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【青森県十和田市】夜会には移住者が多く訪れる。ゆるく集まりゆるく解散、それがシャベリバ屋台

きっとあなたも夢中になる。「好き」が探求できる、大自然とアートの街へ【青森県十和田市】特集、はじめます。

「アートの街である十和田に、屋台を囲む夜会がある?」

正直なところ、最初に聞いたときはよく意味がわかりませんでしたが、お話を聞いたらその“夜会(よるかい)”が十和田市に移住してこられたみなさんにとって、とても大切な場所であることがわかりました──。

2008年、「十和田市現代美術館」ができてから「アートの街」として知られるようになった青森県十和田市。そんな十和田市の中央商店街に「松本茶舗」というお茶屋さんがあります。

このお茶屋さんのお店の前で月に1度、「シャベリバ屋台」という名の夜会が開かれます。十和田市民がひとり一品のお料理やお酒を持ち寄って、夜な夜な屋台テーブルを囲むのだそうです。シャベリバ屋台には、十和田市に移住してきた方が数多く参加しています。

主催しているのは、松本茶舗の店主である松本柳太郎さんやイラストレーターの安斉将さんが所長を務める安斉研究所。

松本茶舗
安斉香さん(左)、松本柳太郎さん(中央)、安斉将さん(右)

夜会「シャベリバ屋台」はどんな経緯で開かれることになったのでしょう?

松本さん、安斉さん夫婦の活動をなぞりながら、移住者や十和田市で暮らす人たちにとってこの夜会がどんな存在になっているのか、解き明かしていきたいと思います。

夜会「シャベリバ屋台」をつくるひとたち

1)アートは街に拡張している、だから店内にアートを置きます。|松本茶舗店主・松本 柳太郎さん

夜会「シャベリバ屋台」は、松本茶舗というお茶と茶器を販売するお茶屋さんの店前で開かれています。

松本茶舗は、創業100年を超える老舗店。お店の中にはもちろん外にもアーティステックな商品や作品が並び、とても普通のお茶屋には見えないのが印象的。今回お伺いした夜会で使われているという「屋台テーブル」も、松本茶舗に置かれるアート作品のひとつ。

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栗林隆さんの作品:『屋台』

松本茶舗の店主、松本柳太郎さんは商店街の名物男。現代アートの知識が豊富で、アートによる十和田のまちづくりを語る上で欠かせない人物です。

明瞭快活・ユーモアたっぷりの松本さんは、老舗のお茶屋さんだった松本茶舗が現在のようなアートと共存する形態になった経緯について、このように語ります。

松本さん1

「十和田市現代美術館(以下、美術館)ができるずっと前から、松本茶舗は商店街に属してお店をやってきました。美術館ができてからも、いろんなイベントや売り出し、歩行者天国なんかを続けてきた。

でもね、催事中は人が入るけど、終わったら途端に人がいなくなっちゃう。そんな一過性のイベントでかりそめの賑わいを作っても、意味がないなと気づいた瞬間があったんです。

むしろやらなきゃいけないのは、まちの資源でもあるアートに関心のある美術館のお客さんたちと、より強い結びつきを持った商売なんじゃないかってね。

松本さん2

同時期に、美術館が『アートの街への拡張性』という取り組みに力を入れ始めた。これはもともとのコンセプトで、だからこそ美術館は街の方を向くように設計されているんですけれどね。

美術館は完成した作品のようなものだけど、街のアートはまだ完成していません。むしろ拡張性は街のほうにあるわけで、そこに面白さを見出して、みんな街に繰り出してほしい……。まるで、美術館を観るだけじゃなくて、街を歩くことで初めて「アートのコンプリート」ができるかのように。そんな想いを美術館や街が持つ中、この松本茶舗も例に違わず、むしろ率先して店内にアート作品を並べるようになったり、美術館とツアーを組んだりするようになりました」(松本 柳太郎さん)

アートと商店街を結びつけることで、商店街の未来を描くことができた。だからこそ、松本茶舗の店内にはアート作品がたくさん立ち並びます。

松本さんと一緒に夜会を主催する安斉研究所の安斉将さんがデザインした「ウマジン」
松本さんと一緒に夜会を主催する安斉研究所の安斉将さんがデザインした「ウマジン」
松本さんと一緒に夜会を主催する安斉研究所の安斉将さんがデザインした「ウマジン」
映画監督・作家・エッセイストの大宮エリーさんが装飾したガラス戸

2)夜会は、安斉研究所の雑談の場として始まりました。|安斉 将さん

そんな松本さんと安斉さんご夫妻が出会ったのは、安斉さんたちが神奈川県から十和田に移住してきてからすぐ、美術館のイベントで一緒になったことがきっかけでした。

横浜で生まれ育ち、都内を中心にイラストレーターとして活動していた安斉さんは、7年前奥さんの香さんの実家がある十和田市に移住を決めました。

安斉ご夫婦

移住を決心したのは、インターネットの発達で、イラストレーターの仕事を東京にいなくても続けられると気づいたことがことが大きかったそうです。そしてちょうど十和田市に美術館ができた頃、「十和田がアートでまちづくりを推進する」という話が出てきたことを知った安斉さんは、この地でアート活動をすることを決意しました。

移住の前からSNSで積極的に十和田の方々と繋がっていたこともあり、移住後すぐに美術館のお仕事のお手伝いをしたりと、スムーズにアート関連の仕事に踏み込めたという安斉さん。

