語るを聞く

【ぼくらの学び】やってみてどうだった? 〜編集部フルメンバーの振り返り:前編〜

2016年にはじまった、灯台もと暮らし編集部の体当たり企画【ぼくらの学び】。編集者それぞれの奥底から湧き上がる、疑問や仮設を検証していく特集です。

その学びを、特集の企画開始から1年を経て振り返ります。

お届けするのは、編集部の4名!(伊佐、くいしん、立花、タクロコマ)

「こんな学びをしてほしい!」というリクエストもお待ちしております。

立花「その前に私はひとりの人間だわ」

伊佐 そもそも【ぼくらの学び】の記事を、トップバッターで公開したのって誰でしたっけ?

タクロ 誰だろう……?

立花 わしですね。

タクロ 立花さんかー!

立花 最初のテーマは「子どもをたすき掛けしながら働けるのか」でした。

藤岡聡子さん

くい なつかしい。

伊佐 立花さん、やってみてどうでした?

立花 取材を重ねるうち、長年自分の中で思い込んでいた、母親神話のような固定観念が崩壊しました。

伊佐 ほう。

立花 「母は何よりも偉大な存在」「私もいつか母になる(ならねば)」という思いが消えました。

伊佐 消えてしまった……。なんと……。

くい ぶっちゃけ「あったほうがよくね?」って思いました(笑)。

伊佐 いやそう、それは「あってよくね?」。

立花 神話が崩壊したため、「たすき掛けしながら働けるのか」というテーマだったのに、結論が「子育てしながら働かなくていい。むしろ子どもも産まなければならないという義務はない。結婚するのかしないのか、子どもを産むのか産まないのか、そもそもそこから選んでいい」ということに気付きました。

タクロ 母は偉大なり。

伊佐 ちょーっと黙ってて?

立花 母という存在は、もちろん偉大です。でも、母としての私を考える前に、私はまずひとりの人間だわ、と思って。

個人レベルで何がしたいか考えてから、はじめて「子どもをたすき掛けしながら働けるか」という疑問が生まれるんじゃないかと。私は個人の生き方をすっ飛ばして「母としての自分」を先取りして考えてしまっていたんですね。

伊佐 くい タクロ (うんうん)

立花 同時に、取材を通して、母という存在は何でもかんでも受け入れてくれる聖母マリアではなく、やっぱりひとりの人間で、たくさん悩んで葛藤して苦しくて逃げたい時もあるけど踏ん張っているんだ、と思いました。

あと「逃げたい」って言えない環境というか空気があるんだ、というのも感じましたね。「お母さんらしくしなくちゃ」という言葉が取材で何度も出てきたので。

ご本人が深い意図を込めているかどうかは置いておいて、取材をさせていただいた、ほぼ全員からその言葉は出てきたと思います。

くい なるほどー。うちの社長も「社長らしくしなくちゃ」とか思ってるのかな……。

伊佐 肩書はひとを育てる……ふむふむ。ふたりは、見ていてどうでした?

たしかくいしんさんもタクロコマくんも、取材には同行したんですよね。

くい とにかく学びの量がすげえな、と(笑)。

タクロ 学びの量はんぱないですよね。次に行くスピードがぼくよりも明らかに早いので(笑)。

伊佐 量!?

立花 学びの記事はぜひ全部読んでほしいんですけど、特にこの記事を読んでほしいです。「子育てと仕事を学ぶ」シリーズで、一番最後に取材をさせていただいたのが、編集者のたじーさんだったんです。

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立花 私が取材をさせていただいた方々は、先ほど出てきた「個人としての生き方」を考えた上で、子育てというものと向き合っていらっしゃると感じました。

でも、子どもを育てるって個人で済むことではないですよね。子育てをする上で、社会的なルールや規範に、どうしても合わせなければならないシーンは、多くあります。

そうなった時、お母さんたちが「こうしたいな」って思う「個人としての生き方」と、現代の社会的な制度や風潮に齟齬が生まれ、息苦しい思いをしている声やシーンが目につくようになりました。

取材を重ねるうち「子育てって喜ばしいこと、素晴らしいことなのにどうしてこんなに猥雑で、複雑なんだろう?」って、子どものいない私が憤ってしまったくらいです(笑)。

伊佐 憤ってたね。

立花 でも、それを当事者の立場から「既存の枠組みの中で、自分が生きやすいようにできることを考えたい」というたじーさんがお話ししてくださったことで、子育てに対する具体的な姿勢を学ぶことができました。私の中では、「子育てと仕事を学ぶ」シリーズの、集大成的な記事です。

くい ふむふむ。ぼくは、サクちゃんの記事が思い出深いですね。社会とか他人からの評価ではなくて、とてもフラットに自分やりたいことに優先順位をつけて生きる姿勢にすごく共感しました。

伊佐 私自身はまだ子育てについてはよく分かんない。でも子育て、したいな〜。ほかの記事も全部素敵だったよね。そのほかは、こちら。

横峰沙耶香さん

タクロコマ「これはよく実践させてもらっています」

伊佐 じゃあ次は、タクロコマくん。最初のテーマは「ふたり暮らしを学ぶ」でしたよね。

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タクロ はい! 1回目に取材させていただいたタナカご夫妻には、お金や家具の選び方について聞きました。

ユウカ 相手の生活観に違和感を感じるときは、マメに、溜めずに、その都度伝えるとよい関係でいられると思います。わたしたちは、お互いが納得いくまで話し合うことを経て、お互いを尊重できる関係になれました。(引用:【ふたり暮らしに学ぶ #1】初めての同棲|家具の選び方やお金の管理、どうしていますか?)

