「灯台もと暮らし」の編集部員が、これからの暮らしを考え、学ぶ企画【ぼくらの学び】。ぼくのテーマは「ふたり暮らしに学ぶ」です。

谷中のとある家には、カレー好きの人々がたびたび集まっています。ここ「かれーのいえ」は、夫婦で「花とカレー」という活動をしている長谷川嶺さん・文香さんが暮らしており、ひとが集い、つながるコミュニティスペースでもあります。

ライフワークであるこれらの活動に本腰を入れるべく福岡県に移住する、と聞いたぼく(編集部・タクロコマ)は、「かれーのいえ」を訪問し、おふたりにインタビューさせてもらいました。

カレーの家
「かれーのいえ」にて

パートナーと一緒に何かに励むことも、ささやかな暮らしの楽しみ。ぼくらの学び「ふたり暮らしに学ぶ」の#1、#2で学んだことを踏まえ、今回はふたりのライフワークのつくり方を学びます。

夫婦のライフワーク「花とカレー」とは

── お邪魔します。(階段を上がり、リビングに来て)すごくいい匂いがしますね!

長谷川嶺(以下、嶺) まさに今カレーをつくっているところなんですよ。

長谷川ご夫妻
左から、長谷川嶺さん、長谷川文香さん

長谷川文香(以下、文香) こちらへどうぞ。

── 今回はおふたりが取り組まれている「かれーのいえ」や「花とカレー」のご活動についてお聞きしたくて、お声がけさせてもらいました。まだ同棲を始めたばかりですが、ぼくも彼女となにか一緒に取り組めたら、今よりも少し暮らしが楽しくなるんじゃないかと思っているんです。

 ぼくらの活動が参考になればいいね。

文香 ふふふ。よろしくお願いします。

── よろしくお願いします。まずはじめにおふたりの仕事についてお聞きしたいです。

 新卒で就職した企業でコンサルタントとしてキャリアをスタートさせ、その後ウエディングプロデュースをしているベンチャー企業に3年間勤めていました。去年の7月に退社して、文香との活動に力を割いていこうとしているところですね。

文香 私は営業や商品企画、新規事業の立ち上げをしてきて、今は編集の仕事をしています。

── ということは、会社に勤めながら活動を始めたんですか?

 そうですね。

── 「かれーのいえ」と「花とカレー」の活動内容についてもお聞きしたいです。

文香 「かれーのいえ」はカレー好きなひとたちがこのシェアハウスに集まって、一緒にカレーをつくって食べられる広場でして。ひとの縁をつなげていくような会を定期的に開催しています。

 「花とカレー」はカレーを使って、いろんなつながりをつくるリレーションクリエイティブチーム。具体的に言うと、カレーのケータリングやイベントの企画コンサルティング、プロデュースをしています。

文香 私たちふたりだけでイベントを主催することもチャレンジしているんですけど、基本的には誰かと一緒にやることが好きです。例えば駒込にあるカフェ「百塔珈琲 Shimofuri」さんとコラボして、コーヒーとカレーをセットで販売しました。そのカフェに来てくれるお客さんがお散歩に行く途中や帰り道にコーヒーとカレーと、花があったら普段よりも少し幸せな時間になるんじゃないかな?って。

花とカレー
花とカレーの様子(写真:岳)

きっかけは結婚式でした

── ご活動を始めるきっかけをおうかがいしたいです。

 始まりは結婚式なんです。ぼくらは一泊二日のキャンプウェディングをしたんですけど、最初は「結婚式はやらなくていいんじゃないか?」って文香と話していました。

同じ場所にひとが集まるのに、今までお世話になったたくさんのひとたち同士のつながりは全然なくて、わざわざ自分たちのために遠方から時間を割いて来てもらうのがもったいないなって思ったんです。

文香 結婚式に来てくれるひとたちがどうしたら喜んでくれるだろうって嶺くんと考えた時に、みんなでカレーをつくったら絶対友達になれるだろうって思ったんですね。

 そういう発想で結婚式をカレーにするところからスタートしたのが、ぼくらの活動です。

結婚式

カレーを食べている様子
チームでカレーをつくるウエディングの様子

── どんな結婚式になったんですか?

