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【地域おこし協力隊】鹿児島県・下甑島のリアルな暮らし|関美穂子

地域のリアルな暮らしを、現地で暮らす人たちに聞いてみたい──そんな思いから、地域おこし協力隊の皆さんに14の質問をさせてもらう企画。今回お話をうかがったのは、鹿児島県の東シナ海にある離島、下甑島(しもこしきしま)で暮らす関美穂子(せき みほこ)さんです。
観光をテーマに活動している関さんは、地域おこし協力隊として最終年度となる3年目を迎えました。彼女は今、何を考えているのか? 「自然から食べ物をもらって生きているんだ」という感覚を持った理由とは? これから地域で暮らしたい人はぜひ、参考にしてみてください。

Q1:自己紹介をお願いします

関美穂子さん
関美穂子です。鹿児島県の東シナ海に浮かぶ下甑島で、地域おこし協力隊として活動しています。今期が3年目で最終年度です。

Q2:取り組んでいる活動を教えてください

1.今取り組んでいること

地域おこし協力隊としての主なミッションは、1年間で5つの商品開発(特産品、ツアーや体験プログラム)をすることです。その他にもイベントの企画や運営、観光案内などを主にしています。また、プライベートではブログやSNSを使った下甑島に関する情報発信をしています。

具体的には、「こしき島アクアスロン大会」の事務局スタッフをしたり、地元の魅力を見つけて体験プログラム化したり、昔使われていた生活道をトレッキングルートに再生するプロジェクトのお手伝いをしたりしています。

2.これから取り組もうとしていること

鹿児島未来170人会議に登壇した様子

下甑島で暮らしてきた2年間の中で、既に行なわれてきたことや新たに始めたことも含め、観光関係の取り組みに携わらせていただきました。

これからの1年間は、地域おこし協力隊として最終年度です。どちらかというと新しく何かをどんどん始めるより、今まで取り組んできたことを、地域内で環境的・経済的に持続させていける仕組みづくりに力を入れていきたいと思っています。

観光っていうと、どうしても「どうヨソの人と楽しませるか」を考えがちになります。だけど、観光を推進していく立場で前提として一番大切なのは、地元の人がその取り組みを続けられることだと思うんです。

  • きちんとサービスに見合った対価を受け取ることができる
  • 今いる人手の中でサービスを提供できる

上記のような仕組みを作らないと「身を削ったおもてなし」の提供になってしまう。観光客は楽しむけれど、提供側の負担が大きくて続かない。どうやったら現場の人が望む形で、おもてなしを続けていけるかを考えて、動いていきたいと思っています。

3.いつかやってみたいこと

下甑島の砂浜

地域おこし協力隊としてというより私自身の趣味として、島の素材を使ったアクセサリー作りをしてみたいです。もともと簡単なものを作る程度でしたが、島は本当に素材の宝庫。貝殻やシーグラスが美しくて、思わず拾ってしまうのですが、増えていく一方で。これをアクセサリーにしてみたいと思うようになりました。

島の果物

あとは、果実酒作りですね。これも、もともとの趣味です。今まで山桃、レモン、ダイダイ(きのす)、ビワなどで作ってみましたが、まだチャレンジしていない種類の島の果物でもお酒を漬けてみたいです。

Q3:地域おこし協力隊をはじめたきっかけ(原体験)

私が地域おこし協力隊に惹かれたきっかけは、地域の人達と密着した関係性で、能動的に着地型観光(*1)に取り組めるという業務内容です。

地域が育んできた自然や文化をどう見せるかを工夫すれば、経済の活性化につながるタネになるという「観光」の仕組みに興味がありました。そして観光に携わるなら送り出す側(旅行会社など)ではなく、受け入れる側(観光協会など)に立ちたくて。

観光に興味を持ったきっかけは、大学生の時に九州新幹線が全線開業したことにあります。新幹線の開業によって、地域資源を目的にヨソから観光客が来るようになり、それまでシャッターが目立っていた地元の駅周辺の商店街が賑やかになりました。その時、企業や工場を地元に誘致しなくても、地域にあるものを磨くことが大切だと気づいたんです。

でも、なかなか「これだ」と思える仕事がないと思っていた時に、地域おこし協力隊への募集を見つけて応募しました。

(*1)着地型観光:観光客の受け入れ先が地元ならではのプログラムを企画し、参加者が現地集合、現地解散する新しい観光の形態。主に都会にある出発地の旅行会社が企画して参加者を目的地へ連れて行く従来の「発地型観光」と比べて、地域の振興につながると期待されている。引用:コトバンク

Q4:「地域暮らしの魅力」とは?

