「海外でよく仕事をしているらしい、またよしれい」。
その名前と噂は、以前からよく聞いていました。
けれど、実際にどんな仕事をしている方なのか、いまいちよくわかりません。けれど編集部は「この方のお話を聞いてみたい……」という気持ちが消えなくて、またよしさんの情報集めに走りました。
するとなんとなく「沖縄で会社をやっています」「タイ・バンコクでラーメン屋をやっています」ということがわかったのですが、やっぱりいまいちその全貌は見えません。
「またよしさんはどんな働き方をしているのだろう?」
「なぜいろいろな場所を転々と、そして海外で働くことを選ぶのだろう?」
そんな疑問を携え、まずは「どんな……お仕事をしているんですか?」というところから、またよしさんの人生を紐解きつつ、現在のワークスタイルに対する考え方を聞いてきました。
またよし れい(@sayobs)
1983年、東京都生まれ。沖縄を拠点に世界を旅しながら仕事をしている。タイ・バンコクのラーメン屋「威風堂々」に出資。中学時代にニュージーランドに留学。高校時代にイギリスに留学。大学はアメリカに留学するも大病を患い帰国。「ベッドの上でできる仕事を」と考えたことをきっかけにインターネットの仕事をするようになる。著書に『C言語すら知らなかった私がたった2か月でiPhoneアプリをリリースするためにやったこと』『Facebookコミュニティ成功の法則』。ツイッターはこちら
スタイルがないことがスタイル
僕は海外で仕事をしていることが多くて。仕事の選び方は3つあります。
まず、自分にしかできない仕事であること。2つ目は、一緒に仕事をしたいひととしか働きたくないので、一緒に仕事をしたいひとの案件であること。3つ目が、海外の絡んだ仕事であること。
3つそろった場合は、だいたいやってみることにしています。働く場所の割合はだいたい日本6割、海外4割くらい。自分の直感を信じて、ふらっと行きたい国へ行くようにしています。
実際の仕事内容は……バンコクでラーメン屋に出資しているのと、ブログでの広告収入、そして「旅ビジ」というオンラインコミュニティを運営しています。海外に行くのは、すべてが仕事ではなくって。オンラインコミュニティで発信する内容のネタになるので仕事と言えば仕事ですが、最初はただ旅をしに行ってるだけのことが多いです。
現地にいる方と連絡を取り合って、おもしろそうなひとがいたら紹介してもらうようにはしているので、そこから仕事が生まれることもあります。
あとはコンサルティング事業です。「海外で旅しながら仕事をしたい」「海外で飲食店を経営したい」「海外で何かビジネスを興したい」という方に向けてコンサルをしています。
枠をこれと決めず、いろんな事業を横断的にやっているのですが、ひとつ言えるのは、すべての仕事において、軸はブログです。ブログがきっかけになっています。
働き方のスタイルとしての僕の信条は、「スタイルがないことがスタイル」です。だから、肩書きもない。
たとえば、「何時からこのデスクの前に座ってパソコンでこういう作業をする」って決められたらやりやすいんでしょうけど。海外に行ったらそうやってつねに理想的な環境で仕事をすることはできないんですよ。スタイルを決めてしまうと作業をするときに、その環境が整わないと仕事ができない。
宮本武蔵の有搆無搆(うこうむこう)の教えがあります。有搆無搆というのは、「搆えあって搆えなし」、つまり搆えはあるけれど、その搆えにとらわれてはならないということです。
僕も型は持たずに、いつでも柔軟になんでもできるようにしておこう、って考えています。
型をつくることは一見すると、便利で能率的なんですけど、型からはみ出したときに初めておもしろいことができるかなと思っています。
たとえば今力を入れている仕事のひとつに、日本全国のおみやげデータベースである「OMIYA!」というサイト(*1)。の、海外展開のマーケティング担当があります。
(*1)OMIYA!:※この特集のスポンサーである合同会社cocowaの運営するサイト
代表の松本さんとお話をして、「タイで売れるようにしよう」「タイに売るためにはどういうことが必要だろうか」という話から今いろいろやってるんですけれども。
これって僕が「何々屋さんです」って決めていたらたぶん、こういう仕事ってそもそも話を振ってもらえないのかなって思っています。
飛行機で出会ったサラリーマンに影響を受けて、憧れた金融マン
僕の両親は沖縄出身なんです。だから、子どもの頃から飛行機に乗って沖縄に行くことがよくありました。
小学4年生くらいのとき、2個下に妹がいるんですけど、初めて子どもふたりだけで飛行機に乗って、おじいちゃんおばあちゃんに会いに行ったんです。そういう、CAさんが面倒を見てくれるプログラムがあるんです。
僕って、今もそうなんですけど、飛行機恐怖症なんですよ。飛行機に乗っているときに、妹もまだ小さかったから、不安で泣き出しちゃったんですね。
僕もそれを見て、飛行機も怖いし、不安で泣きそうになっていました。そうしたら僕らの隣の席に座っていたサラリーマンが僕らの様子を見て「怖いの?」って聞いてくれました。
そして「僕は毎日、仕事で世界中あちこち飛行機を使って飛び回っているけど、絶対に落ちないから大丈夫だよ」って言ってくれて、いろんな旅のエピソードを教えてくれたんですよ。で、「あっ、このひと、カッコイイ!」と思って「このひとみたいになりたい」ってそのとき思ったのが、海外を好きになったきっかけです。
その方はたぶん金融系の仕事だったんです。話の中身から想像すると。アタッシュケースを持って、短い髪にジェルを付けていて。それで僕はそのあとずっと金融の勉強をすることになります。
14歳のときにニュージーランドに留学をして。高校生でイギリスに留学をしました。アメリカの大学で金融系の勉強をしようと思って留学をしたんです。でも、僕は途中で病気をしてしまって、ドロップアウトすることに。
