地域のリアルな暮らしを、現地で暮らすひとたちに聞いてみたい──そんな想いから、地域おこし協力隊の皆さんに15の質問をさせてもらう企画。今回お話をうかがったのは、霧島連山の湧き水が湧く町として知られる、宮崎県小林市、野尻で暮らしている細川絵美さんです。
Q1:自己紹介をお願いします
細川絵美です。2015年10月から、宮崎県小林市野尻庁舎の地域振興課に籍を置いて、地域おこし協力隊として活動しています。
Q2:あなたが取り組んでいる活動を教えてください
これまで・現在:広報誌の編集やSNSで情報発信
取り組んでいることは、小林市野尻にある道の駅「ゆ~ぱるのじり」と、「のじりこぴあ」(広い公園・子ども向けの遊具や売店・バラ園・キャンプ場などがある施設)の広報・PRのお手伝いとして、広報誌をつくったり、FacebookなどのSNSで発信したりしています。また、地域で活動する「のじりばら愛好会」カレンダーと、冊子づくりの編集をお手伝いしたり。今、販売を開始しているところです。
これから:野尻の魅力を発掘して、形に残したい
私は学生時代から「聞き書き」を続けています。小林市でも、地域に根付いている方々とお会いしてお話を聞いて回り、何気ない暮らしの中に残っている「生きた話」を、地域の方々にうかがっています。
ゆくゆくは聞き書きを通して、小林市や野尻地区の生活文化を残していきたい。その第一歩として、毎月発行している「野尻庁舎だより」という広報誌の1月号から2ページいただいて、「野尻の聞き書き」を連載しています。1月号のテーマは、冬の保存食。地域に根付く柚子胡椒づくりや漬物づくりを取材して、家庭の味を紹介しました。いずれは聞き書き集として、野尻のブランドブックをつくり、毎月庁舎便りでこまめに発信する。さらに文章だけではなく、企画から台本作成、レポーターまで担当していくケーブルテレビの番組「こばナビ」でも、野尻の魅力を発掘して、形にして残していきたいと考えています。
Q3:地域おこし協力隊をはじめたきっかけを教えてください
仕事を自分で生み出し、続けられる生き方をしたくて
「地域おこし協力隊になりたい」というより、「移住したい」気持ちが先にあります。私は北海道で生まれて、東京で7年間会社員をしていましたが、このまま東京で結婚して子育てをして生きていくイメージが持てなくて。仕事とプライベートと切り離して考えるのではなく、暮らしの延長線上に仕事がある、という働き方をしたかったんです。
2015年の8月に結婚したのですが、ライフイベントを経ても、仕事を自分でつくり続けられる生き方をしたいと考えているうちに、地域おこし協力隊の制度を知りました。パートナーである慎太とも話し合い、一緒に移住できる上に時期としてもピッタリで、小林市の協力隊に応募しました。協力隊として3年間活動をしているなかで、独立後も続けていける仕事や宮崎で暮らしていくための基盤づくりをしたいと思っています。
Q4:あなたの「地域暮らしの魅力」を教えてください
幅広い年齢層の方と毎日関われる
小林市に来て感じる魅力は、幅広い年齢層の方と毎日関われること。80代の方でもすごく元気なんです。畑を持っている方は、体力がある。東京にいるときは世代の違う方々と一緒にお酒を飲んだり、お話聞いたりすることがほとんどなかったから、おもしろいですね。
Q5:好きな地域のごはんを教えてください
小林市に移住して1番おいしいと思ったのは、鶏刺しです。スーパーで売っているものでも、すごくおいしい。もっというと、鶏を育てている家で、さばきたてのお刺身をいただいたのですが、本当においしかったです。
またこの地域では有名な、サツマイモともち米を混ぜてつくった「ねったくり」も好きですね。もちもちしたおやつで、年末年始になるとよく作られるおやつだそうです。
Q6:心に残る出来事を教えてください
ロールプレイングゲームのように、地域のつながりが物語を進めていくこと
