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【高知県嶺北・大豊町】世界が認めた吉野川で遊ぼう!「ハッピーラフト」と一緒に

大人が本気で遊び、暮らす町【高知県嶺北地域】特集、続けます。

透きとおる、エメラルドグリーンの色をした川。きらきらした水面は、川底で小魚が泳ぐようすを、すぐにのぞくことができる透明度です。その川は、水害の多さや流れの速さを表す“暴れ河”の異名を持つ、吉野川。けれど、春先に訪れた吉野川は、その名に反して穏やかに流れています。

吉野川

と、静かに流れる吉野川に向かって、何人かを乗せた一台の白いバンが出発しました。焦げ茶色に日焼けした、若い男女のスタッフが「行ってらっしゃい!」と元気に手を振ります。彼らが向かうは吉野川の上流。そこからボートに乗り、ラフティングを楽しみに出かけて行ったのです。

スタッフといっしょに、「Happy Raft」と書かれた赤い看板を持ってお客さんを見送るのは、マーク・トレストンさん。ラフティングのツアーをおこなう「Happy Raft」(以下、ハッピーラフト)のオーナーです。

吉野川は世界トップクラスの川!

マーク・トレストン(以下、マーク) いってらっしゃーい!

── (つられて)いってらっしゃーい!

happy raftのお客さんたち

── あのチームは、どこへ向かっているんですか?

マーク 今から半日コースのラフティングをしにいきます。ベース(受付などがあるところ)の近くにある川岸がゴールで、4キロの川をくだります。だいたい、2時間くらいかな。

── 一日コースもあるんですよね。

マーク はい。1日コースだと10キロです。上からくだってきて、ベースでランチを食べて、もっと下流のほうへ行きます。川のアップダウンは、一日コースのほうがすごく激しいです。

── 吉野川は全体的にアップダウンが激しいコースなんですか?

マーク いえ、流れが穏やかなスポットもあります。いまはすごくゆっくりできれいだけど、夏になると、早明浦ダムの水が放流されて、水位がすごく上がる。そうすると、流れが激しくなるんです。

マーク・トレストンさん
マーク・トレストンさん

── マークさんはオーストラリア出身で、ずっとラフティングのガイドとして働いていたんですか。

マーク そうです。オーストラリアのケアンズという街出身です。ケアンズは一年中あったかいから、冬でもラフティングができます。そうすると、ほぼ毎日トレーニングできるので、世界からラフティングのガイドがケアンズに集まってきます。

── ケアンズの川と吉野川だと、どんな違いがありますか?

マーク ケアンズのいいところは、暖かいところ。吉野川は冬になると寒くて入れません。でもここはとてもきれい。本当に。世界でもトップクラスの川だと思います。流れの強さもちょうどいいし、川岸が近いからランチをする時も、すぐにボートから降りられて簡単(笑)。お客さんにとって、楽しくラフティングできる川だと思います。

── ハッピーラフトには、何人くらいスタッフの方はいらっしゃるのでしょうか。

マーク 20人くらい。最初は、ぼくと奥さんと、スタッフ3人で始めたから、すごく増えたね(笑)。

── 吉野川のまわりには、ほかにもラフティングができる会社がありますね。

マーク それも、吉野川がいい川だという証拠だと思います。

ぼくたちは、ラフティングのガイドをするだけじゃなくて、ゲストハウスも持っています。ラフティングが終わったら、バーベキューもできるし、スタッフもお客さんと一緒に飲むこともあります。その日一日いっぱい楽しんで、ゲストハウスでぐっすり眠れる。最近は、お客さんが増えてきて、リピーターのひともたくさんいます。ラフティングするだけじゃない、ほかの楽しみもあるから、何度も来てくれるのかなと思います。

ハッピーラフト

家族3人で1ヶ月10万円生活を乗り越えられた理由

── いまはスタッフが20人くらいだとおっしゃっていましたが、前は3人だったのですか……?

マーク はい。ハッピーラフトは2004年にスタートしました。ガイドは3人で、あとぼくの奥さんが車で送り迎えをしたり、ランチをつくったりしていました。最初の1年は、お客さんは全然いなかったです。近所のおじさんが予約してくれて、ラフティングして終わったら、バーベキューして。ぼくたちもちょっといっしょに食べたりとか。

自分でお店を持つのは初めてだから、どうやって営業すればいいかとか、全然わからなかったです。でも良いスタッフといっしょに働けて、楽しかった。大変だったけど、毎年ちょっとずつ大きくなっていきました。

ハッピーラフト
マークさんにコースを案内していただく編集部

── どんなふうにお客さんが増えていったんですか?

マーク 口コミが、大きかったかなぁ。ハッピーラフトがオープンした2004年は、インターネットも出てきた頃だったから、ホームページをつくって宣伝しました。ぼくは日本語が全然しゃべれなかったけど、英語は強いから、raftingとかJapanって検索したら、うちが上にくるようになって。ガイドブックの「ロンリープラネット」にも載って、そこからどんどんお客さんが増えました。

ハッピーラフト

── ロンリープラネットに載ったんですね! すごい!

