当日のイベント音声を聞き返してみると、改めて、めちゃくちゃ熱いイベントでした。

2018年7月から9月に全3回で行われた【十和田メディア研究部】。

今回の記事は、そのスピンオフ企画のレポートです。スピンオフ企画は「地域を編集する」というテーマで、10月14日(日)に市民交流プラザ 「トワーレ」にて開催。

メインイベントは、雑誌『Re:S(りす)』や秋田のフリーペーパー『のんびり』編集長の藤本智士さん、ウェブメディア『ジモコロ』『BAMP』の編集長・徳谷柿次郎さんをお迎えしたトークイベント。

3人1

お話は、初・青森の柿次郎さんが七戸十和田駅に到着した瞬間に出会った「はやぶさおじさん」から始まり、「編集者じゃないひとは、編集をどう捉えたらよいか」「秋田の寒天文化を世に広めた『のんびり』」「藤本さんの思うローカル」などなど、「地域を編集する」というテーマについて、展開します。

「地域の情報を発信したい」と考えたときに、大切にしたいことが、たくさん詰まったレポートになりました。

八戸大好きな藤本さん。青森初めての柿次郎さん

くいしん 『灯台もと暮らし』編集部のくいしんと申します。今日は「地域を編集する」というテーマでいろいろとお話しようと思っております。まず一言ずつ、自己紹介をお願いします。

藤本 藤本といいます。兵庫県の西宮に住みながら、編集者をしています。僕の場合はどちらかというと、雑誌や本といった紙メディアを仕事の中心にしてきました。今は秋田県庁のお仕事でウェブマガジン『なんも大学』の編集長をしています。八戸はめっちゃ好きなんですけど、十和田は何度か来ただけなので、今日は喜んで足を運んでいます。よろしくお願いします。

藤本さん1

柿次郎 『ジモコロ』と『BAMP』というウェブメディアの編集長をしている、徳谷柿次郎です。僕は東京と長野を二拠点生活しながら、全国あちこちを取材しています。じつは今回、青森は初めてです。

藤本 柿次郎が青森初めてというのはびっくりだよね。「めっちゃ行ってるんちゃうん?」って勝手に思ってたけど。

柿次郎 ホントですか? 昨日の昼前に七戸十和田駅に着いて、十和田湖周辺を見てきて、その過程でもいろいろ情報発信してきました。新幹線を降りたら、駅に「はやぶさおじさん」がいて。

はやぶさおじさんについて語る柿次郎さん

「はやぶさおじさん」をリアルタイムで編集

藤本 ツイッターでめちゃくちゃリツイートされてたよね。

柿次郎 そうなんです。ほらっ、3,300RT。

※イベント時には3,300RTだったが、現在は13,000RT

くいしん すごい。

柿次郎 七戸十和田駅に着いて、ホームからエスカレーターで上がっていったら、目の前にこのおじさんたちがいたんです。

くいしん 見つけた瞬間、どう思ったんですか?

柿次郎 いや、怖かったですよ(笑)

くいしん 怖さ(笑)。

笑うくいしん

藤本 あんまり絡まれたくないもんね(笑)。これやっているのはお父さんたちなんだろうけど、たぶん「今日、俺、これやるぞ」って朝、子どもに言ってないよね。

柿次郎 「お父さん、今日はやぶさやるでー!」とは言えないでしょうね(笑)。

藤本 僕はこのツイートを見たときに、本当に素晴らしいなあと思って。最初に、「これをやろう」と誰かが言い出したわけじゃないですか

柿次郎 「やろう!」というやり取りがあったわけですよね。

藤本 ふつうはやらないじゃないですか。このかぶり物ひとつをつくるにもすごくお金がかかるだろうし。でもこれだけやりきっていると、見ているほうも気持ちがいいですよね。やりきることが重要

