あなたは日々食べている野菜を、ちゃんと選べているでしょうか?
どこの誰がつくっているか、ご存知でしょうか?
今晩食べる食材に、納得していますか?
株式会社坂ノ途中が運営する自社農場「やまのあいだファーム」は、消費者であるぼくらが野菜のことを知り、食べることを考えられる場。就農したいひとが農業について考えられる場でもあります。
ここで働いているのは、農場スタッフの山崎茜さん。
彼女に食べるものをつくる暮らし、食べるものづくりを仕事にする話を聞きました。
やまのあいだファームについて:【京都・坂ノ途中】やまのあいだファーム|こんなにワクワクする農場は、今まで出会ったことがなかった
山崎 茜(やまざき あかね)
通称「あかねぽん」。環境系NGO等を経て坂ノ途中に入社。事務仕事も出荷もできる貴重な戦力だったのだけど、どうしても畑がやりたいということで、いきものいっぱいの直営農場「やまのあいだファーム」の担当へ。農業の基礎は、週末農業学校small farmers collegeで学んだ。
家と畑を往復する暮らし
── 現在はどんな毎日を送っていますか?
山崎茜(以下、山崎) 毎日、畑と家の往復です。夏は、朝6時くらいから作業を始めて19時半頃まで草刈りや収穫を中心に作業します。
冬は草刈りや収穫の時間は少なくって、やるのは畑の修繕といった「土木作業」。事務作業だとか雨の日にもせなあかんことがあるんで、そんなんしつつの毎日です。
作業じゃなくて、野菜の「世話」をする日々
── やまのあいだファームでは野菜を「よく観察する」と伺いました。それってどういうことなのでしょうか?
山崎 ここでは耕さない農法(=不耕起栽培)をしています。畝は、一度つくったら10年20年……とずっと使い続けます。
山崎 よく観察するというのは、苗と雑草とのバランスを見て世話をすることです。基本的に草は抜かずに、野菜が生存競争に負けへん程度に地上部を刈って管理するんです。草や生き物の種類を増やして、多様性のなかで野菜を育てています。
山崎 やまのあいだファームはガソリンで動く機械が草刈り機と軽トラだけで、ほとんどのことを手でやっていて、だから一つひとつの作業に時間はかかるけど、そのぶん野菜を見ている時間も長いかもしれません。「あ、この子は様子がおかしい」「もうすぐ周りの草に負けそうだな」といろいろ考えていると愛着も増してきます。
広報・倉田優香 あかねぽん(山崎さんのあだ名)と話していていつもいいなと思うのが、畑作業のことを「野菜の世話」って言うところ。一緒に畑を歩いていたら、「次はこれを世話してあげなあかん」とか言う。すごく愛があって好きなんです。
「野菜ができないかもしれない」という不安もある
── 山崎さんはもともと出荷業務や店舗での販売業務を担当していたそうですが、希望して農場スタッフになったのですか?
山崎 そうです。入社する時から栽培に関わることがしたいと思っていて、自社農場をつくることが出決まった時、「やりたい!」と手を挙げました。だから毎日楽しい。ただ、野菜づくりに対するプレッシャーもあります。
── あまり感じさせないですが、そうなんですね。
山崎 (不安は)ありますよ。さっき「草は野菜が負けへん程度に刈る」と話しましたけれど、自然の中で、ほかの植物や生き物と野菜のバランスを取りながら育てるのってとても難しいんです。うまく育たなかったり、虫たちに葉っぱをほとんど食べられてしまったりと、失敗することもある。
ここは水や肥料をほとんど加えへんので、そのぶん他の農家さんたちより育ちも出荷も遅くなるんです。6月になると店舗では夏野菜のズッキーニが入ってきてるんですけど、ここで育てているズッキーニはまだちっちゃくて。毎年種まきや植え付けの時期はちゃんと育つか不安になります。
広報・倉田 店舗のスタッフもそう感じるところはあるかなぁ。
わたしたちが扱う野菜は、季節に沿って無理なく育てられたものだから、基本的に旬のものだけだし、どうしても一般的なお店さんより遅い。お客さんに「ズッキーニありますか?」と聞かれ始める頃は、まだ畑でゆっくり育っている途中。でもじっくりゆっくり育っているからこそ、しっかりした味わいの野菜になるんです。おいしいものをお届けするから、もう少し待ってて!って思うし、そうお伝えします。
「畑のある暮らし」「野菜づくりを仕事にすること」を知ることができる場に
── わざわざ自社で野菜をつくっているのは誠実だと思うし、驚きます。
山崎 でもやっぱり、自分たちの畑があるっていいじゃないですか。
山崎 ここには、農業をしてみたいひとが定期的にいらっしゃるんです。研修というよりも、一緒に作業してお話しましょう! っていう感じなんですけど。1週間ずっといる方もいれば、週1で毎週末に来るスタイルの方もいます。
機械のない農場だからこそ、農業をやりたいけれどどんな農業が自分に合っているかわからないという方が「自分はここに何を足したいだろう?」という視点で考えられる場になっています。「このスタイルはしんどい。もうちょっと機械を使ってやりたいな」とあるひとは思うかもしれない。
食べるものをつくるひとがおれへんくなったら
── 農業はもちろんですが、自分が食べるものを納得して選べるような仕組みができるといいなと思います。
山崎 ネットは顔が見えずにお買い物できる。便利です。でも、リアルでお会いできたり、私たちのことを知っていただけたり、野菜が育っている環境を見ることができたりする場があったらいいなと思う。
やまのあいだファームは、単に野菜をつくるための場所ではなくて、食べてくれるひととの関係づくりの場であり、野菜づくりに関心のある人が、農作業の楽しさや大変さを体感できるような場にしたいと思っています。就農したいひとが参考にできる場にしたい。
それもお客様とのつながりをつくりながら、農業が続くための一つの方法なんです。
(この記事は、株式会社坂ノ途中と協働で製作する記事広告コンテンツです)
文・写真/タクロコマ(小松﨑拓郎)