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【高知県嶺北・土佐町】子どもたちに一歩踏み出す勇気を与えるアドベンチャーレース!|A-TEAM代表・谷泰久

大人が本気で遊び、暮らす町【高知県嶺北地域】特集、続けます。

高知県嶺北地域の取材の後半に差し掛かった、ここちよい春風の吹くよく晴れた日。もとくら編集部は、「A-TEAM」(エーチーム)代表の谷泰久さんにお会いしました。A-TEAMは、子ども向けのアドベンチャーレースを開催している団体。アドベンチャーレースは、大自然の中で、他種目のアウトドアスポーツを楽しむ競技で、その他にも、嶺北地域を中心にお笑いライブを行っています。

自転車に乗る谷泰久さん

自転車に乗る谷泰久さん2
谷泰久さん

谷泰久さんは、自転車の選手として全国のライバルとしのぎを削ったあと、24歳のときに土佐町にUターンしたそうです。

編集部が集合場所に到着すると、さっそく谷さんが話し始めてくれてました。お話を聞いていると、晴れやかな気持ちに包まれて、身体を動かしたくなってきます。と思っていたら、「やってみませんか?」と谷さんが提案してくれました……。

(以下、谷泰久)

「A-TEAM」とは?

あっ、「灯台もと暮らし」の編集部のみなさんですね! よろしくお願いします! 僕はA-TEAMの活動を、世の中にたくさん発信したいので、なんでも聞いてください。今日はいろいろ持ってきたので、まずは一緒にやってみませんか?

立花が履いたローラーブレードの紐を結ぶ谷さん

ローラーブレードがめちゃくちゃできてる立花
ローラーブレードがめちゃくちゃできている立花
スタンティングスチール(足を地面につけずに停止する技)を練習するタクロコマ
スタンティングスチール(足を地面につけずに停止する技)を練習するタクロコマ
初めてのジャグリングに立ち尽くすだけのくいしん
初めてのジャグリングに立ち尽くすだけのくいしん

どうでした? 気持ちよかったでしょう! 僕らA-TEAMは、こんな感じで、子どもを対象としたスポーツ教室「A-TEAMキッズクラブ」を週に1回開いています。土佐町小中学校体育館で毎週金曜日の夕方、18時半から20時まで1時間半で行っています。

A-TEAMキッズクラブ(スポーツ教室)
A-TEAMキッズクラブ(スポーツ教室)

次にA-TEAMキッズクラブの派生系で、嶺北全体から子どもたちを集めた「レイホク・ゴロワーズ」というアドベンチャーレースを年に1回。これは、2泊3日で嶺北の大自然を舞台に子どもたちがチームを組んで、9種目の競技を行うレースです。

レイホク・ゴロワーズ(アドベンチャーレース)
レイホク・ゴロワーズ(アドベンチャーレース)

あとは、「A-TEAMライブツアー」というお笑いライブを年に1回開催。活動の主軸になるのはこの3つですね。A-TEAMの活動を始めたくて、Uターンしました。帰ってきたのは24歳なので、もう16年も前の話ですけれどね。

A-TEAMライブツアー(お笑いライブ)
A-TEAMライブツアー(お笑いライブ)

3つのなかでも聞きなれないのは、アドベンチャーレースかもしれませんが、ご存知ですか? 山や川や海といった大自然の中で、多種目のアウトドアスポーツを行うスポーツなんです。自転車をこいだり、泳いだり、アスレチックやったり、チーム戦で楽しむものなんですよ。レイホク・ゴロワーズは、世界初のアドベンチャーレースである「レイド・ゴロワーズ」を参考にして始めました。その言葉を初めて聞いたときに、「レイド」と「レイホク」を引っ掛けて、やるしかないなって決めたんです(笑)。

もともとは、専用のギアやアイテムがいるから、経済力がないとできないスポーツなんですね。でも、嶺北にはカヤックもあるし、ラフティングもあるし、ロッククライミングの施設もある。それに山もたくさんあるから、いくらでも走り回れる。ここは、アドベンチャーレースをやるには絶好の場所でした。

