石見銀山に咲く梅の花から発見された、「梅花酵母」を配合した自然派スキンケアブランド「MeDu(めづ)」。ラインナップは、「保湿洗顔石けん」「ローション」「保湿クリーム」、そして発酵薬膳ゼリーの「肌糧(はだかて)」のシンプルな4種です。
MeDuは、島根県大森町を拠点に暮らしを発信する、「株式会社 石見銀山生活文化研究所(以下、群言堂)」が2015年に発売を開始したばかりの自然派スキンケアブランド。
「暮らしを大切にする人に届けたい」というのは、MeDu担当者の久保田綾香さん。誕生の経緯や込められた想いは、どんなものだったのか、MeDuの誕生によって自身の働き方も変わっていったという久保田さんにお話を聞きました。
自然派スキンケアブランド「MeDu」とは
── まずは、MeDuについてお話をうかがえますか?
久保田綾香(以下、久保田) MeDuは、島根県の世界遺産である石見銀山に咲く、梅の花から発見された「梅花酵母」という酵母菌を配合してつくられた自然派スキンケアブランドです。
衣料品ブランドの「登美」、「根々」、「Gungendo Laboratory」とは分野が異なるように見えるかもしれませんが、MeDuも大森町に根ざした暮らしを発信するという軸で開発しました。
久保田 珍しいのは、スキンケアの根幹に発酵薬膳ゼリーの「肌糧」(はだかて)を位置づけていること。私たちは、体内で起こったことは、必ず肌や体の表面に出ると考えています。ということは、体内でよいことが起これば、肌もよくなっていく。そのサイクルを整えてくれるのが、就寝前に食べる「肌糧」です。
島根県産のハトムギを梅花酵母で発酵させ、そこに薬膳料理でよく使われる、クコの実、菊花、百合根などの6種の食材を加え、はちみつを加えて熟成させました。
── 私もいただいたのですが、「ちょっと薬膳っぽい味がする、でも私は好きだ!」という感想を抱きました(笑)。
久保田 ありがとうございます(笑)。食べた翌日、すぐに美肌になれるわけではありません。長く召し上がっていただく間に、お肌や体質が改善されていくものです。寝ている間に、発酵薬膳ゼリーが新陳代謝を高めてくれるので、徐々に肌状況が改善されます。寝起きの白湯とセットで飲むことをおすすめしています。
暮らしを発信する会社が、なぜスキンケアブランドを?
── MeDuをつくる、という話のきっかけはなんだったのでしょう。
久保田 ……「おやき」、ですね。
── ……食べ物の、「おやき」ですか?
久保田 これはよくぞ聞いてくださった、と言いたいくらい。私のお気に入りの開発エピソードなのですが、気軽に聞いてください。
「梅花酵母」を発見したのは、長年群言堂に勤めている農学博士の房 薇(ファン ウェイ)という女性です。彼女は当時、「群言堂本店カフェ」向けに新メニューを考案する仕事をしていました。
久保田 おやきを開発する中で、彼女はどうしても「匂いが気になる」と思ったそうです。いろいろと試行錯誤した結果、「市販のイースト菌に理由がある」という考えに達したらしく、それを解決するために、「天然酵母をつくろう」と思いました。
── 普通であれば、「では天然酵母を購入しよう」という発想になると思うのですが、「では天然酵母をつくるところから始めよう」と房さんは考えたのですね。
久保田 はい。「天然酵母をつくろう」と決めたら、次なる悩みは「では、何からつくりだそう?」です。が、房はある日の朝、目が覚めたときに、「石見銀山に咲く梅の花から酵母菌を探そう」と、なぜか直感でそう思ったそうです。
一般的に酵母菌の発見には非常に長い年月がかかると言われています。
……が、なんと1年目にして、石見銀山に咲く梅から酵母菌が発見され、しかもパンや酒、味噌などの食品開発と抜群に相性がいいことが分かりました。
通常、1種類の酵母は1つの効能を持っているのが一般的です。しかし、梅花酵母は違いました。パン酵母として高い発酵力を持ち、爽やかでフルーティーな清酒の醸造ができ、自然醸造味噌もできる万能酵母でした。パンはキッチンおかださん、清酒は米田酒造さん、味噌は大正屋醤油店さんと素晴らしい職人さんと手を組んで、美味しい「梅花酵母」発酵食品が生まれていきました。(「群言堂」公式サイトより引用)
── 一晩で梅花酵母にたどり着いてしまうというのがすごいですね。何かヒントのようなものが房さんにはあったのでしょうか。
久保田 梅の花は、石見銀山の地にゆかりのある花。その昔、鉱山町として石見銀山が栄えた時代には、鉱夫たちはマスクにたっぷりと梅肉を塗って、鉱毒を防いでいたと言われています。そのせいもあってか、今でも石見銀山の地には梅の花がたくさん植えられていて、2010年には大森町のある島根県大田市の木にも指定されました。
