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【地域おこし協力隊】県内No.1の限界集落のPR隊長・村澤雄大|長野県天龍村

地域のリアルな暮らしを、現地で暮らす人たちに聞いてみたい──そんな想いから、地域おこし協力隊の皆さんに15の質問をさせてもらう企画。今回お話をうかがったのは、長野県の天龍村で暮らしている村澤雄大さん。出張時は必ずヒッチハイクで行き先に向かうという持ち前の明るさとエネルギッシュな性格で、天龍村で挑戦的でたのしい取組みをしています。

Q1:自己紹介をお願いします

村公認のPRヒッチハイカー、村澤雄大(むらさわゆうだい)です。長野県下伊那郡「天龍村」で活動しており、今年で3年目を迎えました。

ここでひとつ、お伝えしておくことがあります。天龍村は「地域おこし協力隊」の名前を変えさせていただきました。現在の名前は「あっぱれ!天龍村ありが隊」です。

ぼくたちの活動や地域で暮らしていくために大切なことは、じつは「協力する」ことではなく「協力してもらえる」ことではないか、と思うようになったからです。そこで2014年度4月から天龍村の地域おこし協力隊は「天龍村の人たちにいつも協力していただきありがたい(隊)です」、略して「あっぱれ!天龍村ありが隊」に正式改名して活動しています。

Q2:取り組んでいる活動を教えてください

天龍村生活を楽しめるゲストハウス「満月屋」作り
ゲストハウス「満月屋」

これまでと現在取り組んでいること

  • [1]天龍村生活を楽しめるゲストハウス「満月屋」作り

天龍村の生活を楽しめるゲストハウス「満月屋」を作るべく、空き家を改装しています。村で遊んで地域を好きになり、もっと長く天龍村に居たいなあ……と思ってくれる人たちがいます。ぼくらも他の地域の人ともっと触れ合いたい。宿としての機能を持ちながら、お互いがコミュニケーションする場所にしたいです。

「あっぱれ!天龍村ありが隊」が毎月発行している隊員新聞には、「満月屋欲しいものリスト」を掲載。村の資源を活かしたゲストハウスにするために台所や食器棚、コタツにソファー、ありとあらゆるものが村の人たちのおさがりで成り立っています。

改修は村の元大工さんが指揮を取り、自然にあるものを活かす補修の方法を教えてくれました。現在も天龍村ファンの学生達や、多くの人の力を借りながら徐々に完成に近づいています。

長野県天龍村・中井侍のお茶畑

  • [2]中井侍には侍おるんじゃー!プロジェクト

天龍村には「中井侍」というめちゃくちゃかっこいい名前の地域があります。県内最高峰で採れる山茶のうえ、手摘みと、山間という立地からとても貴重な地域産品となっています。

長野県天龍村・中井侍

しかし中井侍地区は生産者の高齢化、後継者不足の問題を抱えていました。そこで、中井侍地区のお茶畑とその景色を残していくための「中井侍には侍おるんじゃー!プロジェクト」をはじめました。

長野県天龍村・中井侍のお茶畑

長野県天龍村・中井侍のお茶畑

実施したことは3つです。

  1. お茶のパッケージデザインの製作
  2. お茶摘みツアーの実施
  3. 中井侍駅に緑茶カフェを隣接

今年から初めて実施したため、まだまだこれからのプロジェクトですが、一番うれしかったのは地区の方々が「来年もまたやりたい!」と話してくれたことと、助けていただけること。来年のツアーに向け、地区の方々はすでに準備を進めております!

天龍村生活体験ツアー「ななめに暮らす数日。」

  • [3]天龍村生活体験ツアー「ななめに暮らす数日。」

「ななめに暮らす数日。」とは、主に学生や若者を対象とした天龍村生活体験ツアーです。傾斜地である村から見る「ななめ」と、村に来た若者がいつもと違った視点から物事を見たり感じたりしてもらいたいという意味の「ななめ」をかけています。

村の人と触れ合うことに重点を置いているツアーで、参加してくれる方はたちまち村人のファンになってしまいます。「あの人に会いたいからまた村に来ました!」という若者が徐々に現れて、嬉しい限りです。季節に合わせて「ななめに暮らす夏休み。」「ななめに暮らすお正月。」と、シリーズ化しています。

天龍村生活体験ツアー「ななめに暮らす数日。」

今まで実施してきた活動内容は、村内に流れる天龍川でラフティングをしたり、村の子どもたちと廃校でやる「竹水てっぽう祭」、木こりの達人から学ぶ薪割り&植林活動、村のおじいちゃんと行く山菜採りなどなど。季節ごとに楽しめる体験を村の人と一緒にやることは、天龍村ならではの経験になると思っています。