レースでは、男は1~3人、プラス女性をひとり以上必ず入れなければならないというルールがあるんですよ。それがおもしろい。子どもたちは、1年生から6年生まであえて別の学年でチームを組みます。

レイホク・ゴロワーズを通じて、自分の恐怖心や情けなさに気づく

3日間で9種目ある中で、足の速い子とか体力のある子、今までお山の大将をやっていた子たちが、じつは水の上に行ったらカヤックをこぐのが苦手だったりとか、水が怖かったりする経験をするんですね。得意ではない競技になったときに、自分の恐怖心や恥ずかしさ、情けなさに気づく。そうすると女の子とか年下の子に、強く言えなくなるんですよね。でも、子どもたちは3日間で、確実に成長しますよ。

話をする谷泰久さん

ふだんはみんなを率いているような子が、レースをはじめると水が怖くて、泣いて、女の子に置いていかれたこともありました。だけど、チームで行動しなきゃいけない。もちろん「お前がひとりでも行かんかったら、今回のこのレースのポイントは0やからね」というルールをきちんと伝えます。その上で、僕が同行して船に乗ることもあります。それでも怖いと言うけど、勇気を出したら行動できるはずなんです。一歩前に踏み出すきっかけを与えたいんですね。

おもしろくなかった、しんどかったと思う子がいても、構わないと思うんですよ。口ではそう言っても、その子の心の中に一生経験や悔しい気持ちは残るんです。小学生なんで、負けたチームのキャプテンは泣くこともあります。悔しさや、負けを知るきっかけにもなりますよね。

レイホク・ゴロワーズは、今から16年ほど前、まだ広島に住んでいた頃に構想を練り始めました。それだけ前から考えていたことを、今から2年前の2014年に、やっと始められたんです。

Uターン前は自転車の選手だった

広島にいた頃は、スポーツインストラクターを目指す体育の専門学校に通いました。スキーやエアロビクス、水泳を専攻していましたね。その間、18歳のときからマウンテンバイクのレースをずっとやっていました。

卒業するときに就職も考えたんですけど、若いうちにしかできないことを一生懸命やりたかったから、自転車の選手として23歳までチームに所属して走ってましたね。

僕の兄貴は、めちゃくちゃ勉強ができたんです。でも僕はというと、勉強がきらいで。お兄ちゃんに宿題の答えを、代わりに書いてもらう、そんな子どもでした(笑)。小さいうちから、運動や体育で勝負してやろうと思っていたんです。

子どもの頃からお笑いが好きで、保育園の頃、お誕生日のメッセージカードに先生が「コマーシャルが大好きなやっちゃん」って書いてくれました。保育園に行って、テレビCMの真似をしていたんです。そうやってひとを笑わすことに快感があったんですね。

A-TEAMライブツアーで、地域のコミュニケーションをつくる

A-TEAMライブツアーは、地域のコミュニケーションをつくることが一番の目的です。若いひとはインターネットとか、Facebookがあればいつでもつながれます。でも、10代の小学生や、おじいちゃんおばあちゃんは、どうやってつながったらいいのか?

つながるためには、実際に会ってコミュニケーションを取ることが大事です。そのために、ライブをやる必要があります。

ライブに来てくれた人が、出演していた子どもとスーパーで会ったときに「A-TEAMライブツアーに出ていた誰々さんー」って声をかけることがあるそうなんです。ライブが終わったあとは、出演者が並んで花道をつくり、その中をお客さんが歩いて帰っていきます。そこでお客さんと出演者の会話が生まれるような流れをつくっています。

コミュニケーションについて考えるのはなぜかって? んー、なんだろう。みんなが隣にいるひとと話せる社会になったら、豊かになると思うんです。阪神淡路大震災や東日本大震災もそうですけど、何かあったときに必要になるのは、ひととのつながりなんですよ。

