考地鳥取県岩美町_×_映画「ハイ☆スピード!」映画公開記念オフィシャルコラボキャンペーン!
引用:ロケ参考地鳥取県岩美町 × 映画「ハイ★スピード!」映画公開記念オフィシャルコラボキャンペーン!

岩美町地域おこし協力隊として活動を始めた2013年7月、TVアニメ「Free!」が放送されました。ネット上では、「鳥取県・岩美町」がロケ地ではないかと話題になり、ロケ参考地であることがわかると、20、30代女性を中心としたファンが多く訪れるようになりました。放送から2年半経った今でも毎日ファンの方が聖地巡礼をしています。これを好機と捉え、アニメを活用した観光振興に取り組みはじめました。

私はもともとアニメ好きというわけでもなかったので、コンテンツツーリズムについて学び、ご当地限定グッズを作ったり、聖地巡礼マップを配ったり、アニメのシーンを一部再現したイベントやコスプレ撮影会を行いました。協力隊の同期と一緒に企画するうえでの目的は、「地域」と「作品」と「ファン」をつなぐことでまちおこしにつなげることです。

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そして、2015年12月に映画化が決まり、ついにオフィシャルコラボを実現させることができました。私は映画のロケハンにも同行させてもらっていたので、映画公開初日に観に行ったときには、岩美町の景色が作品に多く登場して感動しました。今後も多くの方が、アニメをきっかけに岩美町を訪れ、岩美町のファンになることを期待しています。

いつか:地域の魅力、いいものを見える形に

鳥取県岩美町にて。鳥の足跡

地域のいいものを見える形にしたいです。具体的にはパッケージデザインを含む特産品の商品開発や、民宿やゲストハウスでの旅人の受け入れと情報提供などです。

岩美町の魅力は海だけでなく、季節ごとに移り変わる原風景や、食や人などが挙げられます。

鳥取県岩美町の海

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いいものがたくさんあるのに、地域の方にとっては当たり前すぎて、その魅力は県外の人には知られていません。食については県外にPRするために加工する必要があり、景色や人は写真や文章で紹介しないと伝わりません。地域だけの情報を、外からも見える形にデザインしていきたいと考えています。

Q3:地域おこし協力隊をはじめたきっかけを教えてください

鳥取県岩美町地域おこし協力隊。田中さん、ご主人と。

結婚と同時に移住を考えていた

結婚は、協力隊に応募するひとつのきっかけでした。主人の出身県である鳥取への移住を検討していて、県内のあちこちを観光して、いちばん住みたいと思ったまちが岩美町でした。だって、こんなにきれいな海があるなんて知らなかったから。

岩美町で地域おこし協力隊の募集があったので、応募を決め、出版社を辞めることにしました。結婚というタイミングもありますが、地域おこし協力隊の募集が移住の決め手となりました。

Q4:あなたが考える「地域暮らしの魅力」を教えてください

人付き合いを大切にした、優しい暮らしができる

東京の暮らしも楽しかったけれど、仕事が中心で外食やコンビニ食も多く、ご近所付き合いもない生活を送っていました。日本一人口が多い都市なのに、まわりの人の生活には無関心な暮らしに違和感があった。そして、日本一人口の少ない鳥取へ。環境を変えることで、生活が一変しました。

鳥取県岩美町でシュノーケル

岩美町での暮らしは、オンとオフが短時間で切り替えられる環境。夏は朝にシュノーケルをしてから出勤し、仕事のあと海で夕陽を眺めてから温泉に行くこともできます。

鳥取県岩美町での夕日

食に関しても、朝どれの新鮮なお魚や、近所の方が作った野菜をもらうことで、食べ物への興味が高まりました。太陽が上る位置や短い期間にしか咲かない花など、いままで気づかなかったことに気づける心の余裕ができたんだと思います。地方では、地域のコミュニケーションが大切。ちょっとめんどうなこともあるけど、人付き合いを大切にした優しい暮らしです。