ゆずを被って広めよう!天龍村公認ゆず坊やヒッチハイク出張
特産物の「柚子」の村であることをPRするために柚子帽子を被っています
  • [4]ゆずを被って広めよう!天龍村公認ゆず坊やヒッチハイク出張

学生時代、財布をスられたことから始まったヒッチハイクでしたが、多くの人と出会い、多様な価値観を知ることができました。ヒッチハイクがきっかけでご縁のある方が多く、ぼくの人脈作りにおいてなくてはならないものです。

ゆずを被って広めよう!天龍村公認ゆず坊やヒッチハイク出張

このヒッチハイクで得た経験を地域おこし協力隊として活動にも活かしたいと思い、村役場に相談したところ、村長からも許可がおりました。

現在遠出の出張は、ほとんどヒッチハイクで行き帰りさせてもらっています!

ゆずを被って広めよう!天龍村公認ゆず坊やヒッチハイク出張

道中乗せていただいた人に、天龍村のことを語ったり、一緒におもしろいアイディアを考えたりと移動中も本当に楽しいです。10月の東京出張はもちろん行き帰りヒッチハイク。帰りに乗せていただいた方が天龍村まで送ってくださり、一晩その方の家に泊まらせていただくこともありました。

これから取り組もうとしていること

武蔵野大学生×天龍村「漏れバケツ調査」からの「バケツの穴うめうめプロジェクト!」

武蔵野大学生×天龍村「バケツの穴うめうめプロジェクト!」

村の大ファンになってくれた武蔵野大学の学生が、大学の研究で村の経済調査に入ってくれました。その名も「漏れバケツ調査」。村のお金がどれだけ地域の外に流出しているのかを食費に絞って調査したのです。

その結果70%以上のお金が村外に流失していると判明し、村の商工会も合同して「バケツの穴うめうめプロジェクト」を開始しようとしているところです。このプロジェクトは商店街(供給側)と村民(消費側)のプロジェクトに分かれます。商店街側はアンケートの結果から「営業時間の見直し」「商品の変更、追加」「サービスの向上」などを図り、商店街からお客さんを逃さない「商店街かすみ網作戦」を実行します。村民側は「村でお金を消費しよう」と思えるように意識改革を進めます。

アンケート調査の結果、各家庭で買い物料金を毎月370円分増やすだけで、村外に流れ出るお金の1%の穴は塞がり、年間で220万円以上のお金が村に残ることがわかりました(のちに村内で「370革命(かくめい)アンケート調査」と呼ばれることに)。

まずは小さいようで大きな「1%」に歯止めをかけることを目標に、地域の方々に呼びかけはじめたいと思います。

さらに村内の経済活動を促進するべく、駅の目の前にある大きな廃ホテルを改修したショップシェアリングのお店を11月中旬からオープンします。特産品店「山笑う」と肉と魚屋の「まる屋」が入ることに加えて、店内にくつろげるおこたの空間を用意しました。この憩いの場には、村の人たちの「これほしい」「あれほしい」という要望を吸い上げていく狙いがあります。

村の人が好きなときに、好きなものを売り買いできる理想のお店になるように、村の方々とお店づくりを進めていくのが今から楽しみです。

いつかやってみたいこと

長野県天龍村

子どもたちに天竜川から観る村の景色を知って育ってもらいたい

村に来た当初、天竜川で初めてラフティングをして、そのときのガイドさんから「川から見る景色は、普段見ている景色とは違うんだよ」と教えていただきました。たしかに、川を下りながら見る村の景色は本当に美しかったんです。

長野県天竜川ラフティング

長野県天竜川ラフティング

聞くところによると、村の人たちはほとんど天竜川を船で下ったことがないそうです。「村の子ども達にこの景色を知って育ってもらいたい!」と思い、ガイドになるトレーニングをしています。来年の夏には子どもたちを乗せて天竜川でラフティングをします。

Q3:地域おこし協力隊をはじめたきっかけを教えてください

長野県天龍村

大学卒業後の2年半はタイの山奥で生活し、その後の半年間は東京のテレビ番組制作会社で雇われADを体験し、3年ぶりに実家に帰ってくると、自分の机に地方紙が置いてあり「天龍村地域おこし協力隊制度導入」の記事にマークが。母親の仕業だったようですが、翌日その新聞を片手に天龍村役場に行ったのがきっかけです。