半年後に十和田現代美術館で個展『安斉将展 横浜→十和田』が開催され、そこから十和田市のプロジェクトに数多く関わられています。

2012年には「まちなかアートスペース」という事業にも参加。商店街の空き店舗を活用したオープンスペース内に、アートと街の関係を研究する機関「安斉研究所」を発足。十和田青年会議所の依頼により、かつて軍馬の名産地として名高かった十和田の馬をモチーフにしたアート作品「ウマジン」を生み出します。そしてこの安斉研究所やウマジンについての話し合い・雑談の場として、夜会が始まったそう。

「もともと夜会は、安斉研究所のみんなでウマジンのような企画をパワーアップさせるための話し合いの場だったんです。話し合いというかほぼ雑談なんですけど、お酒を飲んであれこれ話しているうちにおもしろいことが出てくることってありますよね。夜会はその当時から月1で開催していて、どんどん広まって行き、十和田のおもしろい人がたくさんくるようになりました。

安斉さん

ただ、「まちなかアートスペース」の事業は単年度で終わるものだったので、活動の拠点を移さなければいけなくなりまして。いくつかの拠点を移り歩いた後、次はどこを拠点に活動しようかなぁと思っていた時に、松本さんのほうから『松本茶舗の奥、使っていいよ』とお声をかけていただきました。それで松本茶舗さんの店内の奥のほうで、アート関連のワークショップやイベント、物販を2年間くらいやらせていただいています。

松本さんとは以前から、『栗林隆さんの屋台テーブルを使って飲み会をやりたいね』という話が出ていたんです。そのお話をきっかけに去年の秋からほぼ月1で、ここ松本茶舗の店前でシャベリバ屋台が始まりました」(将さん)

3)いろんな活動ができるのは、十和田のみなさんに育ててもらったから。|安斉 香さん

安斉 香さん

また、安斉将さんの奥さんである香さんは、青森県十和田市のご出身。15年間東京でアパレルブランドのパタンナーを務めた後、ヨガインストラクターに転身。Uターン後は地元の新聞で「ご当地ヨガ」を連載したり、テレビ番組にも出演していました。

現在は東京の繊維メーカーと共同でヨガウェア「cocoro」の制作も進行中の香さん。どんどん新しいことに挑戦していくことについて、「いつも一生懸命誠実に努力する先に何か見えてくるものがあるのだと思います」という言葉が印象的でした。

cocoro
制作中のヨガウェア「cocoro」

「最初は、美術館で夫が個展をした時に、その中の企画でヨガをやりませんか?とお声がけしてもらったんです。『美術館でヨガだなんてなんて心が広い美術館だろう!』と思いながら始めたことが、現在までのヨガ活動の基になっています。

青森県の素敵な景色やご当地グルメをモチーフにした『ご当地ヨガ』も、最初はドキドキしながら仲間と一緒に立ち上げたんです。本当に、十和田のみなさんに育てていただいた感じです。」(香さん)

夜会「シャベリバ屋台」はコミュニティの垣根を超える

松本柳太郎さん、安斉研究所が先駆けとなって始めた夜会「シャベリバ屋台」。通りがかりのひともお喋りに参加するように自由に立ち寄れることから、松本さんがシャベリバ屋台と名付けました。屋台に並ぶ料理は参加者の持ち寄りだからお金は取らない、けれどテーブルの上は気づけばいつも豪華になっているんだとか。

始めた当初から移住者の方もたくさん参加してくれているというこの夜会。移住して来た人たちは、集まったみんなで屋台を囲んで交流をするこの場に、仕事の関わりやご近所づきあいだけじゃない地域とのつながりを期待しているのかもしれません。

「ゆるく集まれてゆるく解散できることが、シャベリバ屋台のいいところ」と安斉さんは語ります。道行く人にも気軽に声をかけ、一緒に盃をかわすーー。こんなふうに気構えることなくゆるく人間関係を作っていける場って、その土地で暮らすひとにとってはきっととても嬉しいこと。

現代美術家・栗林隆さんが手がけたこの屋台テーブルに込められた思いは、「境界を乗り越える」。このシャベリバ屋台も、十和田で暮らす人たちの出身や職業、あらゆるコミュニティの垣根を超えて、人と人を繋いでいくのだろうと思います。

松本茶舗にて

 

お話をうかがったひと

松本 柳太郎(まつもと りゅうたろう)
お茶と茶器を取り扱う「松本茶舗」の店主。店内では、お茶関連の商品だけじゃなくアート作品も取り扱う。現代アートの知識が豊富でアートと商店街の共生を目指して、十和田市のフリーペーパーの作成や講演会など様々な活動をしている。

安斉 将(あんざい まさる)
イラストレーター。1967年 横浜市生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。活動範囲は雑誌、書籍にとどまらず、映画やCMへの作品提供、ディスプレイ、ライブペインティングなど多岐にわたる。『ウマジン』は2014年度グッドデザイン賞を受賞。イラストレーターとしての活動実績はこちら

安斉 香(あんざい かおり)
ヨガインストラクター。1969年青森県十和田市出身。アパレルブランドでパタンナーを務めたのち、ヨガインストラクターに転身。NPO法人日本予防医学療術協会認定ヨガインストラクター、APメディカルヨガ取得。現在は十和田市でヨガインストラクターとしても活動中。

(この記事は、青森県十和田市と協働で製作する記事広告コンテンツです)

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探求者

小山内彩希

編集者・ライター。1995年生まれ、秋田県能代市出身。

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【青森県十和田市】奥入瀬渓流「コケさんぽ」大切なことは、立ちどまると見えてくる|おいけん・玉川えみ那 【青森県十和田市】夫婦ユニット「字と図」がつくる子育てを中心にした暮らし

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