 式に150人招待して、チームでカレーをつくるウエディングで。カレーの食材争奪戦から始まったんですけど、もうなんだかすごかったよね。ひとってこんなにすごい勢いで仲良くなっていくんだなって。

文香 初めて会うひとたちが楽しそうに喋っていたり、後日Facebookで友達になってコメントし合っていたりして。

 横のつながりがなかったようなひとたちの縁が、ぼくらの結婚式でつながっていったんだっていうことを、すごく感じました。この友達とこのひとは会っておくべきだとか、相性が合うだろうという視点でチームを構成したので、式を終えても縁が続いている様子を見ると余計にうれしかったよね。

文香 そういうことを実現できたのは、みんなカレーが好きだからで。

── ここにカレー好きが集まってわいわいしている様子を見ると、なおさら納得します。

カレーをよそう長谷川文香さん

 でしょう? カレーは場づくりや関係性をつくるための最適のツールだと感じたんです。だから「結婚式の続きをやっていきたいね」って文香と話になり、谷中に引っ越して「かれーのいえ」を開きました。カレー好きのひとが集い、つながれるシェアハウスです。

文香 今日タクロコマさんが来てくれたみたいに、この家では定期的にカレーを食べる会を開催しています。

カレーをよそう長谷川さん

バンドみたいな夫婦ユニットでありたい

── 結婚式の続きとしてふたりのプロジェクトをやりたくなったのはどうしてですか?

文香 私たち、バンドが好きなんです。

 バンド活動って、同じメンバーがチームとして年を重ねていけるところがすごくおもしろい。例えば「くるり」は夫婦みたいにふたり(岸田繁と佐藤征史)だけは初期からずっとバンドに在籍して活動しているにもかかわらず、アルバムごとに音楽性がまったく違うんですよね。最近は「琥珀色の街、上海蟹の朝」という曲があって、「上海蟹食べたい」とか言っている(笑)。音楽にラップが入っているんです。

文香 ふたりは変わらないけど、人間性や、やりたいことは変わっていく。バンドみたいに、私たちは自然と変化していくことがすごく大事だと思っていて。

 変化しながら小さな困難を一緒に乗り越えるということ。夫婦の関係でもこういう体験ができたら、かけがえのない日常になるし、とても楽しい人生になりそうだなって思う。だから一緒にいる生活が仕事、ライフワークみたいな話にもなるよね。

「花とカレー」の先に、もっとやりたいことがある?

── 今後の暮らしについて、何か考えていることはありますか?

文香 「かれーのいえ」を始めたのが、2015年の4月くらい。「花とカレー」の活動を始めたのが2016年の2月から。今のままでも充分楽しかったんですけど、もう少しライフワークの方に比重をあてた方がもっと楽しくなりそうだなって思っているところで。

 近々、福岡に移住します。

── えぇ! どうして移住まで発展するのでしょうか。

 「かれーのいえ」、「花とカレー」の活動の先には、「屋号人生(正式名・JINSEI Inc.)」という農業と料理とデザインをテーマにした、泣きながら肩を抱いて笑える仲間をつなげるリレーションクリエイティブチームがあるんです。

── 屋号人生……?

 ぼくたちが一番やりたいことは、本当に大事にしたいひとたちとチームになってワクワクできることに挑戦すること。つまり尊敬し信頼できるひとたちと、誰かに役立てる力をもってつながって、チームとしておもしろいことに挑戦するのが超楽しいんじゃないかって思うんです。

── 屋号人生はどんなチームをイメージしているんですか?

  4組の夫婦がひとつのチームになるイメージをしています。あくまでも今ぼくらが活動している「花とカレー」は、屋号人生の一部なんです。

文香 夫婦という最小単位の小さなユニットで、まずは小さく、テスト的にライフワークを始めてみたのが「花とカレー」。それがうまくいけば、屋号人生の仲間と一緒にやってもうまくいくと考えていて。

 大切なひとと一緒にいるには、いろんな方法がありますよね。ぼくらは一緒にビジネスする必要があるって考えて、大事にしたいひとが福岡で農業しているので、まずは移住することにしました。

── フットワークが軽いですね。

 福岡に行って初めにぼくらがやることは、そのメンバーの農業を手伝うことです。そしてぼくたちができる農業と料理や場づくり、デザインを掛け合わせて、なにができるか具体的に考えていきたいと思っています。

文香 今まで「かれーのいえ」と「花とカレー」をやってきたけど、これらはお金を稼ぐところと別次元の活動だったんですよね。でもこれからは、ライフワークで稼ぐことにトライし始めます。今までどおり楽しみながらうまくいくのかが、今後の2〜3年の挑戦だと思っていて。「花とカレー」の活動を、もうちょっと大きくする、チャレンジ期間ですね。

ふたりのライフワークのつくり方

カレー

── カレーをテーマにご活動を始めたきっかけから、今後のことまでよくわかりました。お話いただいたことをふまえて、ここからが今回のインタビューで一番ぼくが考えていてお伺いしたいことになります。

文香 なんでもどうぞどうぞ。

── パートナーと楽しみながら励めるライフワークは、どうすれば見つけられるのでしょうか? ふたりでなにかしたいけど、実際なにをしたらいいのかわからないんですよね……。

 うーん、まずは自分に問うてみてほしい。「俺はなにがやりたいんだっけ? なにが大事なんだっけ?」って。インタビューしてもらっている今だって日常の延長だけど、振り返ったら本当に大事な時間だったと思えるかもしれないですよね。そういう日常の瞬間を振り返る必要があると思います。

