華やかな都会の街路、表参道を少し裏に入ったところに、緑に覆われたお店があります。
このお店の名前は「COUNTRY HARVEST」。石ころや缶詰、レトロなブリキのおもちゃなどが一見無造作に置いてある店内には、道端に咲くように多くの花がまとめてディスプレイされています。
それもそのはず、お店の名前の「COUNTRY HARVEST」は、直訳すると「田舎の収穫」。店舗のコンセプトは、田舎で収穫した花たちのある場所、なのです。
大都会の片隅という「特別感」がファンをつくる
田舎で収穫した花を、都会の暮らしのなかで楽しもうという狙いが、表参道という立地、そして店構えからも溢れ出ている花屋さん。都会の植物は、どこか自然を切り取った人工物が多いけれど、もっとありのままの状態を楽しめむこともできるのではないか、とオーナーの深野俊幸(以下、深野)さんは話します。
「立派な花屋さんは、東京にはたくさんあります。でも、たとえば雑草に近いものだったり、ハーブのようなもの、ちょっと枯れた木も、れっきとした植物ですよね。石だって、自然の一部です。そういったものを必要以上に加工しないで、生活に取り入れて楽しめたら、気持ちがいいんじゃないかと思って。」
同じコンセプトを、郊外でやっても意味がありません。だからといって、高層ビル群のある都心で店舗を構えても、花のある日常的な暮らしはなかなかイメージしづらいもの。その観点から見ると、表参道や青山というエリアは、ほどよくハイソで、けれどふだんから通うひともおり、出店するのにぴったりでした。
とは言え、決して目立つ場所にお店があるわけではありません。表通りからは見えない、一本裏道に入ったところに、深野さんがわざわざお店を構えたのは花の都・パリで過ごした経験に理由があるそうです。
「パリでは、メインストリートから少し外れた細い裏道で、よく素敵なお店を見つけていました。良いなと思ったお店への道順を覚えておいて、思いついたときに出かけるということを繰り返していたら、なんとなくそのお店のファンになっている自分に気づいたんですね。
目立たなくても根強いファンを持つお店というのは、その人の暮らしに入りこむことができる存在です。そういう意味で、ウチも誰かのライフスタイルに合うような場になるといいなと思って、あえて表参道の、裏道に出店することを決めました。」
深野さんがパリの裏道を歩いたように、今では、表参道から外れた道を歩いて「COUNTRY HARVEST」をわざわざ目指して来るお客さまがたくさんいます。人通りの多い通りではないというだけで、少し特別感が増し、自分だけの花屋という大切な存在になるのでしょう。
花だけではなく、花をとりまく景色も楽しもう
「田舎で収穫した花を集める」というコンセプトは、自然なものを手を加えずに暮らしの中へ、という意図があることに加えて、じつはもう一つあるのだと深野さんは言います。
それは「花のある景色」。
ただ商品としての花を陳列するのではなく、花があることでいろんな景色が生まれるのだということを、お店のディスプレイから届けたいと考えているそう。
「店内に、無造作に石を転がしてみたり、木の実を並べてみたりしているんですが、そうすることで花とその周りにあるものの景色の重なりのようなものが生まれると思います。そうすることで、もっと近くで、花をよく見てみたくなる。
花だけに興味を持ってもらうというよりは、花のある場の雰囲気がどんなものなのかを、まずはウチの空間を使って知ってもらいたいんです。」
花の名前や手入れ方法などの知識だけでなく、「この花があると場が華やぐのは、どんな時だろう」と想像したり、TPOやシーンに合わせた花の色、種類、本数などをセレクトしたりする力までをも養わせてくれる「COUNTRY HARVEST」。
花を飾るということは、花そのものを楽しむというだけでなく、花の周りにある、たとえば食卓や玄関、自分の庭の美しさや個性を、再発見する大きなきっかけになるのかもしれません。
このお店のこと
COUNTRY HARVEST
住所:東京都港区南青山3-13-13
アクセス:東京メトロ千代田線表参道駅A4出口より徒歩2分
電話:03-5410-1481
営業時間:10:00~20:00(日祝10:00~18:00)
定休日:不定休
公式HP:COUNTRY HARVEST