旅の仕方は、人それぞれ。知らない土地、例えば外国を旅する時は、誰を頼る? どこへ行く? 「その土地で暮らす人の、日常を見たい」そう願う人が増えてきたのは、日本に限らず、万国共通なのかもしれません。

日本を訪れる外国人観光客を対象に、築地や商店街の食べ歩きツアーや、日帰り観光ツアー催行、チケット販売などを手掛ける「Japan Wonder Travel」。世界最大級の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」には、「“Great tour!”」「“We really loved it!!!”」など、利用者からの高評価の口コミが毎日のように書き込まれています。(トリップアドバイザーの東京都ツアー&アクティビティ第2位《2015年11月現在》)

運営者の佐々木 文人(以下、佐々木)さんに、立ち上げの経緯やツアー催行にかける想い、これからの展望など等身大のお話を伺いました。

「Japan Wonder Travel」とは?

── 「Japan Wonder Travel」について教えてください。

佐々木 日本を訪れる外国人観光客を対象としたサービスの総称です。築地や砂町銀座商店街などへの食べ歩きツアーや、東京や京都の日帰り観光ツアー、そのほか諸々のプライベートツアーやチケット、レストランの手配など、日本国内の観光をワンストップで提供しています。

Japan Wonder Travel
「Japan Wonder Travel」を運営する佐々木さん

── 参加される方は、どういった方が多いのでしょうか?

佐々木 申し込みは公式サイト経由が主で、告知媒体として「トリップアドバイザー」を利用しています。「トリップアドバイザー」自体がアメリカ発のサイト、また現在はツアー言語が英語のみということもあり、4割がアメリカ人の方になります。

サービスを開始した当初は、有料で申し込んで下さる方は月に2名ほどでしたが、掲載して4カ月後には月に100名を突破。立ち上げてからまだ1年未満なので、今はサービスの拡大、拡充を図っていく時期だと思っています。

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「Japan Wonder Travel」で食べ歩きツアーに参加した外国人の方々

有名観光地以外の、日本の魅力を伝えたい

── サービス立ち上げの経緯についても教えてください。

佐々木 うーん、そうですね、ちょっと長くなりますよ?(笑)

僕と河野は、中学、高校、大学の同窓生なんです。僕は東京で、保険会社やコンサルティング会社でサラリーマンとして働き、河野も同じく東京の広告会社で働いていました。僕は未だに英語が得意ではないんですが、働く中で、日本滞在中の外国人の人と触れ合うことが多くて。

もしかしたら今後は、訪日外国人とのコミュニケーションが増えるんじゃないかと感じて、そのためのサービスをいつか自分で手がけたいと考えるようになりました。

その後、僕は結婚したタイミングで、下見を兼ねて妻と一緒に世界一周へ。偶然ですが、同時期に河野も会社を辞めて世界を旅することになります。特に同時に行こうと言ったわけではないのですが、僕と、妻と、あと河野で一緒に寝泊まりした時期もありましたね(笑)。

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世界一周中の佐々木さんと河野さん。マチュピチュにて

── 仲が良いんですね。

佐々木 気心が知れた友人と働けるのは、幸せだなと感じることもありますね。日本に帰ってきてからも、しばらく3人で住んだこともありましたし……あ、これは雑談です。

旅行中に思ったことは、日本は世界の観光地に比べて、気軽に泊まれる安宿が外国に比べて少ないということ。あとは、「着地型ツアー」がないなぁということでした。

── 「着地型ツアー」?