柿次郎 大事ですね。恥じらいを出さないのがいいですよね、こういうのは。

藤本 これを見て、秋田や長野や金沢の人が「うちもやりたい!」っていろんな新幹線バージョンでやりだして、各地方がバチバチしだすとおもろいなって思う。

くいしん リアルタイムで編集が行われています。

柿次郎 動きのキレとかパフォーマンスを切磋琢磨していけば、どんどんご当地感出せますもんね。

くいしん 高校生のダンス大会とかあるじゃないですか。そんな感じで全国から集まってくるといいですよね。

藤本 僕はやっぱり、このひとたちが偉いと思うんですよ。こうやって、やりきっているひとたちがいるから、そこからフォロワーが出てくるわけで。それを僕らが編集できたら、最高。

柿次郎 これをやっているおじさんたちは、スターになっちゃいますね。

藤本 ガチでスターだよ。初めてやったひとは「ここから始まったんです」って語れるし。そのストーリーをつくるのが、僕らの仕事ですよね。

柿次郎 全国ツアーとかやったりして(笑)。

くいしん 「はやぶさおじさん」は紙やウェブの媒体を持っているわけじゃないけど、自分たち自身がメディアになっているってことですよね。

※その後、「ジモコロ」にてこの「はやぶさおじさん」の取材を決行。このときの興奮そのままに記事になった

はやぶさおじさんOGP

編集者ではなくてもできる「編集」

くいしん 今日来てくれている方々は、編集者やライターの方も結構いるけど、そうじゃない方々ももちろんいて。情報発信やメディアが専業ではないひとは、編集という言葉をどう捉えたらよいのか、何かヒントをいただけたらよいなと思っています。

柿次郎 雑誌やウェブ媒体に関わっていなくても、やれることはあると思うんです。

それは公務員や行政の方でもできると思うし。要は、自分の住んでいる街について、一番詳しいはずの自分が、おもしろがれるかどうか。目の前にあるものを「いつもの景色だな」と思うのではなく、違和感に気づける力を育てていくのがいいと思います。

最初からできるわけないですけど、違和感を溜めていくと「きっとこれはいいお店だろうな」と、目利きができるようになります。看板や店構えを見て、「この店名、絶対思想強そうだよな」と感じたら入ってみるとか。

たとえば東京の神楽坂に『想いの木』っていうインド料理のお店があるんですけど。看板が錆びた銅でできてるんですよ。僕は店名と看板に違和感があったので、入ってみたら、もうめちゃくちゃ美味しいし、美意識がすごくて、出てくる料理全部うまい、みたいな。

藤本 でもそういうのって、地元のひとは改めて疑問を持たないんですよね。たとえば店名の由来って、みんな案外知らない。僕が店のひとに聞いて、みんな初めて知るってことが結構あります。宮城県多賀城市でたまたま「クロスワード」っていう喫茶店に入ったんですよ。

柿次郎 ああ、いいですね(笑)。

笑う柿次郎さん

藤本 聞いてみたんですよ、「なんでクロスワードなんですか?」って。そうしたら、「ただクロスワード好きだから」って(笑)。ええ話でもなんでもないんだけど、やっぱりこういうのは聞いておくべきなんです。聞けば「知っている街の情報」が蓄積されますから。

「秋田のひとはなんでも寒天にしちゃう」を世に広めた『のんびり』

くいしん 僕も最近知ったんですけど。ちょうどこのあいだ秋田県出身の友人と飲んでいたら、秋田では冷蔵庫の余り物をなんでも寒天にして食べてるんだ、と。テレビにも取り上げられてすごく話題になったらしいんですね。

で、その後、自分で調べてみたら、それって、『のんびり』がきっかけで全国に知れ渡った話なんですよ。

柿次郎 へえー!

