野菜提案企業・株式会社坂ノ途中の特集。今回は、坂ノ途中に野菜を出荷している京都府亀岡市の農家さんにお話をうかがいました。
自動車メーカーに勤めるサラリーマン時代から家庭菜園をはじめ、徐々に農業にのめり込んでいった柴田さんは、自ら「僕は、野菜バカなんで」と語るほどの野菜好き。
農家さんは、農業を学ぶために他の農家さんのもとで研修期間を過ごすのが一般的ですが、柴田さんは修行経験をせずに、完全に独学で現在のお仕事をしています。
柴田さんのお話を聞いて「坂ノ途中さんの事業は、農家さんとの深い信頼関係のもとに成り立っているんだな」とわかりました。
「坂ノ途中さんは、規格外でも売れるアイデアを出してくれる。坂ノ途中さんと一緒に仕事がしたい」
そんなふうに語る柴田さんと、坂ノ途中の関係に迫ります。
柴田 義雄(しばた よしお)
自動車メーカーのサラリーマンとして働きながら、趣味で家庭菜園をしていた柴田さん。“農業”、“食の安全性”への関心が高まり、2014年、専業農家に転身。農業はすべて自己流・独学で始めたにも関わらず、現在は120種類の野菜を栽培。畑に全力で愛情を注ぎ、現在も積極的に農地を拡大中。
最初は家庭菜園からはじめて、農業にのめり込んでいった
── 農業を始められて、まだ数年とうかがっています。
柴田 そうなんです。農家としてはちょっと特殊な経歴なんですけど。サラリーマンを辞めたのは、2011年。震災の年ですね。そこから準備をして、本格的に始めたのが2014年です。そのときに坂ノ途中さんと知り合ってるので、お付き合いは4年くらいになります。
生まれも育ちも大阪で、農家になる前は京都で自動車メーカーの仕事をしていました。その頃、この亀岡で初めて自分の畑を持って、家庭菜園を始めまして。どんどんのめり込んでいってしまった感じですね。やってはいけないパターンです(笑)。
── 他のお仕事をしながら家庭菜園として始めて、今に至るんですね。
柴田 そうです。最初の畑は広いというわけではなかったですが、それでも自分と家族だけでは食べきれない量の野菜が採れちゃうんです。で、「弱ったなぁ」と思って、最初は周りの友人に配っていたんですけど、それでも追いつかんなぁと。友だちに、レストランをやっているひとが2、3人いたので声をかけてみたら「ぜひぜひ」と言われて、出すようになっていったんです。
── その時点で、有機栽培だったのでしょうか?
柴田 自分で食べる分には、安心安全なものがいいよねと思って、そうしていました。僕も、もともとは無知でこの業界に入ったんですけど、「なにも使わずにやろうよ、使い方もわからんしね」と思って始めました。
完全に独学で農業の世界へ
── 「畑を持とう」と思ったのは、どういうきっかけだったんですか?
柴田 ハタチ過ぎくらいからかな、観葉植物が好きで。ベランダで育てていたんです。ベンジャミンとか、クワズイモであったりとか。親も、ベランダ菜園が好きで、そういうのを見てきたし、自分でも育てるのが好きだったのが今の仕事につながっているかなぁと思います。
それであるとき、家内の知り合いが先ほどのところで畑あるから「やってみいひんか」って声をかけてくれて。それで始めて、京都市内から通ってましたね。ここまで車で1時間。
だから、サラリーマン時代は会社が終わって夜の6時くらいからこっちに来て、ヘッドライトをつけながら夜な夜な作業をしていましたよ。朝8時から会社だったので、当時はなかなかしんどかったんですけど、楽しくってやめられなかった(笑)。
── そこから農家になろうと思ったんですね。
柴田 会社は大きなメーカーやし、開発を担当していたので、結構、給料もよかった。安定はもう間違いないです。だけど、「なんか違うなぁ」という思いが心のどこかにあって。人生、楽しいほうにかけてみたかった。どっちが楽しいかって、天秤にかけちゃったわけです(笑)。ちょうど転属の話があったので、一から仕事を覚えるなら今しかないと。
── 京都にいられなくなったら、畑も手放すしかないわけですよね。
柴田 そうなんです。そのとき、手放さないといけない状況になる頃には、もう、1,000㎡くらいの大きさの畑になっていました。
僕はもともと畑の経験なんかなくって、これが唯一の自慢なんですけど、一切の無知で入って、どこの研修も受けてなくて、全部独学でやってきたんですよ。
── へぇ! すごいです!
柴田 ふつうは、どこかの農家で2年間くらい研修するんです。僕は、なんとか自分の力でやっていったろうと思って。
── 完全に独学なんですね。
柴田 『やさい畑』という季刊誌があるんですが、定期購読して。それからはじめてでもできるおいしい野菜づくり』という本。いまでも僕の教科書です。
- 参考:有機・無農薬でできるはじめての家庭菜園(成美堂出版 刊)
── その本を参考にするんですか?