Q5:地域暮らしの心に残る体験を教えてください

鳥取県岩美町

鳥取県岩美町

季節の移り変わりを体感できること

夏は仕事の前や、休日に気軽に海に行くことができ、自然に感動します。とくに海の中は何千匹ものアジの群れや、アオリイカの群れに出会えることがあります。今年は、初めて殻の美しいカイダコを見つけました。

鳥取県岩美町にて。カイダコの写真

Q6:まちのおもしろい人を教えてください

  • 福本則子さん(食事処・福乃家)

地元の食材について、いろいろ教えてくれます。さばいたことのない魚も、おいしく調理してくれる。食を絡めたまちづくりについて、アイデアも豊富。一緒に食事をするのが楽しいです。

Q7:同世代でおもしろい人はいますか?

  • 宮森由美子さん(レンジャー)

クライミング&焼き鳥仲間の彼女は、自然環境の大切さを理解した上で、自然保護に関わる仕事をしています。いつもまわりを元気にさせてくれる楽しい人物。磯の観察会などでは、子どもたちと楽しくシュノーケルをしながら、自然学習をおこなっています。

Q8:地域での失敗談を教えてください

地域のキーパーソンに相談しなかったこと

地域のキーパーソンに相談しないで、ものごとを進めると、必ず問題になります。あたりまえだけど、これがかなり大きな問題。実施したことの結果ではなく、感情的な部分で良し悪しが決まってしまうことがあるのが地域暮らしの残念なところかも。そうならないように、地域ではコミュニケーションが本当に大切だなと思います。

Q9:あなたが考える地域の課題を教えてください

空き家対策と、地域に移住者を受け入れる体制

空き家は人が住まなくなったら急速に老朽化していきます。

空き家は資産であり、まちの魅力を高める可能性を秘めている

このことを地域内にも浸透させていき、空き家の活用と、移住者の受け入れができる環境を作ることが必要です。地域おこし協力隊は、よそ者だけれど、地域の方とともにまちづくりに取り組んでいます。気持ちや視点、立場が同じような仲間を増やしていきたいです。

Q10:好きな地域のごはんを教えてください

季節の味を堪能できる「カニ汁」と「カニ丼」

カニ汁 カニ丼

松葉がには高価だけど、親がになら1枚300円程度で手に入ります。ご近所からいただくことも多く、季節の味を堪能できます。

Q11:ウェブでは知ることができない地域の情報は?

観光地ではない場所に、心地いい名所がある

海が近い暮らしで感じるのは、海と空の色が常に変化していて、その瞬間にしか見えない景色があること。同じ青でもぜんぜん違うんです。空気感というのか、住んでいた東京にはなかった自然豊かな環境だからこその変化を感じます。

たとえば、牧谷にある名前もないトンネルもそのひとつ。岩美町の観光ポスターをつくる際にも撮影していただいて、手前は海沿いの道路への道があり、そのレンガの古いトンネルを通り抜けると、田んぼと山が広がっている。タイムトンネルみたいな場所で、季節によっても景色が変わる好きな場所です。昔からあるものが当たり前のように、でも大切に残っているところは地域柄でしょうか。

鳥取県岩美町の海岸

Q12:町で尊敬している人を教えてください

  • 福田のおばあちゃん

岩美町に住み始めたときのシェアハウスの大家さん。80代だけど、知識と経験豊富なスーパーおばあちゃん。昔の話を聞かせてくれるのがうれしくて、今でもときどき家に遊びに行きます。

  • 井崎 恵(いさき めぐみ)さん

食事処・旬魚たつみの社長。イベント開催時などでいつもお世話になっていて、協力の仕方、姿勢がすごい! イカ釣り漁船を利用させていただいたり、サメやイカに触れられるタッチングプールを用意していただいたり、子どもだけでなく大人にも喜ばれることを実施しています。