おそらく房は、無意識下でその梅の花に、なにか親しみを感じていたのでしょう。
久保田 その後、梅花酵母は豊富なアミノ酸、ビタミン類を含んでいる上、肌の老化防止に効果的だといわれている抗糖化作用もあることが分かりました。
その頃、群言堂は暮らしを発信するひとつのツールとして、洋服以外にもスキンケアブランドをつくりたいと考えていました。そこで数年の開発の後に完成したのがMeDuです。
ちなみに、現在「梅花酵母」は島根県内の企業が自由に使える共有財産として登録されているため、「MeDu」だけでなく、様々な企業が「梅花酵母」を活用した商品開発に名乗りをあげています。この発見が、島根県全体を盛り上げるひとつのきっかけになれば……と思っています。
「発酵させて待っていなさい」と言われた日
久保田 ……と、今ではMeDuの担当者としてこうやっていろいろと説明させていただいていますが、ほんの数年前、いや数ヶ月前までは、自分がこの仕事をするとは想像もしていませんでした。
── 以前は、久保田さんは群言堂の販売スタッフとして働かれていたとおっしゃっていましたね。本社転勤という異動が想定外だったということでしょうか?
久保田 いえ。群言堂で働く前は、東京都内の広告会社に4年間勤めていたんです。仕事は楽しかったのですが、いつも時間に追われていました。5年目を迎える前に、このままの暮らしぶりではいけない気がして、会社を単に変えるのではなく、そもそもの環境をガラッと変えないとダメだという気持ちになりました。
その後、群言堂の求人情報を偶然発見し、直感的に「ここで働いてみたい」と思って応募し、運良く採用が決まりました。まずは神奈川の群言堂店舗で、店員として働くことになりましたが、群言堂会長の松場大吉に、「群言堂でがんばっていきたい」と伝えたら、「そこで発酵させて待っていなさい」と言われました。
その後一度異動して、ライフスタイルショップ「gungendo 湘南T-SITE店」で数ヶ月働き、またまた異動で、本社の広報課に勤務することが決まりました。
── 短い期間の間に、いろいろと環境の変化があったのですね。
久保田 今思えば、不思議です。会長にそれを言われた当初は「発酵させて待っているって、なんだろう?」と思いましたが、振り返ってみると、MeDuにつながる言葉だったのかなと思います。その頃すでにMeDuの開発は進んでいたはずですから、会長の中には私をMeDuの担当にしたいという気持ちがあった……かはわかりませんが、何か縁を感じることはたしかです。
今は、大森町に根ざした暮らしを伝えるひとつのツールとして、MeDuをひとりでも多くの方に届けたいと思っています。
「群言堂さんがスキンケアブランドを始めるなんて、意外だね」と思われる方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。でも、里山の暮らしを発信するライフスタイル企業として、衣類のみにこだわる必要は、私はないと思っています。新たなメッセージを発信するアイテムのひとつとして、MeDuが広がっていってくれたら。
選ぶものを変えると、暮らし方が変わりますし、暮らし方を変えると、選ぶものもまた変わってきます。今のスキンケアアイテムが肌に合わなくなってきたと感じたら、ぜひ日本の発酵文化を活かしたMeDuを手にとってみてください。
美容、健康に、暮らしを重ねて考えたい。そんな人たちに長く愛されるブランドに、育ってほしいと思っています。
(一部写真提供:石見銀山生活文化研究所)
お話をうかがったひと
久保田 綾香(くぼた あやか)
1987年長野県生まれ、千葉県育ち。食べることと寝ることが好きで、のびのびと育つ。大学1年の春、駅前の本屋に平積みされていた『広告批評』に出合い、「アイディアと伝え方で世界は変えられるんだ!」と衝撃を受け、自分も広告界で働きたいと考えるようになる。卒業後、無事広告会社に営業職として入社。楽しくも時間に追われる毎日を過ごす中、先の人生がなんとなく不安な思いと、自分が心から伝えたいと思う商品に携わりたいという思いで、メーカーへの転職を考え始める。ネットサーフィン中に群言堂の求人情報を見つけ、まずは入社したいと応募。9か月の間に、販売スタッフとして3店舗を転々とした後、広報として本社に異動、今に至る。
MeDu(めづ)の購入について
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