東京から地域に移住する。そんな事例が増えていると、感じます。
今回インタビューにご協力くださったのは、株式会社ビーコーズの村岡将利さん、妻のあすかさん。お二人とも十和田市出身。将利さんは東京都台東区にあるITベンチャー企業に勤めた後にフリーランスとして独立し、東京を拠点に活動していました。
2016年に十和田市にUターンし、株式会社ビーコーズを設立。将利さんは同社の代表でありシステムエンジニアとして、企業の基幹システムやECサイト、ウェブサイト・ウェブサービスの企画、制作、保守、運用などの仕事をしています。
数ある地域のなかで、なぜ地元に戻ることを選んだのか。場所を選ばず仕事ができるスキルを持つ、移住2年目の夫婦の暮らしを教えていただきました。
移住する前にした2つの準備
じつはこの取材の前日、編集部はたまたま飲み会の席で将利さんとご一緒することに。その時に、今回の特集で取材させていただいたグラフィックデザイナーの吉田進さんや建築家の渡部良平さんと交友関係があることを教えてくれたのです。
移住者コミュニティの存在は、心強く、引っ越し後の暮らしやすさに良い影響を与えます。そもそも、どのようにして先輩移住者との繋がりをつくったのでしょうか?
「まだ東京に住んでいる時に、十和田に戻ってUターンするかもしれないことを市役所の方に相談したんですね。そうしたら吉田さん夫婦を呼んでくれて。そして、ご飯に連れて行ってもらったんです」(将利さん)
また、東京でフリーランスのエンジニアとして活動していた頃から「あおつな(青森とつながろう)、アオスキ、青森県人会」などの青森県のコミュニティに参加し、地域との関係をつくってきたそう。さらに、仕事はリモート作業できるように調整したそうです。このような準備を経て、仕事はそのままに十和田に移ったといいます。
「移住2年目ですが、今の仕事の東京と青森の割合は8対2くらいです。ぽつぽつ青森の案件も入ってきている感じ。今年1月から採用したデザイナーの米田くんは6年くらい前に十和田に帰ってきて八戸市でウェブ制作をやっていたので、その繋がりでも青森の仕事が入ってくるようになりました」(将利さん)
移住に不安はつきもの。まずは地域への入口を広げ、どの場所でも仕事ができるように準備してみるとよさそうです。
東京と十和田の働き方、どう違う?
東京では(フリーランスとして)独立するために、自ら追い込んで仕事をしていたという将利さん。気になるのは移住、そして十和田での結婚後の時間の使い方。なにか変化はあったのでしょうか?
「彼がITベンチャー企業に勤めていた3年前までは、深夜2〜3時まで仕事をして、自転車で家に帰ってくる。ちょっと寝たらまた会社に行く生活をしていて。早く家に帰ってきた時も土日も、やっぱり家で必ず仕事をしていたよね」(あすかさん)
「でも今は、遅くまで仕事するっていうのが少なくなりましたよ。こっちは17時に終わる仕事が多くて、22時ぐらいには店も閉まり始める。周りの友達も早かったりするので、周りのペースに合わせているわけではないんですけど、合ってきましたね。時間的な余裕が生まれました」(将利さん)
仕事量を減らしたわけではないのですか? と伺うと、「減らしたんですかね、楽しむために(笑)」と笑みを浮かべる将利さんとあすかさん。
どうして十和田だったのですか?
ここまでの話で気になるのは、Uターンとはいえ、数ある地域のなかでなぜ十和田市を選んだのか、です。
「僕が就職先を探した時にウェブ制作の仕事の入り口っていうのは、十和田や青森にはほぼなかったんです。
プロとして最先端の技術を働きながら学ぶという考えを持った時に、青森だとウェブ制作の仕事に就けない。当時の周りの友達を見ても、技術や学びを求めると仙台や東京に行かなければならないっていう感覚があります。
学生の目の届くところにそういう将来の選択肢はあまりない環境。というか知ったり関わりを持ったりできない環境だなと。結局ぼくは大学を卒業して働いてから、仕事で活かせるプログラミングの技術を学びました。いま思い返すと、中高時代からウェブ系の仕事の選択肢に気付きたかったですし、たぶんもっと前に気づいていたら、もっとすごい自分になれていたのかなって思ったりもします。
だから十和田に戻りたいっていう気持ちよりも、これから色々な仕事を選択していくであろう今の若い学生さんたちにウェブの仕事を知る機会、学ぶ機会を提供してあげたいという気持ちが強いんです」(将利さん)
そこで現在は、ITの技術やキャリアについて学び、相談できる「村岡塾」を開講。技術を教えるだけではなく、塾生の相談にのり、将来の働き方や自分が思い描く夢、目標に対してどうアプローチしていけばよいか等も一緒に考えています。
ウェブ制作の現場では、仲間が増え、仕事や働き方の発信にも力を注げるようになりました。
「地域のために何かやりたいって思っていても一人で考えてばかりだと全然前に進まないし、恥ずかしくてこういうことがやりたい! って言えないんです。でも仲間と一緒に話したことだと、なぜか胸を張って言えるんですよね(笑)。意見交換もできる。
前に進んでいる感が生まれて、すごく勇気づけられます」(将利さん)
ITは手段。地元で暮らしているひとのためのサービスをつくりたい
地方で仕事をする利点の一つは、東京よりも場所を借りたり買ったりするコストの安さ。ウェブにとどまらずに、今後は新たな事業にも挑戦していきたいと将利さんはいいます。
「地元で暮らしているひとたちのためになるサービスをつくっていきたいです。それはいずれ、外から来るひとのためにもなるはず。まずは自分を含め地元のひとが楽しんでいる状態をつくれば、おのずと外のひともその楽しい場所に集まってくるのかなと思っています。
例えば友達が東京から十和田に移り住むことになるとして、やりたい仕事やできる仕事がない場合もある。僕はイチ経営者としてそのひとを助けてあげたい。でもウェブ制作だけをやっていたら、ITの技術習得のためにすごく勉強してもらわなきゃならないから、助けられないかもしれない。
なのでITだけにとらわれずに、十和田に帰ってきたからには広い土地を使って、場を使う事業での雇用も生みだしてみたい。そういう計画をいま、温めています。もちろん場づくりのような事業を活かすツールとして、僕らの得意なウェブを活用していくんです」(将利さん)
お話をうかがったひと
村岡 将利(むらおか しょうり)
株式会社ビーコーズ 代表取締役。十和田市出身。十和田工業高校卒業後、東京電機大に進学し情報通信工学を学ぶ。卒業後ベンチャー企業やウェブ制作会社を経て個人事業主として独立。平成28年4月に地元十和田市で株式会社ビーコーズ設立、平成28年6月夫婦で十和田市にUターン。
(この記事は、青森県十和田市と協働で製作する記事広告コンテンツです)