マーク みんなが助けてくれましたから。

── 大豊町にはいつから暮らしているんですか?

マーク 初めて大豊町に来たのは、2001年。引っ越したのは、2002年の6月です。大豊に来る前は群馬県にいました。どうやって家を探せばいいか分からなかったし、周りのみんなは「そんな田舎に行くなんて、生活するのが難しいからやめておきな」って言っていました。でも、ここに引っ越してきてからすぐ出会った郵便局長さんがすごく優しいひとで、大家さんを紹介してくれました。家賃一万円で住めることになって、今もそのとき見つけた家に家族で住んでいます。

── ハッピーラフトをオープンしたのは、2004年ですよね。それまでの2年間は、ここを始めるお金を貯めていたのでしょうか。

マーク 最初はほかのラフティングの会社に就職しようと思っていました。でも日本語が話せないと働くのが難しかった。自分で野菜をつくったり、英語の先生のアルバイトをしたりしながら、1ヶ月10万円くらいで、家族3人で住んでいたね。

happy raftのマークさん

マーク オーストラリアに帰るかどうしようかすごく悩んで、郵便局長さんに相談しました。そしたら、もし自分で(お店を)やるなら保育園の空き家を貸してくれる、と。しかも使っていないラフトボートとウェットスーツは、群馬で働いていたときの業者さんがくれることになって、ほぼタダで始められるようになったんです。

── マークさんのキャラクターが、ひとを惹き寄せるのですね……。

マーク この地域のひとは、本当にやさしいから。引っ越してきたときは、「山の上に外国人がいるらしい。しかもかわいい赤ちゃんもおる」と、うわさになったみたい(笑)。いろんなひとが、ぼくの家に会いに来ました。みんな飲むのが好きだから、すぐ仲良くなって、仕事から帰って、近所のおじさんたちでビールを飲むこともありました。

郵便局長さんに、こっちで暮らすなら入ってくださいってお願いされて、引っ越してきてすぐ消防団にも入ったし。みんなすごくフレンドリーで、なにかあったら助けてくれる。80歳のおじいちゃんでも、ぼくよりずっと強くて、恥ずかしくなるけど(笑)。

ここで過ごした一日がスペシャルな日になりますように

happy raftのわんこ

── 夏になると、お客さまはいっぱい来るんじゃないですか?

マーク うん、もう本当に忙しい。7月までには、いろんなところに散らばっていたガイドたちが戻って来て、準備をします。

── そうか、真夏は仕事があるけれど、冬や川に入れないシーズンは、スタッフは仕事がなくなってしまうんですね。

マーク はい。ほかのラフティングの会社では、毎年スタッフが違うこともあります。でも、ここは違うんです。スタッフは、冬はあったかいところに行ってガイドの仕事をしたり勉強したりして、毎年夏になると、みんな戻ってきてくれる。すごく仲良しだし、みんなプロフェッショナル。

happy raftの受付中

マーク メンバーが毎年変わると、コミュニケーションが難しいことがある。ラフティングはチームワークがすごく大事です。そういう意味で、ぼくたちは10年近く同じメンバーだから、ベストチームだと思いますよ。

── たしかに、みなさんすごく楽しそうです。

マーク 働いているひともハッピーじゃないと、お客さまもハッピーにならないから。

今後10年は、スタッフのコンディションをちゃんとつくることが、新しいチャレンジだと思っています。オフシーズンに仕事がない時期でも、どうやったらみんな暮らしていけるかを考えたいです。

── ハッピーラフトさんでラフティングできたら、最高だろうなぁ。

マーク お客さまはみんな、せっかくの休みに、何ヶ月前とかから予約して遠くから来てくれる。このひとは、すごく楽しみにして来てくれたということを、忘れないようにしたい。ぼくたちは、お客さまにとってスペシャルな一日をつくりたい。

そのためには吉野川のパワー、プラス、おもしろくって安全で上手なガイドが必要です。日本にはいろんなラフティングのツアーがあるけど、ぼくたちのチームでつくるツアーほど良いものは、なかなかないと思いますよ。

ハッピーラフト

happy raft
(一部写真提供:ハッピーラフト)

お話をうかがったひと

マーク・トレストン
1973年、オーストラリア、ケアンズにで生まれる。リバーガイドとしてオーストラリアのみならず日本、カナダ、アフリカ、ネパール、インドなど世界の激流を渡り歩く。14年前、吉野川に魅せられ、家族とともに高知県大豊町に移住。ハッピーラフトの公式サイトはこちら

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探求者

立花実咲

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。生もの&手づくりのもの好き。パフォーミングアーツの世界と日常をつなぎたい。北海道下川町で宿「andgram」をはじめました。→ さらに詳しく見る

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【高知県嶺北・大川村】手づくりの「さくら祭」、烏骨鶏のネット販売…好奇心に素直に生きる川上夫婦の物語【夫婦対談】 【高知県嶺北・大豊町】【師弟対談】山暮らしの先輩の背中を追いかけて。「猪鹿工房おおとよ」北窪博章×「お山の宿みちつじ」安達大介

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