地域の方にお話をうかがうと、ある特定のトピックについて詳しい方を紹介してくださるんです。例えば聞き書きの取材時に、道に迷って「誰々さんのところへ行きたいんです」と、たまたま道ですれ違ったおじいさんに相談したら「その誰々さんは、親戚だよ」って言われて(笑)。偶然ですが、地域のつながりの強さにびっくりしました。
しかも「うちの畑も見ていきなよ、せっかく来たんだから」と歓迎してくれます。結局、偶然お会いしたおじいさんにお話を聞かせてもらったり、おみやげに野菜と漬物をいただいて、「またおいでよ」って声をかけてくれたり。
地域の誰かに聞けば、何かしら教えてくれて数珠つなぎのようにつながっていく。私が東京にいた頃は隣人を知らなかったので、とても印象的なことでした。
Q7:町のおもしろいひとを教えてください
- 平水賢一さん
今流行りの西諸弁の、方言かるたを考えたひとです。方言や風習、地域の成り立ちなどの郷土の歴史に詳しくて、ローカルテレビによく出演している方です。この間は「シラスまき(*1)」を実践してもらいながら、巻き方を教えていただきました。
(*1)シラスまき:1年の無病息災に感謝し、乾燥すると雪のように真っ白になるシラス(火山灰)で庭を清め、新しい年を迎える薩摩に伝わる風習。野尻では今はやるひとがほとんどいなくなっている
Q8:同世代でおもしろいひとはいますか?
- 杉元祐子さん(糀や)
こうじを使ったスムージーや、そのまま食べられる生甘酒を販売しているカフェ「糀や」の店主、杉元祐子さんです。大阪、東京で暮らしていて、小林市にUターンしてきた方です。地域のいろんな活動に参加して、イベントを企画したり、「糀や」さんとして出店してくださったり。デザインの重要性をすごく大切にしていて、新しい価値観を取り入れつつ、一方で地域のつながりなどの昔から続くものも大事にされている。そのバランス感覚を見習いたいと思っています。
Q9:地域での失敗談を教えてください
活動の舵を、自分でしっかり握ろう
やりたいこと、実践したい暮らしがあって小林市に来たけれど、地域で求められることはやりたいことと違うという場面も、当たり前のようにあります。
「やりたいこと」「求められること」の両方に取り組む必要があるのですが、やらなきゃいけないことに追われると、何を目指したいのか、目的地を見失ってしまうことが時々あります。いろんなことに手を出し過ぎると、地域おこし協力隊の任期を終える3年後に独立できないんじゃないか……という不安や焦りを感じることもあって。
嬉しい悩みですが、巻き込まれるだけで終わるのではなくて、自分が本気でやりたいことを常に持って、地域で生きる。そして、自分の内に溜めることなく「これがやりたいんです!」と、言葉にして常に伝えることが大切だと気づきました。
地域おこし協力隊の活動の舵を、自分でしっかり握る必要があるんです。
実際、企画書をつくって課長に相談して、動きはじめたプロジェクトがあります。自分で発信して動き出せば、「NO」とは言われません。むしろ協力してくれる。だから受け身ではダメ。自ら手挙げて、動いていく。あれやりたい、これやりたい、やりますって、自分から巻き込んでいくくらいの勢いが必要です。そうすると活動が楽しくなっていきます。
Q10:あなたが考える地域の課題を教えてください
いいものや、そのつくり手、おもしろい活動を知ってもらうために
課題は、小林市の価値を届ける力と、届けるために必要なデザイン力でしょうか。移住して仕事を始めてから、このふたつを提案出来るひとや企画は、すごく需要があるんじゃないかと思うようになりました。
良いものや、そのつくり手、おもしろい活動をしているひとはたくさんいます。小林市野尻地区には「自らつくる」ひとが多いんです。フロンティア精神のような考え方が根付いているので、お祭りや催事は多すぎるのではないか……と思うくらいあります(笑)。
私は地域の方々の暮らしの文化を「つくる」だけでなく、「残す・見える化」するために言葉や映像化し、小林の魅力を知ってもらえるようにデザインしていきたいです。
Q11:ウェブでは知ることができない地域の情報は?