下甑島で魚を日干ししている様子

ひとりひとりがまるまる「個人」として地域で暮らしていること

都会では、人付き合いが「会社の繋がり」「趣味の繋がり」というように、この人とはこの面での付き合い、と限定されがちです。でも地域で暮らすとその区分が曖昧になるんです。例えば私の知り合いでいうと、仕事の同僚が家庭ではPTAの保護者同士で、かつ地域を守る消防団員でもある。

ひとりひとりがまるまる「個人」として地域で暮らしていることは、都会では味わえない感覚だと思います。

人によっては地域暮らし特有の息苦しさを覚えると思いますが、一方で安心感や連帯感に繋がっていると感じます。でも、これ自体が魅力というより、この感覚を体験できることが魅力なんだと思います。

Q5:心に残っている体験・出来事を教えてください

下甑島で早朝漁に出かける船

特に心に残っている出来事は、定置網漁に同行させてもらったり、山菜を採ったりして「自分は自然から食べ物をもらって生きているんだ」という感覚を持ったことです。

定置網の水揚げの様子

以前、都会に住んでいた時は農作物や魚介類の「旬」は、テレビや雑誌などのメディアか、スーパーで見るそれらの値段だけで感じるものでした。だから、旬や収穫というのもどこか遠くて、ひとつ離れたところの出来事という感じ。

でも、今は島の至る所で畑や田んぼに植えられているものがスクスク育っていたり、台風の風で弱ってしまう様子を見たり、実際に漁船に乗って魚たちが海から人の手にやって来る姿を見たりしました。

定置網の水揚げの様子

そうすると、人が食べているものは「人が自然の中で育てたり採ったりしているんだ」と、リアルに感じるようになります。その成果が、人の力では及ばない天候などの自然の出来事や、ある種の運に左右されていることも分かりました。

下甑島の秋祭り(収穫祭)

それから、大学時代に専攻していた文化人類学の授業で出会った「祈年祭」「新嘗祭」という言葉は、これまで身近に感じることもなく過ごしてきましたが、下甑島で秋祭り(収穫祭)に参加した時に、自然に祈ったり感謝したりする感覚が、ストンと腑に落ちたんです。

キクラゲを手に乗せている

山菜採りをした時には、山に関する知識を使って自然の中から食べられるものを探し出した経験があります。これも、今までスーパーで何の疑いもなく「食べられる」と思って手にとっていた私にとって、「自然のものを食べる」ということを考える良い機会になりました。

Q6:町の面白い人を教えてください

「若い頃は、年寄りからの『あれもダメ、これもダメ』という言葉で悔しい思いをしてきたけれど。今はオレが年寄りだから、なんでもやってみて地域を盛り上げることがどんどんできる! 今が青春!」と言っているパワフルなおじちゃんの生き様がおもしろいです。

地区の偉い人なのに、自ら率先して動く姿を見て、尊敬しています。

Q7:同世代でおもしろいことを言っている人は?

鹿島支所(薩摩川内市役所)で化石の展示等を担当していらっしゃる三宅優佳(みやけ ゆか)さんと、歴史物や民具を展示している下甑郷土館(しもこしききょうどかん)という施設の管理をしていらっしゃる泉さやかさんです。

お二人とも20代後半の女性です。展示物についての情熱と知識がとてつもなく、とても面白い解説をしてくれます。

Q8:地域での失敗談を教えてください

トライアスロン大会

「こしき島アクアスロン大会」という、島ぐるみの大きなスポーツイベントの運営をした際に、イベントを通してお世話になった島の人に失礼な振る舞いをしてしまったことがあります。相手への想像力や感謝の気持ちが足りなかったんですね。

都会では「イベントをきっかけにお世話になる」という方がほとんどだと思いますが、ここではむしろ「普段からお世話になっている人に、イベントでもさらにお世話になっている」という関わり方の順番です。

知り合いの漁師さん、商店の方、役場の人や主婦の方、郵便配達のおじさん。イベントが終わった後、皆さんに会うとなんだかイベントスイッチが切れてしまって、普段の感覚になりがちです。そんな時でもイベントモードに戻って「漁船でお見送りしてくださってありがとう」「バーベキューの食材を届けてくれてありがとう」「郵便物の送り作業をありがとう」「交通規制でご迷惑をおかけしましたね」と、一言お礼を言うことは、気付けばできることですが、気付かないとなかなか難しいものでした。

Q9:あなたが考える地域の課題を教えてください

下甑島から見える海

集落を越えた人の繋がり

現在下甑島には、約2,700人の方が住んでいます。この島内で、集落を越えた人の繋がりがまだ薄いと感じます。集落ごとが遠く、時には山を隔てて離れているからかもしれません。何につけても集落ごと、という印象です。