佐々木 例えば、タイのカオサン通りには、安宿はもちろん道の至るところに「アユタヤ日帰りツアー」や「チェンマイ観光ツアー」などのチラシが貼ってあります。これはタイだけではなくて、世界の各都市では、滞在地以外にどこに行けるか選択肢が分かりやすくたくさん設けられているんです。

対して日本は、東京駅でも渋谷駅でも、そんなチラシや窓口って簡単には見つからないんです。というか、ほぼない。目につくのは、日本人向けのサービスばかりです。

今、訪日外国人観光客の方には、いわゆる東京、京都、大阪、広島をめぐるような「ゴールデンルート」が人気ですが、日本の魅力は、みなさんが知っての通り、それだけではありません。違う地域にも魅力はたくさんあるし、美味しいものは寿司や天ぷらだけじゃない。

僕らは、東京を皮切りに、京都や福岡などはもちろん、最終的には地域の魅力を伝えるようなことがしたいと思っていたんです。

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佐々木さんのサービスを通じて、日本のローカルの魅力に触れ合う外国人観光客の方々の様子。砂町銀座商店街にて

佐々木 だから、そのためにまずは情報のハブとなる安宿を経営して、情報やノウハウを蓄積したあとに、外国人の方を対象としたツアーを企画して、それを日本全国で横展開するような構想を練っていました。

でも、帰国後にいざ安宿経営を始めようとしたら、大家さんが外国人観光客に対してオープンでなかったり、法律の壁や、費用面での課題が多かったんです。東京で安宿をいきなり立ち上げるという行為は、なかなかハードルが高くて。たくさん借金をして宿をつくる手もありましたが、当初思い描いていた理想の値段設定はできない。いろいろ悩みましたね。

その後、外国人の方がよく訪れる日本庭園の調査や、アンケート分析などの下請けの仕事を走らせながら、平行して始めたのが、2015年1月からサービス提供を開始した、「Japan Wonder Travel」の元となるサービス「Tokyo FooDrink Tour(東京フードリンクツアー)」でした。

始まりは「Tokyo FooDrink Tour」

── 「Tokyo FooDrink Tour」は、その名の通り、食べ歩きツアーのことですよね。

佐々木 はい。当初は、築地と砂町銀座商店街の2エリアではじめました。

── なぜ、この2エリアだったのでしょうか?

佐々木 東京都内での食べ歩きツアー企画を考えた時に、築地は知名度もあるし、集客力もある。市場があって食も集まっているから、外せないと考えました。あんまり関係ないですが、河野が一時期年末年始に築地で働いていたこともあって、土地の利があったこともあります(笑)。

でもきっと、気になるのは砂町銀座商店街の方ですよね。商店街については、最初からツアーを組みたいと思っていました。食べ歩きと、日本の日常を垣間見るという点を考えた時、商店街ほどうってつけの場所はありませんからね。その中で砂町銀座商店街を選んだ理由は、簡潔に言えば、数多ある商店街を実際に食べ歩いた中で最も理想的な場所だったからです。

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東京都内にある砂町銀座商店街。地元の人が行き交う

佐々木 まず立地。最寄り駅から徒歩20分程度の場所にあるから、外国人観光客がいません。まだ観光地化されていないから、付近に住む人たちの暮らしや営み、景色がそのまま残っています。その上、約600メートルある商店街に、びっしりとお店が並んでいて賑わいもある。しかも歩行者専用だから車が通らなくて安全。そして何よりごはんが美味しい。惣菜なども、食べる直前に温めなおしてくれたりするんです。

……言い換えると、東京で食べ歩きツアーを行う上で、砂町銀座商店街以上の場所はないと感じたのです。

── 一番最初に、「外国人の方を対象とした食べ歩きをツアーを、砂町銀座商店街でやりたい」と伝えたときの商店街の方々の反応は、いかがでしたか?

佐々木 はじめに河野が商店街の方に挨拶に行ったのですが、意外にも「やってみなよ」と言ってくださる方が多かったですね。ありがたかったです。実際は、突然よそ者が「食べ歩きツアーを始めます!」と言っても、その日からすぐにたくさんの外国人の方を連れて来ることはできないので、みなさん実感が持てなかっただけかもしれませんが……(笑)。

── 現在のツアーでは、どんなお店を案内されているのでしょうか?

佐々木 焼き鳥やおでん、天ぷらやいなり寿司、日本酒やお茶屋さんなどが主ですね。

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── お店の方の反応はどうですか?