天龍村を選んだ理由はなんですか?と聞かれることもありますが、本当にたまたまです。だからご縁だと思っています。

Q4:地域暮らしの魅力を教えてください

長野県天龍村

ひとりでは生きていけないと感じられること

暮らしたことがないので憶測ですが……都会で一人暮らしをしていると、ひとりで生きている気になることがあるそうですね。

地域はそうではありません。行事や祭事があったり、町内清掃があったり、農作業を手伝ったり、逆に手伝ってもらったりしながら日々生活します。「人間はひとりで暮らせない弱い生き物である」と知ることができるのが、地域暮らしの魅力だと感じています。

長野県天龍村

Q5:心に残る体験を教えてください

ヤギのさしみへのお野菜定期便制度

ヤギのさしみへのお野菜定期便制度
ヤギのさしみ

芝ヤギを飼っていたときのこと。冬になり、ヤギが食べる家の草がなくなってきてどうしよう……と悩んでいたある日、いつも通りヤギ小屋に行くと「ヤギさんにあげてください」と書かれた、野菜がパンパンに入った袋が置かれていました。村のおじいちゃんおばあちゃんたちは家の前を通るたびに「あのヤギはちゃんと餌をもらっているのか」と気になっていたそうです。そして、いつの間にか畑で採った野菜の端っこなどを集めて持ってきてくれるようになりました。

ヤギのさしみへのお野菜定期便制度

ヤギとぼくの立場は完全に逆転し、ヤギの餌からぼくの食べられる部分を頂戴して冬を凌ぐという、ヤギのヒモになる時期がありました。「新しい生きがいができたよ。ありがとう」とお礼まで言ってくれる方までいて、なんて懐が深いのだろうと感激しました。

Q6:町のおもしろい人を教えてください

大豆の先生大杉さん

  • たかちゃん(大豆の先生・大杉延臣さんの愛称)

山奥で生まれ、66年間、山の生活を続けてきた仙人のような方です。畑作業から林業、狩りまでされる生きる達人。どのくらい達人かというと、イノシシを顔で判別でき、鹿の足跡で性別を判断できる男。

Q7:失敗談を教えてください

「ななめに暮らす数日。(天龍村体験ツアー)」を実施

初めて「ななめに暮らす数日。(天龍村体験ツアー)」を実施した後、ホストファミリーの方々と反省会をしたときのことです。ホストファミリーからは「ウチは宿屋ではない。眠るために来るだけなら、もうやりたくない」とはっきり意見を言われたことがあります。ホストファミリーに迷惑をかけないために、ぼくらはプログラムを組みました。ツアー参加者が宿泊する夜を除いて、参加者を村のあちこちに連れ回していたのです。

現在の2泊3日のホームステイはホストファミリーにプログラムを考えていただき、参加者もホストファミリーも満足してもらえる企画になっています。どんな活動においても勝手な思い込みで進めるのではなく、まず村の人に話してみる、聞いてみるところからはじめることを意識しています。

Q8:あなたが考える地域の課題を教えてください

全国各地の地方の市町村、都市ともに、それぞれの課題が山積みのように思えます。しかしその課題そのものが問題ではなく、課題を「課題」だと思い続けていることが問題である気がします。課題は資源であり、チャンスでもありますよね。

たとえば山奥にある天龍村はアクセスの悪さはピカイチです。東京から行くとなると、長野県内で一番時間がかかるのではないでしょうか。そんな天龍村では村道、県道のぐにゃぐにゃの山道が課題として話題に挙がることが多いです。

長野県天龍村の伝統行事

長野県天龍村の伝統行事

しかしそのアクセスの悪さが外部との交流をシャットアウトするので、伝統行事・伝統食・伝統野菜が守られ続けられている。そのぐにゃぐにゃの山道を走ってみたいから、ツーリングを楽しみたい人達の通り道になっています。

長野県天龍村の伝統行事

都心からのアクセスが悪さが理由でトンネルを建設して村と町をつないでしまったら、それこそ村内の人口流失に拍車をかけ、ツーリングのコースから外れるでしょう。地域内ではマイナス要因にしか思えないことも、視点を変えて見れば資源に変わるはずです。

ないものをねだるのではなく、あるものを探して光らせていくことが大切なのではないかと考えています。

長野県天龍村

Q9:好きな地域のごはんを教えてください

渋皮煮

むっちゃの渋皮煮

よくお世話になっている川上さんの宅の奥さん(むっちゃ)が作る栗の渋皮煮は最高にうまいです! やっぱり土地の食材を知り尽くしている現地のお母さんが作るものは、どんな高級レストランの料理でも勝てないくらいおいしい。