藤本 スーパーに行ったときに、寒天がボーンってたくさん売っていて。秋田の子たちに聞くと「本当にすぐなんでも寒天にしちゃう」って言っていました。僕はサラダ寒天っていう超絶意味わからん寒天に注目したんですけど。

柿次郎 サラダ寒天(笑)。

藤本 きゅうり、にんじん、マヨネーズ、みかんみたいな。

くいしん あっ、ポテトサラダみたいな感じ。

藤本 そうそう、ポテトサラダのポテト部分が寒天になったと思ってくれたらいいんやけど。

柿次郎 一番大事なところを抜いちゃってますね(笑)。

藤本 それってどう考えてもお惣菜系じゃないですか。なのに食べたらめっちゃ甘かったんですよ。美味しかったけど、もうわけわからんくって。秋田の人はすぐになんでも砂糖を入れるから。

くいしん そういうことなんですか(笑)。

藤本 「なんじゃこれ!」って思うけど、でもそれを秋田のひとたちは、美味しいって言って食べるわけなんで、それはおもろいなと思ったんです。

3人2

「今、南船場がアツい!」のすごさ

藤本 今の寒天の話もそうなんだけど、地域から発信しようとしたときに失敗してしまうのが「こういう小見出しが〜」「写真が〜」みたいな体裁から入りがちで。寒天で言えば「秋田県のひとしか知らない食の話題を全国に広めよう!」がスタートだとありがちな見せ方になってしまう。

大切なのは、そうじゃなくて、取材のアプローチだったりします。僕らがやっているような文字メディアの編集って、数あるメディアの中でも最初に情報を仕入れるんですよね。文字メディアが話題にして、そのあとにテレビがついてくる。そういう意識を持つだけで、結構違うと思います。たまたま出会ったお店で取材できちゃうのが、文字メディアのひとつの強み

くいしん 文字メディアは文字を中心とした(データとして)軽い情報なので、取材チームもライターとカメラマンがふたり行けばそれで済むところがありますよね。フットワークが軽い。

藤本 僕はそれこそが、編集の根本だと思っていて。たとえば、大阪で「今、南船場(みなみせんば)がアツい!」と、ちょっとした街の情報誌で言われていたんですけど、言ってしまえば、別になんもアツくないんですよ(笑)

柿次郎 アツくない(笑)。

藤本 ちょっとええ感じの店が2、3軒出来たなぁというエリアと、その周辺エリアのお店をもう2、3軒プラスして、「アツい!」って言うた瞬間に、南船場が本当にアツくなっていくんですよ。それを見て、情報番組が来るとか。つまり、最初は編集者の熱量ひとつなんです。

僕はそういう地元の情報誌をずっと見てきて、「アホらしいな」と思う一方で、「すごいな」とも思います。なぜならそこに、“編集”の、すごく根本的な力があると思うから。

遠めからの3人

藤本さんにとってのローカルとは

くいしん 藤本さんは「ローカル」という言葉を、どんなふうに捉えていますか?

藤本 2007年につくった『Re:S』という雑誌で、「地方がいい」っていう特集をつくったんです。当時は全然売れなかったんですけど、そのとき冒頭に「東京も地方だ」って書いたんですね。

柿次郎 東京もローカルのひとつですよね。

藤本 そうそう。なので、“ローカル”は単純に“局所”っていう意味であり、都会に対しての地方、つまり、“田舎”と“ローカル”は、本来違うと思うんですよ。

「東京ローカル」っていう呼び方があるように、いろんなローカルがある。そのことを突き詰めると、地方のことを発信しているメディアを「ローカルメディア」と呼ぶことには、すごく違和感を覚えます

僕はよく、究極的にはみなさん自身が、究極のローカルメディアですよっていうのを言っていて。どんな服を着て、靴を履いて、どんなもん食べて、みたいなことを誰もがやっていて、他人のことも見ているわけですよ。

さっきもオルタ(※会場近くにあるカフェ)でランチしているときに、隣の席のひとが食べていたボロネーゼが美味そうだなって思ったんですけど、それはその隣にいたひとが僕にとってメディアなわけです。

だから、本をつくるとか、雑誌をつくることだけが「=メディア」じゃないですよ。そうやって考えてもらえれば、いろんなことができるんじゃないかって考えています。

アイキャッチ(記念撮影)

「#十和田メディア研究部」のツイートを一部抜粋!

(この記事は、青森県十和田市と協働で製作する記事広告コンテンツです)

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