柴田 そうですね。どの野菜が何ページにあるかくらいまで覚えてしまいました。
坂ノ途中との出会い
── 坂ノ途中さんには、どういうふうに出会ったのでしょうか。
柴田 最初の出会いはインターネットでした。「京都 有機 販売」とかって検索して。直売所やレストランだけでは野菜を余らせてしてしまうので、業者さんを探さないといけないよねって考えて、いろいろと京都市内の会社をあたっていたんです。
それで自分の足で京都市にある坂ノ途中さんの直営店舗のsoilさんに行きました。もともと市内に配達もしてたので、ちょっと帰りに寄って「野菜をつくってます。ダメでしょうか」みたいな感じで(笑)。
どこの仲卸業者さんでも、やっぱり商売ですから当たり前ですけれども、安く買いたいんですよね。「こんだけ買いとってやるから、こんだけの値段にしてくれ」といういう感じ。でも、それって結構きつい。
坂ノ途中さんは、ちゃんと値段をつけてくれたり、少ない量の野菜でも「売れるところを探すのがうちの仕事なので」と言ってくれました。「すごい! なんといい会社だ!」と思いましたよ。「たとえ1袋からでもうちはとるから、連絡をしてほしい」と言ってくれました。「困ったことあったらいつでも連絡してきて」とか。いいお付き合いをさせてもらってると思っています。
── 柴田さんは、最初の段階で農協に卸すような、いわゆる普通の農家をやろうとは思わなかったのでしょうか。
柴田 そうすると、ロットが大きくなってしまうんですね。基準も厳しいし、手数料も発生します。そこまでの量をつくれるか、最初は自信がなかったですし。
坂ノ途中さんは、規格外でも売れるアイデアを出してくれるんです。たとえば、冬の大根やキャベツを春まで畑においておくと、“とう立ち”(野菜が花茎を伸ばすこと)しちゃうんですよ。とう立ちすると大根の根のほうはスカスカになってしまって出荷できない。でも、とうだちの先のつぼみはいわゆる菜の花。食べられるんですね。
坂ノ途中さんは、これを「大根の菜の花。今の時期しか食べられないものですよ」と売っていく提案をしてくれて、むだのないようにすごく考えてやってはる。だから逆に、ちょっと見栄えが悪いけれども、こんな感じで売れませんかってことを、僕も言いやすいです。
坂ノ途中と一緒に仕事をしたい
── 逆に、坂ノ途中さんと一緒にお仕事をしていく中で、大変なこととかってあるんですか?
柴田 そうですね……。当たり前のことなんですけど、やっぱり坂ノ途中さんは個人宅配をメインにしてはるんで、ある程度の野菜の収穫量の予想をつけとかないといけないわけで。
1週間前に、これぐらいのお野菜がとれますよっていう連絡をするのですが。以前は、注文まで来てるのに、直前で採れないことが分かった、というようなことがありまして。「もっと早く言ってほしい」と叱られました(笑)。
── 広報の倉田さんは「柴田さんにはすごく助けていただいています」とおっしゃっていました。
柴田 僕は不器用もんなので。夜まで作業しちゃうもんで、だから、夜中に他の農家さんの都合で急に野菜が必要になったとしても「なんぼでもいけるよー」って言うんです。助けてもらってることもなんぼでもありますから、恩をお返ししたい気持ちなんです。
やっぱり、僕はサラリーマン上がりですから(笑)。野菜を食べてくれはる方々ももちろんですが、お客さん(坂ノ途中)を喜ばしてなんぼやと思ってるんで。そこは、いつでも力になれたらなと考えてます。
うちは、90%以上の野菜を坂ノ途中さんに出荷しています。ビジネスとして考えたら、3社くらいに振って、リスク分散するのが当たり前ですよ。でも、坂ノ途中さんと一緒にやりたいなぁという気持ちです。
どんなものが届いても、喜んでもらえるようにしよう
柴田 僕のように小規模で野菜を育てていたら、常にぴかぴかな野菜ばっかり売っていても成り立たないんですね。形がいびつであったりとか、ちょっと見ばえ悪い野菜も出てきます。
ただ、それを袋に入れたとき、坂ノ途中さんの商品になったとき、いかにきれいに見えるかは、力を入れていますね。いつもスタッフに言い聞かせているのは「坂ノ途中さんの野菜を頼んでいるひとは、選べないんや」と。スーパーに並んでるんやったら、手にとって、自分でこれにしようって決められるけども。
坂ノ途中さんから野菜が届く個人宅配のひとは、それしか選べない。そのことを大事にね。やっぱり、どんなものが届いても、喜んでもらえるようにしようと。その気持ちだけは持つように、とは伝えてますね。それが坂ノ途中さんのブランドをつくってると思うので。
そもそも僕は、野菜バカなんです。なんでもつくりたがりなんです。少量でもいいから「とりあえずつくってみようよ」って思いがあるんです。だからこそ、坂ノ途中さんと一緒にやらせてもらう価値がある。今後も、いろんな野菜をつくって、たくさんのひとに食べてもらえたらいいなぁって思います。
(この記事は、株式会社坂ノ途中と協働で製作する記事広告コンテンツです)
文/くいしん、写真/タクロコマ