恋人となにかやりたいんだったら、自分が大切にしたいことについて「こういうふうに思っているんだけど……」って、相手に伝えてみることが大切だと思います。自分に問うてるだけではダメ。相手の反応を聞いて、お互いが大事なことを確かめ合っていくと、いつの間にか行動につながるまでテンションが上がっていくんじゃないかな。

文香 「なにが大事なの?」って、ずっと同じことを、嶺くんとすごく話していた気がします。

 言い方を変えると、「あなたはなにでテンションが上がるの?」って話し合うこと。文香は本当に良い!と思うことに対して、「それめっちゃ良い!」って言うんです(笑)。良し悪しの基準になるこの言葉を聞けると、これは良いんだと判断できます。

文香 あぁ〜(笑)。

── じゃあ例えば、「花とカレー」を始めることになった時も、「めっちゃ良い!」っていう反応があったんですね。

文香 そうだったと思います。「花とカレー」は一昨年の12月ぐらいに、「場づくりをしたいね」って話をしだしたんです。

 “自分のなかに大事なものはちゃんとあるぜ”って実感できた時に、今まで自分のために使っていた力を他の誰かのために使えるんじゃないかな?っていう話になり。

文香 それめっちゃ良い!ってなった(笑)。大事なものが私たちの日常にちゃんとあるということに、どうやったらみんなに気づいてもらえるのか考えたよね。

 その時にはもう「かれーのいえ」を開いていたから、やっぱりカレーを一緒に食べて、その瞬間にお花も添えてあったら、ものすごくテンションが上がるなって思えたんです。

── その日の帰り道はうれしくなりそうです。

 花があるかないかは、きっかけに過ぎなくて「大切な日常は、ちゃんと今ここにあるんだよ」という話を、花とカレーをお客さんに渡した時に、いつもお話させてもらいます。

そのひと個人の大事なものに気づいてもらうトリガーになるのが「花とカレー」なんです。

文香 活動の役割とも言えるコンセプトと、具体的な「花とカレー」という名前がピタッとはまってスタートしたんだよね。

長谷川文香さん

── なるほど。コンセプトと活動名が決まると、逆に腰が重くなりそうな気もしますね……。

文香 意気投合してイベントの日付まで決めたから、とりあえず言ってみる、そしてやってみればいいんじゃないかな。プロジェクトという表現にすると大がかりに聞こえるけど、家でホームパーティーを主催するとか、それくらい本当にちっちゃなことでいいと思うんです。

楽しいなって思うんだったら、ふたりのライフワークとしてそれを続ければいいし。ちょっとイラっとする部分があるんだったら、そこは違うひとにお願いしてもいい。ふたりでやるのはやめて友達も混ぜてみるとかね。

 試してみるの、めっちゃ大事ですよ。ぼくらは福岡に移住しますけど、もちろん試してますからね。

文香 うん、本当にお試しですよ(笑)。

── おふたりの姿勢、心から見習います。いってらっしゃい!

 次は、福岡で会いましょうか。

文香 ぜひぜひ来てくださいね。

【学び:ふたりのライフワークのつくり方】

  1. 日常の大切にしていること、大切にしたいことを自分に問う
  2. 自分が大切にしたいことを相手に伝える。また相手の反応をうかがい、お互いの「いいね!」を確かめ合う。テンションが上がることと「めっちゃいい!」がキーワード
  3. お互いの「いいね!」が一致するところがコンセプト。コンセプトを表す活動名を決める
  4. まず小さくても、ふたりのライフワークを実践する

お話をうかがったひと

長谷川ご夫妻

長谷川 嶺(はせがわ りょう)
自身の結婚式を機に、前職のコンサルタントを辞め、創業メンバーとしてCRAZY(当時UNITED STYLE)にデザイナーとして参画。プロデューサーやマーケティングリーダーなども担当してきた。2016年7月に退職し、農業・料理・デザインをスパイスに、泣きながら肩を抱いて笑える仲間をつなげるリレーションクリエイティブチーム「JINSEI Inc.(じんせいいんく)」を起業。日本酒と猫と人が好き。

長谷川 文香(はせがわ あやか)
1986年青森県生まれ。普段は、「ユーザーがうれしい価値創りの推進」をミッションに情報誌のMP(メディアプロデューサー)を担当。ライフステージの変化に伴い、「肩を抱いて笑える仲間をつなぐ生き方」がしたいと考えるようになり、カレーをつかってさまざまなつながりをつくるリレーションクリエイティブチーム「花とカレー」の活動をライフワークとして行う。自由大学の講義「コミュニティ・リレーション学」のキュレーター。今後も「関係性」をキーワードに、自身の営み方を実験していく予定。カレーとお酒と音楽、漫画が好き。

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