いつもと暮らし

【心地よさと自然との距離感】#2|ベルリンで出会った、緑を愛する女性の庭へ

自然との距離感は、人の心地よさにどう影響するのか?

失われつつある生きものたちとの心地よい距離感を、自分の手で取り戻したい。そのために、どんな暮らしができるだろうか。ショッピングモール、新築の住宅地。開発が進むニュータウンで自然に親しんだ僕は、遠く離れたドイツの首都ベルリンで、再び自然と暮らしを見つめ直す。

 

2018年の暮れ。ドイツの首都ベルリンでの暮らしは、本屋めぐりからはじまった。

ほぼつてのない自分があたらしいなにかと出会うなら、それはきっと毎日かかさずに読む本がいちばんのきっかけになるだろうと思えたから。

いくつか本屋を巡ったなかでもミッテ地区にあるsodabooksへ通うようになった。

この本屋はライフスタイルにまつわるレシピ本や街のガイド、建築、デザインにまつわる本を中心に選書している。

近い将来湖畔で暮らそうと考えていたぼくは、はじめてsodabooksを訪ねたときに「take me to the lakes」という湖のガイドブックを持ち帰ることにした。

光が反射して湖面が光るような、美しい装丁の本だった。

take to me the lakes
take me to the lakes

家に帰るとすぐにソファに身体をしずめて、週末に遊びに行ける湖を探した。

ぱらぱらとページをめくっていくと、ふと奥付けが気になった。

水辺で過ごす時間を愛する本づくりに携わっている人なら、きっと自分と近しい価値観を持っているのかもしれない。

奥付けのページを指でなぞっていくとコピーエディターの欄に、Maia Fraizarという名がある。

Maiaの名前ですぐに検索をしてみた。

「Maiaは『Back to the roots』というメディアのファウンダーなのだなぁ。しかも、ぼくが欲しかったものがフィーチャーされているじゃないか!」

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『Back to the roots』

少し前から我が家の暮らしに取り入れようと心に決めていた「BEE IN」の蜜蝋ラップを、このメディアは取り上げていた。

BBE INは文字通り、ミツバチの蜜蝋を使ってつくられた食品を保存するためのラップだ。

サランラップは使ったらその都度捨てなければならないが、蜜蝋ラップは洗えば何度でも使い続けることができる。

湖での過ごし方に、蜜蝋ラップ……。

この人は自然とつながりをもち、自然への思いやりをもって暮らしているのだろう。

そのうえ、ぼくが求めている価値観や生き方を発信しているコピーエディターじゃないか。

ほかに情報はなく直感だけが頼りだったが、とにかく彼女に会ってみたいと思ったぼくは、すぐにメッセージを送った。

maia
Maia Frazier

「よく来てくれましたね。あなたと会えて嬉しいです」

「拓郎です。こちらこそ、お会いできて本当に嬉しいです」

玄関の白い扉から顔をのぞかせるMaiaに、拙い英語の取材依頼にも快く応じてくれたことへの感謝の気持ちを、精一杯こめて挨拶した。

「さあ、中へどうぞ」

Maiaは友人とアパートをシェアして暮らしている。

家の中心にはキッチン兼リビングがあり、その先にMaiaの部屋がある。

さらにその奥にあるレンガと緑の壁に囲まれた庭へと案内してくれた。

彼女の部屋から庭に向かうにしたがって、空や緑とつながっている感覚を得られた

「すごい……! ここは別世界だなぁ」

この高揚感は、夜行バスで神山町を訪ねた5年前と似ている。神山町でもMaiaの庭でも、僕が求めているものがここにあるかもしれないと感じたからだろう。

緑とレンガの高い壁に囲まれたましかくの庭は、喧騒とは無縁の空間だった。

「もしよかったらインタビューのはじめに、この住まいのことから聞いてもいいですか?」

「ええ、もちろんです。なんでも聞いて」

Maiaはポットにハーブティーを淹れながら言った。

 

次回の【心地よさと自然との距離感】#3 新しいものを買わないMaiaは、なぜ好きなものに囲まれているのか? に続きます。

maia

 

文・写真 /  小松﨑拓郎
翻訳 / 田村由以

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小松﨑拓郎

ドイツ・ベルリン在住の編集者 / フォトグラファー。茨城県龍ケ崎市出身、→ さらに詳しく見る

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【心地よさと自然との距離感】#4 なぜ自然とのつながりが必要なのか

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