タクロ  これはよく実践させてもらっています。

伊佐 実際にやってるんだ!

タクロ  あとは、以下の会話をふまえ、実際にセミダブルではなく、スモールのベッドをふたつ並べてクイーンサイズ化させるという、お互いがしっかり寝れる場所を確保できるベッドを選択することにしました。

── じつは寝る環境もちゃんと整っていないので、ベッドを買いたいと思っています。ですが、大きな買い物になるので、どんなベッドにするか決めかねていて……。

ユウカ ふたりのベッドを買うなら、セミダブルじゃなくてダブルのほうが絶対いいですよ。

── えっ、セミダブルのベッドの購入を検討していました。

タナカ ストレスなく足を伸ばせて、かつ身体を広げられるスペースがあったほうが疲れがとれると思います。睡眠はとても大切ですから。

伊佐 ふたつ買ったんだ。

タクロ (いつでも離せるように……)

くい (というか、ベッドのサイズは「スモール」じゃなくて「シングル」ですかね……)

伊佐 (スモールってスタバ……?)

タクロ 嘘です!(笑) あ、無印はスモールがあったような……あとで確認しますね。

伊佐 ふたりは、この同棲学びを見ていてどうでした?

くい いつでも離せるように考えたほうがいいんだな、と思いましたね。

立花 誰かと生きていくって尊いなと思いました。

伊佐 学んでる……?

タクロ (笑)。

伊佐 そのほかの【ふたり暮らしに学ぶ】記事はこちら!

長谷川ご夫妻

タクロコマ「写真の重要性をあらためて知る」

伊佐 続けて、タクロコマくんのふたつ目の学びのテーマ【写真が上手い人に学ぶ】。

タクロ この記事が印象に残っています。

尾形真理子さん

立花 尾形さんの記事は、私もタクロコマの学び記事の中で、一番印象深いです!

伊佐 そうなんですね! 私も初見のとき、思わず繰り返して読んでしまった。

タクロ 特に以下の部分。

── 『広告』をつくる上で、写真はどのような存在だったのでしょうか。

尾形 逆に写真も、写真だけですべてが伝わるわけじゃないはずなんですよね。もちろんレンズの先にあった時間の、ある部分は切り取られているけど。

言葉とヴィジュアルは訴求効果が高いから補完関係にあるべきだと思っているので、その写真の中に存在しない言葉を載せた時に世界が広がると考えています。

── 世界が広がるというのは?

尾形 言葉においても写真においても、空間を切り取っている誰かの視点が必ずあります。ひとつの視点で見せるよりも複数の視点で見せたほうが、輪郭線がはっきりしてきますよね。

言葉や写真、イラストもデザインもそう。そういうツールとそれぞれの視点で為人(ひととなり)を描いていきたいと思って『広告』をつくってきました。

── 写真は伝えるツールのひとつなんですね。(引用:【写真が上手いひとに学ぶ #1】『広告』編集長/コピーライター尾形真理子「“なぜか愛せる”ところに気付ける視点を、わたし自身が持ちたい」)

タクロ  写真の立ち位置(重要性というか力、そして欠けているものの両方を)客観的に実感できた。というところですね!

立花 とりあえず、取材のときにタクロコマがむちゃくちゃ緊張していた記憶があります。

伊佐 そうですよね……。

立花 思い入れが伝わってきた。

タクロ はい。写真の重要性をあらためて知る貴重な機会だったので。

事前準備も、いつも以上に気合が入っていた気がします。『広告』を全冊購入して、今まで読んだものも含めて全部読み直してからうかがいました。

どんな風に質問したらいいのかなって、質問力みたいなところもすごく考えた取材だったなぁ。

伊佐 うんうん。ちなみにくいしんさんは、この学びをどう見ているんですか?

なぜなら、うちの編集部で「撮る」から一番遠いのがくいしんさんな気がするから。私にとっての【ふたり暮らしを学ぶ】と同じなのかしらって思っただけなんだけど。

立花 「うちの編集部で“撮る”から一番遠いのがくいしんさん」っていうの、たしかに。もとくらでは、くいしんさんは写真を撮っていませんもんね。

くい あー、そういう意味では、もちろん編集者として活かしたい気持ちは半分あるのですが、もう半分は「みんな(写真やってる人)、がんばれ」みたいな気持ちですね。

自分自身が写真の技術を持とうとは、現時点ではあまり思っていないので……。

伊佐 ふむふむ。【写真が上手い人に学ぶ】がテーマの記事は、続編があると思うので私も楽しみにしていますね。

西山勲さん

伊佐 もう少し続けましょうか。次は、満を持してのくいしんさんの学びへ。

後編に続く〜

(イラスト:犬山ハルナ @pandayama86)

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伊佐 知美

旅するエッセイスト、フォトグラファー。1986年生まれ、新潟県出身。世界中を旅しながら取材・執筆・撮影をしています。→ さらに詳しく見る

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