佐々木 楽しんでくださっている方が多いと感じます。言葉については、英語が話せる、通訳兼ガイドの方が必ず一緒にいますので、心配はいりません。お店の方にも、とても温かく受け入れていただいています。

接客していただく中で、まったく英語が話せなかったお店の方が、「サンキュー」などと言っている姿を見るのは僕らもうれしいですし、お茶屋の「秋山園」さんなどは、外国人の方向けに、お茶を急須で入れる体験なども実施していただくようになりました。

日本人にとっては日常の風景が、外国人の方にとっては新鮮に映ることも多いので、商店街でお土産を購入される方も多くいらっしゃいます。商店街の売上に少しでも貢献できればと思っています。

■参考:砂町銀座商店街「秋山園」と訪日外国人観光客|お茶業界の未来を切り開く、新しい突破口とは?

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砂町銀座商店街のお茶屋「秋山園」の体験の様子

2020年までに大都市以外で5拠点が目標! 地域を盛り上げていきたい

── 立ち上げから今まで、もっとも苦労したと感じる時期はいつでしたか?

佐々木 やっぱり、サービス立ち上げ当初、集客に苦労していた時期だと思います。2015年1月頃でしょうか。

トリップアドバイザーでページを持っても、お客様が自動的に申し込んでくださるわけでは当然ないので、最初は日本に滞在している留学生に参加してもらって、徐々に口コミを貯めていきました。

築地は比較的順調にスタートしたのですが、砂町銀座商店街の申込人数は当初とても少なかったです。告知のために、ビラを作って配ったり、観光案内所やホテルの方に営業して回ったりといろいろと工夫はしましたが、結局大切なのは、どう人を集めるか、そして集まってくださったゲストの方々に、いかに楽しんでもらえるかを全力で考え、実行することだと気が付きました。

Japan Wonder Travelの佐々木さん

佐々木 最近では、一度ツアーに参加した方が帰国してから友だちに宣伝してくれたり、築地ツアーに申し込んだ人が、砂町銀座商店街ツアーにも同時に申し込んでくれるようになったりと、顧客層が広がってきたと感じています。

── 今後の展望についてはどう考えていらっしゃいますか?

佐々木 砂町銀座商店街の成功例を、もっと横展開していきたいですね。インバウンドの力で、地域をもっとおもしろくしたいです。僕たちが手がけたことで、地域が盛り上がった、有名になった、外国人観光客が増えておもしろいことが起こってきた、と言われるような場所が作れたら、最高です。

2020年は言わずと知れた東京オリンピックの年。僕らもマイルストーンとしては2020年を目標にしていて、それまでに北海道や大阪、京都、福岡など大都市に拠点を増やしつつ、それ以外の地域拠点も5つくらい構えられていたらいいですね。

大変なことも多いけれど、一人ひとりのお客様と向き合うことを忘れずに、頑張っていきたいなと思います。

あ、まだ知名度低いけどこんな地域がおもしろいよ、という情報や、ガイドになりたいという方、あとは一緒に働きたい方も、絶賛募集中です(笑)。

── なるほど、ありがとうございました! ……ちなみにこのツアーは、日本人でも申し込めるのでしょうか?

佐々木 基本ツアーは英語ですが、嫌でなければ、ぜひぜひ(笑)。

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「Japan Wonder Travel」運営者の河野さん(左)と、佐々木さん(右)。オフィスは下町の長屋に構えている

お話をうかがったひと

佐々木 文人(ささき ふみと)
株式会社ノットワールド代表取締役。愛媛県松山市生まれ、神奈川県横浜市育ち。駒場東邦中・高等学校、東京大学経済学部卒業。株式会社損害保険ジャパンを経て、 ボストン・コンサルティング・グループへ。 4年間の在職中に、新規事業開発・営業改革の プロジェクトに従事。企業の売上拡大・業務効率化に貢献。結婚後退職し、1年間の世界一周新婚旅行を 経て起業。現職。世界一周は、インド・ネパール・オーストラリア・ 北中南米・ヨーロッパ・中東等36か国・地域を周遊。

Japan Wonder Travelについてはこちら

Tokyo FooDrink Tour(トリップアドバイザー)
Japan Wonder Travel公式サイト
事業立ち上げ奮闘記(株式会社ノットワールド公式ブログ)

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