ほぼすべての家庭で、食を自給している
農家ではなくても、自分の家で何かしら食べ物をつくっているので、自給率がすごく高いこと。野菜を育てて漬物にしたりと、ほぼすべての家庭で食をまかなえているのが小林市の素晴らしいところ。1番びっくりしたことは、地域のおじいさんに初めて会ったときに、お近づきの印にと、1升の米俵を持ってきてくれたんです。
70歳を超えるおじいちゃんが軽々と、1升の米俵を持ち上げる。そういう男前なひとが多いですね(笑)。
Q12:尊敬している町のひとを教えてください
- 永井健一さん(地域振興課・課長)
野尻のフロンティア精神を表すひと。「なんでもやってみなさい」と、課長の立場で本気で言ってくれます。
Q13:注目している地域おこし協力隊を教えてください
- 木戸悠輔さん(宮崎県えびの市地域おこし協力隊さん)
木戸さんは地域おこし協力隊になって2年目になったばかりですが、えびの市の山中に家を借りて、奥さんとヤギと暮らしながら、移住1年目で自然農を始めています。その自給力の高さを、尊敬しています。
- 福永俊介さん(福岡県東峰村地域おこし協力隊)
たまたま協力隊のFacebookページで見たんですけど地域発のテレビ・ラジオ局を運営している方です。地域住民だけで予算をかけずに番組を制作する仕組みをつくって、地域を拠点に発信しています。
Q14:任期後の進路を教えてください
メディアづくり、場づくりを軸にナリワイを複数育てる
任期後の進路については、小さなナリワイを複数つくっていきたいと思っています。
ひとつは自給力を高めること。自分たちが食べる分の食べ物をつくれるようになりたいです。
もうひとつが、ゲストハウス兼ブックカフェのような場づくりがしたいと思っています。竹などの身近な素材を使って作る半球形のスタードームプロジェクトがその第一歩でもあるのですが、地域の外から来てくれたひとが、地域の方と一緒にお茶やお酒を飲んだり、お話を聞いたりとか、小林市のひとの視点で地域暮らしを体験できるような拠点スペースができたらと思っています。あとはライター業として「繋ぎ屋-命を繋ぐ物語」などのメディアを育てること、そしていくつかの媒体で書かせてもらっている寄稿文も継続していきます。
現在制作中の聞き書きの本が形になれば、自治体とつながって地域に根付きながら、隣町の聞き書き本も作成できるかもしれません。地域の生活文化を聞き書き本として残すことを、何かしらの形で生業にできないかと考えています。
Q15:これから地域おこし協力隊へ応募しようと思っているひとへのアドバイスをお願いします
ブレない生き方の軸を持とう
何をしたいかも大事だけれど、どんなふうに生きていきたいかを描けるとよいと思います。
「あれをやりたい」とか「こんな暮らしがしたい」という願望ありきで移住して、地域おこし協力隊になる。でもそれは願望であって、自分の根底にある生き方の軸ではないと思うんです。確固たる生き方の指針があれば、日々揺らぐことがあっても軌道を修正できます。
地域おこし協力隊になることは手段であって、目的ではありません。どのように生きたいのか。理想の生き方を実現するために何をやりたいのか。これらは時間とともに変化していくと思いますが、自分の根底まで問うたうえで、キャンパスに描いた生き方ができそうな地域に移住してほしいと思います。
(この記事は、宮崎県小林市と協働で製作する記事広告コンテンツです)
お話をうかがったひと
細川 絵美(ほそかわ えみ)
1986年5月10日生まれ。北海道函館市出身。北海道教育大学教育学部卒業。東京でフリーペーパーの広告営業、地域情報誌の記者編集、Web会社の広報、聞き書きライターを経験。深夜まで駆け回る生活だった東京会社員生活、シェアハウスでの生活、今のパートナーとの出会いを通して、自分の真ん中で自ら生み出し創る生き方をしたいと思い、地方移住を決めた。2015年10月から夫婦で小林市地域おこし協力隊として活動開始。実体験を通じて、田舎暮らし・安心安全な食・ナリワイづくり・地域おこし協力隊のこと・家族のこと・地域のこと、などを発信するブログ「繋ぎ屋」を夫婦で運営。広報PR、聞き書きなど情報発信を軸に、ゲストハウス運営などナリワイづくりに取組んでいる。
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