A-TEAMライブツアーのモチーフ

A-TEAMライブツアーは、僕が広島に住んでた頃に、たまたまテレビの報道番組でやっていたドキュメンタリーを基にしています。雪国の小さなお寺で落語の寄席をやるのを取り上げていた番組だったんですけど。素人の住職とか落語をする方が何人かおって、それが町にとっての楽しみになっている。

見にくる地元のひとは座布団を持ってきて、開場するまで列をつくって、いい席を取るためにみんなで待っているんですよね。素人の芸人が落語をやるんですよ? みんながそれを楽しみにしている。その姿がすごく眩しくて「これしかない!」と思いました。

A-TEAMライブツアーについて語る谷泰久さん

それから、ライブの構成は、じつは結婚式の披露宴をモチーフにしているんです。結婚式ほど素晴らしいセレモニーってないよなぁと思っていて。アーティストのライブや映画とはまた違うし、お祭りとも違う。親族や友達が集まってきて、それを見てる。すごく幸せな時間ですよね。

で、ほんわかした雰囲気の中、余興があるんですよ。余興はみんなドンチャン騒ぎで盛り上げてくれて、笑わせてくれる。最後は、奥さんが両親への手紙を書いて、お父さんが今日はありがとうございましたって挨拶して締めて、ちょっとウルっときますよね。

僕は「感動だけ」「笑いだけ」をウリにしたくはないんです。ライブツアーでは、落語、漫才、コントや創作ダンスもやります。創作ダンスは振り付けからつくるんです。最後は映像を使って感動的な内容に落とし込みます。笑いと感動のハイブリッドを目指しているんです。

出演者は2歳から80代まで、赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで参加してもらってます。たとえば「金婚さんいらっしゃい」は、金婚式を迎えたひとに来てもらって、出会いのエピソードから人生を語ってもらうという出し物なんです(笑)。

子どもたちの可能性を広げたい

僕のゴールは20年後、30年後でいいんです。A-TEAMの活動に関わってくれた子どもたちが、自分が親になったときに子どもと遊んで、人間の幅を広げてくれるひとになったらいいなって。

そして今のお父さんお母さんには、子どもにどんどん挑戦状を出してあげて欲しいんです。「お前これできるか~?」とか「お父さん、こんなことできるよ」と実際に見せたら、子どもも真似します。一緒に遊んで、コツをたくさん教えてあげて欲しい。

スポーツは難しくない。ちょっと助言してもらったら、誰でもできるようになります。僕は子どもたちの可能性を広げるために、いろんなスポーツを幅広く教えてあげられたらいいなぁと思うし、A-TEAMでそのきっかけをつくりたいって思っています。

スケートボードをする谷泰久さん

飾られたA-TEAMのTシャツ

お話をうかがったひと

谷 泰久(たに やすひさ)
土佐町出身、昭和51年7月3日生まれ。39歳、一男一女の父。明徳義塾高校卒業後、広島県の広島YMCA健康福祉専門学校へ進学。マウンテンバイクのクロスカントリー【XC】競技を始め、専門学校卒業後に、チーム.SPECIALIZEDに所属して全国を転戦する。1999年マウンテンバイク世界選手権スウェーデン大会U23の日本代表に選ばれるも、代表を辞退。翌年、マウンテンバイクの競技を辞めて、2000年に高知にUターン。2007年から地域住民によるお笑いライブ、A-TEAM LIVE TOUR☆を開催。2014年から子どものスポーツ教室、A-TEAMキッズクラブを立ち上げ、同年、小学生対象のアドベンチャーレース、レイホク・ゴロワーズを開催開始。

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くいしん

編集者。1985年生まれ、神奈川県小田原市出身。→ さらに詳しく見る

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【高知県嶺北・土佐町】少年たちよ、自由であれ!教育が町を変える日を夢見て。地域おこし協力隊・瀬戸昌宣 【高知県嶺北・土佐町】地元を“世界一の町だ”と誇れるように。「NPO法人れいほく田舎暮らしネットワーク」事務局長 ・川村幸司

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