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川上さんの宅の奥さん(むっちゃ)

Q10:ウェブでは知れない地域のことを教えてください

カッパ伝説があるんです

昔々、村にいたずら好きなカッパがいました。

いたずら好きなカッパは、いたずらをしすぎて村の人に捕まってしまいました。捕まったカッパは「秘伝の薬のつくり方を教えるから許してほしい」と言い、村人に秘伝の薬のつくり方を教えることで、逃がしてもらいました。

この薬の作り方を聞いたおばあちゃんが実際います(笑)。なんでも口内の薬らしく、この薬を買いにわざわざ来る方もいたそうです。ちなみにこのおばあちゃんが作らないと効果がないとか……。

Q11:町で尊敬している人を教えてください

長野県天龍村

  • 渡久山直樹さん

役場の元上司。天龍村に地域おこし協力隊制度を導入した方で、着任当初右も左もわからず、いろいろやらかしてしまったぼくたちを無限の優しさでフォローしてくれました。この人がいなかったら今の「ありが隊」は存在していません。

  • 橘謙治さん

役場の現上司。「ありが隊」の活動を信じ、全力でサポートしてくれます。隊員の日々の悩みも親身になって聞いてくれて本当に頼もしいリーダーです。

  • 大杉延臣さん

ほぼほぼ仙人。山でのお師匠さんとして、日々、畑仕事を教えてもらっています。畑の作業だけではなく、山の見方、自然との遊び方など、さまざまな学びを与えてくれます。

  • 関福盛さん

坂部地区という祭行事が盛んな地域の長老様です。80歳を超えても1月4日の冬祭りでは4日の夜から5日の昼過ぎまで舞い続けます。本当に神々しく素敵な笑顔のお爺様です。

Q12:注目している地域おこし協力隊

長野県天龍村

  • 愛知県東栄町地域おこし協力隊(大岡千尋)

全国で東栄町しか採れないセリサイト?(ファンデーションの原料)を使っての美容ツアーを企画しています。その地域にしかない特徴をうまく引き出しており、協力隊同士での役割分担が上手に思えます。

  • 岡山県美作市の地域おこし協力隊

デザインにみんなのセンスを感じます。地域にあるものをうまく利用してクリエイティブな仕事をしていますね。

Q13:地域おこし協力隊をはじめてからの「一番の学び」を教えてください

長野県天龍村

持ちつ持たれつ

村はとても小さいコミュニティ。だからこそ、よくも悪くも人付き合いから、しがらみが生まれます。その中で生活していくためには、わざわざ「いいことばかりする」よりも、「当たり前のことをちゃんとやる」ほうが大切です。

誰かに何か協力してもらったら、必ず自分なりの感謝の気持ちを伝える。誰かが困っていたら自分のできることをする。当たり前のことができて初めて信頼が生まれます。

地域暮らしは「持ちつ持たれつ」なんですよ。

Q14:任期後の進路を教えてください

起業します! 上記で述べてきた活動をそのまま事業化し、「TSUMEMOGAKI」(つめもがき)という名前の会社にしようと思っています。

これは大和言葉で「つめ」は「爪」ではなく「詰め」の方を意味し、ラストスパートをかける様子、最後に踏ん張るという様子を表す言葉で、県内No.1の限界集落と言われている天龍村で起業するにあたって、ぴったりかと思っています。

Q15:これから地域おこし協力隊へ応募しようと思っている人へのアドバイス

長野県天龍村

地域の課題を見つけるのではなく、好きなところを見つけることが大切です。そのためにはまず地域をむちゃくちゃ好きになること! それが活動のモチベーションに繋がります。地域を好きにならない状態で最初から問題ばかりを気にし、課題を与えられてしまうと「なんで自分がこんなことをやってんだ?」という気持ちになります。一緒に暮らしている地域の方々を好きになれば、自ずと課題は見えてくるかと思います。

まずは自分自身が楽しんで活動し、楽しんで暮らすことが一番の宣伝活動にもつながるはずです!

長野県天龍村の地域おこし協力隊

お話をうかがったひと

村澤 雄大(むらさわ ゆうだい)
1987年生まれ。長野県飯田市出身。村での愛称は「いも兄」。いも兄になって2年半くらい。なぜ「いも兄」って呼ばれているかは内緒。

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者 / フォトグラファー。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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