学生時代は米国や英国で金融マン……つまり、サラリーマンになろうと考えていたんです。でも、大病を患ってふつうに働くことができなくなってしまいました。
自由な働き方とか場所にとらわれないとか、そういうことは全然考えたことありませんでした。
病気をして、ベッドの上で働き始めた
20代前半で病気をして、最初はウェブ制作をしていました。いわゆるホームページをつくったりとか。入院していたので、ベッドの上でできる仕事を選んだんです。
その仕事をする上で、備忘録のつもりでブログを立ち上げました。で、ちょうどiPhoneが出た頃で、すごく人気だった。「個人でiPhoneアプリをつくれる」という最初の時代です。
僕は素人ながらアプリをつくっていて、同時にブログでプログラミングについて発信していきました。そうしたらそれがすごい反響になって、書籍化することになりました。
今でこそ、「ブログが書籍化する」ってこと自体メジャーになりましたけど、当時はまだ全然ありませんでした。いろんな方に注目してもらえるようになって、ホームページをつくる仕事よりも、ブログの収益が大きくなったんです。
ブログを書いているうちに、体調もだんだん戻ってきて、海外にも行ける体力もついてきたので、あちこち行きだしたんです。タイでセミナーをやるようになって、いろんなつながりができて。タイの観光庁ともお仕事するようになって。
日本人のブロガーにタイの魅力を発信して欲しいみたいな仕事があって、そこからタイのブログ観光大使を2012年にやって、翌年にはカンボジアのブログ観光大使もやらせてもらいました。その辺りから海外の仕事を積極的にするようになっていったって感じですね。
自身の働き方について、不安定だと思うことはないか?
僕は楽観主義者なんです。あんまり悩みません。飛行機で国境問わずいろいろ移動していると、日本でふつうに暮らしていたらありえないようなことが起こりますよ。移動していたら緊張感もあるし、飛行機怖いし(笑)。だから、細かいことや先の見えない未来のことは不安に思ったりしません。
ありえないことが起きてるくらいのほうが、余計なことを考えなくて済むんじゃないかって思います。海外で嫌な思いとかしても、あとでそっちのほうがエピソードとして思い出せるんです。エピソードのない旅って、つまんないじゃないですか。
なので、あえて不便な国にも行くようにしてます。命を落とさないのは前提ですけど、そこだけ守りつつ、ありえないことは起こってもいいんです。
不安定を不安に思うことはない
たとえば来年も行くんですけど、2016年に2回、南アフリカに行ってるんですね。ヨハネスブルグに。ヨハネスブルグって警察が信用できないんですよ。
空港で車をレンタカーで借りたんですけど、空港のレンタカーのパーキングエリアから出たちょっと進んだところに警察がいて、呼ばれたんです。「お前スピード出しすぎだ」「金払え。罰金だ」って言われて。でも前もって、そういう賄賂を要求してくることは情報として知っていて。
日本だとありえないことだけど、海外ではあり得ることで。そうやってありえないことが起きてしまうことも楽しめるようになったらいいですよね。「働き方が不安定だから、不安だ」って思う必要もなくなります。
日本人は周りを気にしすぎ?
何かを不安に思うという話で言うと、それって周りにいるひとの生活や経済状況と自分をくらべてしまっているってことですよね? 僕はあるとき、周りを気にしすぎるのをやめようって思ったことがあって。
今、中国ってビジネス的に熱くて、最先端だって言われるじゃないですか。モバイルで決済ができたり、いろいろイノベーションが起きています。
ただ一方で、小さい子どものトイレをお母さんがその場でさせてたり。僕はサウナ好きなので、中国でもサウナ行ったりするんですけど、いわゆるあっちの筋のひとがすっごくデカい声で話したりして。
あるとき中国人の友だちに「子どもが道端でおしっこしてたり大声でしゃべるひとがいるときに、中国人ってどう思うの?」って聞いたんですね。そうしたら「またよしさん、日本人は周りを気にしすぎ」って言われて。
僕、それですごくハッとしました。
僕らって電車の中で電話しちゃいけないとか、すごく周りをいちいち気にしているんですね。海外で、電車で電話できないってまず見たことないですよ。それがいいか悪いかは別として、周りを気にしている、配慮してるっていうのはたしかですよね。
日本人はすごく周りのことを気にしているんだなって気づいて、僕はその言葉で救われましたね。周りを気にしすぎるの、やめようって思ったんです。
僕は基本的に、日本のこと好きなんです。「日本はもうダメだ」みたいに言うひともいるけれど、僕はそういうの好きじゃないです。じゃあなんで日本から出て海外で仕事をするのかっていうと、ひとって当たり前のことのよさってなかなか気づけませんよね。
今、ふつうに生活していても、水の中に潜ったら、息ができない。酸素が必要ですよね。それと同じで。
「東南アジアに抜かれているよ」「アジアのほうがすごいよ」って言われて、たしかにそういう側面もあるのですが、僕としては煽りすぎじゃないかって思う。それは、実際に外に出て、海外を歩いてみないとわからないと思うんです。
「孫子」の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉があるように、いま日本はどういうところが強みで、逆にどういうところに問題があるのかというのを日本と海外の両方を見て、再確認する必要があると思います。
外に出たら、「日本、いいな」って思いますよ。そしてやっぱり海外への興味も尽きない。だから僕は、世界をつねに行き来しながらこれからも生きていこうと思っています。
文/くいしん
写真/伊佐知美
一部写真提供/またよしれい
(この記事は、合同会社cocowaと協働で製作する記事広告コンテンツです)