甑島列島(上甑島、中甑島、下甑島)となると人口は約5,500人にもなりますが、同じ甑島なのにお互いのことをあまり知らないという方が大半です。これから人口が減っていく中で、集落や島の壁を越えた人の繋がりが、地域を維持することや、何か新しいことを始める力となると感じています。実際に今、下甑島では恐らく史上初の、2地区での協同プロジェクトによる下甑島助八古道が動いています。

Q10:好きな地域のごはんを教えてください

お魚の刺身

魚のお刺身

キングオブうまい、です。旬の脂がのったお魚はほんとうに美味しいんです。特に有名なキビナゴやタカエビ、ブリやヒラマサ、アジ……挙げたらキリがありません。

お刺身を手に乗せて撮影

「すし」と呼ばれる混ぜごはん

お料理だと、昔からのハレ(特別な日)の料理の「すし」と呼ばれる混ぜごはんが好きです。地域によって生節(なまぶし)や焼いたさば、昆布など、入れるものが少しずつ違います。

Q11:みんなが知らない地域の情報を教えてください

戸隠の栗原さんと同じく、ウェブに露出していない地域の情報を発信したいという思いもあり、ブログを始めました。ブログ「せきこの下甑島日記」を参照していただけたらと思います!

さっと通り過ぎがちな観光地をとことん楽しむ方法を書いたり、雲母が溶け出してキラキラ光る砂浜の美しさを伝えたりしています。

Q12:尊敬している地域の人々は?

子どもたちが大人になった時の地域を想像して活動している方、今までの歴史の記録や整理、継承に黙々と取り組んでいる方、島民のライフラインの維持を責任持って取り組んでくださっている方など、頭が下がります。

Q13:注目してくれる地域おこし協力隊

同じ離島暮らしということで、勝手に親近感を覚えている奥野さん。日々の生活の中の出来事や思ったことを自然体で発信されています。肩に力が入っていない感じがとても心地よく、参考にしています。

協力隊を卒業した方なのですが、原田さんは自分の感性が反応したものを、魅力的に伝えることに長けている方だと感じています。とろけるようなマジックアワーの夕日の写真や、一言一言が滲みだすように紡がれる「遠別むかしがたりシリーズ」は職人芸。

大学は山岳部に所属し、ニュージーランド・トレッキング旅行2ヶ月間や日本海~日本アルプス~太平洋単独縦走46日間を経験。大学卒業後、登山ツアー専門旅行社にて勤務と山づくしな通称ちくちゅーさん。自分と同じ観光分野でも専門性に特化すると、こうも切り口が違うのか!と目から鱗がぽろぽろと落ちています。地域密着エコツアーの今後がとても気になります。

Q14:地域おこし協力隊へ応募しようと思っている人へのアドバイスをお願いします

下甑島の夕暮れ

私は、できるだけまずは「自分がやりたいこと」、その中で「地域に必要とされていること」を選んで活動しています。

前提として、自分の人生は自分が楽しいことや意味を感じることをやっていなきゃ後悔すると思うんです。自分を捨てて「身も心も地域おこしに捧げます」と言うのは不健康ですし、そんなことを言う人はあんまり信用できないな、と思います。

地域おこし協力隊は、みんなのお金(税金)でお給料をいただいている公的な立場です。だから「地域のためになることをしている」という感覚は、自分のためにも欲しくなる。常に「私がやっているこれって、地域のためになっているのかな?」と自分に問いかけている方が、のちのち自分が楽しんで活動できることに繋がると思っています。

ちなみに地域という大きなくくりだと出ない答えも、「この人達の想いには応えたい」とか、もっと個人的な部分でも、やりがいを感じることはあると思います。より地域を捉える解像度を上げて、同じ土地で暮らしている人達の顔を思い浮かべると出る答えもあります。

「自分が納得して楽しく活動できること」を追及している地域おこし協力隊の活動は、自分にとっても地域にとっても、価値があると思います。

(写真提供:関美穂子)

お話をうかがった人

関 美穂子 (せき みほこ)
地域の魅力が地元の経済活性に繋がる「観光」という仕組みに興味を持ち、鹿児島大学卒業後に旅行会社勤務。後、地域おこし協力隊として鹿児島県薩摩川内市の下甑島にて暮らしながら特産品開発、観光商品開発に取り組んでいる。着地型観光と地域の良い関わり方と、それで自分が稼いでいく方法を模索中。島生活のお裾分けメディア「せきこの下甑島日記」を運営している。

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者 / フォトグラファー。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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