  • 岸本 智也(きしもと ともや)さん

岩美町役場地域創生室の係長。元地域おこし協力隊の担当者で、仏様みたいな人。困ったときは、まず岸本さんに電話します。

Q13:注目している地域おこし協力隊を教えてください

岩美町地域おこし協力隊の3人

  • 岩田 薫(いわた かおる)さん

岩田さんは地域おこし協力隊の同期で、うみねこ舎のメンバーでもあります。「鳥越どんづまりハウス」を再生しました。同期の中でいちばん若く、地域の方々にかわいがられている存在。来年度は、築100年の古民家にひとりで住みはじめます!

  • 小林晶(こばやし あき)さん

小林さんも地域おこし協力隊の同期で、2016年4月に任期を終え、独り立ちします。民宿「旅人の宿NOTE」の今後に期待です。

  • 間淵武志(まぶち たけし)さん

間淵さんは民宿「昭和民宿 龍神荘」や漁業と、どんどん新しいことに取り組んでいる人。大阪と岩美をしっかりつないでPRする取り組みに期待です。

Q14:任期後の進路を教えてください

うみねこ舎
引用:うみねこ舎 

「うみねこ舎」として、地域と県外の人をつなぐ架け橋に

2015年にI・Uターンした5名で結成したまちづくり団体「うみねこ舎」として、地域と県外の人をつなぐ架け橋になりたいです。「うみねこ舎」は、岩美町で活動する地域活性化団体です。兵庫、愛知、東京からのIターン4名と鳥取県にUターンした1名が中心メンバーとなり、岩美町の「いいね!」をみんなでデザインしていきます。名前の由来は、渡り鳥である「うみねこ」から来ています。

1年目の取り組みとしては、拠点となるコミュニティ・カフェ「ニジノキ」と若い単身者が住むことのできるシェアハウスを2016年4月にオープンさせ、地域と県外の人をつなぐイベントを開催するなど、岩美町の魅力を発信していきます。

ニジノキカフェ

また、築100年の古民家に住むプロジェクトも始動しています。増え続ける空き家を利活用するため、「空き家は資産であり、まちの魅力を高める可能性を秘めている」ことを地域に意識付けするとともに、町外の移住希望者の住まいを提供できる環境を整えていきたいと考えています。

地域おこし協力隊として活動する中で、少子高齢化、人口減少、担い手不足など、地域の課題が見えてきました。私の協力隊の任期は、今年度末(2016年3月)までですが、その後も継続した取り組みを行うことで、自分たちが住むまちを元気にしたいと思い、仲間と楽しいまちづくりをすることにしました。

うみねこ舎のメンバーのみなさん
うみねこ舎のメンバーのみなさん

Q15:これから地域おこし協力隊へ応募しようと思っている人へのアドバイス

まずは自分自身が、地域で楽しく過ごそう

地域で暮らしていくうえで大切なことは、楽しく過ごせること!

市町村自治体によって、地域おこし協力隊の活動内容やサポート体制はまったく異なるものです。でも実際住んでみないと、地域の実情はわかりません。そのため隊員としての使命感だけでは、地域でやっていけないと思います。地域おこしをするためにはまず、まずは自分自身がその地域で楽しく過ごすようにしましょう。

鳥取県岩美町

お話をうかがったひと

田中 泰子(たなか やすこ)
1984年東京生まれ。大学卒業後、専門商社に勤務。その後、出版社に転職し、月刊「コマーシャル・フォト」やムックの編集に携わる。2013年7月、地域おこし協力隊として鳥取県岩美町に移住。岩美町観光協会に勤務し、アニメ「Free!」を活用した観光振興事業などに取り組んでいる。また、移住者5人を中心メンバーとし、地域活性化団体「うみねこ舎」を立ち上げ、地域と県外の人をつなぐシェアハウス事業などを行う予定。

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者 / フォトグラファー。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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